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~高校生編~

第7章 蹴散らせ!

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期末テストが終わって試験休みになり、文化祭に向けて、行事委員会の活動が本格的に始まりました。

会計の仕事は、まず必要な備品を洗い出し、足りない備品の買い出しリストを作ることらしいです。第二準備室に行こうと廊下を歩いていたら、サッカー部の三年生2人に呼び止められました。

「アンタ、行事委員会の会計だよな。」

「は、はい、そうですが…」

「今年の文化祭の予算、どうなってるんだよ。去年の三分の二じゃん!」

「あ、あの、それは…」

「去年だってギリギリで苦しかったんだぞ。つか、予算を増やして欲しいって要望出していたハズだぜ?」

その話は執行部に聞いています。だけど、学校側から提示された予算の数字を各部に割り振った結果な訳でして、私たち行事委員会がどうこう出来ることでは無いのです。

「黙ってないで、ちゃんと説明しろよ。」

「あ、あの、ですから、予算の増額は出来ないって、学校側が……」

「言い訳なんか聞いてねーよ!」

先輩達は怖い顔で私を追い詰めます。そんなことを言われても、困りますー!逃げようとするのにサッと道を塞がれました。相手は運動神経抜群、私はトロイ子、勝ち目はありません。

「その話なら、連絡会で坂本先生から各部に説明があっただろ?サッカー部だけじゃないハズだ。」

「一佳くん!」

サッカー部の先輩たちの後ろから、ムッとした顔で一佳くんが現れました。

「だいたい、サッカー部は毎年無駄な出費が多いから、経費を見直せって言われたはずだ。作った焼きそばの半分を身内がタダで食ってるって聞いたぞ。」

「うっ……!」

先輩たちは黙り込んでしまいました。

「いきなりコイツに言ったところで、予算が増える訳ねぇだろ?ちゃんと筋を通して、執行部に話つけろよ!」

一佳くんに凄まれたサッカー部の先輩たちは、あっさりと引き下がっていきました。

「い、一佳くん、あ、ありがとう……」

力が抜けて、その場に座り込みたい気分です。

「おい。」

「は、はい!」

「これからああいう理不尽なことをねじ込んでくる奴が増えるんだ。オドオドしてるとつけ込まれるからな!」

今度は私が怒られる番ですか!

「え、そんな……じゃあどうしたら……」

「んなもん、まともに相手してねーで蹴散らせよ。」

「そんな!一佳くんじゃないんだから、先輩たちに言い返せないよ!」

「だーかーらー!お前はなんでいつもそう弱気なの!」

「一佳くんと、違うもん!」

先輩達に睨まれて、一佳くんにも怒られて、踏んだり蹴ったりですよ!



その日は、潤くんが執行部の人たちとの話し合いに行って、薫ちゃんは美術部の人たちと校内の装飾をどうするか打ち合わせに行って、森田くんと飯島くんも兼任している部活の打ち合わせで、それぞれ不在でした。三年生は模試のためお休み、一年生はみんな美術部のお手伝いに駆り出されています。

と言うことは、一佳くんと二人きり……

「おい。」

「は、はい。」

「装飾用のペンキは足りてるのか?」

「それは、美術部の方が手配しています。」

「あいつらがチョー適当なの、知ってる?」

「知りませんよ、初耳です!」

「ちゃんと確認した方がいいぞ。」

ムッとして一佳くんはふらりと部屋を出て行きました。そしてしばらくして資料と、アイスクリームを2個持って戻って来ました。

「ほらよ。」

ひんやりしたカップのバニラアイスを私に投げて寄越しました。その日は猛暑日で、暑かったから嬉しい差し入れです。一佳くんもガリガリくんをかじっていました。

「一佳くん、アイスが好きなんですね。」

「暑いからな。」

会話にならない気がしましたが、早速カップを開けていただきました。あれ、なんで私がバニラアイスが好きだって知ってるのかな?

「これ、美術部が仕入れた備品のリストだ。」

ピラっと持っていた用紙を私に見せてくれました。

「あれ、これ、全然足りてませんよ?」

「だから言ったじゃん!」

また怒鳴られてしまいました。

「足りない分は早めに注文しておかないと、ギリギリになって大騒ぎだからな。」

「うん、すぐに業者さんに電話する……ありがとう、一佳くん。」

「お礼はガリガリくんの梨にして、俺に差し入れしな。」

「分かったわ!」

思わず笑ってしまいました。購買部に売ってたらすかさずゲットしよう!

「行事委員の会計さん、頼んで欲しいものがあるんだけど?」

男子バレー部の先輩達がやって来ました。

「なんですか?」

「カレー皿が足りなそうなんだ。そっちの予算から追加で買ってくれない?」

「わ、分かりました!」

私は急いでリストを見て、業者に電話をしようとしました。だけど、一佳くんが私の手を押さえて携帯電話を取りあげたのです。

「ちょっと待て、各部の備品は各部の予算内で買うはずだ。経費を見直して、アンタらが買いに行けよ。」

「おい藤原、お前生意気な口を聞くとシメるぞ、ゴルァ!」

「なんだと。出るとこ出て話を付けてもいいんだぜ。」

「うっ……!」

先輩達は一佳くんに脅されて黙り込みすごすごと帰って行きました。

「今のは、委員会で注文しなくていいの?」

「ったり前だろ!つか、他人の言い成りになるなって言っただろ!」

「は、はい……」

また怒られてしまいました。だけど、一佳くん、今日はなんでここにいるんだろう?

「潤くんと一緒に執行部で打ち合わせするハズじゃなかった?」

「あ?お前を独りにしておいたら、また良いようにこき使われるだろ?」

「そんなことは……無い……と思います。」

「さっきからずっと先輩達の言い成りなのに?」

ふえーん、確かに一佳くんの言う通りです。

「なあ、暑いからジュース買ってきて。」

「う、うん。」

「ジュース飲んだら、備品の在庫を確認しに行くぞ。足りないものはまとめて買い出しに行くからな。」

「あ、もしかして、私の仕事を手伝ってくれる気だったんだ……」

「飯島がいないから、アンタ独りでやらなきゃならねーだろ?大変なんだよ、あの作業。」

「そうなんだ、ありがとう……」

「つか、喉乾いたから、早くジュースを買ってきて。」

「すぐに行って来る!」

私は気を良くして部屋を飛び出しました。早速、購買で麦茶を買ったけど、「コーラにして。」とダメだしされ買い直しに行かされました。

もしかして、一佳くんの方が私を言い成りにしていませんか?

ふと疑問に思ったけど、お手伝いをしてくれるんだから、まあいいか!ぶっきらぼうだけど、意外と気にしてくれている一佳くんにときめいてしまいました。

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