幽霊祓い

弥生 啓

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第3章 廃病院編

第234話 幽体化

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早見緒莉が起こしたのは、幽体化ゆうたいかというものだった。今、早見の体内には、主霊を分解したことにより、人が1日で体内に生産できる霊気の倍以上の霊気が存在している。霊体化は、肉体を捨て、幽霊になるというものだが、幽体化は、一時的に幽霊並みの霊気を体内に生み出し、肉体強化や、術の威力向上を図るというもの。

「幽体化か・・・」

國田は驚きを隠せていなかった。私は佐神君の方へ行き、霊気で、武者の礎につけられた傷を少し治した。霊気による治癒は、回復術のように完治させることはできないが、ある程度の回復はできる。

「死なせないよ、佐神君!!」

佐神君を回復させ、私は再び、國田の前に立った。

「ふっ、女のお前に何ができる?幽体化したところで、2対1に変わりはない。お前は勝てない」

國田がそう言った時だった。背後から声が聞こえた。

「2対1?1対1と1対1だよッ!!雷術・奥義・雷轟雷恐宮主殿らいじゅつ  おうぎ  らいごうらいきょうぐうしゅでん

後ろに立っていたのは、先程まで寝込んでいた佐神君だった。回復させたとはいえ、動けるほどまでは回復出来ていないはず。

「佐神君ッ!?もう動いて大丈夫なのッ!?」

「大丈夫ッ!!早見さんッ、國田ソイツの相手は任せたッ」

そう言って、佐神君と武者の礎は消えた。

「チッ、腹立たしいやつだ。まぁ、いいだろう。記憶術・憶きおくじゅつ  おぼえ

辺りに煙が現れ、白煙で視界が奪われた。

治癒術・乱世治梓ちゆじゅつ  らんせいちしッ」

己の肉体の1部を閃光弾、煙幕弾、爆弾のどれか1つにランダムで変化させる。今回は、腕を使用した。

「そんな術を使って大丈夫か?」

「大丈夫よ、私は幽体化してるからねッ」
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