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#16 見送る風
#16.5 困惑の風
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強い風が聞こえた方角へ飛び続けるケイコたちです。頼りになるのは月明かりのみ、目を凝らして小さなノリコたちを探していきます。ノリコたちに近づいていれば、その泣き声が聞こえてきそうですが、その声は何故か小道で留まり続けていたのです。
その代わり、草むらの中にその小道を発見。その先に白い何か、それはきっと白猫のニャージロウでしょう。そしてそこに瞬く小さな光、月明かりを反射する猫さんたちの瞳が揺らめいているのが見えてきました。
「あそこじゃあああ、マチコおおお」と叫ぶケイコ、「そんなの分かってるわよぉぉぉ」、のマチコ、グイッと風をひねって急降下です。そして泣いているノリコたちを見付けました。
小道に舞い降りたケイコはスタスタッとノリコに駆け寄ると、両手を広げてノリコとニャージロウの間に立ちはだかりました。そして、
「なにをするんじゃあああ」とニャージロウを威嚇しながらプルプルするケイコです。それは猫さんたちに囲まれていたので苛められていると思ったのしょう。
一方、「もう大丈夫だから」と言いながらエリコの頭を撫で、同じ言葉をノリコにも掛けるマチコです。すると、
「違うのー、ニャーゴがー、ニャーゴがー」と、しゃくりながら答えるノリコです。
それで、周囲をクルッと見渡すマチコ、そのマチコと目が合うたびにピクッとなる猫さんたちです。その猫さんたちの中にニャーゴの姿が見えないこと、ノリコたちが泣いていること、猫さんたちが集まっていることで、大凡見当が付いたマチコです。
「そうね、私たちと生き物は、生きてる時間が違うのよね」と呟いたマチコに、
「そんなの、分かってるよー、マチコの、バカー」と怒り出すノリコ、今は全てを認めたくない一心だけです。おまけに、泣き止みかけていたエリコがノリコの声で余計に泣き出してしまいました。この惨状に、つい口を滑られたことを後悔するマチコです。そこに、更に追い討ちをかけるように、
「ニャーゴがどうしたんじゃあああ、マチコおおお」と大きな声のケイコです。
(なんでこんな時に、そんなことを言うのよ)とケイコを睨んだものの、みんなから責められて困り果てるマチコ、『どうしよう』、です。怒るノリコ、ただただ泣き続けるエリコ、こっちの気も知らないで、のケイコ、なんだか知らない猫さんたちに囲まれ、こっちが泣きたいくらいよ、のマチコ、どうしましょう、です。
そこで、あれこれを考えに考えた末に、ニャーゴがここに居れば問題ないのよ、と無理なことを考えてしまうマチコです。それ以外に一体どうすれば、とクルクルと同じことしか思い浮かばなくなったマチコです。
それで考えることを止めたマチコは、(もうどうすることも出来ないでしょう)と顔を上げ、そこにケイコの『のほほん』とした、またはそう見えるケイコに、(あんたも考えなさいよ!)と心の中で呟くのでした。そして、(全く、あんたときたら、あの時も大変だったんだからね)と思ったところで、『あの時』のことを思い出したマチコです。
「ねえ、ノリコ。ニャーゴに会いに行こう。今ならまだ間に合うから、ううん、きっと向こうでノリコが来るのを待ってるはずだから」のマチコに、
「うそ、もう会えないから、もう、会えないんだよー」と怒ったまま受け付けないノリコです。それでも、
「私たちは、嘘は言わないでしょう?」のマチコに、やっと、泣くのを止めたノリコ、その涙を引っ込めたのはニャーゴに会いたい一心からでしょう。そして聞かずにはいられないその方法を尋ねます。
「でも、どうやって?」
「そんなところが、会えるところがあるの。だから急ぎましょう、ニャーゴが待ちくたびれる前に、ねえっ」
マチコの提案に、なんとか頷くノリコです。それを見るや否や、
「ケイコおおお、今すぐ帰るわよおおお」のマチコに、
「はっ、はい」と驚きつつ素直に返事をするケイコです。
そうして一箇所に集まった風の子たちです。そこで手を繋ぎ合い、帰る準備が出来ましたが、そこで、
「帰るって、どこに帰るのじゃ、マチコ」と尋ねるケイコに、
「あんたの家に決まってるでしょう」と、少々荒ぶるマチコです。
「そっ、それもそうじゃな、では」とケイコが言ったところで、
「ちょっと待って」と止めるマチコです。そして何かを探すように辺りを見渡すと、「私たちだけじゃ……あれだから、ニャージロウも連れて行きましょう」とケイコに合図するマチコです。
しかし、マチコからの合図に頷くだけで何もしないケイコです。どうやら聞いていなかったのか、意味が分からなかったのでしょう、ボケーっとしているケイコです。そこに、
「早く!」と催促するマチコ、それに慌てるケイコです。
そこで、鋭い眼光をニャージロウに向けるケイコ、それに何かを察したニャージロウが逃げようと尻尾を向けてきます。そこで逃げられまいと尻尾にしがみ付いたケイコは、ずるずるとニャージロウに引きずられて行きました。
「待つんじゃ、ニャージロウ、一緒に行くんじゃあああ」のケイコに、
「知ったことか、嫌だよ」と言ったようなニャージロウ、
「先に行って、待ってるからあああ」のマチコです。
こうして、その場で消えたマチコとノリコ、そしてエリコ、ニャージロウに引きづられながら消えて行くケイコ、その場にキョトンと残された猫さんたち一行です。
◇
その代わり、草むらの中にその小道を発見。その先に白い何か、それはきっと白猫のニャージロウでしょう。そしてそこに瞬く小さな光、月明かりを反射する猫さんたちの瞳が揺らめいているのが見えてきました。
「あそこじゃあああ、マチコおおお」と叫ぶケイコ、「そんなの分かってるわよぉぉぉ」、のマチコ、グイッと風をひねって急降下です。そして泣いているノリコたちを見付けました。
小道に舞い降りたケイコはスタスタッとノリコに駆け寄ると、両手を広げてノリコとニャージロウの間に立ちはだかりました。そして、
「なにをするんじゃあああ」とニャージロウを威嚇しながらプルプルするケイコです。それは猫さんたちに囲まれていたので苛められていると思ったのしょう。
一方、「もう大丈夫だから」と言いながらエリコの頭を撫で、同じ言葉をノリコにも掛けるマチコです。すると、
「違うのー、ニャーゴがー、ニャーゴがー」と、しゃくりながら答えるノリコです。
それで、周囲をクルッと見渡すマチコ、そのマチコと目が合うたびにピクッとなる猫さんたちです。その猫さんたちの中にニャーゴの姿が見えないこと、ノリコたちが泣いていること、猫さんたちが集まっていることで、大凡見当が付いたマチコです。
「そうね、私たちと生き物は、生きてる時間が違うのよね」と呟いたマチコに、
「そんなの、分かってるよー、マチコの、バカー」と怒り出すノリコ、今は全てを認めたくない一心だけです。おまけに、泣き止みかけていたエリコがノリコの声で余計に泣き出してしまいました。この惨状に、つい口を滑られたことを後悔するマチコです。そこに、更に追い討ちをかけるように、
「ニャーゴがどうしたんじゃあああ、マチコおおお」と大きな声のケイコです。
(なんでこんな時に、そんなことを言うのよ)とケイコを睨んだものの、みんなから責められて困り果てるマチコ、『どうしよう』、です。怒るノリコ、ただただ泣き続けるエリコ、こっちの気も知らないで、のケイコ、なんだか知らない猫さんたちに囲まれ、こっちが泣きたいくらいよ、のマチコ、どうしましょう、です。
そこで、あれこれを考えに考えた末に、ニャーゴがここに居れば問題ないのよ、と無理なことを考えてしまうマチコです。それ以外に一体どうすれば、とクルクルと同じことしか思い浮かばなくなったマチコです。
それで考えることを止めたマチコは、(もうどうすることも出来ないでしょう)と顔を上げ、そこにケイコの『のほほん』とした、またはそう見えるケイコに、(あんたも考えなさいよ!)と心の中で呟くのでした。そして、(全く、あんたときたら、あの時も大変だったんだからね)と思ったところで、『あの時』のことを思い出したマチコです。
「ねえ、ノリコ。ニャーゴに会いに行こう。今ならまだ間に合うから、ううん、きっと向こうでノリコが来るのを待ってるはずだから」のマチコに、
「うそ、もう会えないから、もう、会えないんだよー」と怒ったまま受け付けないノリコです。それでも、
「私たちは、嘘は言わないでしょう?」のマチコに、やっと、泣くのを止めたノリコ、その涙を引っ込めたのはニャーゴに会いたい一心からでしょう。そして聞かずにはいられないその方法を尋ねます。
「でも、どうやって?」
「そんなところが、会えるところがあるの。だから急ぎましょう、ニャーゴが待ちくたびれる前に、ねえっ」
マチコの提案に、なんとか頷くノリコです。それを見るや否や、
「ケイコおおお、今すぐ帰るわよおおお」のマチコに、
「はっ、はい」と驚きつつ素直に返事をするケイコです。
そうして一箇所に集まった風の子たちです。そこで手を繋ぎ合い、帰る準備が出来ましたが、そこで、
「帰るって、どこに帰るのじゃ、マチコ」と尋ねるケイコに、
「あんたの家に決まってるでしょう」と、少々荒ぶるマチコです。
「そっ、それもそうじゃな、では」とケイコが言ったところで、
「ちょっと待って」と止めるマチコです。そして何かを探すように辺りを見渡すと、「私たちだけじゃ……あれだから、ニャージロウも連れて行きましょう」とケイコに合図するマチコです。
しかし、マチコからの合図に頷くだけで何もしないケイコです。どうやら聞いていなかったのか、意味が分からなかったのでしょう、ボケーっとしているケイコです。そこに、
「早く!」と催促するマチコ、それに慌てるケイコです。
そこで、鋭い眼光をニャージロウに向けるケイコ、それに何かを察したニャージロウが逃げようと尻尾を向けてきます。そこで逃げられまいと尻尾にしがみ付いたケイコは、ずるずるとニャージロウに引きずられて行きました。
「待つんじゃ、ニャージロウ、一緒に行くんじゃあああ」のケイコに、
「知ったことか、嫌だよ」と言ったようなニャージロウ、
「先に行って、待ってるからあああ」のマチコです。
こうして、その場で消えたマチコとノリコ、そしてエリコ、ニャージロウに引きづられながら消えて行くケイコ、その場にキョトンと残された猫さんたち一行です。
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