上 下
17 / 181
第1章 洞窟出現編

17話 魔獣 再び

しおりを挟む
 混乱していた警備隊の彼は、その後目を覚まし、以前と同じように仲間と語り合っていた。
 どうやら、薬の効果があったらしい。
 私は彼らを見てホッとしたのだ。
 そして、光の鉱石の素晴らしさを実感した。
 
 それにしても、回復した彼からも洞窟で見た人物についてなど、特に詳しい情報を得ることは出来なかった。
 そして、洞窟の監視は継続して行われていた。

とりあえず、救護所も落ち着きを取り戻したので、ヨクは王様のもとに戻っていった。

 リョウも含め、私たちは魔獣や先程の警備隊の状態について話し合った。

 「さっきのは錯乱状態というより、ある種の催眠状態に感じたんですが、どう思いますか?」

 リョウは深刻な顔で話し出した。
 私もその通りと思った。
 恐ろしい思いをしたのかもしれないが、一般人と違い警備隊である人たちは、体力、精神ともに鍛えられているはず。
  
「私もそう思います。
 人影を見た記憶はあると言うことなので、何か精神を操作された可能性もあるのかしら?」

「二人とも怖いこと言わないでくださいよ。
 そんな簡単に催眠にかけられたら、大変じゃないですか?
 魔獣が出てきただけでも恐ろしいのに、この後本当に魔人が出てきたらもう終わりですよ。
 早く、あの洞窟を無くす方法を考えて欲しいですよ。
 私たちは怪我人の治療に集中して、他の事は軍や、王様達に任せましょう。」
 
 カクはそう言って、身の回りの片付けを始めた。
 言っていることはもっともなのだが、考えずにはいられなかった。
 逆に、カクはなんでそんな逃げ腰なのかと、情けなく感じたのだ。

 私にとっては異世界の生活すべてが日常ではなく、冒険であり、この世界の危機であっても、不謹慎にワクワクしてしまうのだ。

 しばらく救護所にいたが、特に洞窟の状態も変わらなかったので、一度自宅にもどろうと、準備をしていた。
 
 荷物を整頓して、テントを出たとき、兵士たちの騒ぐ声が聞こえたのだ。
 兵士たちを見ると、皆が空を見上げているのだ。
 その見ている方向を見上げると、巨大な恐竜を思わせる怪鳥が空を飛んでいるのだった。
 その瞬間を見ることは出来なかったが、洞窟より勢いよく飛び出してきたようだ。
  
「今度は飛ぶ魔獣なの?
 空から攻撃されたら、どうしたらいいのかしら?」

「とにかく避難しないと不味く無いですか?
 ここでは避けることは出来ないですよ。」

 リョウはそう言い、私たちをある場所に誘導した。
 そこは地下シェルターのようなもので、ある程度の攻撃は避けることができるようだ。
 ただ、中に入ってしまうと、外の様子が見れないので、ギリギリまで入り口のところで待機する事にしたのだ。

 怪鳥に目を移すと、大きな鳴き声を出した途端、口から白い息のようなものを吐き、辺りを凍らせているように見えた。
 また、先程の魔獣と同じように、頭に綺麗な宝石に見える青い石が付いていたのだ。
 その石が光ると、翼を使って風を起こし、竜巻を引き起こしたのだ。

 先程の精鋭部隊も、今回ばかりは、飛ばされたり、辺りを凍らせられ、上手く身動きが取れない状況にあった。
 どう見ても、こちらの不利に見えたのだ。

 その時、アーチェリーのような弓を持った部隊が到着したのだ。
やはり、剣と盾では無理があったようだ。

「あれは、風の鉱石で作られた弓矢だよ。目標を決めたら最後、必ず当たるようになっているんです。」

 リョウは、さすが軍付きの薬師のため、色々な武器を見てきているようだ。
 それにしても、追跡機能もついた矢なんて、ミサイルみたい。
 飛んでいる標的にはもってこいだけど、そんな上手くいくのかしら?
 
「もう、二人とも中に入りませんか?
 危険ですよ。
 ここに移動した意味がないじゃないですか?」

 カクは移動するように進めるが、まだ中に入る気にはなれなかった。

「ええ、でも、もう少し・・・」

 そう話している間に、一斉に矢が飛んでいる魔獣に向けて放たれたのだ。
 矢の先には炎のようなものが見えた。
 少なからず、魔獣にダメージを与えられるかと思ったが、上手くはいかなかった。
 追跡機能のある矢はとても素晴らしく、翼で風や竜巻を作られても、飛んでいる魔獣を確実に射止めたのだ。
 しかし、凍らせる息を吐くだけあって、矢が刺さっても、炎はすぐに消されてしまい、大きなダメージになる事はなかったのだ。

「これはまずいですね。これだけ自由に動かれてしまっては、魔法陣の方に追いこむのも困難ですね。」

 リョウも顔をしかめてつぶやいたのだ。
 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】帝国滅亡の『大災厄』、飼い始めました

綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
 大陸を制覇し、全盛を極めたアティン帝国を一夜にして滅ぼした『大災厄』―――正体のわからぬ大災害の話は、御伽噺として世に広まっていた。  うっかり『大災厄』の正体を知った魔術師――ルリアージェ――は、大陸9つの国のうち、3つの国から追われることになる。逃亡生活の邪魔にしかならない絶世の美形を連れた彼女は、徐々に覇権争いに巻き込まれていく。  まさか『大災厄』を飼うことになるなんて―――。  真面目なようで、不真面目なファンタジーが今始まる! 【同時掲載】アルファポリス、カクヨム、エブリスタ、小説家になろう ※2022/05/13  第10回ネット小説大賞、一次選考通過 ※2019年春、エブリスタ長編ファンタジー特集に選ばれました(o´-ω-)o)ペコッ

転生令息は攻略拒否!?~前世の記憶持ってます!~

深郷由希菜
ファンタジー
前世の記憶持ちの令息、ジョーン・マレットスは悩んでいた。 ここの世界は、前世で妹がやっていたR15のゲームで、自分が攻略対象の貴族であることを知っている。 それはまだいいが、攻略されることに抵抗のある『ある理由』があって・・・?! (追記.2018.06.24) 物語を書く上で、特に知識不足なところはネットで調べて書いております。 もし違っていた場合は修正しますので、遠慮なくお伝えください。 (追記2018.07.02) お気に入り400超え、驚きで声が出なくなっています。 どんどん上がる順位に不審者になりそうで怖いです。 (追記2018.07.24) お気に入りが最高634まできましたが、600超えた今も嬉しく思います。 今更ですが1日1エピソードは書きたいと思ってますが、かなりマイペースで進行しています。 ちなみに不審者は通り越しました。 (追記2018.07.26) 完結しました。要らないとタイトルに書いておきながらかなり使っていたので、サブタイトルを要りませんから持ってます、に変更しました。 お気に入りしてくださった方、見てくださった方、ありがとうございました!

【完結】天下無敵の公爵令嬢は、おせっかいが大好きです

ノデミチ
ファンタジー
ある女医が、天寿を全うした。 女神に頼まれ、知識のみ持って転生。公爵令嬢として生を受ける。父は王国元帥、母は元宮廷魔術師。 前世の知識と父譲りの剣技体力、母譲りの魔法魔力。権力もあって、好き勝手生きられるのに、おせっかいが大好き。幼馴染の二人を巻き込んで、突っ走る! そんな変わった公爵令嬢の物語。 アルファポリスOnly 2019/4/21 完結しました。 沢山のお気に入り、本当に感謝します。 7月より連載中に戻し、拾異伝スタートします。 2021年9月。 ファンタジー小説大賞投票御礼として外伝スタート。主要キャラから見たリスティア達を描いてます。 10月、再び完結に戻します。 御声援御愛読ありがとうございました。

冷宮の人形姫

りーさん
ファンタジー
冷宮に閉じ込められて育てられた姫がいた。父親である皇帝には関心を持たれず、少しの使用人と母親と共に育ってきた。 幼少の頃からの虐待により、感情を表に出せなくなった姫は、5歳になった時に母親が亡くなった。そんな時、皇帝が姫を迎えに来た。 ※すみません、完全にファンタジーになりそうなので、ファンタジーにしますね。 ※皇帝のミドルネームを、イント→レントに変えます。(第一皇妃のミドルネームと被りそうなので) そして、レンド→レクトに変えます。(皇帝のミドルネームと似てしまうため)変わってないよというところがあれば教えてください。

【完結】底辺冒険者の相続 〜昔、助けたお爺さんが、実はS級冒険者で、その遺言で七つの伝説級最強アイテムを相続しました〜

もう書かないって言ったよね?
ファンタジー
 試験雇用中の冒険者パーティー【ブレイブソード】のリーダーに呼び出されたウィルは、クビを宣言されてしまう。その理由は同じ三ヶ月の試験雇用を受けていたコナーを雇うと決めたからだった。  ウィルは冒険者になって一年と一ヶ月、対してコナーは冒険者になって一ヶ月のド新人である。納得の出来ないウィルはコナーと一対一の決闘を申し込む。  その後、なんやかんやとあって、ウィルはシェフィールドの町を出て、実家の農家を継ぐ為に乗り合い馬車に乗ることになった。道中、魔物と遭遇するも、なんやかんやとあって、無事に生まれ故郷のサークス村に到着した。  無事に到着した村で農家として、再出発しようと考えるウィルの前に、両親は半年前にウィル宛てに届いた一通の手紙を渡してきた。  手紙内容は数年前にウィルが落とし物を探すのを手伝った、お爺さんが亡くなったことを知らせるものだった。そして、そのお爺さんの遺言でウィルに渡したい物があるから屋敷があるアポンタインの町に来て欲しいというものだった。  屋敷に到着したウィルだったが、彼はそこでお爺さんがS級冒険者だったことを知らされる。そんな驚く彼の前に、伝説級最強アイテムが次々と並べられていく。 【聖龍剣・死喰】【邪龍剣・命喰】【無限収納袋】【透明マント】【神速ブーツ】【賢者の壺】【神眼の指輪】  だが、ウィルはもう冒険者を辞めるつもりでいた。そんな彼の前に、お爺さんの孫娘であり、S級冒険者であるアシュリーが現れ、遺産の相続を放棄するように要求してきた。

転生したら赤ん坊だった 奴隷だったお母さんと何とか幸せになっていきます

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
転生したら奴隷の赤ん坊だった お母さんと離れ離れになりそうだったけど、何とか強くなって帰ってくることができました。 全力でお母さんと幸せを手に入れます ーーー カムイイムカです 今製作中の話ではないのですが前に作った話を投稿いたします 少しいいことがありましたので投稿したくなってしまいました^^ 最後まで行かないシリーズですのでご了承ください 23話でおしまいになります

虐げられた令嬢、ペネロペの場合

キムラましゅろう
ファンタジー
ペネロペは世に言う虐げられた令嬢だ。 幼い頃に母を亡くし、突然やってきた継母とその後生まれた異母妹にこき使われる毎日。 父は無関心。洋服は使用人と同じくお仕着せしか持っていない。 まぁ元々婚約者はいないから異母妹に横取りされる事はないけれど。 可哀想なペネロペ。でもきっといつか、彼女にもここから救い出してくれる運命の王子様が……なんて現れるわけないし、現れなくてもいいとペネロペは思っていた。何故なら彼女はちっとも困っていなかったから。 1話完結のショートショートです。 虐げられた令嬢達も裏でちゃっかり仕返しをしていて欲しい…… という願望から生まれたお話です。 ゆるゆる設定なのでゆるゆるとお読みいただければ幸いです。 R15は念のため。

神々の間では異世界転移がブームらしいです。

はぐれメタボ
ファンタジー
第1部《漆黒の少女》 楠木 優香は神様によって異世界に送られる事になった。 理由は『最近流行ってるから』 数々のチートを手にした優香は、ユウと名を変えて、薬師兼冒険者として異世界で生きる事を決める。 優しくて単純な少女の異世界冒険譚。 第2部 《精霊の紋章》 ユウの冒険の裏で、田舎の少年エリオは多くの仲間と共に、世界の命運を掛けた戦いに身を投じて行く事になる。 それは、英雄に憧れた少年の英雄譚。 第3部 《交錯する戦場》 各国が手を結び結成された人類連合と邪神を奉じる魔王に率いられた魔族軍による戦争が始まった。 人間と魔族、様々な意思と策謀が交錯する群像劇。 第4部 《新たなる神話》 戦争が終結し、邪神の討伐を残すのみとなった。 連合からの依頼を受けたユウは、援軍を率いて勇者の後を追い邪神の神殿を目指す。 それは、この世界で最も新しい神話。

処理中です...