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変化のない俺の日常 4

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 小屋から戻り夕飯の準備をする。
 既に霧が立ち込めて来て気温は二十五度を下回り肌寒さも感じる。
 夜中にいきなり雨も降ったりするので縁側の雨戸も閉める。これは主にクマ対策だ。役に立つかはわからないけど。
 そして晩飯は簡単に鍋。
 夏でも鍋。
 作るのも片づけるのも簡単な鍋。
 一人暮らしこれだけは譲れねぇと、鍋で失敗する事はまずない鍋の中味は白菜とねぎ、適当に季節の野菜に肉。今日は山菜は取ってこなかったのでありません。
 鍋に水を張って昆布を入れてしばらく放置。
 その間に野菜を切って肉を隣の小屋に在る冷凍庫からもってきて薄くスライス。包丁じゃあ切れないからネットで探してみたら冷凍肉切り包丁なる物を発見。切れやすくってマジ感謝です。
 そんな感じで薄く切った肉が準備出来た所でカセットコンロに火をつけて鍋を沸かす。そして俺は適当だから昆布を入れたまま野菜を投入。肉で出汁を取れよと言う人もいるが、常日頃の一人飯にそこまで気をかける人はいない。いやそんな事はないが、俺の場合だと思ってもらえばいい。
 野菜にも火が通ってきた所で最近味噌ばっかりだったからと今日は少しの塩と酒、風味付けの醤油を入れる。先にやれと言う話かもしれないが忘れていたのだからしょうがない。適当もここに極まりというものだ。
 そんなこんなでやっと肉の投入となるのだが本日の肉はイノシシ。
 ぶたしゃぶのように薄くスライスしてポン酢で頂くつもりだが、ポイントはしっかりと火を通す事。
 このイノシシは地元の猟友会から購入した物。
 俺も二十歳を過ぎてわな猟免許をとるも運がよければ程度で捕獲して猟友会の人を呼んで引き取ってもらっている。なので一応俺も名前だけは猟友会に入っている事になってるが、なかなかお役にたてることはない。
 なので下界に降りた時は必ず立ち寄って山の状況情報を交換したり挨拶をする程度の間柄。時々肉も買ったり、ニジマスを手土産にしたりもする物々交換が田舎での交流の基本だ。
 そんな交流で手に入れたイノシシの肉の塊はやはり一人では食べるのは苦戦するし鍋やカレーに使うのが俺にはあっているし、ようは食べる量よりも圧倒的な物量を毎度貰うのだ。キロ単位何て早々食べれる物じゃない。つまり飽きるんだよ。俺には普通の肉でいいんだ。例えば烏骨鶏とか。
 うん、奴ら美味かった。多くなりすぎてどうしようかとぼやいた時次持って来いと言われてもってったその場でお肉になって返されました。
 皆さんうちの子達を狙っていたようで、まあ、自分で解体しなくて済むからいいけどと一定数は卸すようにしている。自己責任でと言う条件と要予約と言う形で。しかし買うのは猟友会の人達ばかり。表向きには知らせてないと言う事実を俺はまだ知らない。
 そんな入手経路の肉を食べながらテレビを見る。
 合間合間にビールを飲む。程よく具がなくなったらご飯を投入、そしてもう一度あっためて溶いた烏骨鶏の卵を投入。

「うっ、めぇぇぇ……」

 烏骨鶏飼ってよかったと思う瞬間だ。
 暴力的なまでの〆の雑炊の熱量もさることながらしっかりと取れたイノシシの出汁、そしてしっかりとした野菜のうまみも加わった物を普通の鶏よりも小粒の烏骨鶏の卵が全ての旨みを包んで口の中で臭みもなく卵の旨みだけが口の中で広がり、飲み込んだあとの口の中はまろやかな味が支配する。
 白身よりも黄身の方が大きく視覚的にもそれだけでうまいと唾液があふれ出て来るのに、この鍋の出汁を含んだ卵の美味い事……
 シンプルな鍋にこそ烏骨鶏の卵の旨みは生きるなと再確認する鍋だった。
 世話も手間もエサ代もかかってあまり言う事を聞かないかわいいだけの姿だけど、この瞬間こそあいつらを飼った意義だと今度はカラアゲでも食べたいなと鍋の汁の最後の一滴まで食べつくして洗い物をさっさと片付ける事にした。
 それから俺はビールを片手にパソコンを立ち上げる。
 持っていた僅かな貯金を総て使って築き上げた資産が俺がここで生きていくための資本だ。
 最初こそ知識がなくって始まったばかりの仮想通貨で資産を増やしたとこから始めた財テク。そしてある程度溜まったら株に切り替えた。ビビりながらも株を少しずつ買い、配当を得て高校の授業料に当てたり交通費に当てたりとしていた。
 まぁ、親がどれだけクソか東京から引っ越してバアちゃんに押し付けるくらいの説明で察する事は出来ると思うだろう。
 バアちゃんはPCの前に座ってるだけで俺が何やってるか判らなかったのが救いだったが、親にこんな事されてるとはついぞ知らなく、否知っていて俺が知らなかっただけだったが俺が親から自立するように育ててくれたバアちゃんこそ俺の家族だ。
 とりあえず今日は安定した市場の変化を見ただけで終わらせビールを片手にネトゲに励んで夜は更けて行くこれが俺の一日だ。
 
 
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