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夏がくる前に 10
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ゆったりと時間が過ぎるように料理も魚料理に変わった。嬉しいことに表面がぱりっとしたヒラメのムニエルだった。多分俺が海の幸に飢えているからだろうと感謝をするも今度は俺がそっと視線を反らせる番になった。
カトラリーでのヒラメの食べ方なんてわかる?!と思うも目の前の飯田さんは優雅に身と骨の間にフィッシュスプーンっていうの?を差し込んで身だけを骨から外し、手前に引き寄せて一口大にカットして優雅に食べる所作に真似するもそんなふうに上手く食べる事なんてできるわけがない。
崩れた身をもったいないと思いながらも奮闘するように集中していれば二人は俺を邪魔しないように何やらずっと話を続けていた。
そしてソルベを挟んで肉料理。
窯オーブンの扉を開けて二羽の鳥の姿焼きが鉄板の上に並んで取り出された。
白い湯気と共に香ばしい肉の匂いにハーブの爽やかな香りがまざる。飴色に焼かれた皮の焼ける音がパチパチと小さく聞こえ、用意された皿に移動したかと思えば一瞬にして彩られた。
ギャルソンと肉料理の担当さんが料理を運んでくれた。
「本日のメイン料理はウズラのファルシでございます。いま季節の夏野菜とフォアグラを詰めました一品になります。ギャルソンが切り分けますのでどうぞごゆっくり堪能ください」
メインの料理には担当のシェフみずからの説明が入るこの店のパフォーマンスだと小山さんは言う。
なんだかすごい優越感に浸れる瞬間だと思わず背筋を伸ばして聞いてしまう俺を飯田さんは視線をそらせて肩を震わせていた。これだから同業種はと少しだけ睨んでしまう。
「本当なら牛も羊もあったのですが、せっかくなのでマーケットにもあまり並ばないウズラを選んでみました。
いくつか選べる中で飯田さんが選んでくれた理由はわかったものの
「ウズラ?ウズラの卵の親だよね」
「はい。そしてよくジビエ料理風に使われます」
「この姿だけを見ると鶏を小さくした感じだね」
言いつつもクリスマスターキーのように足がニョキッと天井を向いているスタイルは全く同じだ。
料理を見て感想を耳にしながらギャルソンが取り分けてくれようとするも飯田さんが待ったをかけてナイフを預かり俺に取り分けてくれた。
「ウズラは見た目は小さくてもギュッと美味しさが凝縮されて美味しいですよ」
なれた手付きで手羽、胸肉、もも肉と取り分けてくれてお腹の部分にはぎっしりと野菜とフォアグラが詰めてあった。絶対値段ヤバイやつだと思いながら綺麗に切り分けてくれたウズラを口へと運ぶ。
「あ、以外にあっさり?」
甘めの赤ワインを使ったこってりとしたソースが淡白なウズラの肉にあってどんどん進んでいく。
「俺は焼き鳥にして塩コショウで食べるのが好きなのですが、フレンチになるとファルシがポピュラーですね」
「あー、ウズラを飼うのも良いかな?」
「ウズラは渡り鳥なので寒い地域は厳しいかと思います」
「二人共待て、なんで飼育して食べる方に話が変わってるんだ?」
小山さんが疑問を覚えたようで口を挟めば
「実は綾人さん烏骨鶏を飼育してます」
「烏骨鶏って、あのお高い鳥を?」
「多分その真っ黒な体に真っ白な羽のやつです」
ウズラうめーなんてフォークとナイフが止まらない中料理人が烏骨鶏知らないわけ無いと話に入る。
「月に一度ぐらいですが烏骨鶏を頂いて料理をさせていただいてます」
小山さんに向かってものすごいドヤ顔を決めていた。なんの優越感か是非とも教えていていただきたい。
「え?一体どんな弱み握られたの」
なんとなく失礼な言い方をするも
「胃袋を掴まれたと言うか」
もっと性質の悪い答えを返してしまい、精悍な顔つきを最大に歪め
「ああ、勝てる要素がないやつだな」
「なので環境を整えるのがせめてもの仕返しです」
「逃げられない料理人の性を利用したか」
「ええ、おかげさまで毎週のように遊びに行かせていただいてます」
「お前、程々にしろよ……」
呆れた顔の小山さんに飯田さんは羨ましいだろうと笑うも俺としては上げ膳据え膳でご飯が食べれるのだ。文句を言う必要がどこにあると言ったものだろう。
やがてウズラも皿の上からなくなりテーブルがデザートに変わるためにリセットされる。
今宵のデザートは地元で取れたブルーベリーをソースにしたレアチーズケーキだと説明を受けた。近くの酪農家から低温殺菌の牛乳を仕入れるのがこのレストランの売りでもある。その牛乳を使ってクリームチーズを作り、レアチーズケーキとなるわけだが
「このレストランのレアチーズケーキは手土産にもなるくらい自慢なんですよ。
近くの農家さんにお願いしてブルーベリー、ストロベリー、クランベリーを作ってもらってます」
他にも本日のコーンスープもこの地の農家から仕入れたものだし、他の野菜もこの近辺の農家さんから毎朝直接土をつけたまま仕入れたものだという。
もちろん季節のものだから入手できないのは発注して買う事になるが、それでも可能な限り地元の野菜そして旬の野菜を使う基本の事を心がけているという立派な精神だがそれでレストラン経営は大丈夫なのかと思いながらだけど他人の話だとウンウンと話を聞いておくもそれはレジを通った時に納得した。ちゃんとそれなりの、俺と似たような世代が払うには躊躇う金額なんだとさっとカードで支払いを済ませる飯田さんはその値段に見慣れているから微動だにしないが、ほぼ食費ゼロ円生活の俺としては何ヶ月分の食費かと悩んでしまう。
というかだ。
車で来たのにワイン飲んでいたけど大丈夫?と思うも飯田さんの分はノンアルのワインで、俺の分だけがアルコール入りだと言う事をこの場で明かされた。俺の心配返せというものだ。
カトラリーでのヒラメの食べ方なんてわかる?!と思うも目の前の飯田さんは優雅に身と骨の間にフィッシュスプーンっていうの?を差し込んで身だけを骨から外し、手前に引き寄せて一口大にカットして優雅に食べる所作に真似するもそんなふうに上手く食べる事なんてできるわけがない。
崩れた身をもったいないと思いながらも奮闘するように集中していれば二人は俺を邪魔しないように何やらずっと話を続けていた。
そしてソルベを挟んで肉料理。
窯オーブンの扉を開けて二羽の鳥の姿焼きが鉄板の上に並んで取り出された。
白い湯気と共に香ばしい肉の匂いにハーブの爽やかな香りがまざる。飴色に焼かれた皮の焼ける音がパチパチと小さく聞こえ、用意された皿に移動したかと思えば一瞬にして彩られた。
ギャルソンと肉料理の担当さんが料理を運んでくれた。
「本日のメイン料理はウズラのファルシでございます。いま季節の夏野菜とフォアグラを詰めました一品になります。ギャルソンが切り分けますのでどうぞごゆっくり堪能ください」
メインの料理には担当のシェフみずからの説明が入るこの店のパフォーマンスだと小山さんは言う。
なんだかすごい優越感に浸れる瞬間だと思わず背筋を伸ばして聞いてしまう俺を飯田さんは視線をそらせて肩を震わせていた。これだから同業種はと少しだけ睨んでしまう。
「本当なら牛も羊もあったのですが、せっかくなのでマーケットにもあまり並ばないウズラを選んでみました。
いくつか選べる中で飯田さんが選んでくれた理由はわかったものの
「ウズラ?ウズラの卵の親だよね」
「はい。そしてよくジビエ料理風に使われます」
「この姿だけを見ると鶏を小さくした感じだね」
言いつつもクリスマスターキーのように足がニョキッと天井を向いているスタイルは全く同じだ。
料理を見て感想を耳にしながらギャルソンが取り分けてくれようとするも飯田さんが待ったをかけてナイフを預かり俺に取り分けてくれた。
「ウズラは見た目は小さくてもギュッと美味しさが凝縮されて美味しいですよ」
なれた手付きで手羽、胸肉、もも肉と取り分けてくれてお腹の部分にはぎっしりと野菜とフォアグラが詰めてあった。絶対値段ヤバイやつだと思いながら綺麗に切り分けてくれたウズラを口へと運ぶ。
「あ、以外にあっさり?」
甘めの赤ワインを使ったこってりとしたソースが淡白なウズラの肉にあってどんどん進んでいく。
「俺は焼き鳥にして塩コショウで食べるのが好きなのですが、フレンチになるとファルシがポピュラーですね」
「あー、ウズラを飼うのも良いかな?」
「ウズラは渡り鳥なので寒い地域は厳しいかと思います」
「二人共待て、なんで飼育して食べる方に話が変わってるんだ?」
小山さんが疑問を覚えたようで口を挟めば
「実は綾人さん烏骨鶏を飼育してます」
「烏骨鶏って、あのお高い鳥を?」
「多分その真っ黒な体に真っ白な羽のやつです」
ウズラうめーなんてフォークとナイフが止まらない中料理人が烏骨鶏知らないわけ無いと話に入る。
「月に一度ぐらいですが烏骨鶏を頂いて料理をさせていただいてます」
小山さんに向かってものすごいドヤ顔を決めていた。なんの優越感か是非とも教えていていただきたい。
「え?一体どんな弱み握られたの」
なんとなく失礼な言い方をするも
「胃袋を掴まれたと言うか」
もっと性質の悪い答えを返してしまい、精悍な顔つきを最大に歪め
「ああ、勝てる要素がないやつだな」
「なので環境を整えるのがせめてもの仕返しです」
「逃げられない料理人の性を利用したか」
「ええ、おかげさまで毎週のように遊びに行かせていただいてます」
「お前、程々にしろよ……」
呆れた顔の小山さんに飯田さんは羨ましいだろうと笑うも俺としては上げ膳据え膳でご飯が食べれるのだ。文句を言う必要がどこにあると言ったものだろう。
やがてウズラも皿の上からなくなりテーブルがデザートに変わるためにリセットされる。
今宵のデザートは地元で取れたブルーベリーをソースにしたレアチーズケーキだと説明を受けた。近くの酪農家から低温殺菌の牛乳を仕入れるのがこのレストランの売りでもある。その牛乳を使ってクリームチーズを作り、レアチーズケーキとなるわけだが
「このレストランのレアチーズケーキは手土産にもなるくらい自慢なんですよ。
近くの農家さんにお願いしてブルーベリー、ストロベリー、クランベリーを作ってもらってます」
他にも本日のコーンスープもこの地の農家から仕入れたものだし、他の野菜もこの近辺の農家さんから毎朝直接土をつけたまま仕入れたものだという。
もちろん季節のものだから入手できないのは発注して買う事になるが、それでも可能な限り地元の野菜そして旬の野菜を使う基本の事を心がけているという立派な精神だがそれでレストラン経営は大丈夫なのかと思いながらだけど他人の話だとウンウンと話を聞いておくもそれはレジを通った時に納得した。ちゃんとそれなりの、俺と似たような世代が払うには躊躇う金額なんだとさっとカードで支払いを済ませる飯田さんはその値段に見慣れているから微動だにしないが、ほぼ食費ゼロ円生活の俺としては何ヶ月分の食費かと悩んでしまう。
というかだ。
車で来たのにワイン飲んでいたけど大丈夫?と思うも飯田さんの分はノンアルのワインで、俺の分だけがアルコール入りだと言う事をこの場で明かされた。俺の心配返せというものだ。
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