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第25話 黒髪黒目の美少女はアルディと面会する

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あの作戦から2日。
激しい怒りとほぼ限界まで魔力を消耗したことで美緒は帰還後気を失うようにベッドで眠りについた。

そして丸1日以上美緒は目を覚まさず眠り続け―――
ようやく目を覚ましたところだった。

『解呪スキル』という物の代償だろう。

特別な称号を持つ美緒でさえノーリスクという訳にはいかなかった。


※※※※※


「美緒?起きたにゃ?」

美緒の自室にミネアとルルーナが様子を見に来てくれた。
ずっと美緒を看病してくれていたレリアーナに美緒が目覚めたことを聞いて訪ねてきたのだ。

「うん、ごめんね。心配かけて。リアもありがとう。……ミネア…そ、その……」

美緒は不安げな顔をし視線をさまよわせてしまう。

何より美緒にその気はないものの、もしあれ以上の魔法を行使していればミネアは死んでいた。
さんざん勉強した教本にもちゃんと記されていた事だ。
でもあの時美緒は錯乱し、頭が真っ白になってしまっていた。

そんなことは言い訳には出来ない。
その事実に美緒の目に涙が浮かぶ。

「…ご、ごめん…なさ……っ!?」

突然大好きな優しい香りとぬくもりに包まれ一瞬息が止まる美緒。
そして我慢していた涙腺が崩壊する。

「ひぐっ、わた、私…ヒック…貴女を…ぐすっ……ころ…‥んぐっ?」
「ありがとうにゃ美緒」

ミネアの指が美緒の唇を押さえる。
それ以上言わせないよ?という想いとともに。

「ありがとうにゃ。本当にありがとうにゃ。……うちはとっても元気にゃ♡」
「っ!?……ミネ、ア?……う、うん。……よがっだ~…ヒック……うわーん」

その様子にレリアーナとルルーナは親愛の表情を浮かべていた。
部屋に温かい想いが溢れていく。


※※※※※


「僕をどうするつもり?もう飽き飽きなんだけど」

ギルド本部地下2階の尋問室で、アルディは見張りについているエルノールに問いかけた。
何をされたか知らないが全く魔力が練れない。
おまけにスキルも封じられているようだ。

この部屋に入れられた時に魔道具でもある邸宅のカギは奪われ、いろいろ事情を聴かれたもののその後はほぼ放置。
2000年生きてきてこんな目には腐るほどあってきていたアルディは、攫われたにもかかわらず一切苦痛を与えてこないここの住人に対し、すでに退屈していた。

あまつさえ用意された清潔なベッドに衣服。
夜には温かいお湯と清潔なタオル、着替えまで渡されていた。
さらには3食旨い食事も振舞われていた。

拘束されているとはいえ、まるで客人待遇だ。
意味が分からない。

「貴方には聞きたいことがいくつかある。危害を加えるつもりはない。話してくれるだろうか」
「はああ?!なにそれ。だったら最初からそう言えばいいじゃん。……あの化け物はどうしたのさ?」
「化け物ではない。ゲームマスターだ」
「っ!?へっ?!……まじで?うわー、そうだったの?!なんだよ、早く言えよな。何でも教える。連れてきてよ」

突然態度が変わるアルディ。
エルノールは訝しそうに目を細める。

「分かった。連れてこよう。……一ついいだろうか」
「なに?」
「貴方は本当に2000年も生きてきたのか?」
「まあね。……本当に退屈だったよ。君に分かるかな?運命に縛られ何もできない僕の気持ちが……ふう、分かんないよね。……いいよ。忘れて」

諦めたように笑うアルディに、数か月前までの自分が被る。
エルノールは美緒によりその重責から解放された。
でもこの男は…アルディは……

「……少しだけは分かるつもりだ。私も称号に縛られていた。……まあ数年だ。貴方の想いの数百分の一だろうが。…待っていてくれ。連れてくる」

「えっ?……君も??……なっ?!転移魔法??!!」

投げかけられる言葉を背にエルノールは執務室へと転移した。


※※※※※


執務室ではリンネと、友達とのおしゃべりを終えた美緒がソファーに座りアルディのことで話し合いを行っていた。

「ねえリンネ。あいつ何なの?本当にただのエロジジイじゃん。私寝ていたからまだ会っていないけど、昨日助け出した女の子だってなんか『いたずら』されてたみたいだし」
「まあまあ。その女の子も命に別状はないよ?貞操も失ってないしね。美緒だって別に触られてはいないでしょ?少し落ち着いて」
「うん。……リンネにしか触られてないけど?」

思わずジト目をリンネに向ける。
同時にあの時の何とも言えない感覚を思い出してしまい自然と顔が赤く染まってしまった。

「あは、あははは。ごめんて。……それともなーに?また気持ちよくなりたいのかな?ん?」
「っ!?もう、リンネのイジワル。……ふんだ」

顔を背けむくれる美緒。
リンネは苦笑いだ。

そこへエルノールが転移してきた。
明るい美緒の表情にやさしい気持ちが沸き上がってくる。

「美緒さま、もうお体は問題ありませんか?」
「うん。……ありがとうエルノール。……貴方のおかげで大切な友達を助けられた。あなたはいつでも私の心を守ってくれる……ふふっ、本当に私だけの騎士様みたい♡」

リンネとの会話の余韻でいまだ顔が赤い。
そんな事に気が回らず彼女は想いを伝えた。
赤い顔で真直ぐ伝えてくる美緒の余りの破壊力にエルノールは悶絶してしまう。

「う、あ。……コホン。……光栄です」
「うん♡」

その様子をニヤニヤ見みているリンネ。

「コホン。美緒さま。……アルディが面会を求めております」
「っ!?……分かった。…リンネ、同席する?」
「……そうだね。見てみたいかも。『流入者』である彼を。あー、因みに美緒の思っていることも正解だし、私の所見も正解。あいつはあんたとは違うからね」
「……分かったよ。お願いねリンネ」

「それではまいりましょう。美緒さま、手を」
「う、うん」

美緒はそっとエルノールの手に自分の手を乗せる。
がっしりとした男性の手に美緒は顔を赤らめる。

「えー?美緒だけ?私は?」
「……………どうぞ」

「やっさしー。じゃあ、レッツゴー!!」


※※※※※


「ねえ、まだ?僕早くゲームマスターに会いたいんだけど」
「うるせえな。喚くな。……ったく、あんた2000歳越えなんだろ?まるっきりガキじゃねーか」
「ははは、よく言われるよ。心は少年のままなのさ。おっさんと違ってね」
「誰がおっさんだこの野郎。俺はまだ26だ」
「おっさんじゃん」
「ちげーわ」

美緒たち3人が転移していくと何故かザッカートとアルディが子供みたいな口げんかをしていた。
思わず呆れたように溜息をつくエルノール。
3人に気づいたアルディが、朗らかに声をかけてくる。

「やあ、君がゲームマスター?……ん?はあ???な、なんでリンネがいるんだよ?!」
「ふーん。神様相手に呼び捨てとか。……『跪け』」

「ひぎっ」

突然跪くアルディ。
リンネが腕を組みアルディを見下ろす。

「あんたのちんけなスキルと違う『神の言霊』のお味はどうかしら?……全く。あんた全然変わらないね」
「グギギ……降参。解除して。お願い」
「あんたのことはお見通しだ。『嘘をつくことを禁じる』はい、どーぞ」

リンネが宣言し指をパチンと鳴らす。
拘束が解除されたようでアルディがゆっくりと立ち上がった。

「くそっ。このロリババアが。……で?君がゲームマスター?……あれ?…君……」

「はじめまして。美緒、守山美緒です。……ねえザッカート。この人のアレ、ちょん切ったの?」
「「「っ!???」」」

目の座った美緒の衝撃発言に男性3人が身を震わせる。

「い、いや。カシラ、さすがに……」
「ふーん。そっか。……次不埒な事したら問答無用でちょん切りますからね。分かった?」

表情のない顔でアルディに視線を向ける美緒。
怖すぎる。

「う、わ、分かったよ。でも僕ないんだよな。……おちんちん」
「おちん…はあ?!あんた何言って!??もう、ばかっ!」
「いやーごめん。ほら、僕今嘘つけないからさ。……美緒ちゃん?可愛いおっぱいだね。僕揉みたいな。柔らかいんだろうね♡」

「な、な、な!???」
「うーん。本当に可愛い。はあ、僕君のお尻もなでまわしたいなあ。顔も舐めたいかも」
「い、いや―――――――――――!!!」

キラキラ美少年フェイスで可愛く発せられる素直なセクハラ発言に美緒は魂の叫びをあげたのだった。
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