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#12 強い風
#12.4 風を守る記憶
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リンコたちを乗せたシャトルが地球を目指し降下して行く様を、じっと見つめるアイです。そのままでは、どんどん小さくなっていくシャトルの画像を拡大しながら、初めて自分の監視、いいえ、保護下から離れていくエリコのことを思います。
それは、正確に言えば『計算している』ということになります。そもそもアイはAIであり、それをエリコがアイと呼んだことから、そういう名前になったそうです。
そのアイがしている『思い』という計算は、発散しな様に最適な値を持って最適解へと収束し、その結果の中で確率の高いものを答えとするのですが、どうやら、その『思い』は答えが出ないようで、何時まで経っても計算が終わりません。
では、アイの計算が終わるまでの間、アイの記憶を覗いてみましょう。正確には記憶ではなく記録になりますので、ビューワーという便利な道具で行います。これを使えば、あんなことやこんなことも全てお見通し、という大変お得な一品。ビューワーとは心の中を覗く『窓』のようなものなのです、はい。
◇
遠い遠い昔、人類は新天地を目指して宇宙を旅をしていました。どこかに人が住める星はないかなぁ、という具合で手頃な星を探していましたが、その旅する人たちを乗せていたのが移民船です。そう、移民船といえば、それの成れの果て……ではなく『思い出』がケイコの家であり、ヨシコが潜伏している例のアレのことです。
話は逸れましたが、実はその移民船が直接、新天地を探していた訳ではないのです。何せ大勢が乗る、それはそれは大きな大きな船なもんですから、それでアッチコッチと彷徨いていては面倒です。
そこで、その先遣隊として小型の船が先回りし、新天地となる星を探していました。それがアイの宇宙船です。そして星を見つけると移民船に連絡するというのが役割でした。
しかし、新天地を見つけた人類は、移民船と同様にアイの宇宙船も放棄してしまいました。まあ、見つけたら用無しですから。但し移民船と違い、頑丈に作られていたアイの船は、『とにかく地球から離れること』という最後の命令を受けていたのです。
なにせ頑丈な船だったので、移民船のように自然とバラバラになることはなく、おまけに自己修復機能、つまり壊れても自分自身を治せることが出来たため、ずっと宇宙を漂っていたのです、どんぶらこ。
ところで、なかなか壊れない、壊れても治せる頑丈な船だったことは、実は裏の真実が隠されていたのです。それはですね……こっそりと話しましょう、こっそりです。
その裏の真実とは、星発見の連絡を受ける移民船でも、ごく僅かの人しか知らないことになっていました。それはアイの船が地球に現れた時、調査のため各地にドローンを飛ばしていたことと関連しています。
あれはエリコの同族を探すため、という説明をアイがしていましたが、本来は調査対象の星に知的生命体の有無を調べるのが目的だったのです。そう、人のような存在です。
そして、もしそのような存在を発見した場合、それらを殲滅するのがアイの船が果たす目的でした。よって、その場合、反撃されることも予測されるので頑丈に作られていた、という訳です。要は先遣隊という先制攻撃部隊でもあったのです。
では、何故そのようなことをする必要があったのでしょうか。それは人類と知的生命体との直接的な争いを避けるため、というのが理由です。実際、それが行われたかどうかは、今では記録が残っていないため不明です。
◇◇
ということで、お役御免となったアイの船は宇宙を『どんぶらこ』と漂っていました。それは、終わりも当てもない、ただ『どんぶらこ』の日々だったのです。そんな、ある日のことです。既にやることもなく、地球から離れればいいんだろう、とブラブラとしている最中、ある『御方』と出会ったのです。
その『御方』は突然あわられ、アイに、こう言いました。
「暇だろう、この子を預かれ」と、いきなりの申し出、または命令、もしかしたら依頼に、
「てやんでえ、こちとら忙しんでい。おととい来やがれ」と、今と違って乱暴なアイでしたが、それは攻撃も辞さない荒くれ者に設計されていたため、致し方なかったでしょう。勘弁してあげます。
そんなアイの返答に関係なく、その『御方』は、
「じゃあ、任せたぞ」と、まだ幼いエリコをアイに押し付け……託したのです。そして、四の五の言うアイを無視して、「この子の親となれ、教師となれ、出来れば友として道を示せ。そして僕として尽くすのだ」と言い残すとバックれて……消えてしまったのです。
当然、なにがなんだか分からないアイですが、突然、全てを理解したアイです。この『突然』とは一体、なにが起こったのでしょうか。それはアイが船のコンピューターであり、その上で稼働するAIであることが原因でしょう。
『御方』は素早くそのことを見破り、コンピューターのプログラムを神業で書き換えたのです。それはもう、コンピューターウィルスの比ではありません。あちこちをいじり倒し、スーパーなんでも出来るもん、にグレードアップしてしまったのです。
そのおかげでアイは早速、
「女王様、なんなりと言いつけてください。私はあなたの忠実なる僕で御座います」と究極進化したのでした。
序でに記憶、いえ、記録も改ざんされたため、『御方』の姿は幻となり、地球から離れるどころか、逆に地球に向かう、ということになったそうです。
こうしてエリコを女王様として崇め、慈しみ、守りながら旅することになったアイです。
ところで余談ですが、アイとヨシコは似ているようで全く違う存在です。それは、アイには物理的な実体がありますが、ヨシコの場合、あれは船のコンピューターではなく、その中の、そう、カッコよく言えば『電脳空間の思い出』に住んでいる正真正銘、風の子なのです、はい。
◇
それは、正確に言えば『計算している』ということになります。そもそもアイはAIであり、それをエリコがアイと呼んだことから、そういう名前になったそうです。
そのアイがしている『思い』という計算は、発散しな様に最適な値を持って最適解へと収束し、その結果の中で確率の高いものを答えとするのですが、どうやら、その『思い』は答えが出ないようで、何時まで経っても計算が終わりません。
では、アイの計算が終わるまでの間、アイの記憶を覗いてみましょう。正確には記憶ではなく記録になりますので、ビューワーという便利な道具で行います。これを使えば、あんなことやこんなことも全てお見通し、という大変お得な一品。ビューワーとは心の中を覗く『窓』のようなものなのです、はい。
◇
遠い遠い昔、人類は新天地を目指して宇宙を旅をしていました。どこかに人が住める星はないかなぁ、という具合で手頃な星を探していましたが、その旅する人たちを乗せていたのが移民船です。そう、移民船といえば、それの成れの果て……ではなく『思い出』がケイコの家であり、ヨシコが潜伏している例のアレのことです。
話は逸れましたが、実はその移民船が直接、新天地を探していた訳ではないのです。何せ大勢が乗る、それはそれは大きな大きな船なもんですから、それでアッチコッチと彷徨いていては面倒です。
そこで、その先遣隊として小型の船が先回りし、新天地となる星を探していました。それがアイの宇宙船です。そして星を見つけると移民船に連絡するというのが役割でした。
しかし、新天地を見つけた人類は、移民船と同様にアイの宇宙船も放棄してしまいました。まあ、見つけたら用無しですから。但し移民船と違い、頑丈に作られていたアイの船は、『とにかく地球から離れること』という最後の命令を受けていたのです。
なにせ頑丈な船だったので、移民船のように自然とバラバラになることはなく、おまけに自己修復機能、つまり壊れても自分自身を治せることが出来たため、ずっと宇宙を漂っていたのです、どんぶらこ。
ところで、なかなか壊れない、壊れても治せる頑丈な船だったことは、実は裏の真実が隠されていたのです。それはですね……こっそりと話しましょう、こっそりです。
その裏の真実とは、星発見の連絡を受ける移民船でも、ごく僅かの人しか知らないことになっていました。それはアイの船が地球に現れた時、調査のため各地にドローンを飛ばしていたことと関連しています。
あれはエリコの同族を探すため、という説明をアイがしていましたが、本来は調査対象の星に知的生命体の有無を調べるのが目的だったのです。そう、人のような存在です。
そして、もしそのような存在を発見した場合、それらを殲滅するのがアイの船が果たす目的でした。よって、その場合、反撃されることも予測されるので頑丈に作られていた、という訳です。要は先遣隊という先制攻撃部隊でもあったのです。
では、何故そのようなことをする必要があったのでしょうか。それは人類と知的生命体との直接的な争いを避けるため、というのが理由です。実際、それが行われたかどうかは、今では記録が残っていないため不明です。
◇◇
ということで、お役御免となったアイの船は宇宙を『どんぶらこ』と漂っていました。それは、終わりも当てもない、ただ『どんぶらこ』の日々だったのです。そんな、ある日のことです。既にやることもなく、地球から離れればいいんだろう、とブラブラとしている最中、ある『御方』と出会ったのです。
その『御方』は突然あわられ、アイに、こう言いました。
「暇だろう、この子を預かれ」と、いきなりの申し出、または命令、もしかしたら依頼に、
「てやんでえ、こちとら忙しんでい。おととい来やがれ」と、今と違って乱暴なアイでしたが、それは攻撃も辞さない荒くれ者に設計されていたため、致し方なかったでしょう。勘弁してあげます。
そんなアイの返答に関係なく、その『御方』は、
「じゃあ、任せたぞ」と、まだ幼いエリコをアイに押し付け……託したのです。そして、四の五の言うアイを無視して、「この子の親となれ、教師となれ、出来れば友として道を示せ。そして僕として尽くすのだ」と言い残すとバックれて……消えてしまったのです。
当然、なにがなんだか分からないアイですが、突然、全てを理解したアイです。この『突然』とは一体、なにが起こったのでしょうか。それはアイが船のコンピューターであり、その上で稼働するAIであることが原因でしょう。
『御方』は素早くそのことを見破り、コンピューターのプログラムを神業で書き換えたのです。それはもう、コンピューターウィルスの比ではありません。あちこちをいじり倒し、スーパーなんでも出来るもん、にグレードアップしてしまったのです。
そのおかげでアイは早速、
「女王様、なんなりと言いつけてください。私はあなたの忠実なる僕で御座います」と究極進化したのでした。
序でに記憶、いえ、記録も改ざんされたため、『御方』の姿は幻となり、地球から離れるどころか、逆に地球に向かう、ということになったそうです。
こうしてエリコを女王様として崇め、慈しみ、守りながら旅することになったアイです。
ところで余談ですが、アイとヨシコは似ているようで全く違う存在です。それは、アイには物理的な実体がありますが、ヨシコの場合、あれは船のコンピューターではなく、その中の、そう、カッコよく言えば『電脳空間の思い出』に住んでいる正真正銘、風の子なのです、はい。
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