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王都
軍城②
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ジルさん、イガさん、メテさん以外の軍人は初めて見る。
仲良くなりたい。
でも…なんか、遠くからチラチラこちらを見られている気がするような、しないような。
いや、見られてる。
そういえば僕の顔立ちはここでは珍しいとジルさんたちも言っていた。その言葉通り、町の人たちも、ユリも、王様も、あの軍人の方たちだって、今まで出会ってきた人の中でアジア人らしき顔立ちの人はいない。
もしかしたら外国人が珍しいのかもしれない。
「アキオ様、お気になさらないでください。皆、わたくしが城に居るのが珍しいのでしょう」
ユリは僕の心を読んだかのように優しい声で落ち着けてくれるが、この少し居た堪れない空気への緊張は消えない。
それにしても皆屈強そうだ。
ここに馴染めるだろうか…。
視線を浴びながらも無事食堂までたどりつき、「ここです」とユリが大きな扉を開く。
これまただだっぴろい食堂だ…
天井も高くて長ーーいテーブルがたくさんあって、装飾は派手じゃないけれど、柱や壁にところどころ施された彫刻が格式の高さを表している。
食堂にはまだ数人の隊員たちが残っており、下膳したり話をしたりしている。
そんな中をカツカツ進む僕らに、食後の談笑を楽しむ二人組の隊員が声をかけてきた。
「お、給仕のユリッタハーツフェルドじゃないか。こちらに来るなんて珍しいな」
長めの髪を後ろでひとつにすっきりと束ねた気の良さそうな雰囲気のその人はユリに話しかける。
「君は…見ない顔だね。外国の子かな…?」
もう一人は短髪でワイルド系。見た目に反して柔らかそうな雰囲気を持っている。
2人とも美形だ。
軍は容姿の審査もあるのだろうか。
「スワ・アキオと言います。よろしくお願いします」
「ニーソンだ。よろしくね」
内心ドキドキしながらも自己紹介すると、ニーソンと名乗った短髪の人が顎に手を当てて思い出したように言う。
「そういえば、王が客人としてお迎えになった民間人がいると噂になっていたな。あれは君の事?」
「客人?…あぁ!あの奴隷商に監禁されてたっつー」
「あ、おいっ!クリス」
ニーソンさんが、監禁の話題を出した長髪の人に対して焦った声を出す。おそらく僕を気遣ってくれたのだろう。
そんなそんな、大丈夫ですよ、お優しいんだから。
なんて思っていると、横から真っ黒なオーラがとてつもない勢いで噴出しているのを感じた。
不穏そのものといった空気が漂うそちらを恐る恐る見ると、これでもかというくらい厳しい目つきをしているユリがいる。
「…クリス隊員?口を慎んでください」
ユリのこんな顔、初めて見た。
美人が睨むと迫力あるなあ。
「ユ、ユリッタ……すまない」
クリスと呼ばれた長髪の人は、汗をドバドバ出しながら謝罪する。少しかわいそうになってきた。
「私にではなく、アキオ様に」
「そ、そうだな。
アキオ殿。本当に申し訳ない」
「いいえ。全然、大丈夫です」
「お前は本当にデリカシーが無いよクリス。
許してあげてアキオ殿。こいつも悪気があった訳じゃないんだ。軍人ってのはどいつもこいつもぶっきらぼうでさあ。だから」
「だからなんです?ニーソン隊員。
軍人だから許してくれと?
全くもってそんなことは関係ありません。1人の人間としてデリカシーが無いのは大問題。ぶっきらぼうの一言じゃ済まされませんよ?」
「そ、そうだよな…」
「ユリ、ありがとう。でも大丈夫だから。ね?」
ユリは僕のことを思って鬼のような形相で軍人相手に抗議(というかもはや説教)をしてくれたのだろうけど、不思議なことに僕は本当に大丈夫だった。
やっぱり”その話”が出れば、少しくらい何か思い出して辛くなることもあるかもと思っていたけれど、全くと言っていいほど何とも無かった。
ユリが側にいてくれるからだろうか。
それとも昨日、ジルさんが勇気を与えてくれたからだろうか。
「アキオ様…」
どちらにしろ、何かをひとつ乗り越えられたような気がして、その達成感はさらに僕に勇気をくれた。
心配そうな顔をするユリに目くばせをし、未だ消えない緊張を心臓から感じ取りながらも声を発す。
「お二人も、どうかお気を遣わないでください。この通り僕は元気ですし。
あの、今度お二人のお話も聞かせてください。皆さんはこの国を守るとっても頼りになる方達だと伺いました。僕は強くないし、知識もまだまだ無いから、色んなお話を聞いて勉強がしたいんです」
話しているうちに緊張は和らぐ。
ユリに怯え続けるクリスさんとニーソンさんに『気にしないで』という思いを精一杯込めて話すと、二人はポカンと口を開けて無言でこちらを見るばかり。
その様子に、自分がとんでもないことを口走ってしまったのかもしれないと気が付く。
仲良くなりたい。
でも…なんか、遠くからチラチラこちらを見られている気がするような、しないような。
いや、見られてる。
そういえば僕の顔立ちはここでは珍しいとジルさんたちも言っていた。その言葉通り、町の人たちも、ユリも、王様も、あの軍人の方たちだって、今まで出会ってきた人の中でアジア人らしき顔立ちの人はいない。
もしかしたら外国人が珍しいのかもしれない。
「アキオ様、お気になさらないでください。皆、わたくしが城に居るのが珍しいのでしょう」
ユリは僕の心を読んだかのように優しい声で落ち着けてくれるが、この少し居た堪れない空気への緊張は消えない。
それにしても皆屈強そうだ。
ここに馴染めるだろうか…。
視線を浴びながらも無事食堂までたどりつき、「ここです」とユリが大きな扉を開く。
これまただだっぴろい食堂だ…
天井も高くて長ーーいテーブルがたくさんあって、装飾は派手じゃないけれど、柱や壁にところどころ施された彫刻が格式の高さを表している。
食堂にはまだ数人の隊員たちが残っており、下膳したり話をしたりしている。
そんな中をカツカツ進む僕らに、食後の談笑を楽しむ二人組の隊員が声をかけてきた。
「お、給仕のユリッタハーツフェルドじゃないか。こちらに来るなんて珍しいな」
長めの髪を後ろでひとつにすっきりと束ねた気の良さそうな雰囲気のその人はユリに話しかける。
「君は…見ない顔だね。外国の子かな…?」
もう一人は短髪でワイルド系。見た目に反して柔らかそうな雰囲気を持っている。
2人とも美形だ。
軍は容姿の審査もあるのだろうか。
「スワ・アキオと言います。よろしくお願いします」
「ニーソンだ。よろしくね」
内心ドキドキしながらも自己紹介すると、ニーソンと名乗った短髪の人が顎に手を当てて思い出したように言う。
「そういえば、王が客人としてお迎えになった民間人がいると噂になっていたな。あれは君の事?」
「客人?…あぁ!あの奴隷商に監禁されてたっつー」
「あ、おいっ!クリス」
ニーソンさんが、監禁の話題を出した長髪の人に対して焦った声を出す。おそらく僕を気遣ってくれたのだろう。
そんなそんな、大丈夫ですよ、お優しいんだから。
なんて思っていると、横から真っ黒なオーラがとてつもない勢いで噴出しているのを感じた。
不穏そのものといった空気が漂うそちらを恐る恐る見ると、これでもかというくらい厳しい目つきをしているユリがいる。
「…クリス隊員?口を慎んでください」
ユリのこんな顔、初めて見た。
美人が睨むと迫力あるなあ。
「ユ、ユリッタ……すまない」
クリスと呼ばれた長髪の人は、汗をドバドバ出しながら謝罪する。少しかわいそうになってきた。
「私にではなく、アキオ様に」
「そ、そうだな。
アキオ殿。本当に申し訳ない」
「いいえ。全然、大丈夫です」
「お前は本当にデリカシーが無いよクリス。
許してあげてアキオ殿。こいつも悪気があった訳じゃないんだ。軍人ってのはどいつもこいつもぶっきらぼうでさあ。だから」
「だからなんです?ニーソン隊員。
軍人だから許してくれと?
全くもってそんなことは関係ありません。1人の人間としてデリカシーが無いのは大問題。ぶっきらぼうの一言じゃ済まされませんよ?」
「そ、そうだよな…」
「ユリ、ありがとう。でも大丈夫だから。ね?」
ユリは僕のことを思って鬼のような形相で軍人相手に抗議(というかもはや説教)をしてくれたのだろうけど、不思議なことに僕は本当に大丈夫だった。
やっぱり”その話”が出れば、少しくらい何か思い出して辛くなることもあるかもと思っていたけれど、全くと言っていいほど何とも無かった。
ユリが側にいてくれるからだろうか。
それとも昨日、ジルさんが勇気を与えてくれたからだろうか。
「アキオ様…」
どちらにしろ、何かをひとつ乗り越えられたような気がして、その達成感はさらに僕に勇気をくれた。
心配そうな顔をするユリに目くばせをし、未だ消えない緊張を心臓から感じ取りながらも声を発す。
「お二人も、どうかお気を遣わないでください。この通り僕は元気ですし。
あの、今度お二人のお話も聞かせてください。皆さんはこの国を守るとっても頼りになる方達だと伺いました。僕は強くないし、知識もまだまだ無いから、色んなお話を聞いて勉強がしたいんです」
話しているうちに緊張は和らぐ。
ユリに怯え続けるクリスさんとニーソンさんに『気にしないで』という思いを精一杯込めて話すと、二人はポカンと口を開けて無言でこちらを見るばかり。
その様子に、自分がとんでもないことを口走ってしまったのかもしれないと気が付く。
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