57 / 976
壁越しの秘密基地 2
しおりを挟む
「じゃあ荷物片づけて来ます」
「ついでに布団を縁側で寝るまで干すけどいつもの押入れの布団使っちゃうよ」
もうすぐ日も暮れるのにそう言って二人は台所隣の部屋に在る引き戸を開けた中に在る階段からトントンと足取り軽く上って行った。
「あんな所に階段があったんですか?」
「ドアで隠れてるから判りづらかったかな」
引き戸の奥に階段が隠れているなんてと、ここに住んで一週間ほどする陸斗の驚きの声にそう言えば言った事なかったなと俺は先生にお茶を出しながら
「昔この家が林業をしていた時までさかのぼる話だそうだが、その頃は羽振りもよく使用人も居たらしくってこっちの土間を挟んだ炊事場に住まわせていたって聞いている。
二階に住んでると不思議だろ?家の正面から見た面積に対して二階が狭いような気がして」
「ええ、もっと奥まで部屋があっても良いと思いましたが……」
「新入りだったり所帯持ちじゃない奴らはこの一階に雑魚寝、所帯持ちだったりそれなりに仕事を任された奴は二階って住み分けされてたんだと」
呆れたと言う様に言うもそれは向上心にもつながり、所帯を持ちたいと言うモチベーションにもなる。運がよければ親方一家の家に招かれる事もあるだろうしと時代を反映する考えに今の時代の俺としてはありえないと頭を抱えるが、どのみち俺には関係ないとこの時代の人間で良かったと胸をなでおろす。なんせ親の代まで恋愛の結婚なんてありえない、きちんとしたお家のお嬢さんとお見合いをしてからじゃないとみっともない、子供を介して夫婦になればいいと言われてきたのだ。釣鐘書があればいいってわけじゃないだろうって突っ込みたかったが少なくとも東京に居た時には聞いた事のない話だった。
「今じゃそれを利用して合宿場の部屋になっていると言うわけだ」
「どこかの民宿を借りたとしてもこんなにもお安く利用できる所はないからな。
それにこの環境は良すぎる。コンビニを探しに夜中に脱走する事も出来ないし、何かあればすぐ親を呼び出せる距離。それに生徒からも好評なんだよ。今時薪割五右衛門風呂マジありえんwwwって」
「そんなこと言う奴らは崖から突き落としてお終いの刑だ」
「と言う割には毎度重労働の刑で済ませている癖に」
「悪いね。人手は常に不足している。貴重な労働力を逃して溜まるかって言う奴だ」
ここでは草むしりは草刈り機を使用、庭の剪定にはチェンソー、落ち葉にはブロワーとエンジンが付いた物を駆使する場所だぞ?ゴミ?そんなの谷底に落としてしまえだ。今頃積もりに積もった枯葉は立派に腐葉土となっておろうと虫達の産卵場になっているだろうと言う事は目を瞑っておく。
バタバタと賑やかな天井を眺めながら
「とりあえず先生は先に風呂に入ってください。折角圭斗に沸かせたんだから一番風呂浸かって温度確かめて来て下さい。俺はまだシャワーだけだし陸斗も足場の悪い五右衛門風呂なんて使わせれないので」
「うむ、悪いな」
言うもいそいそとおふろセットを持って台所の勝手口から出て行ってしまった。勿論おふろセットの中には日本酒が当然のようにあったのはあまりに馴染み過ぎていて疑問を持たなかっただけだが、これで当分は出てこないからその間に飯の準備をする事にした。
さりげなく台所に置かれたスーパーの袋にはちゃんと野菜と肉が入っていた。誰だいつまでも机の上に放置するヤツは?さっさと冷蔵庫に入れろと仕分けをする。卵だったり牛乳だったりいろいろ入っていて何を作るつもりなのかと思えば今度はどたどたと言った足音で階段を駆け下りる物は二人分。
「綾人さん、、せんせーがいないなら今のうちにご飯作りましょう!」
「あ、あの俺がやります」
ここで何かお役に立たなくては、と言うすっかりと家族に躾けられた奴隷根性に二人は小首を傾げて
「怪我人に重い物を持たせるのはなぁ水野?」
「所で怪我はどれぐらい酷いの?どこまでよくなった?」
「ええと……」
水野の立て続けの質問に戸惑いながらも陸斗は答える。
「左腕とあばらにひびが入って、痛みは少しずつ和らいできましたが、内出血が酷いです」
へー?なんて言いながらいきなり水野がシャツを捲れば湿布を包帯で巻いた場所からはみ出した内出血痕と他にも幾つも残る痣の数に無神経の水野ですらその直後体が硬直していた。たぶん大げさな話しを聞いていたもんだろうけど実際はそれ以上だったのだろう。凍りついた空気の中に植田の悲鳴が響く。
「きゃー!水野君のえっち!」
そう言って水野の手を叩き落として陸斗の頭を抱きしめるようにして引き寄せながらシャツを直し
「いきなり脱がそうとするなんてひどい!お嫁に行けなくなったらどうするの!責任とってぇ!」
「ふぇ?あれ?あ、ごめんなさい?」
「ごめんなさい?じゃねぇ!
地に頭を付けて侘びろ!」
甲高い裏声からのドスの効いた地の這うような演技がかった一人二役の声に
「ええ?!綾人さん!」
途端に始まったヲタクの寸劇に陸斗はおろおろするだけだがこいつらを預かった俺はいつの間にか植田に蹴り落とされて土間に転がっている水野を見て呆れた視線を向ける。
「陸斗が男の子だから問題はなかったがこれが女の子だったらお前、チョンってされても問題ない懸案だぞ」
「あ、あの……チョン、とは?」
顔を引きつらせる水野に
「犯罪者にその股のブツは必要ねえって話しだ」
股を抑えて後ずさる様子に溜息を零し
「見せてくれたら見る、もしくは許可を貰ってから見る。それぐらい高校生なら理解して出来て当然だ。親兄弟でもそれぐらいの配慮は当然あるべきだしましてや初対面。お前がした事はもはや暴力と言うんだぞ」
友達同士ならふざけ合ったと言う言葉もあるだろうが、初めて言葉を交わしてまだ十数分の間柄。植田がしっかりと陸斗を守りつつも水野の反省を最後まで見せる為に陸斗を逃がさないように両肩に手を置いていた。植田やはり出来る子だと心の中で褒め
「判ったら今夜の夕食当番は水野一人だ」
「綾人さんそれじゃあ甘いと思います」
「なら合宿が始まるまで水野が担当だ」
「綾人さん朝食が食べれる気がしません!」
「植田、お間はどっちの味方だ」
呆れて聞けば
「逆に聞きますが太陽と一緒に寝起きする人に平均的高校生の生活をどう合わせればいいのですか?」
真剣な目で語られる植田は誰が五時起き何てするんだよと言った物だろうか。
その視線の隣の陸斗に視線を合わせるもやはりつい、と視線を反らされてしまう。陸斗も早いが俺はそれ以上だからなと反省を込めて
「朝は七時に起きて朝食をお前ら二人で準備して食べる。作る分には用意しておくから」
俺からその言葉を引きだせば満足げにガッツポーズ。前回俺に合わせて作らせたのがよほど堪えたと見て良いだろうと少しだけ俺も反省しておく。
「じゃあ水野は早速料理を作ってよ。先生が風呂から上がってくるまでによろしく。
生姜焼きとみそ汁とご飯でいいから。向こうの冷蔵庫に在る漬物も出してきてね」
「うす」
何故か帰宅部なのに運動部系の返事。反省をしてか心持声が沈んでいるがそれはご飯を食べれば持ち直すだろう。それがこいつらとのやり取りの気楽な所で、何かと理由を付けてうちに住み付こうとする厄介な所だ。
「ついでに布団を縁側で寝るまで干すけどいつもの押入れの布団使っちゃうよ」
もうすぐ日も暮れるのにそう言って二人は台所隣の部屋に在る引き戸を開けた中に在る階段からトントンと足取り軽く上って行った。
「あんな所に階段があったんですか?」
「ドアで隠れてるから判りづらかったかな」
引き戸の奥に階段が隠れているなんてと、ここに住んで一週間ほどする陸斗の驚きの声にそう言えば言った事なかったなと俺は先生にお茶を出しながら
「昔この家が林業をしていた時までさかのぼる話だそうだが、その頃は羽振りもよく使用人も居たらしくってこっちの土間を挟んだ炊事場に住まわせていたって聞いている。
二階に住んでると不思議だろ?家の正面から見た面積に対して二階が狭いような気がして」
「ええ、もっと奥まで部屋があっても良いと思いましたが……」
「新入りだったり所帯持ちじゃない奴らはこの一階に雑魚寝、所帯持ちだったりそれなりに仕事を任された奴は二階って住み分けされてたんだと」
呆れたと言う様に言うもそれは向上心にもつながり、所帯を持ちたいと言うモチベーションにもなる。運がよければ親方一家の家に招かれる事もあるだろうしと時代を反映する考えに今の時代の俺としてはありえないと頭を抱えるが、どのみち俺には関係ないとこの時代の人間で良かったと胸をなでおろす。なんせ親の代まで恋愛の結婚なんてありえない、きちんとしたお家のお嬢さんとお見合いをしてからじゃないとみっともない、子供を介して夫婦になればいいと言われてきたのだ。釣鐘書があればいいってわけじゃないだろうって突っ込みたかったが少なくとも東京に居た時には聞いた事のない話だった。
「今じゃそれを利用して合宿場の部屋になっていると言うわけだ」
「どこかの民宿を借りたとしてもこんなにもお安く利用できる所はないからな。
それにこの環境は良すぎる。コンビニを探しに夜中に脱走する事も出来ないし、何かあればすぐ親を呼び出せる距離。それに生徒からも好評なんだよ。今時薪割五右衛門風呂マジありえんwwwって」
「そんなこと言う奴らは崖から突き落としてお終いの刑だ」
「と言う割には毎度重労働の刑で済ませている癖に」
「悪いね。人手は常に不足している。貴重な労働力を逃して溜まるかって言う奴だ」
ここでは草むしりは草刈り機を使用、庭の剪定にはチェンソー、落ち葉にはブロワーとエンジンが付いた物を駆使する場所だぞ?ゴミ?そんなの谷底に落としてしまえだ。今頃積もりに積もった枯葉は立派に腐葉土となっておろうと虫達の産卵場になっているだろうと言う事は目を瞑っておく。
バタバタと賑やかな天井を眺めながら
「とりあえず先生は先に風呂に入ってください。折角圭斗に沸かせたんだから一番風呂浸かって温度確かめて来て下さい。俺はまだシャワーだけだし陸斗も足場の悪い五右衛門風呂なんて使わせれないので」
「うむ、悪いな」
言うもいそいそとおふろセットを持って台所の勝手口から出て行ってしまった。勿論おふろセットの中には日本酒が当然のようにあったのはあまりに馴染み過ぎていて疑問を持たなかっただけだが、これで当分は出てこないからその間に飯の準備をする事にした。
さりげなく台所に置かれたスーパーの袋にはちゃんと野菜と肉が入っていた。誰だいつまでも机の上に放置するヤツは?さっさと冷蔵庫に入れろと仕分けをする。卵だったり牛乳だったりいろいろ入っていて何を作るつもりなのかと思えば今度はどたどたと言った足音で階段を駆け下りる物は二人分。
「綾人さん、、せんせーがいないなら今のうちにご飯作りましょう!」
「あ、あの俺がやります」
ここで何かお役に立たなくては、と言うすっかりと家族に躾けられた奴隷根性に二人は小首を傾げて
「怪我人に重い物を持たせるのはなぁ水野?」
「所で怪我はどれぐらい酷いの?どこまでよくなった?」
「ええと……」
水野の立て続けの質問に戸惑いながらも陸斗は答える。
「左腕とあばらにひびが入って、痛みは少しずつ和らいできましたが、内出血が酷いです」
へー?なんて言いながらいきなり水野がシャツを捲れば湿布を包帯で巻いた場所からはみ出した内出血痕と他にも幾つも残る痣の数に無神経の水野ですらその直後体が硬直していた。たぶん大げさな話しを聞いていたもんだろうけど実際はそれ以上だったのだろう。凍りついた空気の中に植田の悲鳴が響く。
「きゃー!水野君のえっち!」
そう言って水野の手を叩き落として陸斗の頭を抱きしめるようにして引き寄せながらシャツを直し
「いきなり脱がそうとするなんてひどい!お嫁に行けなくなったらどうするの!責任とってぇ!」
「ふぇ?あれ?あ、ごめんなさい?」
「ごめんなさい?じゃねぇ!
地に頭を付けて侘びろ!」
甲高い裏声からのドスの効いた地の這うような演技がかった一人二役の声に
「ええ?!綾人さん!」
途端に始まったヲタクの寸劇に陸斗はおろおろするだけだがこいつらを預かった俺はいつの間にか植田に蹴り落とされて土間に転がっている水野を見て呆れた視線を向ける。
「陸斗が男の子だから問題はなかったがこれが女の子だったらお前、チョンってされても問題ない懸案だぞ」
「あ、あの……チョン、とは?」
顔を引きつらせる水野に
「犯罪者にその股のブツは必要ねえって話しだ」
股を抑えて後ずさる様子に溜息を零し
「見せてくれたら見る、もしくは許可を貰ってから見る。それぐらい高校生なら理解して出来て当然だ。親兄弟でもそれぐらいの配慮は当然あるべきだしましてや初対面。お前がした事はもはや暴力と言うんだぞ」
友達同士ならふざけ合ったと言う言葉もあるだろうが、初めて言葉を交わしてまだ十数分の間柄。植田がしっかりと陸斗を守りつつも水野の反省を最後まで見せる為に陸斗を逃がさないように両肩に手を置いていた。植田やはり出来る子だと心の中で褒め
「判ったら今夜の夕食当番は水野一人だ」
「綾人さんそれじゃあ甘いと思います」
「なら合宿が始まるまで水野が担当だ」
「綾人さん朝食が食べれる気がしません!」
「植田、お間はどっちの味方だ」
呆れて聞けば
「逆に聞きますが太陽と一緒に寝起きする人に平均的高校生の生活をどう合わせればいいのですか?」
真剣な目で語られる植田は誰が五時起き何てするんだよと言った物だろうか。
その視線の隣の陸斗に視線を合わせるもやはりつい、と視線を反らされてしまう。陸斗も早いが俺はそれ以上だからなと反省を込めて
「朝は七時に起きて朝食をお前ら二人で準備して食べる。作る分には用意しておくから」
俺からその言葉を引きだせば満足げにガッツポーズ。前回俺に合わせて作らせたのがよほど堪えたと見て良いだろうと少しだけ俺も反省しておく。
「じゃあ水野は早速料理を作ってよ。先生が風呂から上がってくるまでによろしく。
生姜焼きとみそ汁とご飯でいいから。向こうの冷蔵庫に在る漬物も出してきてね」
「うす」
何故か帰宅部なのに運動部系の返事。反省をしてか心持声が沈んでいるがそれはご飯を食べれば持ち直すだろう。それがこいつらとのやり取りの気楽な所で、何かと理由を付けてうちに住み付こうとする厄介な所だ。
134
お気に入りに追加
2,678
あなたにおすすめの小説
またね。次ね。今度ね。聞き飽きました。お断りです。
朝山みどり
ファンタジー
ミシガン伯爵家のリリーは、いつも後回しにされていた。転んで怪我をしても、熱を出しても誰もなにもしてくれない。わたしは家族じゃないんだとリリーは思っていた。
婚約者こそいるけど、相手も自分と同じ境遇の侯爵家の二男。だから、リリーは彼と家族を作りたいと願っていた。
だけど、彼は妹のアナベルとの結婚を望み、婚約は解消された。
リリーは失望に負けずに自身の才能を武器に道を切り開いて行った。
「なろう」「カクヨム」に投稿しています。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
婚約者の側室に嫌がらせされたので逃げてみました。
アトラス
恋愛
公爵令嬢のリリア・カーテノイドは婚約者である王太子殿下が側室を持ったことを知らされる。側室となったガーネット子爵令嬢は殿下の寵愛を盾にリリアに度重なる嫌がらせをしていた。
いやになったリリアは王城からの逃亡を決意する。
だがその途端に、王太子殿下の態度が豹変して・・・
「いつわたしが婚約破棄すると言った?」
私に飽きたんじゃなかったんですか!?
……………………………
たくさんの方々に読んで頂き、大変嬉しく思っています。お気に入り、しおりありがとうございます。とても励みになっています。今後ともどうぞよろしくお願いします!
全力でおせっかいさせていただきます。―私はツンで美形な先輩の食事係―
入海月子
青春
佐伯優は高校1年生。カメラが趣味。ある日、高校の屋上で出会った超美形の先輩、久住遥斗にモデルになってもらうかわりに、彼の昼食を用意する約束をした。
遥斗はなぜか学校に住みついていて、衣食は女生徒からもらったものでまかなっていた。その報酬とは遥斗に抱いてもらえるというもの。
本当なの?遥斗が気になって仕方ない優は――。
優が薄幸の遥斗を笑顔にしようと頑張る話です。
[完結]いらない子と思われていた令嬢は・・・・・・
青空一夏
恋愛
私は両親の目には映らない。それは妹が生まれてから、ずっとだ。弟が生まれてからは、もう私は存在しない。
婚約者は妹を選び、両親は当然のようにそれを喜ぶ。
「取られる方が悪いんじゃないの? 魅力がないほうが負け」
妹の言葉を肯定する家族達。
そうですか・・・・・・私は邪魔者ですよね、だから私はいなくなります。
※以前投稿していたものを引き下げ、大幅に改稿したものになります。
悪役令嬢になるのも面倒なので、冒険にでかけます
綾月百花
ファンタジー
リリーには幼い頃に決められた王子の婚約者がいたが、その婚約者の誕生日パーティーで婚約者はミーネと入場し挨拶して歩きファーストダンスまで踊る始末。国王と王妃に謝られ、贈り物も準備されていると宥められるが、その贈り物のドレスまでミーネが着ていた。リリーは怒ってワインボトルを持ち、美しいドレスをワイン色に染め上げるが、ミーネもリリーのドレスの裾を踏みつけ、ワインボトルからボトボトと頭から濡らされた。相手は子爵令嬢、リリーは伯爵令嬢、位の違いに国王も黙ってはいられない。婚約者はそれでも、リリーの肩を持たず、リリーは国王に婚約破棄をして欲しいと直訴する。それ受け入れられ、リリーは清々した。婚約破棄が完全に決まった後、リリーは深夜に家を飛び出し笛を吹く。会いたかったビエントに会えた。過ごすうちもっと好きになる。必死で練習した飛行魔法とささやかな攻撃魔法を身につけ、リリーは今度は自分からビエントに会いに行こうと家出をして旅を始めた。旅の途中の魔物の森で魔物に襲われ、リリーは自分の未熟さに気付き、国営の騎士団に入り、魔物狩りを始めた。最終目的はダンジョンの攻略。悪役令嬢と魔物退治、ダンジョン攻略等を混ぜてみました。メインはリリーが王妃になるまでのシンデレラストーリーです。
後悔はなんだった?
木嶋うめ香
恋愛
目が覚めたら私は、妙な懐かしさを感じる部屋にいた。
「お嬢様、目を覚まされたのですねっ!」
怠い体を起こそうとしたのに力が上手く入らない。
何とか顔を動かそうとした瞬間、大きな声が部屋に響いた。
お嬢様?
私がそう呼ばれていたのは、遥か昔の筈。
結婚前、スフィール侯爵令嬢と呼ばれていた頃だ。
私はスフィール侯爵の長女として生まれ、亡くなった兄の代わりに婿をとりスフィール侯爵夫人となった。
その筈なのにどうしてあなたは私をお嬢様と呼ぶの?
疑問に感じながら、声の主を見ればそれは記憶よりもだいぶ若い侍女だった。
主人公三歳から始まりますので、恋愛話になるまで少し時間があります。
元侯爵令嬢は冷遇を満喫する
cyaru
恋愛
第三王子の不貞による婚約解消で王様に拝み倒され、渋々嫁いだ侯爵令嬢のエレイン。
しかし教会で結婚式を挙げた後、夫の口から開口一番に出た言葉は
「王命だから君を娶っただけだ。愛してもらえるとは思わないでくれ」
夫となったパトリックの側には長年の恋人であるリリシア。
自分もだけど、向こうだってわたくしの事は見たくも無いはず!っと早々の別居宣言。
お互いで交わす契約書にほっとするパトリックとエレイン。ほくそ笑む愛人リリシア。
本宅からは屋根すら見えない別邸に引きこもりお1人様生活を満喫する予定が・・。
※専門用語は出来るだけ注釈をつけますが、作者が専門用語だと思ってない専門用語がある場合があります
※作者都合のご都合主義です。
※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。
※架空のお話です。現実世界の話ではありません。
※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります)
※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる