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恐るべき執着心

93 怖い手紙

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ロンテ・ブレイブの名前を聞いて顔面蒼白になってザベル先生に魔法で医務室に叩き込まれたローレス。

 医務室に叩き込まれたのは四時限目で、六時限目になっても教室に顔を出さないから医務室に行ってみることになった。

 ザベル先生に魔法で運ばれていったので手紙を読んでいないし、一応持っていくことにもなっている。

 これが原因、というか送り主が原因みたいだから渡したくはないけどカリヤ先輩の時のように決闘の申し込みだとか大事な用事だと困るだろうから、ってな感じだ。

 大人数で押し掛けるのもアレなので一応は当事者の永華とカルタが向かうことになった。

 置きっぱなしになっているローレスの荷物はベイノットとレーピオが責任もって部屋に運んでくれることになった。

 そして二人で医務室に行ってみれば唸ってベッドに寝転んでいるローレスがいた。

「ローレス、起きてるかな?」

「起きてても大丈夫そうではないな」

 顔色悪いし魘されてるもんね。

 保険医に話を聞きに行ってみれば精神的なものが原因みたいで寝込んでしまっていると聞いた。

 なにかしらロンテ・ブレイブにトラウマがあるんだろうか?

 これ、手紙持ってこない方がよかったかもしれない。

 ベッドに寝転がっているローレスに近づいてみると私達に気がついたのか起き上がる。

「永華ちゃん、篠野部……」

「やっほー、ローレス。気分悪そうだね……」

「三時間ぐらいたってるが、かわらず顔色悪いな」

 ローレスはなんで?とでも言いたげな表情である。友人の見舞いに来たのに、その表情はどうかと思う。

「あぁ、うん。まあ、ちょっと気分悪いかな」

 歯切れの悪い返事だ。

 お腹を押さえてるとこを見るにお腹の調子が悪いのかな?

 いつもの元気さがない分、余計に体調が悪そうに見える。

「あ、手紙……俺、放置してきちゃったんだっけ?」

「先生に有無を言わせずに運ばれたのもんね」

 ザベル先生がローレスの顔見た次の瞬間、目を見開いて速攻魔法使ってたからね。

「一応持ってきたけど、見る?見ないなら篠野部に持って帰って貰うけど……?」

 永華の言葉にローレスは悩む素振りを見せるが、結局は手紙の中を今見ることにしたようだ。

 手紙を渡すと戸惑いつつも封筒の中身を取り出す。

 手紙を読んでいるローレスの顔色が悪化の一途をたどっていく。

「……アレにバレたか。入学ずらしたんだけどな……。この前のあれだってバレないように名前とか伏せて貰ったのに……」

 ローレスは呟いてベッドに倒れこんだ。

「母ちゃんに手紙書かねえと……」

 ローレスは顔色は変わらないまま、手紙を片手にベッドから出る。気分悪そうなのは変わらないどころか悪化してそうなのに、動かない方がいいだろう。

「ちょっ、寝ときなよ。さっきよりもひどそうに見えるんだけど?」

 ローレスは首を振る。今すぐにでも母親に手紙を送らないと行けないらしい。

 なんというか、とても焦っているように見える。

「はぁ、篠野部、ローレス頼んでいい?レターセット買ってくるよ」

「あぁ」

「え!?いいよ。俺自分で行ってくるから……」

「それで途中で倒れたらどうするの?そんな顔色で気分悪そうで、見てるこっちがヒヤヒヤする」

 そういってローレスの肩をちょっと力をいれて押すとストンとベッドに戻った。

 申し訳なさそうなローレスを置いて購買に向かう。

 廊下を早足で歩きながらローレスの反応を思い出す。

 言葉通りの顔面蒼白、頭を抱え、腹を押さえ、悩んでいた。

 ロンテ・ブレイブにトラウマがあると言われても納得できるような素振りだ。

 トラウマがなくてもロンテ・ブレイブにたいしていい思いではないだろう。

 ロンテ・ブレイブ個人でなくても同じ名字か名前……。いや、容姿を確認しての、あの反応だったしロンテ・ブレイブ個人と何かあったとみるべきか?

 あんまり他人の事情に首を突っ込むのは気が引ける。

 カリヤ先輩の時みたいな“知り合いが巻き込まれかねない”事情ならば介入するのだって構わないが、今回はどうなんだろうか。

 あの様子なら第三者が壁になるべきなのかもしれない、とは思う。

 けど、カリヤ先輩の時のように手が足りないと言う状態ではない。先生に任せるべき、かな?

「まぁ、先生もどこまで対応できるかはわかんないけどねえ……」

 バックに王族が付いているから並大抵の貴族とかに圧力をかけられて、なんてことはないだろう。

 個人に対して、又は家族に対して圧をかける。あとは善意からのって言う展開、カリヤ先輩の時にあったやつだ。

 あれに関しては悪気がないし、対応としては正しいものだから大きな処分とかなかったらしいけど……。

 それと似たようなことがないとも限らない。

 ……まぁ、考えすぎか。

 ザベル先生は信用できるしローレスの顔面蒼白具合を見ていたから気にしてくれるだろう。

 なんというか、前の世界のせいか教師ってなると微妙に信用できないんだよねえ……。

 公開でレターセットを購入してローレスと篠野部のいる医務室に向かおうとしていた。

 廊下の曲がり角からスッと誰かが出てくる。

 驚いた永華は慌ててた止まり、後退しようとしたら腕を捕まれ逃げられなくなってしまった。

 とっさのことで魔法を使って逃げようと自己魔法を発動させたが永華の目の前の男が慌てて止めた。

「待て!俺は話をしに来ただけだ!」

「……ロンテ、ブレイブ?……先輩?」

「取って付けた先輩呼び……。まあ、いいわ」

 行きなり目の前に出てきたものだから本当に驚いた。

 ジト目でロンテ・ブレイブを見ていると、苦笑いをして頬をかく。

「わりぃな……」

「いいすけど、話って何ですか?」

 ことと次第によってはぶん殴ることも辞さないんだが……。

 永華が聞く姿勢には言ったことからロンテは永華の腕から手を離し、なにもしてないとでも言いたげに腕を組む。

「手紙渡してくれたか?」

「渡しましたけど、あの手紙がどうかしたんですか?」

「いや?お父様に渡せって言われたやつだからな。届いてなかったら俺が怒られちまうからな」

 父親?ロンテ・ブレイブではなくて?その父親?

「渡したんならいいわ」

 そういって出てきた曲がり角の方に戻ろうとしたのを引き留める。

「待ってください」

「あ?何?」

「……何か、他に伝えておくことありますか?返事の送り先とか」

「あ~……多分知ってるし、大丈夫だろ。わからなかったら自力でどうにかすんだろうし……返事とか帰ってこなさそうだしな」

「そうですか」

「それじゃあな」

 今度こそロンテ・ブレイブは来た道を去っていく。

 永華はじっと去っていくロンテの後ろ姿を見ていた。

 あの時、ロンテ・ブレイブを引き留めた時、“ローレスになにするつもりですか”と聞こうとしてやめた。

 言ったところでバカ正直に話すやつなんていないだろうし、聞いたところで不況を買うだけだ。それでローレスに何かあったら……。

「……早く、戻ろ」

 さっき以上に早足で急いでローレスと篠野部がいる医務室に向かう。

 医務室にはいる前に気持ちを切り替える。

「レターセット買ってきたよ~」

「遅い」

「ごめんな、永華ちゃん。お金はあとで返すから」

「いいよ、別に」

 ロンテ・ブレイブに会ったと言う話しはしないでおこう。後々バレたら心配されそうだけど、今のローレスに言う必要はない。

 言ったところで体調が悪化するだけだろうからね。ロンテ・ブレイブの父親からの手紙ってことは……多分わかってるだろう。

 もうすでにロンテ・ブレイブの名前を知ってるし伝書鳩をした私達の前で、わざわざ差出人の名前を出さない理由はない。

 それにロンテ・ブレイブが手紙を出すなら差出人の名前をかかない理由とかわかんないし。

 まぁ、名前を呼びたくないほど嫌いって言うんなら違ってくるけどね。

 ローレスは保険医に筆記用具を借りて母親宛に手紙を書く。

 手紙の内容を見られたくなさそうだったので背中を向けて待つこと数分、書き終わったと言われた。

 レターセットを渡したところで帰ってもよかったんだけど寮まで見送りたかったので待つことにした。

「このまま寮に戻るよ。そのついでに手紙出してくる」

「そうか」

「ポストどこだっけ?」

 適当言ってローレスについて行く。

 保険医はローレスにまで寝ていてもいいと行っていたけどローレスは、それを断ってポストに向かっていく。

 近くにロンテ・ブレイブの姿はない。

 父の頼みを聞いただけ、なのだろうか?

「二人とも帰らねえの?」

「倒れられたら困る」

「この季節に動けなくなるのはね?」

 見つからなかったら凍死、までは行かずとも風邪とかひいてはしまいそうだ。

「……そっか」

 短い返事を返したローレスは嬉しそうだった。

 手紙がポストのそこに当たった音がした。

 その後、永華は寮までローレスを見送り自分も女子寮に戻った。

 気になることはロンテ・ブレイブの父がローレスに送った手紙の内容だ。

 唯一の肉親だと言う母に手紙を送らねばと言っていたし、バレたとも言っていた。それから入学ずらしたとも。

 考えられるのは家族ぐるみの何かだろうか?

 あぁ、嫌な予感がする。
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