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第1章 洞窟出現編

19話 闇の薬の効果

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 私は調合した薬を注意深くボールに入れ直した。
 怪我人に使用するための薬を入れたカプセルと同じような素材で衝撃により割れるようだ。

 人のいるところで割れては大変なことになるので、混ぜるのも入れるのも、かなりの神経を使った。
 今まで使ってはいなかったが、マスク、手袋、フェイスガードも自分の世界から持参してきたので、しっかりと使って作ったのだ。
 ここでクリーンベンチがあれば完璧だ・・・と、病院で注射の混注作業をしていたことを思い出した。

 そんな私の姿を見て、カクは目をキラキラさせていた。
 初めて見る物で、興味津々のようなのだ。  
 色々聞かれたが、それは後でと言う事で、近くに来ないように話したのだ。
 残念そうにしていたが、かまっている暇はないのだ。

 後はシウン大将にお願いして、アーチェリーのような武器の矢の部分に接続してもらった。
 いくつかに分けようと思ったが、必ず目標に到達出来る武器と言うことで、全ての薬をその1本に託した。
 
 シウン大将は1番の名手である者にその薬を預けたようだ。そして、魔法陣の範囲内に来た時に当たるように指示をしたのだ。
 ある程度広範囲の魔法陣が配置はされているが、魔獣の飛ぶ軌道を考えて命中させなくてはいけないので、かなり難しいようだ。
 何とか範囲内に落ちることを祈るのみであった。
 
 今回私は漢方薬を2種類使用した。もともと書物には載ってはいないものだが、魔獣に使う分には効きすぎても問題無いと思った。
 効果を最大限に働くようにと思ったのだ。

オウギ、ソウジュツ、ニンジン、トウキ、サイコタイソウ、チンピ、カンゾウ、ショウマ、ショウキョウ

そして、もう一つ

オウギ、ケイヒ、ジオウ、シャクヤク、センキュウ、トウキ、ニンジン、ブクリョウ、カンゾウ、ソウジュツ

 どちらも本来、病後の体力回復などに使われるものだ。効果がにているだけあって、生薬の配合も似ているのである。
 上手く逆の効果を発揮してくれるといいのだが。

 シウン大将は上手く魔獣を引きつけ、その間に矢をうち込む隙を作った。
 また、他の精鋭部隊は魔獣の風や竜巻に影響を受けないように、身体を呈して重要な役割の彼を守ったのだ。
 これで効果がなかったら私の立場が無い!と思ったが、考えるのはやめた。
 きっと大丈夫。
 私はあのおじいちゃんの孫なんだから。  
 そう、強く願った。

 名手の手から矢が放たれた。
 動き回る魔獣ではあるが、すでに目標はしっかり捉えているので、かならず当たるはず。

 数秒後に矢は魔獣に当たり、一瞬体が氷化したと思われたが、黒いボールがはじけ、煙が立ち上ったのだ。しかし、煙は魔獣全体を包み込み、一瞬で中に吸収されたのだ。

 するとみるみる翼の動きが悪くなり、硬そうな鱗状の表皮が黒ずんできて、あっという間に皮と骨だけの痩せ細った体となり、ついにはドスンと大きな音を立てて、落下したのである。
それも、目標通りの魔法陣の上に。

 すかさず、シウン大将が持っていたボールを投げつけると、また黒い煙が舞い上がり、魔獣を包み込み、煙はまた消えたのである。
 今度は魔獣も一緒に。

 本当に良かった。心からそう思った。
 みんなの努力を無駄にするわけにはいかなかったのだ。
 しかし、闇の薬の効果が確認できた反面、恐ろしい薬であることもわかったのである。

 魔獣が消えたことで、その場にいた者はみんなホッとしていた。
 消滅ではなくて、転移ではあるが、魔獣を拘束できたのは間違いないのだ。
 もしかしたら、もう息絶えているかもしれないのだが。

 しかし、これで全てが終わったわけではなかった。 
 みんなが安堵の雰囲気になった時である。
 
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