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生まれ変わりは皆様とご一緒に 12

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 煮物の肉をまだ小さな子供用のフォークしか持てない子供へと刺して差し出せば、おなかがすいていたのだろう。長沢さんの言ってる事も意味が分からないし何の疑問も持たずに差し出されたお肉をひょいと食べてしまえば慌ててやって来たのはお母さん。こんな綺麗な、でもさっきの輪の中心にいたおっかない奥さんと奥さんによく似た人懐っこい女の子の子供がいたんですねと勝ち組のお父さん、森下さんも慌ててやって来た。
「美味しいだろ?」
 長沢さんがさっきの気迫はどこへやらと言った好々爺とした顔で笑いかければ子供もにっこりと、蕩けんばかりの顔で肉を堪能して
「おにくがプチプチ!おいしー!」
 胡坐をかく強面の長沢さんの足の上にちょこんと座るのも驚きだがお肉がプチプチとは初めて聞く表現だ。
 一体どんな肉だろうと思うも
「それは烏骨鶏のお肉です。一見料理的には黒いので味か濃く見えるかもしれませんが烏骨鶏の皮の黒さが旨さとなって他の料理を染めてしまったのが原因です。出汁は主に骨からとっているので肉は最低限にしか火を通してないのでこの山で育った烏骨鶏の肉質の良さが食感になっているのでしょう」
 にこにこと説明する飯田さんに皆さんへーと言う様に箸を伸ばすも
「子供にでもわかりやすく説明してやれ」
 ぽかんとしながらも口だけはもしゃもしゃと二個目の鳥肉を頬張る子供は飯田さんの言ってる事の一割も理解してない顔をしていた。
 その指摘に青山さんも苦笑してやってきて
「お肉がおいしい証拠ですよ」
 そのたった一言にマナーなんて二の次の年頃の子供は口の中の肉が見えるのも構わずニッと笑い
「おいしー!」
 長沢さんの胡坐に座りながら足をばたつかせフォークにちぎれて残ったお肉を父親でもある森川さんの口へとあーんと言って運ぶのだった。
 う、うらやましくないんだからね!
 俺よりも周囲で血の涙をこぼすおっさん達が多くて見て居られなく慌てて視線を反らせた。
 妻帯もちは同じように子供達が長沢さんの周りに集まるから自然と集まってしまい、追いやられた村の人達は料理を持って別の席へと移動するのだった。どうやら子供には勝てないと言うのはどこでも共通の懸案のようだ。
 この一件で烏骨鶏の肉を使った一見黒っぽくて地味になってしまった煮物が一番の人気料理となり一番大きな窯で煮たと言うのに瞬く間に無くなるどころか村の皆さんがタッパーに詰めてもらってお持ち帰り用と貰っていたのには驚いたけど、この村ではよくあるからと教えてもらえればそう言うもんなんだと思うしかない。
 となれば俺は少し詰めてもらい後で宮下の家に持って帰ってもらおうと飯田さんに他の料理も合わせてお重に詰めてもらう様にお願いをして置いた。
 お昼少し前から始まった昼食会は篠田のハプニングがあったとはいえ皆さんも仕事があるのである程度食べた所でお開きとなった。
 大量に作った料理はお持ち帰りして頂いたので今夜の分は綺麗さっぱりと残らずに食べきったのを高校生達は涙を流していたが、その前にお前らも帰るんだからな?と、篠田夫妻が帰った後陸斗を連れて来て打ち上げと言わんばかりに食べまくった無敵の胃袋集団は子供達とも遊んでやり、午前の水遊びとおなか一杯に食べた後の食後の運動ですっかり眠くなった隙に帰る事になった。
 手伝おうか?と言う申し出もあったけどガルバリウム鋼板の取り扱いは最初の取り扱いが肝心なので勉強してから手伝いに来いと圭斗があしらってくれた。
「そんなにも取扱いの難しい物なんですか?」
 すっかり打ち解けた水野、植田、上島三年チームはやたらと圭斗の周りをちょろちょろしていたが
「まぁ、ちゃんと設置しないとデメリットしかない素材だからなぁ」
 野地板を敷き詰めた屋根を見上げて防水シートを皺たるみなく張っている光景を見上げる。継ぎ目は十センチほど重ねて接着させた上にローラーを使って圧力までかける。その後雪が落ちやすいようにとガルバリウム鋼板を縦葺きで貼ると言う簡単な説明だった。普通なら二週間ぐらいかかる作業と聞いていたがこれだけの人数なのであっという間にラッピングされていく光景を「普通ならあり得ないからな?」と言う圭斗の説明を聞きながら眺めていた。
「所でデメリットってなんですか?」
「あー、軽い分薄いから雨音が響くとか、薄いから熱を通しやすいとか欠点はちゃんとあるから施工に手を抜くと雨音が煩かったり結露が発生したりする。そもそも耐用年数は二十年から三十五年ぐらいとか言われているがガルバリウム自体が割と最近住宅に実用され出した物だから実際そこまで持つかどうかと言われると判らないとしか言えないから十年ぐらいしたらメンテナンスした方が安心だぞ?」
「じゃあ、十年後に」
 茅葺でなくてもお金はかかるなと世話がかかると。でも今は生まれ変わった新しい姿に見積もりでは足場を組んで百五十万ほどもう一度葺き替える事を考えればしっかり予算は組んでおこうと決めておく。
「うちもそろそろ家の屋根のさびが酷くて雨漏りもしてるからどうにかしたいと思うけどよかったら使い心地教えてね?」
 と言うのは上島母。
「そう言うのは家の為にも直ぐに直しましょう」
 圭斗の冷静なツッコミに上島母もそうは言う物のと言うが
「やっぱり安く見積もっても百万はするじゃない?」
「その部分だけなら費用は抑えられますよ」
 ふと考えるような顔をして父親の方へと向かって行ってしまった。
「お客になるといいな?」
「まぁ、内田から仕事が回ってくればな」
 やっぱり地元の大工に仕事を頼むのは当然で、その繋がりで専門職が御呼ばれするのだ。一足飛びに直接頼むほどこの縦社会は窓口は広くないし人間関係をこじらせるつもりもない。
「にしても圭斗は詳しいな?」
 さすが本職だと誉めるも
「前居た会社がよく取り扱っててさあ、先代の時はガルバの取り扱い凄く厳しかったんだ」
「へー、良い先代じゃん」
「だけど代が変わったって言っただろ?その途端手抜きの一途だ。
 家なんて一生に一度の大きな買い物なのに自分達はたくさん施工して来たから安心しろって、先代の目が怖くってビビってた癖に居なくなった途端適当なんだよ」
 それで嫌気がさして辞めたと言う圭斗。そんな性格のこいつなので圭斗の気持ちは痛い位に判る気がする。
「だけど圭斗は見て居るだけでいいの?」
「昨日皆が来た時にレクチャーしておいたし、知ってる人もちゃんといた。
 だけどやっぱり先代みたいに詳しくなくって人聞き又聞きで覚えたクオリティだから細かい所までしっかりと教えて置いた」
「へえ、意外と楽な仕事だねぇ」
 思わず口から出てしまうも何をバカな事を言ってると言う様な冷たい目を向けられて
「ガルバは金属屋根だからな。板金屋の仕事なんだよ」
「ふーん?」
 意味が解らない。
「価格の安いコロニアルって奴なら大工職人でもできる屋根材だから。井上さん始めとした茅引き職人さん達も普段は瓦を拭いたりするから誰でも出来るんだけど」
「つまり?」
「仕上げが俺の仕事なんだよ」
 今は教育の途中で覚えてもらっている所。
「大工は横の繋がりで仕事が回るからな。だけどガルバは板金屋の仕事で大工との繋がりがある方が少ない。
 そこに目を付けた先代は俺達に板金の技術を学ばせてガルバの技術の高い大工屋へと進化させたわけだ。
 ちゃんと普通のパネル工法とかもやるぞ?」
「ごめん。マニアックなこと言われても勉強不足で答えられないよ」
「知らない方がこっちとしてはありがたいので知らないままでいてくれ」
 様子を見に行くと屋根に上がって行く圭斗を見上げながら見守る俺とは別に他の人達はあばらハウスに肉付けする様にどんどん壁を作って行く。柱や梁が立派過ぎてしっかり壁を作らないといけないと言う事になったがそれでも昔ながらの田の字型の部屋は大きな部屋へと変っている。とは言え襖や障子で区切る為にその部分はどうしても壁となってしまうのであえてそこを壁にしてあけ広げた時に外からは見えないように全部重なる様にしてもらった。梁を支える為のどうしても切る事の出来ない柱は、まぁ、これまた立派なん物なのでそこにあるだけでもオブジェと言う風格があり寧ろ子供達は登りたがるだろう立派な柱は仕上がる部屋の景色に溶け込む事は間違いなしだ。


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