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~大学生編~
第26章 必死過ぎるだろ
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4月1日、入学式を済ませ、私たちは晴れてK大生となりました。
新入生向けガイダンス、健康診断、歓迎行事など次々とスケジュールをこなし、大学生になった実感も次第に強くなって行きます。
一年次はどの学部も同じキャンパスです。しかし新入生だけでも数千人を超えるため、学部の違う一佳や潤くん達はもちろん、同じ学部でも学科の違うこのみちゃんとすれ違うこともありませんでした。新しい友達はそれなりに出来たものの寂しさが募ります。
新しい環境に慣れるにはまだまだ時間が掛りそう……履修要覧の分厚い冊子を抱え、私は思わずため息を吐きました。
「七海ー!」
明るい声とともに、バンと背中を叩かれました。
「このみちゃん!」
「どうした背中丸めて!暗いぞ!」
「このみちゃんみたいに前向きじゃないもん……」
彼女はいつでも元気いっぱいで何でも楽しむ性格です。話を聞いてもらおうと、ガイダンスの後で待ち合わせしたのです。
「ね、一佳とその後どう?仲直りしたんだよね?」
「う、うん、仲直りって言うか、下僕に戻ったかな……」
「なにそれウケルー!」
ケタケタ笑うと、このみちゃんはいきなり電話を掛けました。
「うん、今から行くよ。え、もう待ってるの?おっけー!」
誰と話をしているんだろうと不思議に思っていると、このみちゃんは私の腕を取り二号館へ向かいました。すると、キャッキャとはしゃいぐ女の子たちと次々すれ違いました。
「さっきの二人、めっちゃカッコ良くない!?」
「どこの学部生かな?」
んん?めっちゃカッコ良い二人?私の頭にはキラリとその姿が思い浮かびました。やっぱりいました、一佳と潤くんが!しかも、彼らの様子を何人もの女の子が遠巻きにうっとりしながら眺めています。うわー!
「お待たせ!七海も連れてきたよ!」
このみちゃんが潤くんに駆け寄り私をグイっと差し出すと、周りの女の子たちの冷たい視線がビシビシと突き刺さりました。
「七海、髪染めた?可愛いよ。」
「ありがとう!」
入学式の前にお洒落な女子大生を目指そうと少し明るめの色に染めたのですよ。久しぶりに逢う潤くんは、すかさず誉めてくれました。
「……いつもと違うな。」
一佳の感想はそれだけ?一佳らしいけど……ムッとしてまた私を睨んでいます。いや、一佳に誉められるとかありえないけど……
「どうしたの、二人揃ってこんなところで?」
「履修届、出すだろ?」
「う、うん。」
「同じ選択科目があるなら、一緒に取ろうぜ。」
「え、そんな!」
「照れない照れない!」
「つか、潤は来なくていいのに。医学部とはカリキュラムが違うだろ。」
「いいじゃん、一般教養なら一つか二つ被るんじゃない?」
潤くんは私の腕を掴み、このみちゃんと私を挟んで先を歩き、一佳は後ろから付いて来ました。振り向いたらまたムッと不機嫌そうで……
カフェテリアに着くなり、一佳はテーブルにドカッと座りピラっとお財布からお札を出して私に「コーヒー」って命じました。
「残った金で、七海とこのみの好きなもの買っていいぞ。」
「……分かりました。」
「一佳、俺にもおごれよ。」
「潤は自分で金払え。」
「なるほど下僕だわー。」
クククと笑い転げるこのみちゃんと一緒にコーヒーを4つ買いに行きました。て言うか?持っていた履修要覧の冊子を広げ、一佳とこのみちゃんが真剣に私が受ける講座を選んでいます。いったいぜんたいどうしたの!
「ううっ、意外と同じ選択科目がないな。」
「一佳、こことここなら七海と被るよ。」
「よっしゃ、お前、この講座、絶対取れよ。」
「う、うん……」
なぜ、一佳に私の取る講座を決められなきゃならないんだろう……ふつふつと疑問が湧いて来ますが言い返さずにいました。
突然、カシャリカシャリとシャッター音がしました。潤くんが私たちの様子を撮影していたのです。
「潤くん、それまたSNSにアップするの?」
「そうだよ。七海とこのみもタグ付けしておくよ、一佳もな。」
「やめろ、俺は外せ。」
だけど潤くんは楽しそうにスマホを操っていました。
そうなのです。大学に入ってから私もやっとスマホデビューし、ついでに誘われて流行りのSNSに登録しました。お友達登録すると、友達の近況が分かって楽しいですよ。新しく知り合った大学の友達も趣味や生活が分かって「なるほど!」って身近に感じます。
「潤くんのタイムライン、楽しいよね。『いいね!』もコメントいっぱい付くし、まめに記事をアップするからみんな注目してるよ。」
潤くんのお友達数は数週間で200人にも達しました。高校だけじゃなく中学の頃の友達もいるそうですが、大学で知り合った友達も合わせての数です。さすが社交家!内容も身近でまめに更新するので潤くんの『今』が手に取るように分かるのです。
一佳も登録しているのですが……プロフィール画像は初期のまま。まだ一度も投稿されていません。だけど友達数は潤くんほどではないけれど徐々に増えています。それも女の子ばかり……実は気になっていたりして。
「一佳はSNSやらないの?」
「なんで自分の個人情報をみんなにバラさなきゃなんないの。」
「でも、友達登録は増えたよね?」
「あー?学部の女どもに申請されて、面倒くさいから適当にOKしているだけだよ。」
そうなんだ!私はホッとしてクスクス笑ってしまいました。
「つか、七海こそ、男ばっかり友達登録しているだろ。」
「え、え?そんなこと無いよ!」
「学年の違うヤツとか、どうして知り合ったの。」
「あーそれ、私と七海でサークルに入ったんだー!だからその関係者。」
「サークル?何の?」
「『緑の小径』って言うのよ。文化系でも体育会系でも無くて、イベントを企画して集まって遊ぶ、お気楽サークルなんだ。」
「……俺もそれに入る。あとで紹介して。」
「え、なんで?」
「今週の金曜日に新入生の顔合わせがあるよ。一佳も一緒に行こう!」
ノリノリのこのみちゃんは一佳に歓迎会の場所を教えていました。同じサークルに入るのはドキドキですが嬉しいです。
「俺も入る!」
潤くんまで参加表明ですか!
「お前は来るな。テニスサークルに入ったばっかりだろ!」
「あれはアレ。これはコレ。な、このみ!」
「楽しみだねー!」
なぜかこのみちゃんと潤くんは顔を合わせて笑っていました。
「やーん潤、ホントに居たー!タイムライン見たよ!」
キャピキャピした声がして、振り向いたらキレイな女の子たちが押し掛けて来ました。潤くんのSNSを覗いたら、私たちの写真と「二号館カフェテリアで高校の同級生とお茶してます!」って記事がアップされていたのですよ。
「潤の同級生、カッコイイねー!」
「……どうも。」
女の子たちは一佳を見てキャアキャアとはしゃぎましたが、無愛想な一佳に嫌気がさしたみたいですぐに話題を反らしました。そのあとも別な女の子たちが続々と現れて潤くんの周りに居座り、まるでハーレムみたいになりました。うわー!
その週の金曜日、サークルの集まりに参加しました。一年生から四年生、更にはOBまで参加しています。お遊びサークルなのに本格的!
挨拶をする前から、一佳と潤くんは注目の的でした。自己紹介が済んで、乾杯になりました。新入生はノンアルコールビールで、初体験です!
「ぷはー!」
慣れない苦味が口に広がって思わず雄叫びを上げてしまいました。
「山城さん、イイ飲みっぷりだね!将来楽しみだ。」
「す、すみません、オヤジ臭くて。」
「いいよー、追加頼もうか!」
先輩達はみんな気の好い人ばかりで、学部を越えていろんな話が弾みます。ふと見たら、横に居たはずの一佳が潤くんと一緒に女子の先輩達に囲まれてニコニコ笑っています。あの一佳が!女の子と楽しそうに話すなんて!
「妬いてる?」
「え、え!そんなことないよ!」
このみちゃんに突っ込まれ、すぐに否定しました。だけど、どんな話をしているんだろう……ちらちらと一佳を見ていたら目が合ってまた睨まれました。
新入生の顔合わせは和やかに済んで二次会にも行って、解散となりました。
「一佳、楽しそうだったね……先輩達、みんな美人だね……」
二次会から帰る途中、横を歩く一佳につい愚痴ってしまいました……
「あん?どんなサークルか知りたかったから、先輩に話を聞いていただけだよ。だけど悪くないな。次は5月に遠足だってよ。絶対行こうな。」
なんか、私より、楽しんでいるんだけど……
「おい。」
「なに?」
「ちょっと、寄って行こう。」
いきなり襟を掴まれ、途中にあったゲームセンターに連れ込まれました。
「プリクラ撮ろうぜ。」
「え、え?」
シートをくぐるとお金を入れて私を後ろから抱き締め顔をくっつけてプリクラを撮ったのです。ぎゃー!
「なんだよ二人っきりで!」
あとから潤くんとこのみちゃんがやってきて、結局四人でも撮りました。なんだったの、今の一佳の行動は!
いつものように一佳に家まで送ってもらい、そのあと酔ったみたいにフラフラしながらお風呂に入り、髪を乾かしていたらこのみちゃんからメッセージが来ました。
「一佳のSNS見て!だって……?」
なんだろうとスマホで接続したら……ぎゃー!さっき私と一佳の二人で撮ったプリクラをアップしていたのです。
しかも、『俺の一番大切な友達』ってコメントまで入れて更には私をタグ付けして!これじゃ、私が登録している友達みんなに知れ渡って、勘違いされてしまいます!
すでに千夏ちゃんや森田くん、執行部だった子たちや高校の後輩たちからコメントが入っていて、なぜか「一佳、おめでとう!」とか、「ついにか!」「先輩やりましたね!」とか書かれていたのですよ。
潤くんからもコメントが入っていて、「お前、必死過ぎるだろ。虫よけのつもり?」だって……は、そうか!学部の女の子たちに絡まれるのが嫌で、私をカモフラージュにしているのかな?
「一佳!なんであんな写真アップするのよ!」
私はすぐさま電話をしたら、「むー」って眠そうな声で一佳が答えました。
「いーじゃん、七海は『一番大切な友達』なんだから……」
「一番の友達は、潤くんと薫ちゃんでしょ?」
「だから、お前、覚悟しとけって言っただろ。」
眠いと言って一佳はお休みも言わずにブツリと電話を切りました。何これは新手の嫌がらせなの?やだー!来週からみんなの目が怖いよ!
諦めて、言い訳を考えながら私も布団に潜り込みました。
『一番大切な友達』、か……
一佳がどういうつもりかは分からないけれど、なんだかちょっと嬉しくなって、ニヤニヤしながら眠りに就いたのです。
次の週、大学の友達の好奇の目に晒されました。見ず知らずの女の子にもカフェテリアで指を差され噂話の種にされていたようです……ぐっすーん。
それより!潤くんがSNSでサークルの宣伝をしたために入部希望者が殺到し、とてつもない事態になったのです。恐るべしネットの威力、ですよ!
新入生向けガイダンス、健康診断、歓迎行事など次々とスケジュールをこなし、大学生になった実感も次第に強くなって行きます。
一年次はどの学部も同じキャンパスです。しかし新入生だけでも数千人を超えるため、学部の違う一佳や潤くん達はもちろん、同じ学部でも学科の違うこのみちゃんとすれ違うこともありませんでした。新しい友達はそれなりに出来たものの寂しさが募ります。
新しい環境に慣れるにはまだまだ時間が掛りそう……履修要覧の分厚い冊子を抱え、私は思わずため息を吐きました。
「七海ー!」
明るい声とともに、バンと背中を叩かれました。
「このみちゃん!」
「どうした背中丸めて!暗いぞ!」
「このみちゃんみたいに前向きじゃないもん……」
彼女はいつでも元気いっぱいで何でも楽しむ性格です。話を聞いてもらおうと、ガイダンスの後で待ち合わせしたのです。
「ね、一佳とその後どう?仲直りしたんだよね?」
「う、うん、仲直りって言うか、下僕に戻ったかな……」
「なにそれウケルー!」
ケタケタ笑うと、このみちゃんはいきなり電話を掛けました。
「うん、今から行くよ。え、もう待ってるの?おっけー!」
誰と話をしているんだろうと不思議に思っていると、このみちゃんは私の腕を取り二号館へ向かいました。すると、キャッキャとはしゃいぐ女の子たちと次々すれ違いました。
「さっきの二人、めっちゃカッコ良くない!?」
「どこの学部生かな?」
んん?めっちゃカッコ良い二人?私の頭にはキラリとその姿が思い浮かびました。やっぱりいました、一佳と潤くんが!しかも、彼らの様子を何人もの女の子が遠巻きにうっとりしながら眺めています。うわー!
「お待たせ!七海も連れてきたよ!」
このみちゃんが潤くんに駆け寄り私をグイっと差し出すと、周りの女の子たちの冷たい視線がビシビシと突き刺さりました。
「七海、髪染めた?可愛いよ。」
「ありがとう!」
入学式の前にお洒落な女子大生を目指そうと少し明るめの色に染めたのですよ。久しぶりに逢う潤くんは、すかさず誉めてくれました。
「……いつもと違うな。」
一佳の感想はそれだけ?一佳らしいけど……ムッとしてまた私を睨んでいます。いや、一佳に誉められるとかありえないけど……
「どうしたの、二人揃ってこんなところで?」
「履修届、出すだろ?」
「う、うん。」
「同じ選択科目があるなら、一緒に取ろうぜ。」
「え、そんな!」
「照れない照れない!」
「つか、潤は来なくていいのに。医学部とはカリキュラムが違うだろ。」
「いいじゃん、一般教養なら一つか二つ被るんじゃない?」
潤くんは私の腕を掴み、このみちゃんと私を挟んで先を歩き、一佳は後ろから付いて来ました。振り向いたらまたムッと不機嫌そうで……
カフェテリアに着くなり、一佳はテーブルにドカッと座りピラっとお財布からお札を出して私に「コーヒー」って命じました。
「残った金で、七海とこのみの好きなもの買っていいぞ。」
「……分かりました。」
「一佳、俺にもおごれよ。」
「潤は自分で金払え。」
「なるほど下僕だわー。」
クククと笑い転げるこのみちゃんと一緒にコーヒーを4つ買いに行きました。て言うか?持っていた履修要覧の冊子を広げ、一佳とこのみちゃんが真剣に私が受ける講座を選んでいます。いったいぜんたいどうしたの!
「ううっ、意外と同じ選択科目がないな。」
「一佳、こことここなら七海と被るよ。」
「よっしゃ、お前、この講座、絶対取れよ。」
「う、うん……」
なぜ、一佳に私の取る講座を決められなきゃならないんだろう……ふつふつと疑問が湧いて来ますが言い返さずにいました。
突然、カシャリカシャリとシャッター音がしました。潤くんが私たちの様子を撮影していたのです。
「潤くん、それまたSNSにアップするの?」
「そうだよ。七海とこのみもタグ付けしておくよ、一佳もな。」
「やめろ、俺は外せ。」
だけど潤くんは楽しそうにスマホを操っていました。
そうなのです。大学に入ってから私もやっとスマホデビューし、ついでに誘われて流行りのSNSに登録しました。お友達登録すると、友達の近況が分かって楽しいですよ。新しく知り合った大学の友達も趣味や生活が分かって「なるほど!」って身近に感じます。
「潤くんのタイムライン、楽しいよね。『いいね!』もコメントいっぱい付くし、まめに記事をアップするからみんな注目してるよ。」
潤くんのお友達数は数週間で200人にも達しました。高校だけじゃなく中学の頃の友達もいるそうですが、大学で知り合った友達も合わせての数です。さすが社交家!内容も身近でまめに更新するので潤くんの『今』が手に取るように分かるのです。
一佳も登録しているのですが……プロフィール画像は初期のまま。まだ一度も投稿されていません。だけど友達数は潤くんほどではないけれど徐々に増えています。それも女の子ばかり……実は気になっていたりして。
「一佳はSNSやらないの?」
「なんで自分の個人情報をみんなにバラさなきゃなんないの。」
「でも、友達登録は増えたよね?」
「あー?学部の女どもに申請されて、面倒くさいから適当にOKしているだけだよ。」
そうなんだ!私はホッとしてクスクス笑ってしまいました。
「つか、七海こそ、男ばっかり友達登録しているだろ。」
「え、え?そんなこと無いよ!」
「学年の違うヤツとか、どうして知り合ったの。」
「あーそれ、私と七海でサークルに入ったんだー!だからその関係者。」
「サークル?何の?」
「『緑の小径』って言うのよ。文化系でも体育会系でも無くて、イベントを企画して集まって遊ぶ、お気楽サークルなんだ。」
「……俺もそれに入る。あとで紹介して。」
「え、なんで?」
「今週の金曜日に新入生の顔合わせがあるよ。一佳も一緒に行こう!」
ノリノリのこのみちゃんは一佳に歓迎会の場所を教えていました。同じサークルに入るのはドキドキですが嬉しいです。
「俺も入る!」
潤くんまで参加表明ですか!
「お前は来るな。テニスサークルに入ったばっかりだろ!」
「あれはアレ。これはコレ。な、このみ!」
「楽しみだねー!」
なぜかこのみちゃんと潤くんは顔を合わせて笑っていました。
「やーん潤、ホントに居たー!タイムライン見たよ!」
キャピキャピした声がして、振り向いたらキレイな女の子たちが押し掛けて来ました。潤くんのSNSを覗いたら、私たちの写真と「二号館カフェテリアで高校の同級生とお茶してます!」って記事がアップされていたのですよ。
「潤の同級生、カッコイイねー!」
「……どうも。」
女の子たちは一佳を見てキャアキャアとはしゃぎましたが、無愛想な一佳に嫌気がさしたみたいですぐに話題を反らしました。そのあとも別な女の子たちが続々と現れて潤くんの周りに居座り、まるでハーレムみたいになりました。うわー!
その週の金曜日、サークルの集まりに参加しました。一年生から四年生、更にはOBまで参加しています。お遊びサークルなのに本格的!
挨拶をする前から、一佳と潤くんは注目の的でした。自己紹介が済んで、乾杯になりました。新入生はノンアルコールビールで、初体験です!
「ぷはー!」
慣れない苦味が口に広がって思わず雄叫びを上げてしまいました。
「山城さん、イイ飲みっぷりだね!将来楽しみだ。」
「す、すみません、オヤジ臭くて。」
「いいよー、追加頼もうか!」
先輩達はみんな気の好い人ばかりで、学部を越えていろんな話が弾みます。ふと見たら、横に居たはずの一佳が潤くんと一緒に女子の先輩達に囲まれてニコニコ笑っています。あの一佳が!女の子と楽しそうに話すなんて!
「妬いてる?」
「え、え!そんなことないよ!」
このみちゃんに突っ込まれ、すぐに否定しました。だけど、どんな話をしているんだろう……ちらちらと一佳を見ていたら目が合ってまた睨まれました。
新入生の顔合わせは和やかに済んで二次会にも行って、解散となりました。
「一佳、楽しそうだったね……先輩達、みんな美人だね……」
二次会から帰る途中、横を歩く一佳につい愚痴ってしまいました……
「あん?どんなサークルか知りたかったから、先輩に話を聞いていただけだよ。だけど悪くないな。次は5月に遠足だってよ。絶対行こうな。」
なんか、私より、楽しんでいるんだけど……
「おい。」
「なに?」
「ちょっと、寄って行こう。」
いきなり襟を掴まれ、途中にあったゲームセンターに連れ込まれました。
「プリクラ撮ろうぜ。」
「え、え?」
シートをくぐるとお金を入れて私を後ろから抱き締め顔をくっつけてプリクラを撮ったのです。ぎゃー!
「なんだよ二人っきりで!」
あとから潤くんとこのみちゃんがやってきて、結局四人でも撮りました。なんだったの、今の一佳の行動は!
いつものように一佳に家まで送ってもらい、そのあと酔ったみたいにフラフラしながらお風呂に入り、髪を乾かしていたらこのみちゃんからメッセージが来ました。
「一佳のSNS見て!だって……?」
なんだろうとスマホで接続したら……ぎゃー!さっき私と一佳の二人で撮ったプリクラをアップしていたのです。
しかも、『俺の一番大切な友達』ってコメントまで入れて更には私をタグ付けして!これじゃ、私が登録している友達みんなに知れ渡って、勘違いされてしまいます!
すでに千夏ちゃんや森田くん、執行部だった子たちや高校の後輩たちからコメントが入っていて、なぜか「一佳、おめでとう!」とか、「ついにか!」「先輩やりましたね!」とか書かれていたのですよ。
潤くんからもコメントが入っていて、「お前、必死過ぎるだろ。虫よけのつもり?」だって……は、そうか!学部の女の子たちに絡まれるのが嫌で、私をカモフラージュにしているのかな?
「一佳!なんであんな写真アップするのよ!」
私はすぐさま電話をしたら、「むー」って眠そうな声で一佳が答えました。
「いーじゃん、七海は『一番大切な友達』なんだから……」
「一番の友達は、潤くんと薫ちゃんでしょ?」
「だから、お前、覚悟しとけって言っただろ。」
眠いと言って一佳はお休みも言わずにブツリと電話を切りました。何これは新手の嫌がらせなの?やだー!来週からみんなの目が怖いよ!
諦めて、言い訳を考えながら私も布団に潜り込みました。
『一番大切な友達』、か……
一佳がどういうつもりかは分からないけれど、なんだかちょっと嬉しくなって、ニヤニヤしながら眠りに就いたのです。
次の週、大学の友達の好奇の目に晒されました。見ず知らずの女の子にもカフェテリアで指を差され噂話の種にされていたようです……ぐっすーん。
それより!潤くんがSNSでサークルの宣伝をしたために入部希望者が殺到し、とてつもない事態になったのです。恐るべしネットの威力、ですよ!
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