37 / 51
セディ視点でのお話。その2.お叱り編
しおりを挟む
リリーはいきなり現れたセディに驚いたが、部屋に通すように言いつけました。
貴族でありながら、約束もなしに現れるなんてきっと何かあったに違いありません。
「何ですって! 馬鹿なの? なに考えてるの? 自己中なの? 頭湧いてるの?」
リリーからいきなり怒涛のような悪罵を受けてセディは固まってしまいました。
セディが何か言おうとすると、ベッシと頭を扇子ではたかれて床を指し示します。
まさか、プリンスプリンスの称号を持つ私に、床に座れっていっているの?
抗議をしたらまたはたかれそうな勢いだったので、セディは大人しく床に腰をおろしました。
「それで? どーゆーことか一応聞いてあげますから、言い訳があるんなら言ってごらんなさい」
怖いですリリーさん。
リリーってそんなキャラでしたっけ。
セディがぼそぼそと経緯を説明すると、バシと前よりもずっと強くたたかれました。
セディの頭が低くなったので、ちょうど叩きやすいようです。
「それで、セディは自分の勝手で異世界から誘拐して婚約までした女を、なにひとつ持たせずにこの世界に追い払った訳ですのね。お気に入りのおもちゃに飽きたみたいにね」
あんまりな言いようだ!
セディが抗議しようと口を開くと、ビュンと扇が飛んできます。
この姿勢はまずすぎます。
セディの頭がちょうどソファに座ったリリーの目の前にあるんですから。
「ロッテがどこまで飛んだのかわかるかしら?」
リリーは解決策を考える方向に動いてくれるようです。
「いやぁ。それが。確かに私の転移陣を写したものだとは思うけど、ロッテって思いのほか魔法の才能もあるから予想できないんだ。転移陣の術式だって何枚持っているかわからないし」
ビシ。
なんだかセディは叩かれるのに慣れてきました。
どうやらリリーお嬢さまは気に入らない答えには、扇を打ち下ろすことにしたようです。
ねぇ。王太子殿下。
あなたの婚約者は怖いんですけどご存知ですか。
「それで黒幕はナオだけなの?」
「ロッテはロビンを怪しんでいたみたいだけどね。私はその線はないと思っている。ロビンに利はないだろう?」
セディはロビンを信じていたが、リリーはうっそりと目を細めた。
「あぁいう頭の良すぎる男は苦手ですわ。何考えているかわかりませんもの。ロッテの家庭教師になったのも怪しければ、ナオの猶子の件もそうですわ。まさか王位を狙ってる訳じゃないと思いますけれど、異界渡りの姫を何に利用しようと言うのかしら?」
やっぱり王妃となる方は違いますね。
視野が広い分、いろいろと勘繰るらしい。
セディがぼんやりしていると、バシっと扇が振り下ろされた。
「痛ったいなぁ。馬鹿になったらどうしてくれるんです」
セディが頭を押さえて抗議すると、リリーは冷たく言い放った。
「もうそれ以上馬鹿にはなれませんわ。それよりロビンのところに云ってみなさいな。どうしてわざわざ平民用の服を作らせてカフェに連れていったのかしら。馬鹿でも直接聞けば、なんか掴めるかもしれませんわ」
セディはすぐさまロビンのところに転移しました。
ロビンはなにも聞かずにセディを自分の居間に通しましたから、どうやらセディが来ることは織り込みずみだったようです。
セディが口を開く前にロビンが言いました。
「ナオがね。ロッテにもカフェを楽しんで貰いたいから、内緒で平民の服を作って、初日に来てちょうだいと言ったのだよ。ロッテには内緒にして喜ばせたいとね」
「しかしその結果は予想がついた筈です。私は魔術師としては天才だと言われるように貴公は軍略の天才なのですから。そんな子供だましの策略が読めない訳がない。なんでナオの策略に乗ったのです」
「見極めておきたかったからね。異界渡りの姫たちを」
セディはむっとしました。
「それだけの理由でロッテをあそこまで追い詰めたんですか。ロッテは国を飛び出したんですよ!」
「それは私が見誤ったんだ。君がロッテが絡むとそこまで目が見えなくなるとは思わなくてね」
そう言われては、セディは何も言い返せません。
「覚えておきなさい。悪い事をした子は追い出すんじゃなくて閉じ込めて反省させる方がいいんですよ。そうすれば何が悪かったか自分で考えることになりますからね」
おっしゃる通りですがね。この忌々しい策略家どの。
何か智慧はないんでしょうかね。
セディはここに来たことを後悔しはじめました。
「しかし面白い発見をしましたね。あの青銀の娘、おとなしそうに見えて実に大胆な行動をとる。臆病であり大胆でもある。これは面白いですねぇ」
セディがこんな奴に構わずに帰ろうとすると、ロビンが呟きました。
「まぁ。探してどうしても見つからなければ、またここにおいで」
誰が来るかよ!
全く頭のいい奴ときたらこれだから。
結局お前が馬鹿だからこうなった。
そこまで抜けてると予想できなかったと言われただけでした。
セディは叱られるのを覚悟でクレメンタイン公爵夫妻にこれまでの経過を報告しましたが、そこには兄夫婦も来ていましたから、針のむしろ状態になりました。
「ふーん。つまりさすがの戦略家のロビンにさえ、お前の馬鹿さ加減は読めなかった訳だ。誇ってもいいぞセディ。あの天才戦略家が読み違える程お前が馬鹿だってことだからな」
「兄上、そー言われると私の立場がありません」
「へー。立場ねぇ。番の娘を身ひとつで追い出す男に立場なんてあると思えちゃうんだ。さすがだねえセディさまは」
もともと毒舌家の姉上はここぞとばかりに毒を吐きます。
「お願いします。クレメンタイン家の総力を挙げてロッテの捜索を手伝ってください」
セディが頭を下げると、クレメンタイン家当主が駄目だしをしました。
「順番が違うだろうセディ。お前は魔術師だ。とにかくまずは国外の探査の魔法陣をひたすら伸ばして探索するんだな。夜が明けてもなおロッテが見つからなければ、明け方もう一度ロビンのところに行きなさい。あの男にわからないことはないんだ。いまいましいがな」
「それではロッテがひと晩中、心細い思いをすることになってしまいます。知らないところでひとりぼっちで夜を過ごすなんて、どれだけ恐ろしい思いをするんだろう」
「それを知ることがあなたの罰ですよ。明日、ロビンがあなたに有益な助言ができなければその時はクレメンタイン家の総力を挙げてロッテを探してもらいます。ロビンの答えを貰うまではお父さまはうごきませんわよ」
セディの母はセディではなく夫である公爵の味方をしました。
これでセディひとりでロッテを探すことが決定しました。
「あぁ、そうだわセディ。またこんなことがあってもいけないから、ロッテ専用の離宮を用意しましょう。いつでもお前から逃げ出せるようにね」
「母上!」
セディは思わず叫び声をあげましたが、己のやらかしたことを考えれば何もいえませんでした。
そうしてセディは一晩中、転移を繰り返しました。
転移して、探査魔方陣を極限まで広げてロッテの気配に耳をすませます。
これは極限まで精神をすり減らす作業でしたが、どこかでロッテが震えていると思うと、休むことはできませんでした。
「朝か」
東のそらが、だんだんと明るくなって、朝日が地上を染めはじめました。
セディは真っすぐにロビンのところに転移しました。
ロビンは夕べと同じように居間で待っていました。
「どうだい。自分のしでかしたことの大きさが少しはわかったかな」
セディは神経を使う探査魔法を一晩中展開したせいで、げっそりとやつれています。
それでもセディは腰を降ろそうともせずにロビンにいいました。
「ロッテは見つからない。助けてくれ。稀代の戦略家なんだろ」
「それなら君が最初に見つけた場所にいるだろうね。彼女が唯一安心できる場所だからね」
それを聞くやいなやセディは王立図書館に飛びました。
マンションの扉には鍵がかかっていました。
「いる!」
そう確信してセディの胸は高鳴りました。
果たしてロッテは、すやすやとベッドで眠っていました。
この場所にあるもののほとんどを、兄上が研究のために引き上げましたから、狭かった筈の部屋もがらんとしています。
そんなうら寂しい部屋のポツンと残されたベッドにロッテは眠っていました。
青銀の髪
その髪こそがロッテがセディを受け入れてくれた証でした。
こうして丸まって眠る稚い婚約者をみて、セディは愛しさで胸がいっぱいになりました。
この国に留まってくれだんだ。
あんなにも酷いことを言ったのに。
セディはロッテが目をさましたら、誠心誠意謝るつもりでした。なのに……。
「ずいぶんと呑気に眠れるもんだなぁ」
なにを言っているんだオレ。
そんなことが言いたいんじゃないだろう。
「出て行け!って言われて出て行くなんて子供かお前は!」
あー誰かオレの口を封じて下さい。
お願いします。
「飛べる限り遠くに逃げるつもりだったけれどね」
なんだって!
絶対に逃がすものか。
お前はオレのものだ。
オレだけのものだからな。
知らないうちに、拘束の魔方陣を発動してしまいました。
本来は囚人なんかにかけるものです。
この魔方陣を解除しない限り、どこまで逃げても連れ戻すことができます。
町では、これを解除する魔方陣が闇で売られていますが、私のかけたこの魔方陣を解除できる魔法使いはいないでしょうねぇ。
「セディ、何をしたの!」
ロッテがおびえたみたいです。
安心させてあげないとね。
「迷子札だよ」
ただの迷子ふだですとも。
やんちゃな子猫ちゃんが迷子にならないようにね。
もう二度と逃げ出せないようにね。
いいかいロッテ。
本当のことなんて知らなくていいよ。
だってロッテはずっと私といるんでしょう。
だったらこれがあっても無問題だしねぇ。
それでもなんとかきちんと謝ることができました。
どうしてロッテのまえだと、優しいことが言えないのかなぁ。
こんなに愛しているのに。
セディはロッテを抱きしめてその唇をついばみました。
何度も、なんども。
愛してるって言葉の代わりに、深い口づけを。
そうして夢中になってロッテをついばんでいると、ガチャリと音がしてベッキーとジャンヌが入ってきました。
あいつら知ってて黙ってやがったんだ。
ロッテは真っ赤になって逃げ出したし、ジャンヌたちも真っ赤になっています。
せっかくのお楽しみタイムだったのに。
まぁいいでしょう。
これからは絶対にロッテを逃がしません。
ロッテにも私の愛をたっぷり教えてあげます、
時間をかけてね。
貴族でありながら、約束もなしに現れるなんてきっと何かあったに違いありません。
「何ですって! 馬鹿なの? なに考えてるの? 自己中なの? 頭湧いてるの?」
リリーからいきなり怒涛のような悪罵を受けてセディは固まってしまいました。
セディが何か言おうとすると、ベッシと頭を扇子ではたかれて床を指し示します。
まさか、プリンスプリンスの称号を持つ私に、床に座れっていっているの?
抗議をしたらまたはたかれそうな勢いだったので、セディは大人しく床に腰をおろしました。
「それで? どーゆーことか一応聞いてあげますから、言い訳があるんなら言ってごらんなさい」
怖いですリリーさん。
リリーってそんなキャラでしたっけ。
セディがぼそぼそと経緯を説明すると、バシと前よりもずっと強くたたかれました。
セディの頭が低くなったので、ちょうど叩きやすいようです。
「それで、セディは自分の勝手で異世界から誘拐して婚約までした女を、なにひとつ持たせずにこの世界に追い払った訳ですのね。お気に入りのおもちゃに飽きたみたいにね」
あんまりな言いようだ!
セディが抗議しようと口を開くと、ビュンと扇が飛んできます。
この姿勢はまずすぎます。
セディの頭がちょうどソファに座ったリリーの目の前にあるんですから。
「ロッテがどこまで飛んだのかわかるかしら?」
リリーは解決策を考える方向に動いてくれるようです。
「いやぁ。それが。確かに私の転移陣を写したものだとは思うけど、ロッテって思いのほか魔法の才能もあるから予想できないんだ。転移陣の術式だって何枚持っているかわからないし」
ビシ。
なんだかセディは叩かれるのに慣れてきました。
どうやらリリーお嬢さまは気に入らない答えには、扇を打ち下ろすことにしたようです。
ねぇ。王太子殿下。
あなたの婚約者は怖いんですけどご存知ですか。
「それで黒幕はナオだけなの?」
「ロッテはロビンを怪しんでいたみたいだけどね。私はその線はないと思っている。ロビンに利はないだろう?」
セディはロビンを信じていたが、リリーはうっそりと目を細めた。
「あぁいう頭の良すぎる男は苦手ですわ。何考えているかわかりませんもの。ロッテの家庭教師になったのも怪しければ、ナオの猶子の件もそうですわ。まさか王位を狙ってる訳じゃないと思いますけれど、異界渡りの姫を何に利用しようと言うのかしら?」
やっぱり王妃となる方は違いますね。
視野が広い分、いろいろと勘繰るらしい。
セディがぼんやりしていると、バシっと扇が振り下ろされた。
「痛ったいなぁ。馬鹿になったらどうしてくれるんです」
セディが頭を押さえて抗議すると、リリーは冷たく言い放った。
「もうそれ以上馬鹿にはなれませんわ。それよりロビンのところに云ってみなさいな。どうしてわざわざ平民用の服を作らせてカフェに連れていったのかしら。馬鹿でも直接聞けば、なんか掴めるかもしれませんわ」
セディはすぐさまロビンのところに転移しました。
ロビンはなにも聞かずにセディを自分の居間に通しましたから、どうやらセディが来ることは織り込みずみだったようです。
セディが口を開く前にロビンが言いました。
「ナオがね。ロッテにもカフェを楽しんで貰いたいから、内緒で平民の服を作って、初日に来てちょうだいと言ったのだよ。ロッテには内緒にして喜ばせたいとね」
「しかしその結果は予想がついた筈です。私は魔術師としては天才だと言われるように貴公は軍略の天才なのですから。そんな子供だましの策略が読めない訳がない。なんでナオの策略に乗ったのです」
「見極めておきたかったからね。異界渡りの姫たちを」
セディはむっとしました。
「それだけの理由でロッテをあそこまで追い詰めたんですか。ロッテは国を飛び出したんですよ!」
「それは私が見誤ったんだ。君がロッテが絡むとそこまで目が見えなくなるとは思わなくてね」
そう言われては、セディは何も言い返せません。
「覚えておきなさい。悪い事をした子は追い出すんじゃなくて閉じ込めて反省させる方がいいんですよ。そうすれば何が悪かったか自分で考えることになりますからね」
おっしゃる通りですがね。この忌々しい策略家どの。
何か智慧はないんでしょうかね。
セディはここに来たことを後悔しはじめました。
「しかし面白い発見をしましたね。あの青銀の娘、おとなしそうに見えて実に大胆な行動をとる。臆病であり大胆でもある。これは面白いですねぇ」
セディがこんな奴に構わずに帰ろうとすると、ロビンが呟きました。
「まぁ。探してどうしても見つからなければ、またここにおいで」
誰が来るかよ!
全く頭のいい奴ときたらこれだから。
結局お前が馬鹿だからこうなった。
そこまで抜けてると予想できなかったと言われただけでした。
セディは叱られるのを覚悟でクレメンタイン公爵夫妻にこれまでの経過を報告しましたが、そこには兄夫婦も来ていましたから、針のむしろ状態になりました。
「ふーん。つまりさすがの戦略家のロビンにさえ、お前の馬鹿さ加減は読めなかった訳だ。誇ってもいいぞセディ。あの天才戦略家が読み違える程お前が馬鹿だってことだからな」
「兄上、そー言われると私の立場がありません」
「へー。立場ねぇ。番の娘を身ひとつで追い出す男に立場なんてあると思えちゃうんだ。さすがだねえセディさまは」
もともと毒舌家の姉上はここぞとばかりに毒を吐きます。
「お願いします。クレメンタイン家の総力を挙げてロッテの捜索を手伝ってください」
セディが頭を下げると、クレメンタイン家当主が駄目だしをしました。
「順番が違うだろうセディ。お前は魔術師だ。とにかくまずは国外の探査の魔法陣をひたすら伸ばして探索するんだな。夜が明けてもなおロッテが見つからなければ、明け方もう一度ロビンのところに行きなさい。あの男にわからないことはないんだ。いまいましいがな」
「それではロッテがひと晩中、心細い思いをすることになってしまいます。知らないところでひとりぼっちで夜を過ごすなんて、どれだけ恐ろしい思いをするんだろう」
「それを知ることがあなたの罰ですよ。明日、ロビンがあなたに有益な助言ができなければその時はクレメンタイン家の総力を挙げてロッテを探してもらいます。ロビンの答えを貰うまではお父さまはうごきませんわよ」
セディの母はセディではなく夫である公爵の味方をしました。
これでセディひとりでロッテを探すことが決定しました。
「あぁ、そうだわセディ。またこんなことがあってもいけないから、ロッテ専用の離宮を用意しましょう。いつでもお前から逃げ出せるようにね」
「母上!」
セディは思わず叫び声をあげましたが、己のやらかしたことを考えれば何もいえませんでした。
そうしてセディは一晩中、転移を繰り返しました。
転移して、探査魔方陣を極限まで広げてロッテの気配に耳をすませます。
これは極限まで精神をすり減らす作業でしたが、どこかでロッテが震えていると思うと、休むことはできませんでした。
「朝か」
東のそらが、だんだんと明るくなって、朝日が地上を染めはじめました。
セディは真っすぐにロビンのところに転移しました。
ロビンは夕べと同じように居間で待っていました。
「どうだい。自分のしでかしたことの大きさが少しはわかったかな」
セディは神経を使う探査魔法を一晩中展開したせいで、げっそりとやつれています。
それでもセディは腰を降ろそうともせずにロビンにいいました。
「ロッテは見つからない。助けてくれ。稀代の戦略家なんだろ」
「それなら君が最初に見つけた場所にいるだろうね。彼女が唯一安心できる場所だからね」
それを聞くやいなやセディは王立図書館に飛びました。
マンションの扉には鍵がかかっていました。
「いる!」
そう確信してセディの胸は高鳴りました。
果たしてロッテは、すやすやとベッドで眠っていました。
この場所にあるもののほとんどを、兄上が研究のために引き上げましたから、狭かった筈の部屋もがらんとしています。
そんなうら寂しい部屋のポツンと残されたベッドにロッテは眠っていました。
青銀の髪
その髪こそがロッテがセディを受け入れてくれた証でした。
こうして丸まって眠る稚い婚約者をみて、セディは愛しさで胸がいっぱいになりました。
この国に留まってくれだんだ。
あんなにも酷いことを言ったのに。
セディはロッテが目をさましたら、誠心誠意謝るつもりでした。なのに……。
「ずいぶんと呑気に眠れるもんだなぁ」
なにを言っているんだオレ。
そんなことが言いたいんじゃないだろう。
「出て行け!って言われて出て行くなんて子供かお前は!」
あー誰かオレの口を封じて下さい。
お願いします。
「飛べる限り遠くに逃げるつもりだったけれどね」
なんだって!
絶対に逃がすものか。
お前はオレのものだ。
オレだけのものだからな。
知らないうちに、拘束の魔方陣を発動してしまいました。
本来は囚人なんかにかけるものです。
この魔方陣を解除しない限り、どこまで逃げても連れ戻すことができます。
町では、これを解除する魔方陣が闇で売られていますが、私のかけたこの魔方陣を解除できる魔法使いはいないでしょうねぇ。
「セディ、何をしたの!」
ロッテがおびえたみたいです。
安心させてあげないとね。
「迷子札だよ」
ただの迷子ふだですとも。
やんちゃな子猫ちゃんが迷子にならないようにね。
もう二度と逃げ出せないようにね。
いいかいロッテ。
本当のことなんて知らなくていいよ。
だってロッテはずっと私といるんでしょう。
だったらこれがあっても無問題だしねぇ。
それでもなんとかきちんと謝ることができました。
どうしてロッテのまえだと、優しいことが言えないのかなぁ。
こんなに愛しているのに。
セディはロッテを抱きしめてその唇をついばみました。
何度も、なんども。
愛してるって言葉の代わりに、深い口づけを。
そうして夢中になってロッテをついばんでいると、ガチャリと音がしてベッキーとジャンヌが入ってきました。
あいつら知ってて黙ってやがったんだ。
ロッテは真っ赤になって逃げ出したし、ジャンヌたちも真っ赤になっています。
せっかくのお楽しみタイムだったのに。
まぁいいでしょう。
これからは絶対にロッテを逃がしません。
ロッテにも私の愛をたっぷり教えてあげます、
時間をかけてね。
0
お気に入りに追加
524
あなたにおすすめの小説
都市伝説と呼ばれて
松虫大
ファンタジー
アルテミラ王国の辺境カモフの地方都市サザン。
この街では十年程前からある人物の噂が囁かれていた。
曰く『領主様に隠し子がいるらしい』
曰く『領主様が密かに匿い、人知れず塩坑の奥で育てている子供がいるそうだ』
曰く『かつて暗殺された子供が、夜な夜な復習するため街を徘徊しているらしい』
曰く『路地裏や屋根裏から覗く目が、言うことを聞かない子供をさらっていく』
曰く『領主様の隠し子が、フォレスの姫様を救ったそうだ』等々・・・・
眉唾な噂が大半であったが、娯楽の少ない土地柄だけにその噂は尾鰭を付けて広く広まっていた。
しかし、その子供の姿を実際に見た者は誰もおらず、その存在を信じる者はほとんどいなかった。
いつしかその少年はこの街の都市伝説のひとつとなっていた。
ある年、サザンの春の市に現れた金髪の少年は、街の暴れん坊ユーリに目を付けられる。
この二人の出会いをきっかけに都市伝説と呼ばれた少年が、本当の伝説へと駆け上っていく異世界戦記。
小説家になろう、カクヨムでも公開してましたが、この度アルファポリスでも公開することにしました。
半身転生
片山瑛二朗
ファンタジー
忘れたい過去、ありますか。やり直したい過去、ありますか。
元高校球児の大学一年生、千葉新(ちばあらた)は通り魔に刺され意識を失った。
気が付くと何もない真っ白な空間にいた新は隣にもう1人、自分自身がいることに理解が追い付かないまま神を自称する女に問われる。
「どちらが元の世界に残り、どちらが異世界に転生しますか」
実質的に帰還不可能となった剣と魔術の異世界で、青年は何を思い、何を成すのか。
消し去りたい過去と向き合い、その上で彼はもう一度立ち上がることが出来るのか。
異世界人アラタ・チバは生きる、ただがむしゃらに、精一杯。
少なくとも始めのうちは主人公は強くないです。
強くなれる素養はありますが強くなるかどうかは別問題、無双が見たい人は主人公が強くなることを信じてその過程をお楽しみください、保証はしかねますが。
異世界は日本と比較して厳しい環境です。
日常的に人が死ぬことはありませんがそれに近いことはままありますし日本に比べればどうしても命の危険は大きいです。
主人公死亡で主人公交代! なんてこともあり得るかもしれません。
つまり主人公だから最強! 主人公だから死なない! そう言ったことは保証できません。
最初の主人公は普通の青年です。
大した学もなければ異世界で役立つ知識があるわけではありません。
神を自称する女に異世界に飛ばされますがすべてを無に帰すチートをもらえるわけではないです。
もしかしたらチートを手にすることなく物語を終える、そんな結末もあるかもです。
ここまで何も確定的なことを言っていませんが最後に、この物語は必ず「完結」します。
長くなるかもしれませんし大して話数は多くならないかもしれません。
ただ必ず完結しますので安心してお読みください。
ブックマーク、評価、感想などいつでもお待ちしています。
この小説は同じ題名、作者名で「小説家になろう」、「カクヨム」様にも掲載しています。
婚約破棄された検品令嬢ですが、冷酷辺境伯の子を身籠りました。 でも本当はお優しい方で毎日幸せです
青空あかな
恋愛
旧題:「荷物検査など誰でもできる」と婚約破棄された検品令嬢ですが、極悪非道な辺境伯の子を身籠りました。でも本当はお優しい方で毎日心が癒されています
チェック男爵家長女のキュリティは、貴重な闇魔法の解呪師として王宮で荷物検査の仕事をしていた。
しかし、ある日突然婚約破棄されてしまう。
婚約者である伯爵家嫡男から、キュリティの義妹が好きになったと言われたのだ。
さらには、婚約者の権力によって検査係の仕事まで義妹に奪われる。
失意の中、キュリティは辺境へ向かうと、極悪非道と噂される辺境伯が魔法実験を行っていた。
目立たず通り過ぎようとしたが、魔法事故が起きて辺境伯の子を身ごもってしまう。
二人は形式上の夫婦となるが、辺境伯は存外優しい人でキュリティは温かい日々に心を癒されていく。
一方、義妹は仕事でミスばかり。
闇魔法を解呪することはおろか見破ることさえできない。
挙句の果てには、闇魔法に呪われた荷物を王宮内に入れてしまう――。
※おかげさまでHOTランキング1位になりました! ありがとうございます!
※ノベマ!様で短編版を掲載中でございます。
シスターヴレイヴ!~上司に捨て駒にされ会社をクビになり無職ニートになった俺が妹と異世界に飛ばされ妹が勇者になったけど何とか生きてます~
尾山塩之進
ファンタジー
鳴鐘 慧河(なるがね けいが)25歳は上司に捨て駒にされ会社をクビになってしまい世の中に絶望し無職ニートの引き籠りになっていたが、二人の妹、優羽花(ゆうか)と静里菜(せりな)に元気づけられて再起を誓った。
だがその瞬間、妹たち共々『魔力満ちる世界エゾン・レイギス』に異世界召喚されてしまう。
全ての人間を滅ぼそうとうごめく魔族の長、大魔王を倒す星剣の勇者として、セカイを護る精霊に召喚されたのは妹だった。
勇者である妹を討つべく襲い来る魔族たち。
そして慧河より先に異世界召喚されていた慧河の元上司はこの異世界の覇権を狙い暗躍していた。
エゾン・レイギスの人間も一枚岩ではなく、様々な思惑で持って動いている。
これは戦乱渦巻く異世界で、妹たちを護ると一念発起した、勇者ではない只の一人の兄の戦いの物語である。
…その果てに妹ハーレムが作られることになろうとは当人には知るよしも無かった。
妹とは血の繋がりであろうか?
妹とは魂の繋がりである。
兄とは何か?
妹を護る存在である。
かけがいの無い大切な妹たちとのセカイを護る為に戦え!鳴鐘 慧河!戦わなければ護れない!
3521回目の異世界転生 〜無双人生にも飽き飽きしてきたので目立たぬように生きていきます〜
I.G
ファンタジー
神様と名乗るおじいさんに転生させられること3521回。
レベル、ステータス、その他もろもろ
最強の力を身につけてきた服部隼人いう名の転生者がいた。
彼の役目は異世界の危機を救うこと。
異世界の危機を救っては、また別の異世界へと転生を繰り返す日々を送っていた。
彼はそんな人生で何よりも
人との別れの連続が辛かった。
だから彼は誰とも仲良くならないように、目立たない回復職で、ほそぼそと異世界を救おうと決意する。
しかし、彼は自分の強さを強すぎる
が故に、隠しきることができない。
そしてまた、この異世界でも、
服部隼人の強さが人々にばれていく
のだった。
惑う霧氷の彼方
雪原るい
ファンタジー
――その日、私は大切なものをふたつ失いました。
ある日、少女が目覚めると見知らぬ場所にいた。
山間の小さな集落…
…だが、そこは生者と死者の住まう狭間の世界だった。
――死者は霧と共に現れる…
小さな集落に伝わる伝承に隠された秘密とは?
そして、少女が失った大切なものとは一体…?
小さな集落に死者たちの霧が包み込み…
今、悲しみの鎮魂歌が流れる…
それは、悲しく淡い願いのこめられた…失われたものを知る物語――
***
自サイトにも載せています。更新頻度は不定期、ゆっくりのんびりペースです。
※R-15は一応…残酷な描写などがあるかもなので設定しています。
⚠作者独自の設定などがある場合もありますので、予めご了承ください。
本作は『闇空の柩シリーズ』2作目となります。
[完結]いらない子と思われていた令嬢は・・・・・・
青空一夏
恋愛
私は両親の目には映らない。それは妹が生まれてから、ずっとだ。弟が生まれてからは、もう私は存在しない。
婚約者は妹を選び、両親は当然のようにそれを喜ぶ。
「取られる方が悪いんじゃないの? 魅力がないほうが負け」
妹の言葉を肯定する家族達。
そうですか・・・・・・私は邪魔者ですよね、だから私はいなくなります。
※以前投稿していたものを引き下げ、大幅に改稿したものになります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる