138 / 181
第4章 火山のドラゴン編
138話 それぞれの思い
しおりを挟む
ブラックは魔人の国へ繋がる洞窟を歩きながら、ため息をついていた。
舞をカクの家に送った後、今回の事を色々考えていたのだ。
そして昨夜の舞を見て、ますます手放したく無いと思ったのだ。
ジルコンに選んでもらったと言う少し妖艶な雰囲気のドレスが、長い黒髪と白い肌にとても似合っていたのだ。
赤らめた頬に触れた時、大きな黒い瞳で私を見る舞に今まで以上に心を奪われたのだ。
出来るならば、このまま城にずっといてほしいと思ったのだが、それは無理な話なのはわかっていた。
だから、舞を困らせる事は言えなかった。
私と舞では住む世界が違うのはわかっている。
魔人と人間なのだ。
すでに長らく生きているが、私の命は後どのくらい続くのだろうか。
もうこのまま舞と同じ時間を刻み終わりのある人生があるのなら、それでも構わないとも思った。
考えても仕方が無いのだが、考えずにはいられなかった。
どうすれば、舞と一緒に過ごすことができるのか・・・。
○
○
○
魔人の森では精霊があの封印の石を眺めながら考えていた。
石の中ではドラゴンが丸まっていて、今のところ目覚める様子はなかった。
精霊はドラゴンが目覚めた後の事を考えた。
岩山の精霊に頼んで石から出してもらったとしても、完全体では無いためドラゴンはエネルギー体なのだ。
だとしても、目覚めたのがわかったのなら、封印をといてあげたいのだ。
しかし実体が無いのも問題であり、依り代が必要となるだろう。
だが、意志のある者を依り代にするわけにはいかない。
そうだとするなら・・・
そう思っていた時に森の入り口にブラックの気配を感じたのだ。
森の中心の広場に向かっているようなので、私がいる場所までいつものように木のトンネルを作ったのだ。
「どうしました?
ドラゴンが気になって来たのですか?」
トンネルを抜けて現れたブラックにそう声をかけると、何やら浮かない顔であった。
「ああ、それもあるのですが、他にも話したい事が・・・」
私はブラックに以前と同じようにテーブルと椅子を作り出し、座るように促したのだ。
そして、封印の石をブラックに見せたのだ。
「まだ、眠っているようですね。」
ブラックは興味深そうに、石の中のドラゴンを見ていたが、すぐにため息をついてその石を渡し、思いもしないことを話し始めたのだ。
「私の命はいつまで続くのだろう。
もう、十分生きたはずなのに、まだ終わりが来そうに無いのですよ。」
「魔人ですからね。
それもあなたのエネルギー量を考えると数百年は衰える事は無いかと。
以前、ハナとこの森に来た頃と比べても、ほとんど変わらないと思いますよ。
何か・・・問題でも?」
そんな質問をしてくるとは、多分舞の事を考えてなのだろう。
「人間にでもなりたいのですか?」
そう言うと、ブラックは見透かされたような表情をして笑ったのだ。
「そこまでは考えていないですよ。
・・・でも、精霊はお見通しですね。
私はあなたと舞の関係をとても羨ましく思ってますよ。
舞に頼られているあなたをね。」
ブラックは舞の気持ちを全くわかっていないようだ。
私のような存在はあの岩山の精霊が言ったように、誰かに肩入れする事はタブーなのである。
だが、ハナや舞には助けられた恩から私は自分の思うままにしてきただけなのだ。
そして舞の近くにいればわかるのだ。
ブラックを思う気持ちが特別な事を。
「私は出来る事をしているだけですよ。
ブラックの方が何倍も頼りにされていると思いますよ。」
私の方こそ、舞に思われているブラックが羨ましく感じるのだ。
精霊という立場では、執着という気持ちが問題であるのはわかっている。
しかしブラックでは無いが、私も舞がずっと近くにいてくれればと思うのだ。
その後ブラックは少しだけ話をすると、最後に一言私に告げて城に戻ったのだ。
「しかし・・・ハナの時は諦めましたが、今回は諦めるつもりは無いですよ。」
その言葉はブラック自身に言い聞かせたのかもしれないが、私に向けた宣戦布告にも聞こえたのだ。
だから私は舞のブラックに対する思いを知っていたが、話すのをやめたのだ。
舞をカクの家に送った後、今回の事を色々考えていたのだ。
そして昨夜の舞を見て、ますます手放したく無いと思ったのだ。
ジルコンに選んでもらったと言う少し妖艶な雰囲気のドレスが、長い黒髪と白い肌にとても似合っていたのだ。
赤らめた頬に触れた時、大きな黒い瞳で私を見る舞に今まで以上に心を奪われたのだ。
出来るならば、このまま城にずっといてほしいと思ったのだが、それは無理な話なのはわかっていた。
だから、舞を困らせる事は言えなかった。
私と舞では住む世界が違うのはわかっている。
魔人と人間なのだ。
すでに長らく生きているが、私の命は後どのくらい続くのだろうか。
もうこのまま舞と同じ時間を刻み終わりのある人生があるのなら、それでも構わないとも思った。
考えても仕方が無いのだが、考えずにはいられなかった。
どうすれば、舞と一緒に過ごすことができるのか・・・。
○
○
○
魔人の森では精霊があの封印の石を眺めながら考えていた。
石の中ではドラゴンが丸まっていて、今のところ目覚める様子はなかった。
精霊はドラゴンが目覚めた後の事を考えた。
岩山の精霊に頼んで石から出してもらったとしても、完全体では無いためドラゴンはエネルギー体なのだ。
だとしても、目覚めたのがわかったのなら、封印をといてあげたいのだ。
しかし実体が無いのも問題であり、依り代が必要となるだろう。
だが、意志のある者を依り代にするわけにはいかない。
そうだとするなら・・・
そう思っていた時に森の入り口にブラックの気配を感じたのだ。
森の中心の広場に向かっているようなので、私がいる場所までいつものように木のトンネルを作ったのだ。
「どうしました?
ドラゴンが気になって来たのですか?」
トンネルを抜けて現れたブラックにそう声をかけると、何やら浮かない顔であった。
「ああ、それもあるのですが、他にも話したい事が・・・」
私はブラックに以前と同じようにテーブルと椅子を作り出し、座るように促したのだ。
そして、封印の石をブラックに見せたのだ。
「まだ、眠っているようですね。」
ブラックは興味深そうに、石の中のドラゴンを見ていたが、すぐにため息をついてその石を渡し、思いもしないことを話し始めたのだ。
「私の命はいつまで続くのだろう。
もう、十分生きたはずなのに、まだ終わりが来そうに無いのですよ。」
「魔人ですからね。
それもあなたのエネルギー量を考えると数百年は衰える事は無いかと。
以前、ハナとこの森に来た頃と比べても、ほとんど変わらないと思いますよ。
何か・・・問題でも?」
そんな質問をしてくるとは、多分舞の事を考えてなのだろう。
「人間にでもなりたいのですか?」
そう言うと、ブラックは見透かされたような表情をして笑ったのだ。
「そこまでは考えていないですよ。
・・・でも、精霊はお見通しですね。
私はあなたと舞の関係をとても羨ましく思ってますよ。
舞に頼られているあなたをね。」
ブラックは舞の気持ちを全くわかっていないようだ。
私のような存在はあの岩山の精霊が言ったように、誰かに肩入れする事はタブーなのである。
だが、ハナや舞には助けられた恩から私は自分の思うままにしてきただけなのだ。
そして舞の近くにいればわかるのだ。
ブラックを思う気持ちが特別な事を。
「私は出来る事をしているだけですよ。
ブラックの方が何倍も頼りにされていると思いますよ。」
私の方こそ、舞に思われているブラックが羨ましく感じるのだ。
精霊という立場では、執着という気持ちが問題であるのはわかっている。
しかしブラックでは無いが、私も舞がずっと近くにいてくれればと思うのだ。
その後ブラックは少しだけ話をすると、最後に一言私に告げて城に戻ったのだ。
「しかし・・・ハナの時は諦めましたが、今回は諦めるつもりは無いですよ。」
その言葉はブラック自身に言い聞かせたのかもしれないが、私に向けた宣戦布告にも聞こえたのだ。
だから私は舞のブラックに対する思いを知っていたが、話すのをやめたのだ。
0
お気に入りに追加
49
あなたにおすすめの小説
オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!
みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した!
転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!!
前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。
とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。
森で調合師して暮らすこと!
ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが…
無理そうです……
更に隣で笑う幼なじみが気になります…
完結済みです。
なろう様にも掲載しています。
副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。
エピローグで完結です。
番外編になります。
※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。
私の薬華異堂薬局は異世界につくるのだ
柚木 潤
ファンタジー
薬剤師の舞は、亡くなった祖父から託された鍵で秘密の扉を開けると、不思議な薬が書いてある古びた書物を見つけた。
そしてその扉の中に届いた異世界からの手紙に導かれその世界に転移すると、そこは人間だけでなく魔人、精霊、翼人などが存在する世界であった。
舞はその世界の魔人の王に見合う女性になる為に、異世界で勉強する事を決断する。
舞は薬師大学校に聴講生として入るのだが、のんびりと学生をしている状況にはならなかった。
以前も現れた黒い影の集合体や、舞を監視する存在が見え隠れし始めたのだ・・・
「薬華異堂薬局のお仕事は異世界にもあったのだ」の続編になります。
主人公「舞」は異世界に拠点を移し、薬師大学校での学生生活が始まります。
前作で起きた話の説明も間に挟みながら書いていく予定なので、前作を読んでいなくてもわかるようにしていこうと思います。
また、意外なその異世界の秘密や、新たな敵というべき存在も現れる予定なので、前作と合わせて読んでいただけると嬉しいです。
以前の登場人物についてもプロローグのに軽く記載しましたので、よかったら参考にしてください。
異世界転生した時に心を失くした私は貧民生まれです
ぐるぐる
ファンタジー
前世日本人の私は剣と魔法の世界に転生した。
転生した時に感情を欠落したのか、生まれた時から心が全く動かない。
前世の記憶を頼りに善悪等を判断。
貧民街の狭くて汚くて臭い家……家とはいえないほったて小屋に、生まれた時から住んでいる。
2人の兄と、私と、弟と母。
母親はいつも心ここにあらず、父親は所在不明。
ある日母親が死んで父親のへそくりを発見したことで、兄弟4人引っ越しを決意する。
前世の記憶と知識、魔法を駆使して少しずつでも確実にお金を貯めていく。
婚約破棄され逃げ出した転生令嬢は、最強の安住の地を夢見る
拓海のり
ファンタジー
階段から落ちて死んだ私は、神様に【救急箱】を貰って異世界に転生したけれど、前世の記憶を思い出したのが婚約破棄の現場で、私が断罪される方だった。
頼みのギフト【救急箱】から出て来るのは、使うのを躊躇うような怖い物が沢山。出会う人々はみんな訳ありで兵士に追われているし、こんな世界で私は生きて行けるのだろうか。
破滅型の転生令嬢、腹黒陰謀型の年下少年、腕の立つ元冒険者の護衛騎士、ほんわり癒し系聖女、魔獣使いの半魔、暗部一族の騎士。転生令嬢と訳ありな皆さん。
ゆるゆる異世界ファンタジー、ご都合主義満載です。
タイトル色々いじっています。他サイトにも投稿しています。
完結しました。ありがとうございました。
転生先の異世界で温泉ブームを巻き起こせ!
カエデネコ
ファンタジー
日本のとある旅館の跡継ぎ娘として育てられた前世を活かして転生先でも作りたい最高の温泉地!
恋に仕事に事件に忙しい!
カクヨムの方でも「カエデネコ」でメイン活動してます。カクヨムの方が更新が早いです。よろしければそちらもお願いしますm(_ _)m
プラス的 異世界の過ごし方
seo
ファンタジー
日本で普通に働いていたわたしは、気がつくと異世界のもうすぐ5歳の幼女だった。田舎の山小屋みたいなところに引っ越してきた。そこがおさめる領地らしい。伯爵令嬢らしいのだが、わたしの多少の知識で知る貴族とはかなり違う。あれ、ひょっとして、うちって貧乏なの? まあ、家族が仲良しみたいだし、楽しければいっか。
呑気で細かいことは気にしない、めんどくさがりズボラ女子が、神様から授けられるギフト「+」に助けられながら、楽しんで生活していきます。
乙女ゲーの脇役家族ということには気づかずに……。
#不定期更新 #物語の進み具合のんびり
#カクヨムさんでも掲載しています
異世界でも男装標準装備~性別迷子とか普通だけど~
結城 朱煉
ファンタジー
日常から男装している木原祐樹(25歳)は
気が付くと真っ白い空間にいた
自称神という男性によると
部下によるミスが原因だった
元の世界に戻れないので
異世界に行って生きる事を決めました!
異世界に行って、自由気ままに、生きていきます
~☆~☆~☆~☆~☆
誤字脱字など、気を付けていますが、ありましたら教えて頂けると助かります!
また、感想を頂けると大喜びします
気が向いたら書き込んでやって下さい
~☆~☆~☆~☆~☆
カクヨム・小説家になろうでも公開しています
もしもシリーズ作りました<異世界でも男装標準装備~もしもシリーズ~>
もし、よろしければ読んであげて下さい
公爵夫人アリアの華麗なるダブルワーク〜秘密の隠し部屋からお届けいたします〜
白猫
恋愛
主人公アリアとディカルト公爵家の当主であるルドルフは、政略結婚により結ばれた典型的な貴族の夫婦だった。 がしかし、5年ぶりに戦地から戻ったルドルフは敗戦国である隣国の平民イザベラを連れ帰る。城に戻ったルドルフからは目すら合わせてもらえないまま、本邸と別邸にわかれた別居生活が始まる。愛人なのかすら教えてもらえない女性の存在、そのイザベラから無駄に意識されるうちに、アリアは面倒臭さに頭を抱えるようになる。ある日、侍女から語られたイザベラに関する「推測」をきっかけに物語は大きく動き出す。 暗闇しかないトンネルのような現状から抜け出すには、ルドルフと離婚し公爵令嬢に戻るしかないと思っていたアリアだが、その「推測」にひと握りの可能性を見出したのだ。そして公爵邸にいながら自分を磨き、リスキリングに挑戦する。とにかく今あるものを使って、できるだけ抵抗しよう!そんなアリアを待っていたのは、思わぬ新しい人生と想像を上回る幸福であった。公爵夫人の反撃と挑戦の狼煙、いまここに高く打ち上げます!
➡️登場人物、国、背景など全て架空の100%フィクションです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる