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王都〜第二章〜
世界一の休日
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————————side AKIO ————————
朝ごはんを食べていなかったので、お昼には少し早いけれど食堂へ行った。
隊員さん達が多くなるのは大体午後1時くらいから。まだ正午を回っていない食堂には誰もいない。イガさんとメテさんに会えることを少し期待していたけど、やはりまだお仕事中のようだ。
いつも通りご飯は美味しくて、僕はがんばってジルさんに2回あーんをした。緊張で手が震えたけど上手くできたと思う。
午後からは中庭を散歩した。
久しぶりに晴れたので気分が良かった。緑は太陽の光に当たってつやつやしているし、花は花弁をぱぁっと開いてご機嫌そう。ジルさんと一緒に歩く中庭は別格だ。
ベンチに座って色んな話をした。
まずジルさんの小さい頃の話を聞いた。
ブランディスさんは優秀な軍人だったから、物心ついた時から憧れていたらしい。アッザさんは当時まだ世間から色眼鏡で見られることもあったようだ。ジルさんは子供ながらに自分が守らなきゃと意気込んだらしいが、「あの跳ねっ返りなので私が守る余地もなかった」とのこと。
周りの冷たい言葉なんか気にせずに自分に自信を持って生きる姿が誇らしかったという。
僕も小さい時のことを話した。
小学校には遠足っていう行事があることとか、給食というシステムがあることとかを話すと、非常にユニークな世界だなと笑ってくれたかと思えば、この国の教育機関にも取り入れたいと真剣な顔をしだした。
いつでも国や国民のことを思っているジルさんはかっこいい。
こんなふうに過去のことを言い合えるのもジルさんのおかげだ。こういう素朴な時間が何より幸せだった。
そのあとは部屋に戻って、ジルさんが用意してくれた魔術書を読んだ。
難しい言葉がたくさん出てくるので何が何だかわからない。首を捻っていると後ろからジルさんが注釈を付け加えてくれて、なんとか意味を理解することができた。
これはどういう意味? この言葉は何を指すの?
質問責めにしているうちに、いつのまにかジルさんとの距離は縮まり、これまたいつの間にかジルさんのお膝に乗せられていた。彼のわかりやすい説明を聞きながら読む魔術書はなかなか面白かった。
没頭しているうちに場所はベッドに移動していた。ベッドへッドに背を預けるジルさんに僕が背を預けて、心地の良すぎる体勢で読書に勤しむ。
窓から吹き込む風が肌をさわる。
気付けばうとうとしていた。
◆
心の奥にぽかぽかと火が灯った。
包み込まれるようなあたたかい感覚に意識が戻る。
「ん~………ん?……」
「起きたか」
後ろの声に振り向くと、すぐそこにジルさんがいる。
彼の長い長い脚の間にちょんとおさまった僕はそのまま全身を預けていた。
「はっ……寝てしまってました。もったいない」
手の中にあったはずの本はぱたりと閉じてベッドの端に置いてある。せっかくジルさんと過ごせる日なのに寝てしまうなんて、一生の不覚だ。
「心配するな。君が眠ってからまだ30分ほどしか経っていない」
「それでも30分、ジルさんと一緒にいられる時間が減りました」
「寝ている間も一緒にいただろう」
………屁理屈だ。
ジルさんだけずるい。
僕の意識が無い間はノーカウントということにしていただきたい旨を全力で主張することにした。
「…………アキオ?」
くるっと向きを変えてジルさんの膝に向かい合って乗り、胸に頭をくっつけて、さらに彼の大きな図体に腕を回した。
「30分、取り戻そうと思います」
取り戻すまではここから逃してやらないという強気を示すと、ジルさんは宥めるように僕の背をぽんぽん撫でた。どうやら彼は余裕綽々らしい。
余裕綽々のジルさんをいつかギャフンと言わせてやるのが目標だ。
……赤いであろう顔を彼の胸から上げられないうちは100%無理だけど。
自分の大胆な行動を後悔するまでに1分とかからなかった。
朝ごはんを食べていなかったので、お昼には少し早いけれど食堂へ行った。
隊員さん達が多くなるのは大体午後1時くらいから。まだ正午を回っていない食堂には誰もいない。イガさんとメテさんに会えることを少し期待していたけど、やはりまだお仕事中のようだ。
いつも通りご飯は美味しくて、僕はがんばってジルさんに2回あーんをした。緊張で手が震えたけど上手くできたと思う。
午後からは中庭を散歩した。
久しぶりに晴れたので気分が良かった。緑は太陽の光に当たってつやつやしているし、花は花弁をぱぁっと開いてご機嫌そう。ジルさんと一緒に歩く中庭は別格だ。
ベンチに座って色んな話をした。
まずジルさんの小さい頃の話を聞いた。
ブランディスさんは優秀な軍人だったから、物心ついた時から憧れていたらしい。アッザさんは当時まだ世間から色眼鏡で見られることもあったようだ。ジルさんは子供ながらに自分が守らなきゃと意気込んだらしいが、「あの跳ねっ返りなので私が守る余地もなかった」とのこと。
周りの冷たい言葉なんか気にせずに自分に自信を持って生きる姿が誇らしかったという。
僕も小さい時のことを話した。
小学校には遠足っていう行事があることとか、給食というシステムがあることとかを話すと、非常にユニークな世界だなと笑ってくれたかと思えば、この国の教育機関にも取り入れたいと真剣な顔をしだした。
いつでも国や国民のことを思っているジルさんはかっこいい。
こんなふうに過去のことを言い合えるのもジルさんのおかげだ。こういう素朴な時間が何より幸せだった。
そのあとは部屋に戻って、ジルさんが用意してくれた魔術書を読んだ。
難しい言葉がたくさん出てくるので何が何だかわからない。首を捻っていると後ろからジルさんが注釈を付け加えてくれて、なんとか意味を理解することができた。
これはどういう意味? この言葉は何を指すの?
質問責めにしているうちに、いつのまにかジルさんとの距離は縮まり、これまたいつの間にかジルさんのお膝に乗せられていた。彼のわかりやすい説明を聞きながら読む魔術書はなかなか面白かった。
没頭しているうちに場所はベッドに移動していた。ベッドへッドに背を預けるジルさんに僕が背を預けて、心地の良すぎる体勢で読書に勤しむ。
窓から吹き込む風が肌をさわる。
気付けばうとうとしていた。
◆
心の奥にぽかぽかと火が灯った。
包み込まれるようなあたたかい感覚に意識が戻る。
「ん~………ん?……」
「起きたか」
後ろの声に振り向くと、すぐそこにジルさんがいる。
彼の長い長い脚の間にちょんとおさまった僕はそのまま全身を預けていた。
「はっ……寝てしまってました。もったいない」
手の中にあったはずの本はぱたりと閉じてベッドの端に置いてある。せっかくジルさんと過ごせる日なのに寝てしまうなんて、一生の不覚だ。
「心配するな。君が眠ってからまだ30分ほどしか経っていない」
「それでも30分、ジルさんと一緒にいられる時間が減りました」
「寝ている間も一緒にいただろう」
………屁理屈だ。
ジルさんだけずるい。
僕の意識が無い間はノーカウントということにしていただきたい旨を全力で主張することにした。
「…………アキオ?」
くるっと向きを変えてジルさんの膝に向かい合って乗り、胸に頭をくっつけて、さらに彼の大きな図体に腕を回した。
「30分、取り戻そうと思います」
取り戻すまではここから逃してやらないという強気を示すと、ジルさんは宥めるように僕の背をぽんぽん撫でた。どうやら彼は余裕綽々らしい。
余裕綽々のジルさんをいつかギャフンと言わせてやるのが目標だ。
……赤いであろう顔を彼の胸から上げられないうちは100%無理だけど。
自分の大胆な行動を後悔するまでに1分とかからなかった。
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