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第38話 黒髪黒目の超絶美少女は仲間たちと成長し続ける
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聖域で色々わかってしまった私たち4人。
純粋に力が足りていないことを自覚していた。
「むう、取り敢えず対抗できそうなのが美緒だけでしょ?アルディ、エルノール……私と一緒に鍛えよっか、美緒も協力お願い」
「ゲ…」
「はい。お願いいたします」
「うん」
反応の異なる二人。
リンネはじろりとアルディを睨み付けた。
「あんたね、状況分かってるでしょ?さっさとボーナスポイント振り分けて、とりあえず今のジョブカンストさせるのよ」
「うう、めんどくさ…!?」
「……ふーん。そういうこと言うんだ」
拳を握りしめたリンネにアルディは身震いしてしまう。
「や、やるよ。分かったってば……」
「最初からそう言いなさい?馬鹿」
「ほーい」
……なんか夫婦みたい。
私は思わず笑ってしまう。
「っ!?な、何よ?美緒……そんな目で見るなー。違うしっ!!!」
「はいはい」
「も―――――」
リンネ、可愛い♡
照れるリンネの顔を私は脳内フォルダに保存した。
そうして数日が過ぎていく……
※※※※※
今ギルドにいる人員の中で戦闘が出来る攻撃職と魔法職は25名。
執事長のザナークさんと家事長のファルマナさん、家事手伝いのレリアーナとハイネ君、それから僧侶のアリア5人以外は様々なジョブを持っているものの全員が戦闘のできる状況にはなっていた。
ここ数週間のパワーレベリングで力を増し、頭角を現したのはやっぱりメインキャラクターであるザッカート。
彼は義賊をカンストさせ、今はなぜか選択肢に現れた『極道』という物騒な名前のジョブについていた。
※※※※※
「まさか俺がこんな短期間でカンストするとはな。これもすべてカシラのおかげだ。礼を言う」
任命式から数日後。
私はザッカートに呼び出されサロンで話を聞いていた。
「……すまねえがカシラ、着いて来てくれねえか?聖堂へ」
聖堂はジョブチェンジを行ったり大まかなステータスの確認ができる施設だ。
大きな町にもあるのだけれど、残念ながら宗教の資金集めに利用されており結構なお布施を求められてしまう。
もちろんギルド本部ではお金など必要ない。
元々創造神であるルーダラルダ様が弱いヒューマン族の為に作った施設だしね。
そもそもこれはシステムだ。
人が行う事ではない。
「いいけど、なにか理由あるの?」
「ああ。カシラは知っているかどうか分かんねえが…実はジョブチェンジには裏技があるんだ。同行者の想いが反映し、より上位のジョブが出現することがある」
「っ!?……えっ?凄い……知らなかったよ?」
「ああ。まあ、眉唾だ。……だけどもしそうだとしたら使わねえ手はねえ。頼む」
「う、うん。頭を上げて?協力できるなら嬉しいもん。いこっ!」
※※※※※
そうして訪れ、選択の儀式のときにそれは起こった。
「ははは……ありえねえ。……こんなに違うのか」
「えっ?なになに?選択肢変わったの?」
水晶に触れ、ザッカートは感嘆の言葉を零していた。
ジョブチェンジにはいくつか条件がある。
まず一つ。
授かっているジョブをカンストさせること。
たまにジョブのない人も居る。
そういう人は魂の状況で選べるジョブが表示される。
この前のアリアみたいにね。
スッゴク珍しいのだけれど……
二つ。
その人の本質に左右される。
そして想いにも。
今ついているジョブと関連が大きいのね。
三つ。
魂と交信するため儀式の最中は他の人には見えない。
彼は今義賊。
しかも元々は盗賊で、魂の覚醒で進化したジョブだ。
ミルライナもそうだったけど。
でも本来それはなかなかあることではないんだよね。
で、覚醒ジョブ持ちはいくつかの特権が付く場合がある。
通常ルートでは出ない新たなジョブの出現とボーナスポイントの付与だ。
「ああ。カシラ、やっぱあんたすげえ。俺は一生ついていく。……逃がさねえ。覚悟しろよ?」
「うあ、もう。言い方。……なんか決闘とか申し込まれているみたい」
「ははっ。あながち間違っちゃいねえ。俺はお前を守るって決めたんだ。絶対に抜いてやるさ」
「っ!?……もう。………期待しても良いの?」
私の問いに優しいまなざしで見つめるザッカート。
「!?」
なんか雰囲気が変わった?!
……うあ、ザッカートの目……色気?!
「……美緒の為になりたいんだ…俺はお前が好きだからな」
「っ!???」
途端に瞳に熱がこもる。
いくら鈍い私でも何となくわかっちゃうほどの熱い瞳……
え?……嘘?!!
ザッカートが私を?
どうしていいか分からず、オロオロしてしまう。
そんな私の頭にザッカートは優しく大きな手を乗せた。
「(ふっ、まったく圏外でもなさそうだな)……勘違いすんな。『親愛』の情だ……今はな」
「っ!?か、勘違い?!し、し、してないよ?!!……も、もう、からかわないで!!」
「ははっ、わりい。取り敢えず俺は『極道』を選んだ。よろしく頼む」
「う、うん」
ザッカートは私の認識に無いジョブ『極道』を選んだ。
やっぱりメインキャラクター。
色気がやばすぎ。
もう。
※※※※※
『極道』
道を究めし者。
儀を重んじ、そのためなら修羅となるジョブ。
覚醒時能力値が跳ね上がる。
特に心に決めた主、そのための力は天元を超える。
固有スキル
乾坤一擲
忍と同等の伝説級ジョブ。
※※※※※
「ふん。俺の求めていたものだ。カシラ、ありがとうな」
「ううん。でも私が来た意味あったのかな?」
「さてな。……じゃあちょっくら抜けさせてもらう。……部下どもとガス抜きに行ってくるわ」
「……はあ。わかりました。……気を付けてね」
「ん?怒らないのか?」
ザッカートはにやりとイジワルそうな表情を浮かべ私を見つめる。
『ガス抜き』……娼館だ。
「べ、別に?お、怒らないよ……だって、そ、その……男の人は…えっと…」
「金で女を自由にする下卑た行為だ。……だが必要な事だ」
「……う、うん」
「軽蔑するか?」
「………」
正直嫌だ。
大好きな仲間たちだけど……生物的には間違ったことではないけど……
でもそのおかげで彼らが頑張れるのは事実だ。
それに我慢をし過ぎて犯罪に走るより100倍はいい。
「ごめんなさい。正直嫌だ。……でも……わ、私じゃ代わりになれないもの。……そ、そんな知識も、経験もないし……軽蔑はしません。これは本当。きっと私が子供だからすねちゃうだけだと思うっ!?」
いきなり強く肩を掴まれた。
えっ?!
怒ってる?!!
「ば、馬鹿っ!!間違ってもそんなこと言うな!!お前は代わりとかじゃねえ!……ったく、成長したかに見えたが……てんでだめじゃねえか。……あーくそっ。悪かったよ。……すまねえ」
「えっ?!えっと……」
ザッカートは天を見上げ大きくため息をついた。
そしてゆっくりと話し出す。
「なあカシラ。男と女は違う。これは分かるか?」
「う、うん」
「男はな、お前ら女よりも動物に近けえ。どうしたって溜まっちまう。だから娼館は必要なんだ」
「??えっ?どういう……」
ザッカートは乱暴に頭をかきむしる。
「欲で抱ける。女をな。……愛がなくてもだ」
「っ!?」
「こんなこと言いたくねえが……カシラは可愛くて女として魅力的なんだ。皆心の中できっと数回はお前で妄想してる」
「!!!!」
私は力が入らなくなりヘナヘナと座り込んでしまう。
女として魅力的?
私が?!
私で……妄想?!!
昔見たスマホに流れてきたそういう動画が一瞬よぎる。
途端に赤く染まる私の顔。
火が出そうだ。
「まったく。言わせんなこんな恥ずかしい事。それに特別な事じゃねえ。男なら誰だってそういう事はあるもんだ。……それこそガキでもな……エルノールは……なさそうだがな。あいつは真面目過ぎ」
「………そ、そうなんだね?」
うあ、ザッカートの言葉……全然頭に入ってこない。
「ちっ、カシラにゃ刺激が強いみたいだな。まあ、慌てんな。だけどお前だってもう18だろ?子供だって産めるんだ。……好きな奴とかいるのか?」
「……みんなのこと好き……でも……そういう好きじゃない?」
意識してこなかった。
きっとわざと。
だって私はいつかいなくなる……
そう思っていた。
転移した直後エルノールに言われたけど……
結婚とか逆ハーレムとか。
っ!?だからリンネ………
茫然としてしまう私。
ザッカートが心配そうにのぞき込み声をかける。
「お、おい?すまねえ。……まさかそこまでショックを受けるとは……立てるか?」
優しく手を取られ、私は何とか自分の足で立った。
考えがまとまらない。
まだ呆然としてしまう。
「あー、でも絶対にお前やアリアやミネア達、ギルド内の女には手を出さねえし出させねえ。きっとあいつらも同じだ。そういう欲より…俺たちはお前の生きざまに惚れてるんだ。尊敬している。だから試すようなこと言って悪かった」
心地よい声。
低くて男らしい安心する声。
心の中から安心感が沸き上がる。
彼の私をいたわる気持ちが伝わってきたから……
私は大きく深呼吸をし心を落ち着ける。
「……うん。もう大丈夫。……ありがとうザッカート。……私もあなたが好き」
「なっ?!!」
そしてにっこりと笑みを浮かべ彼の奇麗な瞳を見つめる。
「もちろん『親愛』だよっ!……これでおあいこ。……うん。もう大丈夫。行ってらっしゃい」
「お、おう……ははっ、少しは成長したんだな。ああ、行ってくる。でもな美緒」
「ん?」
「俺は、俺達はお前の事が大好きだ。だから頼む。自分をもっと大切にしてくれ」
「……うん。ありがとうザッカート。……私もっと大人になったら色々真剣に考える。待っていてくれる?」
突然真っ赤になるザッカート。
そして再度天を見上げ何かをつぶやいた。
(ったく……だめだ。勝てねえ……やべえ。……好きすぎることが分かっちまった。……くそっ、可愛すぎだろ……マジで抱きてえ。俺だけのものにしてえ……一番近くでいてえ……くそがっ)
「ん?……なんて?」
「……もねえ」
「えっと…」
「何でもねえよ。俺がジジイになるまでには決めてくれよ?」
「うん」
また一人自分の心を理解してしまったザッカート。
いつの日かその想いは伝えられるのか……
答えなど誰にも分からない。
皆成長していく。
幾つものわだかまりを抱えて。
純粋に力が足りていないことを自覚していた。
「むう、取り敢えず対抗できそうなのが美緒だけでしょ?アルディ、エルノール……私と一緒に鍛えよっか、美緒も協力お願い」
「ゲ…」
「はい。お願いいたします」
「うん」
反応の異なる二人。
リンネはじろりとアルディを睨み付けた。
「あんたね、状況分かってるでしょ?さっさとボーナスポイント振り分けて、とりあえず今のジョブカンストさせるのよ」
「うう、めんどくさ…!?」
「……ふーん。そういうこと言うんだ」
拳を握りしめたリンネにアルディは身震いしてしまう。
「や、やるよ。分かったってば……」
「最初からそう言いなさい?馬鹿」
「ほーい」
……なんか夫婦みたい。
私は思わず笑ってしまう。
「っ!?な、何よ?美緒……そんな目で見るなー。違うしっ!!!」
「はいはい」
「も―――――」
リンネ、可愛い♡
照れるリンネの顔を私は脳内フォルダに保存した。
そうして数日が過ぎていく……
※※※※※
今ギルドにいる人員の中で戦闘が出来る攻撃職と魔法職は25名。
執事長のザナークさんと家事長のファルマナさん、家事手伝いのレリアーナとハイネ君、それから僧侶のアリア5人以外は様々なジョブを持っているものの全員が戦闘のできる状況にはなっていた。
ここ数週間のパワーレベリングで力を増し、頭角を現したのはやっぱりメインキャラクターであるザッカート。
彼は義賊をカンストさせ、今はなぜか選択肢に現れた『極道』という物騒な名前のジョブについていた。
※※※※※
「まさか俺がこんな短期間でカンストするとはな。これもすべてカシラのおかげだ。礼を言う」
任命式から数日後。
私はザッカートに呼び出されサロンで話を聞いていた。
「……すまねえがカシラ、着いて来てくれねえか?聖堂へ」
聖堂はジョブチェンジを行ったり大まかなステータスの確認ができる施設だ。
大きな町にもあるのだけれど、残念ながら宗教の資金集めに利用されており結構なお布施を求められてしまう。
もちろんギルド本部ではお金など必要ない。
元々創造神であるルーダラルダ様が弱いヒューマン族の為に作った施設だしね。
そもそもこれはシステムだ。
人が行う事ではない。
「いいけど、なにか理由あるの?」
「ああ。カシラは知っているかどうか分かんねえが…実はジョブチェンジには裏技があるんだ。同行者の想いが反映し、より上位のジョブが出現することがある」
「っ!?……えっ?凄い……知らなかったよ?」
「ああ。まあ、眉唾だ。……だけどもしそうだとしたら使わねえ手はねえ。頼む」
「う、うん。頭を上げて?協力できるなら嬉しいもん。いこっ!」
※※※※※
そうして訪れ、選択の儀式のときにそれは起こった。
「ははは……ありえねえ。……こんなに違うのか」
「えっ?なになに?選択肢変わったの?」
水晶に触れ、ザッカートは感嘆の言葉を零していた。
ジョブチェンジにはいくつか条件がある。
まず一つ。
授かっているジョブをカンストさせること。
たまにジョブのない人も居る。
そういう人は魂の状況で選べるジョブが表示される。
この前のアリアみたいにね。
スッゴク珍しいのだけれど……
二つ。
その人の本質に左右される。
そして想いにも。
今ついているジョブと関連が大きいのね。
三つ。
魂と交信するため儀式の最中は他の人には見えない。
彼は今義賊。
しかも元々は盗賊で、魂の覚醒で進化したジョブだ。
ミルライナもそうだったけど。
でも本来それはなかなかあることではないんだよね。
で、覚醒ジョブ持ちはいくつかの特権が付く場合がある。
通常ルートでは出ない新たなジョブの出現とボーナスポイントの付与だ。
「ああ。カシラ、やっぱあんたすげえ。俺は一生ついていく。……逃がさねえ。覚悟しろよ?」
「うあ、もう。言い方。……なんか決闘とか申し込まれているみたい」
「ははっ。あながち間違っちゃいねえ。俺はお前を守るって決めたんだ。絶対に抜いてやるさ」
「っ!?……もう。………期待しても良いの?」
私の問いに優しいまなざしで見つめるザッカート。
「!?」
なんか雰囲気が変わった?!
……うあ、ザッカートの目……色気?!
「……美緒の為になりたいんだ…俺はお前が好きだからな」
「っ!???」
途端に瞳に熱がこもる。
いくら鈍い私でも何となくわかっちゃうほどの熱い瞳……
え?……嘘?!!
ザッカートが私を?
どうしていいか分からず、オロオロしてしまう。
そんな私の頭にザッカートは優しく大きな手を乗せた。
「(ふっ、まったく圏外でもなさそうだな)……勘違いすんな。『親愛』の情だ……今はな」
「っ!?か、勘違い?!し、し、してないよ?!!……も、もう、からかわないで!!」
「ははっ、わりい。取り敢えず俺は『極道』を選んだ。よろしく頼む」
「う、うん」
ザッカートは私の認識に無いジョブ『極道』を選んだ。
やっぱりメインキャラクター。
色気がやばすぎ。
もう。
※※※※※
『極道』
道を究めし者。
儀を重んじ、そのためなら修羅となるジョブ。
覚醒時能力値が跳ね上がる。
特に心に決めた主、そのための力は天元を超える。
固有スキル
乾坤一擲
忍と同等の伝説級ジョブ。
※※※※※
「ふん。俺の求めていたものだ。カシラ、ありがとうな」
「ううん。でも私が来た意味あったのかな?」
「さてな。……じゃあちょっくら抜けさせてもらう。……部下どもとガス抜きに行ってくるわ」
「……はあ。わかりました。……気を付けてね」
「ん?怒らないのか?」
ザッカートはにやりとイジワルそうな表情を浮かべ私を見つめる。
『ガス抜き』……娼館だ。
「べ、別に?お、怒らないよ……だって、そ、その……男の人は…えっと…」
「金で女を自由にする下卑た行為だ。……だが必要な事だ」
「……う、うん」
「軽蔑するか?」
「………」
正直嫌だ。
大好きな仲間たちだけど……生物的には間違ったことではないけど……
でもそのおかげで彼らが頑張れるのは事実だ。
それに我慢をし過ぎて犯罪に走るより100倍はいい。
「ごめんなさい。正直嫌だ。……でも……わ、私じゃ代わりになれないもの。……そ、そんな知識も、経験もないし……軽蔑はしません。これは本当。きっと私が子供だからすねちゃうだけだと思うっ!?」
いきなり強く肩を掴まれた。
えっ?!
怒ってる?!!
「ば、馬鹿っ!!間違ってもそんなこと言うな!!お前は代わりとかじゃねえ!……ったく、成長したかに見えたが……てんでだめじゃねえか。……あーくそっ。悪かったよ。……すまねえ」
「えっ?!えっと……」
ザッカートは天を見上げ大きくため息をついた。
そしてゆっくりと話し出す。
「なあカシラ。男と女は違う。これは分かるか?」
「う、うん」
「男はな、お前ら女よりも動物に近けえ。どうしたって溜まっちまう。だから娼館は必要なんだ」
「??えっ?どういう……」
ザッカートは乱暴に頭をかきむしる。
「欲で抱ける。女をな。……愛がなくてもだ」
「っ!?」
「こんなこと言いたくねえが……カシラは可愛くて女として魅力的なんだ。皆心の中できっと数回はお前で妄想してる」
「!!!!」
私は力が入らなくなりヘナヘナと座り込んでしまう。
女として魅力的?
私が?!
私で……妄想?!!
昔見たスマホに流れてきたそういう動画が一瞬よぎる。
途端に赤く染まる私の顔。
火が出そうだ。
「まったく。言わせんなこんな恥ずかしい事。それに特別な事じゃねえ。男なら誰だってそういう事はあるもんだ。……それこそガキでもな……エルノールは……なさそうだがな。あいつは真面目過ぎ」
「………そ、そうなんだね?」
うあ、ザッカートの言葉……全然頭に入ってこない。
「ちっ、カシラにゃ刺激が強いみたいだな。まあ、慌てんな。だけどお前だってもう18だろ?子供だって産めるんだ。……好きな奴とかいるのか?」
「……みんなのこと好き……でも……そういう好きじゃない?」
意識してこなかった。
きっとわざと。
だって私はいつかいなくなる……
そう思っていた。
転移した直後エルノールに言われたけど……
結婚とか逆ハーレムとか。
っ!?だからリンネ………
茫然としてしまう私。
ザッカートが心配そうにのぞき込み声をかける。
「お、おい?すまねえ。……まさかそこまでショックを受けるとは……立てるか?」
優しく手を取られ、私は何とか自分の足で立った。
考えがまとまらない。
まだ呆然としてしまう。
「あー、でも絶対にお前やアリアやミネア達、ギルド内の女には手を出さねえし出させねえ。きっとあいつらも同じだ。そういう欲より…俺たちはお前の生きざまに惚れてるんだ。尊敬している。だから試すようなこと言って悪かった」
心地よい声。
低くて男らしい安心する声。
心の中から安心感が沸き上がる。
彼の私をいたわる気持ちが伝わってきたから……
私は大きく深呼吸をし心を落ち着ける。
「……うん。もう大丈夫。……ありがとうザッカート。……私もあなたが好き」
「なっ?!!」
そしてにっこりと笑みを浮かべ彼の奇麗な瞳を見つめる。
「もちろん『親愛』だよっ!……これでおあいこ。……うん。もう大丈夫。行ってらっしゃい」
「お、おう……ははっ、少しは成長したんだな。ああ、行ってくる。でもな美緒」
「ん?」
「俺は、俺達はお前の事が大好きだ。だから頼む。自分をもっと大切にしてくれ」
「……うん。ありがとうザッカート。……私もっと大人になったら色々真剣に考える。待っていてくれる?」
突然真っ赤になるザッカート。
そして再度天を見上げ何かをつぶやいた。
(ったく……だめだ。勝てねえ……やべえ。……好きすぎることが分かっちまった。……くそっ、可愛すぎだろ……マジで抱きてえ。俺だけのものにしてえ……一番近くでいてえ……くそがっ)
「ん?……なんて?」
「……もねえ」
「えっと…」
「何でもねえよ。俺がジジイになるまでには決めてくれよ?」
「うん」
また一人自分の心を理解してしまったザッカート。
いつの日かその想いは伝えられるのか……
答えなど誰にも分からない。
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