168 / 181
第5章 闇の遺跡編
168話 指輪に宿し者たち
しおりを挟む
ブラックは気付くと、高い場所から舞やジルコンを見下ろしていた。
はじめ何が起こったかわからなかったが、この状況を理解するまでにそれほど時間はかからなかった。
私の実体が消滅し、核だけの状態になった事に他ならなかった。
舞の叫び声が、核である私の魂にも響いて来て、心がとても痛かったのだ。
舞が無事だったのは本当に良かったのだが、もう舞に触れる事が出来なくなった事が心残りであるのだ。
どうしてこんな事になってしまったのだろう・・・
私はそのまま呆然と眺めていると、急に辺りが白い空間に変わったのだ。
その空間は森の精霊の作る空間と似ているような気がした。
すると、核だけの存在であった自分に変化が起きたのだ。
私は自分の手のひらを確認できると、顔や身体を触り今までと同じ実体を維持する事が出来ていることに気付いた。
その時である。
「やあ、ブラック。
やっと会えたね。」
振り向くと、ニヤリとしながら椅子に座って足を組んでいる者がいたのだ。
見た目は私と変わらない男性を思わせる姿であったが、その気配から全く違う存在である事はすぐにわかったのだ。
そこは何も無い白い空間で、椅子と声をかけて来た者だけがいる、とても不思議に感じる場所であった。
「・・・あなたは一体何者ですか?」
私が警戒して話すと、その者は足を組み直し話し出したのだ。
「ずっと近くにいたのに分からないなんて、悲しいね。」
そう言って椅子から立ち上がり、私の前に歩いて来たのだ。
その時、自分の右手にある指輪が光ったのだ。
もしかして・・・
「そうだよ、その指輪が僕だと思っていいよ。
最近はずっと一緒だっただろう。
それに以前、僕に願ったよね。
ちゃんとした契約は無いけど、あんな風に願われちゃったらどうにかしてあげたくなったんだよねー。
だから、僕の気まぐれで今ここに呼んだんだよ。」
その者は私に近づき、耳元で囁くように話したのだ。
「では、また舞のそばに戻る事ができるのですか?」
確かに私はあの時願ったのだ。
そうであれば・・・
「まあまあ、焦らないで。
今ね、あの人間の舞という可愛らしい子がね、頑張っているよ。
森の主の力を使って、過去を変えようとしている。
でも簡単には行かないようだよ。
ちょっと様子を見てみようよ。
・・・実はあの子の持っている指輪は僕の分身とも言える者が宿っているんだ。
その者が彼女を助けてくれるなら、上手く行くかもしれないね。
ただね、僕と違って偏屈だから、簡単には手助けしないかもなー。
彼女の頑張り次第だね。
彼女がどれだけブラックに会いたいかにかかっているかな。
あとね・・・あいつは命を大事にしない奴は大嫌いなんだよね。
あ、僕は命をかけたブラックを素晴らしいと思っているよ。
でも、あいつは僕と正反対なんだよ。
彼女が奴に気に入られるといいんだけどねー」
私の指輪に宿し者は、嬉しそうに話したのだ。
しかし、正直私はわからなかった。
舞がどれだけ私を思ってくれているか、聞いた事もなかったからだ。
だから、舞の頑張り次第と言われても、自信なんて全く無かったのだ。
それに、舞の指輪に宿っている者の話を聞いて、とても厄介に感じたのだ。
舞の事だから馬鹿な真似はしないと思うが、不安でならなかった。
下を見下ろすと、白い空間の中ではあるが舞達の状況を見る事が出来た。
そこで精霊が舞に話していた様に、私の核は破壊されていないわけで、いずれは復活するのだ。
舞が大変な目にあう必要は無いのかもしれない。
舞には自分の住む世界があり、ここの出来事や私に振り回される事は無いのだ。
「ブラック、舞を見て。
うまく行かなくて、過去を繰り返そうとしているよ。
しかし戻っては、ブラックを助けられないで消滅する姿を何回も見る気持ちはどんな感じだろうね。
僕なら耐えられないな・・・
自分さえいなければ、ブラックは助かると思っちゃいそうだよね。
でもそうしたら未来は変わり、ブラックは生きる事は出来るけど、二人がもう会う事は出来ないね。
そんな選択をしたら、僕の分身も助けてくれないだろうしね。
さあ、舞はどうするだろうね。
まあ、僕たちは見てるしかないんだけどね。」
面白そうに話している事に、私は苛立ちを感じたのだ。
「あなたが今の舞を助ける事は出来ないのですか?」
「ああ、それは無理だね。
それはもう一人の分身の役目だよ。
もし過去を変えられなくても、あいつが認めた時は僕達は手を貸すつもりだよ。
契約はなくても、お互いが会いたいと思うのであれば、願いを叶えて引き寄せてあげるよ。」
指輪を持つ者を引き寄せる約束の指輪と言われていたのだが、言い伝えとはだいぶ違っていたようだ。
どうもこの指輪に宿し者達の意思が関係しているのであれば、彼らを味方にしなければいけないという事なのだろう。
今の私には見守ることしか出来なかったのだ。
はじめ何が起こったかわからなかったが、この状況を理解するまでにそれほど時間はかからなかった。
私の実体が消滅し、核だけの状態になった事に他ならなかった。
舞の叫び声が、核である私の魂にも響いて来て、心がとても痛かったのだ。
舞が無事だったのは本当に良かったのだが、もう舞に触れる事が出来なくなった事が心残りであるのだ。
どうしてこんな事になってしまったのだろう・・・
私はそのまま呆然と眺めていると、急に辺りが白い空間に変わったのだ。
その空間は森の精霊の作る空間と似ているような気がした。
すると、核だけの存在であった自分に変化が起きたのだ。
私は自分の手のひらを確認できると、顔や身体を触り今までと同じ実体を維持する事が出来ていることに気付いた。
その時である。
「やあ、ブラック。
やっと会えたね。」
振り向くと、ニヤリとしながら椅子に座って足を組んでいる者がいたのだ。
見た目は私と変わらない男性を思わせる姿であったが、その気配から全く違う存在である事はすぐにわかったのだ。
そこは何も無い白い空間で、椅子と声をかけて来た者だけがいる、とても不思議に感じる場所であった。
「・・・あなたは一体何者ですか?」
私が警戒して話すと、その者は足を組み直し話し出したのだ。
「ずっと近くにいたのに分からないなんて、悲しいね。」
そう言って椅子から立ち上がり、私の前に歩いて来たのだ。
その時、自分の右手にある指輪が光ったのだ。
もしかして・・・
「そうだよ、その指輪が僕だと思っていいよ。
最近はずっと一緒だっただろう。
それに以前、僕に願ったよね。
ちゃんとした契約は無いけど、あんな風に願われちゃったらどうにかしてあげたくなったんだよねー。
だから、僕の気まぐれで今ここに呼んだんだよ。」
その者は私に近づき、耳元で囁くように話したのだ。
「では、また舞のそばに戻る事ができるのですか?」
確かに私はあの時願ったのだ。
そうであれば・・・
「まあまあ、焦らないで。
今ね、あの人間の舞という可愛らしい子がね、頑張っているよ。
森の主の力を使って、過去を変えようとしている。
でも簡単には行かないようだよ。
ちょっと様子を見てみようよ。
・・・実はあの子の持っている指輪は僕の分身とも言える者が宿っているんだ。
その者が彼女を助けてくれるなら、上手く行くかもしれないね。
ただね、僕と違って偏屈だから、簡単には手助けしないかもなー。
彼女の頑張り次第だね。
彼女がどれだけブラックに会いたいかにかかっているかな。
あとね・・・あいつは命を大事にしない奴は大嫌いなんだよね。
あ、僕は命をかけたブラックを素晴らしいと思っているよ。
でも、あいつは僕と正反対なんだよ。
彼女が奴に気に入られるといいんだけどねー」
私の指輪に宿し者は、嬉しそうに話したのだ。
しかし、正直私はわからなかった。
舞がどれだけ私を思ってくれているか、聞いた事もなかったからだ。
だから、舞の頑張り次第と言われても、自信なんて全く無かったのだ。
それに、舞の指輪に宿っている者の話を聞いて、とても厄介に感じたのだ。
舞の事だから馬鹿な真似はしないと思うが、不安でならなかった。
下を見下ろすと、白い空間の中ではあるが舞達の状況を見る事が出来た。
そこで精霊が舞に話していた様に、私の核は破壊されていないわけで、いずれは復活するのだ。
舞が大変な目にあう必要は無いのかもしれない。
舞には自分の住む世界があり、ここの出来事や私に振り回される事は無いのだ。
「ブラック、舞を見て。
うまく行かなくて、過去を繰り返そうとしているよ。
しかし戻っては、ブラックを助けられないで消滅する姿を何回も見る気持ちはどんな感じだろうね。
僕なら耐えられないな・・・
自分さえいなければ、ブラックは助かると思っちゃいそうだよね。
でもそうしたら未来は変わり、ブラックは生きる事は出来るけど、二人がもう会う事は出来ないね。
そんな選択をしたら、僕の分身も助けてくれないだろうしね。
さあ、舞はどうするだろうね。
まあ、僕たちは見てるしかないんだけどね。」
面白そうに話している事に、私は苛立ちを感じたのだ。
「あなたが今の舞を助ける事は出来ないのですか?」
「ああ、それは無理だね。
それはもう一人の分身の役目だよ。
もし過去を変えられなくても、あいつが認めた時は僕達は手を貸すつもりだよ。
契約はなくても、お互いが会いたいと思うのであれば、願いを叶えて引き寄せてあげるよ。」
指輪を持つ者を引き寄せる約束の指輪と言われていたのだが、言い伝えとはだいぶ違っていたようだ。
どうもこの指輪に宿し者達の意思が関係しているのであれば、彼らを味方にしなければいけないという事なのだろう。
今の私には見守ることしか出来なかったのだ。
0
お気に入りに追加
43
あなたにおすすめの小説
公爵家次男はちょっと変わりモノ? ~ここは乙女ゲームの世界だから、デブなら婚約破棄されると思っていました~
松原 透
ファンタジー
異世界に転生した俺は、婚約破棄をされるため誰も成し得なかったデブに進化する。
なぜそんな事になったのか……目が覚めると、ローバン公爵家次男のアレスという少年の姿に変わっていた。
生まれ変わったことで、異世界を満喫していた俺は冒険者に憧れる。訓練中に、魔獣に襲われていたミーアを助けることになったが……。
しかし俺は、失敗をしてしまう。責任を取らされる形で、ミーアを婚約者として迎え入れることになった。その婚約者に奇妙な違和感を感じていた。
二人である場所へと行ったことで、この異世界が乙女ゲームだったことを理解した。
婚約破棄されるためのデブとなり、陰ながらミーアを守るため奮闘する日々が始まる……はずだった。
カクヨム様 小説家になろう様でも掲載してます。
主人公は高みの見物していたい
ポリ 外丸
ファンタジー
高等魔術学園に入学した主人公の新田伸。彼は大人しく高校生活を送りたいのに、友人たちが問題を持ち込んでくる。嫌々ながら巻き込まれつつ、彼は徹底的に目立たないようにやり過ごそうとする。例え相手が高校最強と呼ばれる人間だろうと、やり過ごす自信が彼にはあった。何故なら、彼こそが世界最強の魔術使いなのだから……。最強の魔術使いの高校生が、平穏な学園生活のために実力を隠しながら、迫り来る問題を解決していく物語。
※主人公はできる限り本気を出さず、ずっと実力を誤魔化し続けます
※小説家になろう、ノベルアップ+、ノベルバ、カクヨムにも投稿しています。
あらやだ! コレあれやろアレ! なんやったっけ? そうや転生やろ! ~大阪のおばちゃん、平和な世の中目指して飴ちゃん無双やで!~
橋本洋一
ファンタジー
ちりちりパーマで虎柄の服をこよなく愛する大阪のおばちゃん代表、鈴木小百合はある日、目の前でトラックに跳ねられそうになった小学生を助けようとして、代わりに死亡してしまう。
しかしこの善行がとある転生神の目に止まり、剣と魔法の世界に転生させられる。そのとき彼女に与えられたチート能力は「好きなだけポケットの中から飴を出せる」だった。
前世からおせっかいで世話好きな性格の彼女は転生世界で自覚なしに、人々を助けまくる。その人々の中には、英雄と呼ばれる騎士が生まれたりして――
『あらやだ! 転生しちゃったわ! ~おばちゃん無双~』よろしくおねがいします
【完結】王女様の暇つぶしに私を巻き込まないでください
むとうみつき
ファンタジー
暇を持て余した王女殿下が、自らの婚約者候補達にゲームの提案。
「勉強しか興味のない、あのガリ勉女を恋に落としなさい!」
それって私のことだよね?!
そんな王女様の話しをうっかり聞いてしまっていた、ガリ勉女シェリル。
でもシェリルには必死で勉強する理由があって…。
長編です。
よろしくお願いします。
カクヨムにも投稿しています。
転生先ではゆっくりと生きたい
ひつじ
ファンタジー
勉強を頑張っても、仕事を頑張っても誰からも愛されなかったし必要とされなかった藤田明彦。
事故で死んだ明彦が出会ったのは……
転生先では愛されたいし必要とされたい。明彦改めソラはこの広い空を見ながらゆっくりと生きることを決めた
小説家になろうでも連載中です。
なろうの方が話数が多いです。
https://ncode.syosetu.com/n8964gh/
宮廷画家令嬢は契約結婚より肖像画にご執心です!~次期伯爵公の溺愛戦略~
白妙スイ@書籍&電子書籍発刊!
ファンタジー
男爵令嬢、アマリア・エヴァーレは絵を描くのが趣味の16歳。
あるとき次期伯爵公、フレイディ・レノスブルの飼い犬、レオンに大事なアトリエを荒らされてしまった。
平謝りしたフレイディにより、お詫びにレノスブル家に招かれたアマリアはそこで、フレイディが肖像画を求めていると知る。
フレイディはアマリアに肖像画を描いてくれないかと打診してきて、アマリアはそれを請けることに。
だが絵を描く利便性から、肖像画のために契約結婚をしようとフレイディが提案してきて……。
●アマリア・エヴァーレ
男爵令嬢、16歳
絵画が趣味の、少々ドライな性格
●フレイディ・レノスブル
次期伯爵公、25歳
穏やかで丁寧な性格……だが、時々大胆な思考を垣間見せることがある
年頃なのに、なぜか浮いた噂もないようで……?
●レオン
フレイディの飼い犬
白い毛並みの大型犬
*****
ファンタジー小説大賞にエントリー中です
完結しました!
『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる
農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」
そんな言葉から始まった異世界召喚。
呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!?
そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう!
このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。
勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定
私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。
ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。
他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。
なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。
神様、ちょっとチートがすぎませんか?
ななくさ ゆう
ファンタジー
【大きすぎるチートは呪いと紙一重だよっ!】
未熟な神さまの手違いで『常人の“200倍”』の力と魔力を持って産まれてしまった少年パド。
本当は『常人の“2倍”』くらいの力と魔力をもらって転生したはずなのにっ!!
おかげで、産まれたその日に家を壊しかけるわ、謎の『闇』が襲いかかってくるわ、教会に命を狙われるわ、王女様に勇者候補としてスカウトされるわ、もう大変!!
僕は『家族と楽しく平和に暮らせる普通の幸せ』を望んだだけなのに、どうしてこうなるの!?
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
――前世で大人になれなかった少年は、新たな世界で幸せを求める。
しかし、『幸せになりたい』という夢をかなえるの難しさを、彼はまだ知らない。
自分自身の幸せを追い求める少年は、やがて世界に幸せをもたらす『勇者』となる――
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
本文中&表紙のイラストはへるにゃー様よりご提供戴いたものです(掲載許可済)。
へるにゃー様のHP:http://syakewokuwaeta.bake-neko.net/
---------------
※カクヨムとなろうにも投稿しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる