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東の祓魔師と側仕えの少年

56.家族の証①

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朝を迎えた。

目覚めた時は少し気だるかった。
昨日( と言うよりも今日?) は番えた嬉しさやらこの世界の人間になった驚きやらで、自分の体調にそれほど目を向けられなかった。

それに比べて今日はなんだか、インフルエンザの時みたいな節々の痛さと、頭の痛みと若干の吐き気と、……って、いざ挙げてみれば絶不調極まりないな。

そんなしんどさも、愛する人と大好きな友人が居てくれればすぐになんてことなくなった。


「ハル"オ"ミ"ぃ”ぃぃぃーーー!!!よぐ生ぎ返っだなあ!!」

「イザベラ……僕死んでないってば」

イザベラは涙で顔をぐちゃぐちゃにして、ベッドに横たわる僕目掛けて  わ"ーーー、だの、う"ーーーーだのと言葉にならない声を上げている。
「生き返った」って、僕死んでないってば。
そう訂正すれば、般若もびっくりの形相でものすごい怒られた。

「はぁ!? ふざけんなよ、瀕死状態だったんだぞ! どれだけ…俺がどれだけ心配したか!!」

「……そうだね……うん、ほんとにありがとう。ほんとにごめんね」

「あやまんなよぉぉーーー!!!  う"ーーーハルオミだ、本物のハルオミだぁぁー!!  このハルオミ喋る!  動く!  嬉じい!!」

きっと感情がごっちゃになってるんだろう。泣いたり怒ったりわらったりまた泣いたり。こんなに僕を思ってくれる友人がいるのが誇らしい。

涙まみれのイザベラにほっこりしていると、横にいたパネースさんが、とっても、なんか、怖くて黒い笑みを浮かべていることに気がついた。

「ハルオミ君……」

「は、はい……」

笑顔だけど目が笑ってない。
ベビーブルーのポニーテールが沸々と怒りに揺らめいている、ような気がする。

「次はありませんよ……?」

「つ、次……?」

「私たちに黙ったまま、ひとりで抱え込んで。もし、次にそんなことしたら……絶交ですから!」

「え……や、やだ!」

パネースさんと絶交なんて絶対やだ。
もっとたくさん話したり遊んだり色んなこと教えてもらったりしたいのに。やだやだ、と駄々をこねると、はぁ、とひとつため息をついた。

「じゃあ、今後一切、ひとりで悩んだり抱え込んだりしないでくださいね」

言うことを聞かない子供を見るような困った顔をさせてしまった。深い青の瞳は心なしか揺らいでいる。よく見ると表面に涙の膜を張っていた。

「ごめんなさい。もう絶対ひとりで悩まない。こんなに心強い友達がいるんだもん。なんでも相談するって約束する。だから、これからもずっと仲良くしてくれる……?」

不安と申し訳なさと反省の心を現せば、パネースさんもいよいよ涙をこぼし、僕に思い切り抱きついた。

「当たり前でしょうっ! もう……本当に良かった!」

「パネースさん」

二人につられて僕も泣いた。
生きている実感がする。抱きしめられる苦しさも、涙が止まらない苦しさも、熱でうなされる苦しさも、部屋の端の方で僕たちの様子を見守るフレイヤさんの微笑みも、その全部が僕を生かしている。


二人はしばらくの間そばから離れず、僕が寝ている間の出来事などを色々話してくれた。
それは良いのだが、ベッドの左右にそれぞれ位置取り、僕の頭のすぐ横に肘をついている二人は高さ的に地べたに膝立ちだと思う。辛く無いのだろうか。

右を向けばイザベラ、左を向けばパネースさんの顔がすぐそこにある状態なので僕は話しやすいけど。椅子に座って、と促したら断られた。イザベラ曰く「1ミリでも近くハルオミを感じたい」だそうだ。恥ずかしいこと普通に言えちゃうんだもんな。

とはいえ甘えん坊のイザベラは弟のような可愛さがあるし、パネースさんの聖母のような笑みを近くで見られるのは嬉しい。二人が良いなら僕もこのままでいいや。




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