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『休日の二人と初めてのゲーム』
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「パパ、ゲームって何?」
とある休日の昼下がり、ソファでくつろいでいた俺へとルインが質問してきた。
詳しく話を聞いてみると、通っている保育園で話題になっており興味が出たとのことだ。ピコピコとジャスチャーをし、分かる範囲で説明してくれるルインが可愛らしかった。
「……ゲームか、確か押し入れに入ってた気がするな。ちょっと出してくるよ」
「あるの?」
「社会人になってからは全然だけど、学生時代は結構やってたからな。確かここに……あったこれだ」
埃被った段ボール箱を取り出し、それをリビングへと移動させた。開けてみると中には黒い据え置きのゲーム機と、白い携帯用の折り畳み式ゲーム機があった。
「懐かしいな。実家から持ってきた奴だから、もう十年近く経つのか」
タイトルには『カプセルモンスター』と書かれており、略称『カプモン』として親しまれている。国民的な人気があり、今年で三十周年とかテレビでやっていたはずだ。
「あっ、それ」
「ん? カプモンがどうかしたか?」
「保育園で皆が言っていたのだと思う。……でももっと長いタイトルだった気がするし、別の奴かな?」
「あぁ、なるほど。たぶんだけどルインが言っているのは最新作のだろうな。これは結構古いのだから、皆がやってるのとは違うはずだ」
俺の返答にルインは納得し、古いパッケージをジッと見つめていた。試しに「やってみるか」と聞いてみると、ルインは即座にコクコクと頷いた。
「充電が切れてるだろうし、この線を繋いでやるんだぞ。もし分からないことがあったら、俺が教えてあげるから」
「分かった。それで……えっと、どうやって遊べばいいの?」
「カセットをここに入れて、そのスイッチを長押しするんだ。そうするとホーム画面に行くから、その可愛いアイコンを指で押せばいい」
「あっ、ついた」
モンスターの可愛い鳴き声が聞こえ、画面が暗転して会社ロゴが映った。そしてオープニング映像が流れると、ルインは「アニメだ」と呟いて画面を真剣に見つめていた。
一通りムービーが終わると、今度はタイトルロゴがバンと表示された。
「……えっと、パパ。これで終わり?」
「もちろん、まだ続きがあるぞ。ゲームっていうのはテレビと違ってただ見るんじゃなくて、実際に遊んでいる本人が物語を進めていくんだ」
「ルインが物語を進める? ……んぅ?」
ゲームで遊んだことがないので、ルインは未だピンと来ていないようだ。説明するより実践した方がいいと考え、スタートボタンを押させてゲームを始めた。
主人公の名を決め、博士からの説明を聞き、ようやくキャラ操作の画面に移った。
さっそく操作方法を教えると、ルインは画面に移るキャラクターが自分の意思で動くことにとても驚いていた。
「パパ! このアニメ、ルインが動かせるよ!」
「ゲームっていうのは、今みたいに画面に移るキャラを操作して遊ぶことができるんだ。RPGやアクションやシューティングとか、ジャンルもいっぱいあるぞ」
後でパーティーゲームを買い、エリシャを交えて三人でやるのも面白そうだ。手持ちには子ども向けのレースゲームもあるので、そっちは今夜にでもやろうかと考えた。
「…………これ続きもやっていいの?」
「好きにすればいい。今日からそのゲーム機はルインのものだ」
「いいの⁉」
ずっと使っていなかったので、ゲーム機も新たな持ち主ができて喜んでいるだろう。保育園で流行っているのは最新のゲーム機なので、後でそっちも買う必要があるが。
突然のプレゼントに喜ぶルインを見て、俺の心も温かく嬉しくなった。
興味津々でプレイを進めていくルインを見守っていると、急に「あっ」と声を上げて俺の方を向いてきた。
「パパ、これってどうすればいいの?」
「どれどれ……?」
画面を見てみると、映っていたのは最初の相棒モンスターを決める場面だった。どれも子どもが気に入りそうなデザインで、色は赤・青・黄色とカラフルだ。
「ルインが気にいった子を選べばいい。そして選んだ子と一緒に、ルインはこの世界を冒険していくんだ」
「……冒険。一匹しか選んじゃ駄目なの?」
「そうだな。でもそれはここだけの話で、ゲーム世界には数百体のモンスターがいるんだ。それをルインが仲間にして育てて戦っていくのがこのゲームの目的だ」
「んぅ、なら真剣に選ばないと」
ルインは真剣な眼差しをし、じっと画面を見つめていた。ここからはしばらくは見守ることにし、夢中なルインを温かな思いで眺めた。
大体十分ほど経ったころ、エリシャが買い物から戻ってきた。
玄関まで行き買い物を預かってリビングまで戻ると、ルインはまだゲームに熱中していた。横から画面を覗いてみると、道中の草むらから出るモンスターとの戦闘シーンだった。
「……さっきの奴には負けたけど、今度は負けない」
どうやら初戦のライバル戦は負けてしまったらしい。運悪くクリティカルを引いてしまったというところだろうか。
「やった! 勝った!」
モンスターを倒したルインは、喜んでピョンコとお尻で跳ねていた。
俺とエリシャが後ろにいることに気づくと、ルインはえへへと笑みを浮かべピースサインで勝利を報告してくれた。そしてまた画面に戻り、真剣に物語を進めていた。
「あの……、レンタこれは?」
「ゲームって奴だな。まぁ説明すると……」
エリシャにも同じ説明をすると、どんなものか興味を持ってくれた。
「ママ、この子とっても強いんだよ!」
「ふむ、火を吹くのですか。可愛い外見に反して恐ろしい力を持ってますね」
「ルイン、そこのショップで捕獲カプセルを買うといいぞ」
「うん、分かった!」
俺たちはソファに三人で並んで座り、ルインのプレイを見守って午後の時間を過ごした。
とある休日の昼下がり、ソファでくつろいでいた俺へとルインが質問してきた。
詳しく話を聞いてみると、通っている保育園で話題になっており興味が出たとのことだ。ピコピコとジャスチャーをし、分かる範囲で説明してくれるルインが可愛らしかった。
「……ゲームか、確か押し入れに入ってた気がするな。ちょっと出してくるよ」
「あるの?」
「社会人になってからは全然だけど、学生時代は結構やってたからな。確かここに……あったこれだ」
埃被った段ボール箱を取り出し、それをリビングへと移動させた。開けてみると中には黒い据え置きのゲーム機と、白い携帯用の折り畳み式ゲーム機があった。
「懐かしいな。実家から持ってきた奴だから、もう十年近く経つのか」
タイトルには『カプセルモンスター』と書かれており、略称『カプモン』として親しまれている。国民的な人気があり、今年で三十周年とかテレビでやっていたはずだ。
「あっ、それ」
「ん? カプモンがどうかしたか?」
「保育園で皆が言っていたのだと思う。……でももっと長いタイトルだった気がするし、別の奴かな?」
「あぁ、なるほど。たぶんだけどルインが言っているのは最新作のだろうな。これは結構古いのだから、皆がやってるのとは違うはずだ」
俺の返答にルインは納得し、古いパッケージをジッと見つめていた。試しに「やってみるか」と聞いてみると、ルインは即座にコクコクと頷いた。
「充電が切れてるだろうし、この線を繋いでやるんだぞ。もし分からないことがあったら、俺が教えてあげるから」
「分かった。それで……えっと、どうやって遊べばいいの?」
「カセットをここに入れて、そのスイッチを長押しするんだ。そうするとホーム画面に行くから、その可愛いアイコンを指で押せばいい」
「あっ、ついた」
モンスターの可愛い鳴き声が聞こえ、画面が暗転して会社ロゴが映った。そしてオープニング映像が流れると、ルインは「アニメだ」と呟いて画面を真剣に見つめていた。
一通りムービーが終わると、今度はタイトルロゴがバンと表示された。
「……えっと、パパ。これで終わり?」
「もちろん、まだ続きがあるぞ。ゲームっていうのはテレビと違ってただ見るんじゃなくて、実際に遊んでいる本人が物語を進めていくんだ」
「ルインが物語を進める? ……んぅ?」
ゲームで遊んだことがないので、ルインは未だピンと来ていないようだ。説明するより実践した方がいいと考え、スタートボタンを押させてゲームを始めた。
主人公の名を決め、博士からの説明を聞き、ようやくキャラ操作の画面に移った。
さっそく操作方法を教えると、ルインは画面に移るキャラクターが自分の意思で動くことにとても驚いていた。
「パパ! このアニメ、ルインが動かせるよ!」
「ゲームっていうのは、今みたいに画面に移るキャラを操作して遊ぶことができるんだ。RPGやアクションやシューティングとか、ジャンルもいっぱいあるぞ」
後でパーティーゲームを買い、エリシャを交えて三人でやるのも面白そうだ。手持ちには子ども向けのレースゲームもあるので、そっちは今夜にでもやろうかと考えた。
「…………これ続きもやっていいの?」
「好きにすればいい。今日からそのゲーム機はルインのものだ」
「いいの⁉」
ずっと使っていなかったので、ゲーム機も新たな持ち主ができて喜んでいるだろう。保育園で流行っているのは最新のゲーム機なので、後でそっちも買う必要があるが。
突然のプレゼントに喜ぶルインを見て、俺の心も温かく嬉しくなった。
興味津々でプレイを進めていくルインを見守っていると、急に「あっ」と声を上げて俺の方を向いてきた。
「パパ、これってどうすればいいの?」
「どれどれ……?」
画面を見てみると、映っていたのは最初の相棒モンスターを決める場面だった。どれも子どもが気に入りそうなデザインで、色は赤・青・黄色とカラフルだ。
「ルインが気にいった子を選べばいい。そして選んだ子と一緒に、ルインはこの世界を冒険していくんだ」
「……冒険。一匹しか選んじゃ駄目なの?」
「そうだな。でもそれはここだけの話で、ゲーム世界には数百体のモンスターがいるんだ。それをルインが仲間にして育てて戦っていくのがこのゲームの目的だ」
「んぅ、なら真剣に選ばないと」
ルインは真剣な眼差しをし、じっと画面を見つめていた。ここからはしばらくは見守ることにし、夢中なルインを温かな思いで眺めた。
大体十分ほど経ったころ、エリシャが買い物から戻ってきた。
玄関まで行き買い物を預かってリビングまで戻ると、ルインはまだゲームに熱中していた。横から画面を覗いてみると、道中の草むらから出るモンスターとの戦闘シーンだった。
「……さっきの奴には負けたけど、今度は負けない」
どうやら初戦のライバル戦は負けてしまったらしい。運悪くクリティカルを引いてしまったというところだろうか。
「やった! 勝った!」
モンスターを倒したルインは、喜んでピョンコとお尻で跳ねていた。
俺とエリシャが後ろにいることに気づくと、ルインはえへへと笑みを浮かべピースサインで勝利を報告してくれた。そしてまた画面に戻り、真剣に物語を進めていた。
「あの……、レンタこれは?」
「ゲームって奴だな。まぁ説明すると……」
エリシャにも同じ説明をすると、どんなものか興味を持ってくれた。
「ママ、この子とっても強いんだよ!」
「ふむ、火を吹くのですか。可愛い外見に反して恐ろしい力を持ってますね」
「ルイン、そこのショップで捕獲カプセルを買うといいぞ」
「うん、分かった!」
俺たちはソファに三人で並んで座り、ルインのプレイを見守って午後の時間を過ごした。
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