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第六章「目覚める真の太陽」

操られし氷の心

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「うおおおおおお!」
舞い上がる雹の塊と共に、バランガの氷の力を纏った凄まじい槍の連続突きが唸る。バランガの必殺技である百裂氷撃槍であった。その攻撃は以前にも増してより激しい速度となっており、防御でも耐え切れない程であった。
「ぐああああ!」
剣を弾かれ、倒されるヴェルラウド。一瞬で全身が血塗れになり、傷口が一瞬で凍り付き始める。
「うぐ……」
突きの攻撃による傷と凍傷の激痛で身体が思うように動かせず、弾かれた剣は地面に突き刺さっていた。そんなヴェルラウドにゆっくりと近付くバランガ。ヴェルラウドは必死で身体を起こし、剣を手に取ろうとするものの、バランガの槍が深々と脇腹に突き刺さる。
「ごああ! あっ……」
更なる激痛が全身を走る。ダメージは深いものとなり、ヴェルラウドはその場でガクリと膝を付くが、それでも身体を動かそうとする。
「……俺は……お前を……」
傷付いた身体を抑えながらも、バランガに鋭い視線を向けるヴェルラウド。その目には強い意思の光が宿っていた。次の瞬間、ヴェルラウドの全身が赤い光に包まれる。光はオーラとなって燃え上がり、周囲に赤い雷が纏う。
「この感じ……これは!」
突然、全身の血が湧き上がる感覚を覚えたヴェルラウドは全身の傷を物ともせず、再び立ち上がる。心臓目掛けて襲い掛かるバランガの槍を両手で受け止め、気合を込めつつ両手に力を入れた瞬間、赤い雷による激しい電撃が槍を伝ってバランガに襲い掛かった。
「ぐあああああああ!」
電撃を受けたバランガは叫び声を上げながら倒れる。その隙に剣を拾い、構えを取った。


一方、スフレとリランはシャドーデーモンの軍隊に追い詰められていた。リランはそっとスフレの肩を両手で掴む。自身の魔力をスフレに分け与えようとしているのだ。
「ねえ……こんな事して大丈夫なの?」
「大丈夫だ。私を信じろ」
リランが念じた瞬間、スフレは全身に大いなる魔力が注がれるのを感じる。
「わ、すごーい! 何だか一瞬で力が湧き上がったみたい!」
リランに魔力を与えられたスフレの全身が再び黄金のオーラに包まれる。オーラは一段と輝いていた。
「後は君に任せるぞ」
魔力が底を付いた事による疲労感でフラフラとしながらも、傍の建物の壁にもたれ掛かるリラン。スフレは軽く頷き、目の前の軍勢に鋭い目を向けつつも両手に魔力を集中させる。
「覚悟しなさい! バーントルネード!」
風と炎の魔力を最大限まで高めた事によって暴走した激しい炎の竜巻が、一瞬でシャドーデーモンの群れを薙ぎ払っていく。
「エクスプロード!」
更に発動する爆発魔法。スフレの全力を込めた連続魔法によって、大勢のシャドーデーモンは全て消し去られた。
「へへん、スフレちゃんの本気を思い知ったかしら?」
敵の軍勢が全滅した事を確信したスフレが勝ち誇ったように言う。
「流石だな、スフレ……君なら必ずやってくれると信じていたぞ」
リランはふら付きながらも賛辞の言葉を投げる。
「ちょっと、リラン様大丈夫?」
「気にするな。一晩休めば回復する」
スフレは寄り掛かるリランを支えながらも、残る敵の存在を確認し始める。スフレの目に留まったのは、飛竜と戦闘を繰り広げているオディアンの姿であった。
「あたしはみんなの助太刀に行くわ! リラン様は安全なところで休んでて!」
「うむ。どうか無理だけはするなよ」
スフレは颯爽とオディアンの元へ向かって行った。
「あの小娘、シャドーデーモンの大群を全滅させるとは……うぬぬぬ」
空中で戦況を見物していたゲウドが焦りの表情を浮かべていた。


飛竜に挑んでいるオディアンは襲い来る冷気の中、凍り付く身体を必死で動かしながらも反撃に転じようとしていた。飛竜はけたたましい鳴き声を上げながらも冷気のブレスを吐き続けている。直接飛び掛かるのは不可能だと感じたオディアンは戦斧を投げつけようとするが、両腕も凍り付き始めていた。
「クッ、おのれ……!」
凍る両腕を動かそうと力を込めるオディアンだが、氷はどんどん広がっていく。半身が凍り付き、身動きすら取れなくなったその時、炎の玉が飛竜に襲い掛かる。スフレが放った炎であった。
「何とか間に合ったわね。今すぐ助けるわ!」
スフレは炎を放ち、オディアンの身体の氷を全て溶かしていく。
「忝い。無事で何よりだ」
「この前の恩返しってところね。さあ、あいつをぶっ倒さなきゃ!」
改めて飛竜に矛先を向けたオディアンは武器を大剣に持ち替え、勢いよく突撃する。スフレは両手に炎の魔力を集中させていた。
「うおおおおおお!」
空中から冷気のブレスを吐き掛ける飛竜に対し、オディアンは立ち止まる事無く向かって行く。大きく飛び上がり、剣を振り下ろした瞬間、衝撃波が飛竜を叩き付ける。その一撃で飛竜の胴体に夥しく舞う鮮血と共に大きな傷が刻まれる。鮮血は冷気によって一瞬で凍り付いた。
「オディアン、そこから離れて!」
振り返ると、激しく燃え盛る巨大な炎の玉を掲げたスフレが立っていた。
「灼熱の大火球よ……全てを燃やし尽くせ! クリムゾン・フレア!」
それは全ての炎の魔力を費やす事で発動する最強クラスの炎魔法であった。巨大な炎の玉は飛竜を飲み込んでいくと、叫び声を上げる間もなく一瞬で焼き尽くしていった。飛竜の姿は灰と化し、騎乗していたパジンの姿は既に消えていた。その恐るべき威力を目の当たりにしたオディアンはただ驚くばかりであった。
「なんと……あれ程の魔法が使えるというのか」
「へへ、まだ一度も試した事ない魔法だけどね。でも、今ので魔力を使い切っちゃったわ」
オディアンは飛竜が灰となって消えた事を確認すると同時に、騎乗していたはずのパジンを探し始める。すると、ボロボロで倒れている一人の男を発見した。男の顔は半分が機械のようになっている。そう、男は激しい戦いの最中に転落してしまったパジンであった。
「……ワシハ、ぱじん……くれま……ろーず……ワシ……ノ……モ……ノ……ワシノ……モ……」
火花を飛ばしつつも、壊れた機械的な声で喋り続けるパジンだが、言い終わらないうちに機能は完全に停止してしまった。
「こいつは一体……」
オディアンは動かなくなったパジンをジッと見つめていた。
「どうかしたの?」
スフレが駆けつける。
「何こいつ?」
「……あの飛竜に騎乗していた男だ。恐らくゲウドという男に操られていた人物だろう」
スフレは思わず辺りを見回すようにゲウドを探し始めた。
「あのゲウドとかいう薄気味悪いジジイが今回の事件の元凶って事よね。でもその前にヴェルラウドを助けなきゃ」
「うむ。急ぐぞ」
スフレとオディアンはバランガと交戦しているヴェルラウドの元へ向かった。


ヴェルラウドが倒れているバランガの前で立ち尽くしていると、不意に殺気を感じ取り、身構える。バランガの全身から周囲が凍り付く冷気の波動が迸り、オーラを纏いながらも起き上がる。
「……ヴェルラウド……ヴェルラウド……」
バランガは一瞬でヴェルラウドの首を掴み、締め上げる。ヴェルラウドはその手を引き剥がそうとするものの、首を掴んでいる手は離れようとしない。
「ヴェルラウド……オオオオ……!」
首を絞められているせいで声が出せず、窒息状態で次第に意識が遠のいていくヴェルラウド。
「待て!」
声が聞こえた瞬間、バランガは咄嗟に手を放し、その場から飛び退く。現れたのは、大剣を手にしたオディアンとスフレだった。解放されたヴェルラウドは首を抑えながら激しく咳込む。
「あいつ……確かバランガとかいう奴じゃない。サレスティルの近衛兵長らしいわ」
「何だと?」
槍を手にしたバランガはオディアンとスフレに目を向けると、片手で槍を回転させる。
「お前達……手を出すな」
そう言ったのはヴェルラウドだった。
「ヴェルラウド、その男は……」
「こいつは俺にとって昔から因縁のある男だ。俺の手で倒してやる」
オディアンはヴェルラウドの意向を聞き入れ、黙って頷いてはスフレと共にその場から離れる。
「ヴェルラウド! カッコつけといて無様にやられたら承知しないわよ!」
背中を向けたままスフレの声を聞きつつも、剣に赤い雷の力を集中させるヴェルラウド。


お前とは解り合えないと思っていたが、一つ解った事がある。お前も苦しんでいる事が。そして今のお前は、本当のお前ではないという事が。

だから、俺の手で楽にしてやる。この神雷の剣でな。


ヴェルラウドは両手で剣を握り締めると、剣先が稲妻を帯びた赤い光に包まれる。バランガが槍による凄まじい突きを繰り出すと、ヴェルラウドはその攻撃を身に受けながらも剣を大きく掲げ、そして振り下ろした。
「ぐおああああああああ!」
断末魔の叫び声と共に地面を裂くように暴走する赤い光の雷を受け、砕け散る黒い甲冑。同時に槍も砕け散り、雷光の中で倒れるバランガ。その一撃は決定打となっていた。
「か、勝ったの……?」
勝負の行方を見守っていたスフレが呟く。ヴェルラウドは剣を手に、倒れたバランガの近くまで歩み寄る。
「何故だ……お前は何故俺を……」
ヴェルラウドは拳を震わせながらもバランガに向けて言う。
「……ここは……俺は、一体……」
バランガが自我を取り戻したかのように言う。
「バランガ! 正気に戻ったのか!」
叫ぶように言うヴェルラウド。
「ヴェルラウド……あの時、貴様と戦った事は覚えている。だが……そこから先の事は何も思い出せぬ。俺は……この場で再び貴様と戦い、そして敗れたという事か……」
あの時というのはブレドルド王国での出来事であり、ブレドルド王国でのヴェルラウドとの戦いの末に意識を失い、それからの記憶は無い状態であった。だが、自身が深手を負っている事や、目の前に立っているヴェルラウドの姿で自身が戦いに敗れていたという事を悟っていた。
「もうやめよう、バランガ。お前は何故俺を殺そうとした? 闇王やあの道化師の男に従っていての行いだとしたら、それはお前の意思によるものなのか?」
ヴェルラウドが問い質す。
「……俺は……元々貴様が許せなかった。その事を利用されていた……邪悪なる者の傀儡として……」
バランガの返答にヴェルラウドは思わず絶句する。薄らぐ意識の中、バランガは過去の出来事を振り返りつつも語り始める――。


かつてはサレスティルの誇り高き近衛兵長であったバランガ。国王が治めていた時代から王国の剣豪と呼ばれた父に戦士として育てられ、やがて父の死後、バランガは王国の近衛兵長に任命され、王を守る近衛兵を統率し続けていた。だが王は心臓の病を患わっており、王女であるシラリネが生まれてから数年後に王は病によって他界し、女王として国を治める事となったシルヴェラとシラリネ、そして王国を守り続けていた。

それからある日の事――王国に一人の男が訪れる。クリソベイア王国が陥落し、当てのない旅の末に王国へ流れ着いてきたヴェルラウドであった。数々の魔物との戦いで既にボロボロとなっていた身体を引き摺りながらも城へ向かう途中、力尽きて倒れたヴェルラウドの元に、王国の剣士が駆けつける。
「この者は? 誰か、誰かおらぬか! どうかこの者を城へ!」
兵士達と共に気を失ったヴェルラウドを城へ運んで行く剣士。バランガはその様子を密かに見下ろしていた。

バランガが謁見の間に戻ってから暫く経つと、城のヒーラーによって手当てを施されたヴェルラウドが訪れる。女王を前にしたヴェルラウドは胸に手を当て、深々と挨拶をしてクリソベイアが魔物による襲撃で陥落し、目の前で父を失い、サレスティルに流れ着いたという経緯を伝える。
「クリソベイアが陥落しただと? それに、お前は……」
「はい。私はヴェルラウド・ゼノ・ミラディルス。クリソベイアの騎士であり、騎士団長ジョルディスの息子です」
「何? お前があのジョルディスの……」
女王は驚きの声を上げると、ヴェルラウドの目をジッと見つめる。僅かな沈黙が空気を支配すると、女王が再び口を開く。
「……お前も親や故郷を失った故、色々苦労しただろう。このサレスティル王国は、元々行き場を失った者が多く移り住んだ国でもある。お前はこれから我が国を守る騎士として生きるが良い。我が娘、シラリネを守る騎士としてな」
その言葉にヴェルラウドは深々と頭を下げ、礼を言う。
「女王陛下、お待ち下さい」
そう言ったのはバランガだった。
「どうしたバランガ」
「お言葉ですが……如何に故郷となる国を失い、行き場を無くした者とはいえ、余所者である彼にいきなり姫様の護衛を任せるのは賛同出来ません。第一、生半可な実力で姫様をお守り出来るのですか?」
「クチを慎め! このヴェルラウドという男はかつての私の仲間だった者の子だ。お前の本来の役目はシラリネの護衛だけではない。我が国を守る近衛兵長であるという事を忘れるな」
サレスティル女王――シルヴェラとジョルディスとは歴戦の戦友という関係であったが故、自ら治める王国で戦友の息子が訪れる事を運命だと感じた女王はヴェルラウドにジョルディスの面影を感じ、父譲りの素質があると見込んでいたのだ。シラリネを護衛する役割を与えられたヴェルラウドは、自分を狙っていた魔物の事が気になりつつもサレスティルの騎士としてシラリネを守る事を心から誓い、共に過ごしているうちにシラリネと心を通わせるようになっていた。だが、その様子を陰で見ていたバランガはクリソベイア陥落の件と合わせて、ヴェルラウドに対する不信感を抱いていた。

数日後、バランガが王女の部屋を訪れると、ヴェルラウドと共にしているシラリネの姿があった。
「貴様、まだ姫様と共にしているのか」
ヴェルラウドに向けて棘のある一言を投げつけるバランガ。
「バランガ! 何しに来たのよ」
「姫様、本当にこの男を信用して良いのですか? 如何にこの男が栄誉ある騎士団長の子だとしても、姫様を守れる程の実力があるか不確かな故、私はどうしても納得がいきません」
「何を言ってるのよ! お母様はちゃんと認めてくれたじゃない! それとも、嫉妬のつもり?」
「いえ、私はただ……国王陛下がお亡くなりになったというのに、余所者に姫様の護衛を任せる事にどうしても不安が隠せぬのです」
頑なに意見を主張し続けるバランガ。亡きサレスティル王や女王に大きな忠誠心を持っていたバランガは王の死という事情もあり、近衛兵長としてシラリネや女王、そして王国を守る使命を重んじる余り、訪れたばかりの余所者であるヴェルラウドを信用出来ずにいた。同時に、クリソベイアが魔物に襲撃された原因がヴェルラウドにあるのではないかという疑念を抱いているのだ。
「……ヴェルラウドと言ったな。例え女王の命令とはいえ、長年姫様を守り続けていた身としては姫様を守れる実力を証明出来ぬ者は信用ならぬ。明日、この私と特訓を受けてもらう。いいな」
そう言い残し、去って行くバランガ。

翌日、地下の訓練所でヴェルラウドの実力を確かめるべく、本気で打ち掛かるバランガ。応戦するヴェルラウドだが、実力はバランガの方が数段上であった。バランガは途中で戦いを止め、ヴェルラウドの腹に蹴りを入れる。
「栄誉あるクリソベイアの騎士団長ジョルディスの子がまさかこんなザマだったとは失望したぞ。貴様のような愚か者が俺に代わる姫様の護衛になるとは片腹痛い」
バランガはヴェルラウドの胸倉を掴み、激しく殴り付ける。
「やめて、バランガ!」
声と共に現れるシラリネ。蹲るヴェルラウドを涙目で庇うシラリネの姿に内心動揺しながらも、バランガは冷静に事情を説明しつつ説得を試みる。
「姫様。私に代わる貴方様の護衛を務めるには、この私自身を打ち負かす程の実力の持ち主でなくてはなりません。この男は一体何を考えているのか、私と本気で戦おうとしなかった。このような腑抜けた輩に貴方様の護衛を任せるには信用ならぬのです」
「違うわ! きっと何か事情があるのよ!」
涙声で怒鳴るように言うシラリネに対し、バランガは女王にお伝えしておきます、どうか考えを改めて下さいと言い残して去って行った。バランガは事の全てを女王に伝えると、女王の表情が険しくなる。
「それで……シラリネの護衛は務まらぬと言うのか?」
「ハッ、あの男の実力はこの私に及ばぬ生半可なものでした。それに……あの男には何か不審なものを感じるのです」
「何だと? それはどういう事だ?」
その時、一人の戦士が謁見の間に駆け付ける。
「女王様! 北東の地で正体不明の巨大な黒い影のようなものが!」
「何!」
北東の地に現れた謎の黒い影という存在に不吉な予感を覚える女王。兵士達に調査に向かわせるものの、得体が知れない存在という事もあり、悪い予感は治まらないままであった。
「バランガよ、お前にも黒い影たるものの調査の任務を与える。話の続きは任務を終えてから聞こう」
「ハッ! この私にお任せを」
黒い影の調査をする事になったバランガは単身で北東の地へ向かう。数時間後、バランガが見た黒い影は、巨大な口が浮かび上がる球体状の、ケセルの分身となる存在であった。
「うおああああ!」
巨大な口からの長い舌に捕えられたバランガはそのまま飲み込まれていく。黒い影の内部に広がる亜空間の中に閉じ込められたバランガの前に現れたのは、不敵に笑うケセルであった。
「貴様、何者だ? この世界は……」
「クックックッ、此処はオレの世界といったところだ。そしてこのオレはある計画の為に世界を渡り歩く者。先程まで此処に迷い込んだザコどもと遊んでいたのだが、こいつらは貴様の仲間かな?」
ケセルの前にズタボロの姿の兵士数人が姿を現す。先立って黒い影の調査に向かったサレスティルの兵士であった。
「バランガ様……ど、どうかお逃げ……下さ……」
バランガの姿を見ては一言を残し、事切れる一人の兵士。
「……貴様の仕業か」
「ククク、わざわざ聞くまでもなかろう?」
戦慄を覚えるバランガを前に、ケセルは残忍な笑みを浮かべつつも兵士の死骸を足蹴にする。
「貴様が何者かは知らんが、邪なる者は生かしておけん。覚悟!」
バランガは槍を手に、数々の攻撃を繰り出していく。だがケセルは全ての攻撃を難なく回避し、闇の魔力が凝縮された光弾を放つ。
「ぐあああああああ!」
光弾は大爆発を起こし、吹っ飛ばされたバランガは鎧を砕かれ、そのまま倒れる。ケセルはバランガの頭部を足蹴にすると、手から額に氷を思わせる宝玉が埋め込まれた小さな海豹のような生き物――氷の魔魂を出す。
「こいつを貴様にくれてやろう。貴様には強い氷の魔力が秘められている。大切に使ってくれよ、戦士バランガ」
氷の魔魂の化身がバランガの中に入り込んだ瞬間、バランガの全身から凍てつくオーラが発生する。
「ククク……フハハハハ! また新たなる素材が出来てしまった。貴様も我が計画に協力してくれる事を期待しているよ」
高笑いするケセル。凍てつくオーラを放ったまま蹲るバランガは、そのまま意識を失った。

それから暫く経つと、バランガは薄らぐ意識の中で声を聞いた。それは誰の声か解らない、頭に響き渡る謎の声。


ワタシハ、オ前ニ力ヲ与エル――何者ニモ負ケヌ力ヲ。

オ前ニハ素質ガアル。ソシテオ前ハ、アノ方ノ為ニ戦イ続ケルノダ。ワタシト共ニ――。


目を覚ますと、そこは草原の上だった。砕かれたはずの鎧は何事もなかったように元に戻っている上、黒い影の姿は消えていた。
「俺は一体……あれから何があったというのだ」
記憶がはっきりせず、周囲を確認するバランガ。黒い影に捕われた後の出来事が全く思い出せないのだ。あの黒い影は一体何だったのだろう。正体が解らないまま、このまま帰還すべきかと考えていた矢先、傍らに氷のような石を発見する。思わず手に取った瞬間、石は小さな海豹のような姿に変化する。氷の魔魂であった。
「な、何だこれは……?」
謎の生き物の出現に戸惑うバランガ。氷の魔魂の化身は目を赤く光らせると、瞬時にバランガの中に入り込む。
「うっ、これは……うおおおおおああああああああああ!」
バランガの全身から氷の魔力によるオーラが巻き起こると同時に、かつてない力が湧き上がるのを感じる。


ワタシハ、氷ヲ司ル古ノ魔導師ノ力……魔魂ト呼バレシ者。オ前ハ我ガ力ノ適合者トナル。

オ前ニ備ワル力ヲ、我ガ手デ蘇ラセル……ソシテ我ト共ニ戦エ。守リタイ者ガアルナラバ。


頭に響き渡るように聞こえて来るその声は、氷の魔魂の声であった。声を聞いた時、バランガは戸惑いつつも槍を手にし、辺りの魔物を相手に突きを繰り出す。その一撃は氷の力を纏った攻撃となり、傷口から徐々に凍り付いていく魔物。
「バカな……俺にこんな力が……」
未知の巨大な力を手にしたと実感したバランガは周囲の様子を確認しつつも、一先ず城へ戻る事にした。だが、何故こんな力が与えられたというのだ。あの黒い影に捕えられた事までは覚えているが、その後の出来事が思い出せない。俺は一体何をしていたのだろう? そこでの記憶がないのは一体……。理由がはっきりしないのに、断片的な記憶がない事に戸惑いと不安を抱きつつも、王国へ帰還するバランガ。
「戻ったか。調査の結果は如何程か?」
バランガは女王に事の全てを伝える。
「何だと……貴様、その黒い影の正体が解らぬとはどういう事だ! それに、その氷の力は黒い影に与えられたものではないのか?」
「そ、それは……」
女王の問いにバランガは返答する言葉が見つからず、重い沈黙が支配した。
「……まあ、そんな事よりまず貴様の話を聞こう。バランガよ、貴様はヴェルラウドについて不審なものを感じると言っていたが」
「ハッ、あの男は私との特訓の際、まるで何か自身の力を制限しているかのように感じられました。そしてあの男の故郷であるクリソベイアが魔物に狙われ、そして滅ぼされたのも何かあの男が関係あるのではと……」
「力を制限だと? つまり、貴様はクリソベイアが滅びたのはヴェルラウドに何らかの原因があると言いたいのか?」
「余り信じたくはない話ですが……」
「ふざけるな! そのような事実など信じられるか! どうしてもそう主張したいならば、明日貴様の手で証明してみせろ。結論次第では貴様を左遷する。覚悟しておけ」
激昂する女王を前に、バランガは力強く返事しつつ深々と頭を下げた。

翌日――地下の訓練所ではヴェルラウドとバランガが対峙していた。その様子を見守っているのは女王とシラリネ、そして多くの兵士達。
「ヴェルラウドよ、もし貴様に本当の力があるならば、力の全てを俺にぶつけてみせろ。女王陛下に貴様の力を証明させる為にもな」
「……解った」
バランガが凄まじい気迫と共に槍を構えた瞬間、周囲に冷たい空気が漂い始める。バランガの中に存在する氷の魔魂が冷気を呼び寄せているのだ。
「バランガ、貴様は一体……」
女王は得も言われぬ気分でバランガの姿を凝視していた。二人の戦いが始まる。ヴェルラウドは渾身の力でバランガに斬りかかり、次々と攻撃を繰り出す。激しい打ち合いが続く中、バランガの槍による連続突きがヴェルラウドに叩き込まれる。勝負はバランガが優勢となり、一方的に攻撃を加えて行くバランガ。次第に追い込まれていくヴェルラウドは傷だらけのまま、剣を両手で構える。
「……おおおおおおおお!」
ヴェルラウドの剣先から赤い雷が発生する。
「何ッ!」
思わず後退するバランガ。
「出来ればこの力は使いたくなかったが……ここまで来たら止むを得ん。あんたは、それが望みのようだからな」
赤い雷を纏う剣を手に、ヴェルラウドが反撃に転じようとする。バランガがそれに応えるように構えを取った瞬間、氷の魔魂による凍てつくオーラが発生する。二人の激しい攻防の結果、勝利を手にしたのはヴェルラウドであった。
「これが……貴様の力だというのか」
ヴェルラウドの赤い雷によって、全身に痺れを残したまま倒れるバランガ。
「赤い雷……成る程」
女王は真剣な表情でヴェルラウドの姿を凝視していた。そう、ヴェルラウドの母親であるエリーゼとも仲間であったが故に、赤い雷の正体を知っているのだ。だが、バランガの言う通りクリソベイアが襲撃されたのは赤い雷の力を持つヴェルラウドを狙っていたが故ではないかという可能性も否定出来ずにいた。女王はヴェルラウドには赤い雷の正体や母親の事を敢えて告げず、改めてシラリネの護衛を任せる事を任命した。
「バランガよ。如何に貴様が反対しようと、私はヴェルラウドを信じる事にする。そしてお前は近衛兵長として王国全体の護衛という任務を与える。これは命令だ」
「は、ははぁっ……」
半ば腑に落ちない様子で返事するバランガ。
「大体、貴様が手にした氷の力の方が信用出来ぬ。それに、黒い影とやらの正体が解らずにおめおめと帰って来たという失態を見せた以上、文句は言えまい?」
言い訳の出来ないところを突かれ、流石に折れたバランガはただ頭を下げて返事するばかりであった。

それから月日が流れ、バランガは密かに手に入れた氷の力を駆使した槍術を学んでいた。最初は戸惑っていたものの、時折頭の中から聞こえて来る氷の魔魂によるアドバイスの声に従うようになり、いつしか氷の力に慣れるようになっていた。
「ヴェルラウド……貴様はいつまでもこの国にいてはならぬ。俺には読めたぞ。貴様がクリソベイアに魔物を呼び寄せた事がな。そしていずれこのサレスティルにも……」
バランガは内心ヴェルラウドへの不信感を募らせながらも、氷による槍術を会得していた。


ある日の事――。


「女王陛下、一体何事ですか? 突然何故このような計画を!」
突然、首飾りを付けた女王――ケセルに浚われた本物の女王に成り代わり、女王の姿をそのまま再現した影の女王によるサレスティルの更なる繁栄と称し、兵力や武具の強化と他国の侵攻による領土拡大を目的とした全面戦争と増税による政治を計画し始めていた。偽物の女王の暴挙に困惑の表情を浮かべながらも、異議を申し立てるバランガ。
「我が王国の更なる繁栄の為だ。貴様も多少は存じているであろう、この国は元々王国ですらない、遥か昔の民によって建てられた小さな城でしかなかった。そしてこの国は行き場を失った者達に安住の地を与える為に建国され、貴様を含めた多くの戦士も集うようになった。今まで移民を集め、そして戦士を育成したのも全てはこのサレスティルを世界最大の王国へと発展させる為でもあったのだ」
「なっ……?」
影の女王の言葉を聞き、愕然とするバランガ。だが次の瞬間、確信する。この女王は本物ではない。何者かが化けている偽物だという事を。
「……愚かしい事だ。あなたは女王陛下ではない。女王陛下が突然このような暴挙に出られるとは考えられぬ。貴様、何者だ?」
即座に槍を構えるバランガ。
「やめて、バランガ!」
隣の玉座に腰を掛けているシラリネが呼び掛ける。シラリネの首元には、影の女王とお揃いの首飾りがあった。
「姫様!」
「バランガ……今はお母様の言う通りにして!」
涙声で頼み込むシラリネを前に、バランガはただ戸惑うばかりであった。影の女王が傷を負うとシラリネも傷を負うという首飾りがもたらす呪いの効果を知っているが故に、影の女王の言うがままにされるしかなかったのだ。
「バランガよ。先程の無礼は今までの貴様の功績に免じて不問にしておくが、もし首を取ろうとするような事があらば死刑をも厭わぬ。これからの出来事に備えて、貴様には近衛兵長として働いてもらわねばならぬからな」
影の女王は妖しく光る瞳をバランガに向ける。その眼差しによって、バランガは奇妙な感覚に襲われ始めた。


女王陛下のお言葉は絶対なるもの――そして姫様をお守りしなくてはならない。
そう、女王陛下の意思が如何なるものであろうと、俺は女王陛下に忠誠を誓うのだ。何があっても――。

ソウ、ナニガアッテモ――。


影の女王の瞳を見ているうちに、バランガはまるで自身の魂を操られているかのように、命令に忠実に動くようになっていた。そして、地下牢から脱出を試みたレウィシアとの戦いの末、バランガはレウィシアの太陽のように輝く光に満ちた目を見ている内に、自身の心が揺らいでいくのを感じた。自身を打ち負かした太陽の心を持つ者。このような相手には今まで出会った事がない。まるで心の何処かが光で照らされたような気がしていた。

レウィシアとの戦いで意識を失ってから暫く経った時――目を覚ますと、バランガは闇の空間に立っていた。そして目の前に現れたのは、ケセルであった。
「貴様は……」
「クックックッ、久しぶりだなバランガよ。いや、貴様にとっては初めてになるか。オレにとっては二度目の対面となるがね」
この男は何者だ。何か見覚えがある。以前何処かで会ったような……。ケセルの姿に既視感を覚える余り、はっきりと思い出せない記憶を必死で辿るバランガ。
「これだけは覚えていよう。かつて黒い影の調査に訪れていただろう? その時に貴様はオレと一度会っていたのだ。ただし、オレと会った時の記憶は消させてもらったよ。貴様がオレの事を思い出せないのはそのせいだ」
ケセルの一言で愕然とするバランガ。過去に黒い影によって亜空間に連れ込まれ、ケセルと対面した時の記憶は抹消されていたのだ。同時に、自身が手にしていた氷の魔魂の力が頭を過る。
「そうか……今解ったぞ。俺に氷の力を与えたのは貴様だったのか! そして偽物の女王を送り込んだのも貴様が……」
「クックックッ、左様。ちょっとした余興を楽しむ為にな。サレスティル女王による全面戦争計画もただの余興に過ぎぬという事だ。そしてこれから、貴様にはオレの計画の為にしっかりと働いてもらうよ。何、近衛兵長としての仕事のようなものだ」
ケセルの三つの目が妖しく光ると、バランガは突然激しい苦しみに襲われる。
「ぐあああああ!」
「フハハハ、あの時オレは貴様の記憶も読ませてもらったよ。亡き王や女王に忠誠を誓う余り、余所者であるヴェルラウドという男に姫の護衛をさせるのが許せぬのだろう?」
嘲笑うようにバランガの心中を暴露していくケセル。
「言っておくが、姫は死んだよ。貴様が睨んだ通り、ヴェルラウドは姫を守る事が出来なかった。そして女王もな。例えこのオレが直接手を下さなくとも、サレスティルもいずれクリソベイアと同じ運命を辿る事になるだろう。何故なら、ヴェルラウドを憎む者がいるからだ」
苦しみ続けるバランガの耳に、ケセルの言葉が響き渡るように入っていく。
「もっと素直になったらどうだ? バランガよ。貴様は元々ヴェルラウドを快く思っていないのだろう? 現に奴がいたおかげでクリソベイアは滅び、そしてサレスティルの姫は死んだのだ。今こそヴェルラウドを殺す理由が出来たのではないか? そう、かつての英雄の子であるヴェルラウドを憎む闇王と同様にな」
クリソベイアが滅びたのはヴェルラウドがいたから。そして女王が変わり、姫は死んだ。全てはヴェルラウドが来たからだ。自身が睨んだ通り、ヴェルラウドが全ての災いを呼んだ。やはり自身が姫を守るべきだった。そんな意識を植え付けられていくうちに、バランガの心は完全な闇に支配されていた。


オレがお前の主だ。そんなお前に命令を与えてやる。姫を守れなかったヴェルラウドを殺せ。
奴の命を奪う事は、闇王たる者の望みでもある。近衛兵として戦うのだ――。


「やっぱり、全部あのピエロが悪いじゃない……大体クリソベイアが滅びたり、サレスティルのお姫様が死んだのはヴェルラウドのせいってわけじゃないでしょ!」
バランガの話を聞いていたスフレが怒鳴るように言う。
「……確かに姫は……シラリネは死んだ。お前は……あの道化師の奴に俺が全て災いを呼び寄せたと吹き込まれていたのか?」
ヴェルラウドが問うと、バランガは何も答えない。
「シラリネは、俺達や王国を守る為に自害したんだ。あの時、女王の偽物に手出しが出来なかったのは、シラリネに付けられた首飾りのせいだった。あの首飾りは偽の女王が傷つくとシラリネも傷つく呪いが掛けられている。そのせいで俺は手も足も出なかった。止むを得ずシラリネはそれを利用して……」
影の女王とシラリネの首飾りの仕組みを説明しつつ、シラリネの死の経緯を全て語るヴェルラウド。
「……信じるのも信じないのも勝手だが、俺は決して嘘を言うつもりはない。俺が災いを呼んだという事実は否定出来ないがな。事実、クリソベイアを襲撃した魔物どもは俺が狙いだったのだからな」
「ちょっと、ヴェルラウド!」
心配そうにスフレが呼び掛ける。
「もう良い」
黙っていたバランガが重々しく口を開く。
「……ヴェルラウドよ……今すぐこの俺を殺せ。心を利用され、邪悪なる者の傀儡となった俺は最早サレスティルには戻れぬ……」
その一言にヴェルラウドは思わず目を見開かせる。
「馬鹿野郎! なんで俺にそんな事をさせるんだ! 俺は……俺は……」
俯き加減に怒鳴るヴェルラウド。その目からは一筋の涙が溢れ出す。
「……貴様は何処までも甘いな……姫様が貴様を選んだのは、そういう事だったのか……」
ヴェルラウドの涙を見ているうちに、バランガの表情が穏やかになっていく。
「俺に力を与えたあの道化師の男は……俺が存在している限り、貴様を殺す為、そして計画の為の傀儡として利用するだろう。貴様は……いつまでも俺が傀儡として利用され続ける姿を望むのか? 俺と何度も戦わされる事を望むのか?」
ヴェルラウドは黙って俯いていた。
「……奴らが来る前に……早く俺をやれ……」
意を決したヴェルラウドは両手で剣を握り締め、大きく掲げる。
「うおおおおおおおおおあああああああああああ!」
咆哮と共にバランガの身体に剣を突き立てるヴェルラウド。その瞬間、稲妻が迸る赤い光が辺りを覆い始める。
「こ、これは……?」
突然の赤い光に驚くスフレ達。光が消えた時、バランガの身体は完全に消滅していた。自らの手でバランガの息の根を止めた事によって放心状態となるヴェルラウド。バランガが倒れていた場所には、氷の魔魂の化身が佇んでいた。化身は衰弱しており、弱々しい動きで逃げるように去ろうとするが、徐々に結晶体へと変化していく。ヴェルラウドは結晶体となった氷の魔魂を手に取る。
「……こいつが与えられた力だって言うのか」
ヴェルラウドは氷の魔魂を忌々しげに地面に投げ捨てる。地面に落下した氷の魔魂は次第に溶けていき、蒸発するように消えていった。

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