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第3章 翼国編
102話 クロルとの別れ
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黒い影の集合体がクロルの姿になり、ブロムに剣を向けた時である。
横になっていたクロルは、ブロムの後ろに剣を向けている自分の姿を見たのだ。
それは、とても邪悪な自分の心の姿にダブったのだ。
そして、とっさにブロムを突き飛ばすと、黒い影の集合体が持つ剣を胸で受け止めたのだ。
すぐにブラックが影の集合体に向けて左手をかざし、黒い煙へと消滅させたのだが、剣がクロルの胸を貫くのが一瞬早かったのだ。
「おい、クロル!」
突き飛ばされたブロムは急いで倒れているクロルの元に行くと、クロルは少しだけ微笑んで言ったのだ。
「兄上、無事でよかった。
・・・やっと楽になれます。
リオにすまないと伝えてください・・・」
クロルはそう言うと、動かなくなったのだ。
私は黒い影の集合体がブラックにより消滅されるのを見ると、クロルの元に駆け出したのだ。
青紫色の毒の花が一面に咲き乱れている草原であったが、そんな事は関係なかった。
もちろん、ブラックからもらったペンダントがあるので、毒の花から自分は守られていたが、走り出した時はそんな事は考えてもいなかったのだ。
間に合って・・・
私は心の中はそれだけだった。
そしてクロルのところに早く着きたいのに、中々進めない自分が情けなかったのだ。
私はブロムに抱えられているクロルのところに着くと、すぐに完全回復の薬を身体に押し付けて破裂させたのだ。
金色の光がクロルを包み込んだので、私は間に合ったと思ったのだが、クロルの顔色は土色のままであったのだ。
私は自分が今持っている傷や化膿で使う薬、痛みや腫れをとる薬など、次々にクロルに押し付け破裂させたのだ。
それらの薬を使うと綺麗な光でクロルを包み込むのだが、それだけでクロルの顔色は変わらず、目覚める事がなかったのだ。
私は涙をこぼしながら、他に何か無いかとカバンを探っていると、ブラックが手をつかんだのだ。
「舞、もう無理だよ。」
いつの間にかブラックが横に来ていたのだ。
ブラックだけでなく、みんなが私とブロム達を囲んでいたのだ。
「まだ、何か助ける方法がきっとあるはずよ。
考えればきっと・・・お願いブラック・・・」
私は泣きながら、ブラックに懇願したのだ。
「舞、もう行ってしまったのだよ・・・
一度亡くなった者を生き返らせる事はできないのだよ。
魔人のように核が有れば復活は出来るが、黒翼人はそうでは無い事を舞もわかっているだろう。」
ブラックは優しく私に諭したのだ。
そう、完全回復の薬の効果が無い事から頭ではわかっていたのだ。
だが、私の心が何かしなければと納得できなかったのだ。
「私が・・・クロルを追いつめてしまった。」
「違うよ、舞さん。
あなたは、リオを助けてくれたのですよ。
あなたがいなければ、いずれリオは死んでいたのですよ。
・・・クロルの心が弱かったのが原因です。
それに、クロルはリオに謝ってほしいと最後に言ったのですよ。
舞さんに自分が犯人だと知られた事で、最後にはクロルはリオの良い兄に戻ったのですよ。
クロルは止められない自分を、どこかで誰かに止めて欲しかったのだと思います。
本当のクロルはとても優しい弟ですから。
だから、私の身代わりになったのですよ。
兄なのに助けられなかった私の方が不甲斐ないのですよ。
・・・たぶん、リオを陥れる自分を無くしたくて、ここに来たのだと思います。
だから、舞さんは二人を助けてくれたのですよ。」
そう言って、ブロムは私の肩に手を置いたのだ。
私は溢れる涙を止める事が出来なかった。
自分の無力さを思い知ったのだ。
ただの人間が出来ることなど、本当にちっぽけな事しか無いのだ・・・。
そしてブロムとアルはクロルを抱え、リオの待つ黒翼人の世界に帰って行った。
ブラックは落ち着いた頃に伺う事にするとブロムに伝え、私達は魔人の城に戻ったのだ。
私はと言えば、何も考える事は出来なかった。
そんな私を見て、ジルコンは何も言わずに寄り添ってくれたのだ。
ブラックはカクの所に手紙を出してくれて、私は数日魔人の城に滞在することにしたのだ。
ブラックはそんな私を優しく見守ってくれていたのだ。
ここにいると、少しずつだが心が癒される気がしたのだ。
横になっていたクロルは、ブロムの後ろに剣を向けている自分の姿を見たのだ。
それは、とても邪悪な自分の心の姿にダブったのだ。
そして、とっさにブロムを突き飛ばすと、黒い影の集合体が持つ剣を胸で受け止めたのだ。
すぐにブラックが影の集合体に向けて左手をかざし、黒い煙へと消滅させたのだが、剣がクロルの胸を貫くのが一瞬早かったのだ。
「おい、クロル!」
突き飛ばされたブロムは急いで倒れているクロルの元に行くと、クロルは少しだけ微笑んで言ったのだ。
「兄上、無事でよかった。
・・・やっと楽になれます。
リオにすまないと伝えてください・・・」
クロルはそう言うと、動かなくなったのだ。
私は黒い影の集合体がブラックにより消滅されるのを見ると、クロルの元に駆け出したのだ。
青紫色の毒の花が一面に咲き乱れている草原であったが、そんな事は関係なかった。
もちろん、ブラックからもらったペンダントがあるので、毒の花から自分は守られていたが、走り出した時はそんな事は考えてもいなかったのだ。
間に合って・・・
私は心の中はそれだけだった。
そしてクロルのところに早く着きたいのに、中々進めない自分が情けなかったのだ。
私はブロムに抱えられているクロルのところに着くと、すぐに完全回復の薬を身体に押し付けて破裂させたのだ。
金色の光がクロルを包み込んだので、私は間に合ったと思ったのだが、クロルの顔色は土色のままであったのだ。
私は自分が今持っている傷や化膿で使う薬、痛みや腫れをとる薬など、次々にクロルに押し付け破裂させたのだ。
それらの薬を使うと綺麗な光でクロルを包み込むのだが、それだけでクロルの顔色は変わらず、目覚める事がなかったのだ。
私は涙をこぼしながら、他に何か無いかとカバンを探っていると、ブラックが手をつかんだのだ。
「舞、もう無理だよ。」
いつの間にかブラックが横に来ていたのだ。
ブラックだけでなく、みんなが私とブロム達を囲んでいたのだ。
「まだ、何か助ける方法がきっとあるはずよ。
考えればきっと・・・お願いブラック・・・」
私は泣きながら、ブラックに懇願したのだ。
「舞、もう行ってしまったのだよ・・・
一度亡くなった者を生き返らせる事はできないのだよ。
魔人のように核が有れば復活は出来るが、黒翼人はそうでは無い事を舞もわかっているだろう。」
ブラックは優しく私に諭したのだ。
そう、完全回復の薬の効果が無い事から頭ではわかっていたのだ。
だが、私の心が何かしなければと納得できなかったのだ。
「私が・・・クロルを追いつめてしまった。」
「違うよ、舞さん。
あなたは、リオを助けてくれたのですよ。
あなたがいなければ、いずれリオは死んでいたのですよ。
・・・クロルの心が弱かったのが原因です。
それに、クロルはリオに謝ってほしいと最後に言ったのですよ。
舞さんに自分が犯人だと知られた事で、最後にはクロルはリオの良い兄に戻ったのですよ。
クロルは止められない自分を、どこかで誰かに止めて欲しかったのだと思います。
本当のクロルはとても優しい弟ですから。
だから、私の身代わりになったのですよ。
兄なのに助けられなかった私の方が不甲斐ないのですよ。
・・・たぶん、リオを陥れる自分を無くしたくて、ここに来たのだと思います。
だから、舞さんは二人を助けてくれたのですよ。」
そう言って、ブロムは私の肩に手を置いたのだ。
私は溢れる涙を止める事が出来なかった。
自分の無力さを思い知ったのだ。
ただの人間が出来ることなど、本当にちっぽけな事しか無いのだ・・・。
そしてブロムとアルはクロルを抱え、リオの待つ黒翼人の世界に帰って行った。
ブラックは落ち着いた頃に伺う事にするとブロムに伝え、私達は魔人の城に戻ったのだ。
私はと言えば、何も考える事は出来なかった。
そんな私を見て、ジルコンは何も言わずに寄り添ってくれたのだ。
ブラックはカクの所に手紙を出してくれて、私は数日魔人の城に滞在することにしたのだ。
ブラックはそんな私を優しく見守ってくれていたのだ。
ここにいると、少しずつだが心が癒される気がしたのだ。
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