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慶喜と家族になる事 晴サイド

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慶喜との結婚を受け入れてしまった。

なんかすごい押しきられて、後に退けなくなって頷いてしまったって感じもするが、慶喜に結婚、結婚言われてても自分が結婚する未来を思い描いた事のない俺にはどこか絵空事のように思えて現実感がなかった。あれくらい強引じゃなければ俺は頷けなかっただろうから、あれはあれで良かったのだろう。
正直なところ、慶喜と一緒にいられるのは嬉しい。

一度俺の家に帰って婚姻届を記入していく。印鑑も捺して俺の欄を埋める。本籍地どうしようとなって、新居を何処にするか話し合った。

俺は新居は慶喜のマンションでも良かったんだけど、慶喜に広い所に引っ越そうと言われて俺も同意した。三人で暮らすにはワンルームは狭いよな。俺はともかく慶喜が静かに勉強出来る部屋はあった方がいい。
慶喜が不動産屋に連絡して、電車に乗って連れて行かれたのは、慶喜のマンションの近くの賃貸マンション。ファミリータイプの2LDKで俺が良ければとそこを契約した。これって多分慶喜が目星をつけていた部屋なのだろう。折半でも今より出費が増えるけど、あの部屋は家賃が馬鹿みたいに安かったのでしょうがない。お陰で貯蓄出来たからどうにかなるだろう。通勤も今の家からの時間とそんなに変わらないし、駅が近くなったし、朝が下り電車になるから楽になるのだろう。

終わったらもう夕方近くになっていて、近くにある慶喜のバイトするカフェに連れて行かれ店長さんとオーナーさんに紹介された。ちょうど昼食と夕飯の間の休憩時間だったようで、その場で慶喜が婚姻届の証人をお願いしたら快く引き受けて書いてくれた。お祝いを言われお礼を言う。満面の笑顔で良かったなと慶喜の肩を叩くオーナーさんと、どこか心配そうに俺を見る店長さん。本当にαって強引だよね。と、店長さんに何かあったら相談乗るからね。とこっそり言われた。
今日は急だったから今度ゆっくりお祝いするからまた遊びにおいでと言われて二人で仕事に戻って行った。夕飯はここで食べる事にして、店内で食事をする俺たちに慶喜の仕事仲間が声をかけに来てその度にお祝いを言われる。なんともこそばゆい。
注文したふわとろの卵にデミグラスソースのかかったオムライスは、慶喜の作ってくれたオムライスの味に似ていた。


慶喜は躊躇いなく物事をどんどん進めていって、着いていくのに精一杯の俺は流されるままに承諾して、なんだか急ピッチで外濠を埋められている。
そんなに焦らなくても俺は覚悟を決めたので逃げたりしないんだけど。別に異論はないので慶喜の気の済むように付き合う。
明日は婚姻届を出すのかな?
忙しい1日を終えて、明日も休みだからこのまま慶喜の家に二人で帰る。

これからこれが当たり前になるのが結婚なのかな?

今日は恐ろしく事態が進んだ。目一杯動き回って疲れた。家に着いて俺が先にシャワーを浴びさせてもらい、慶喜が入れ替わりでシャワーを浴びにいく。
疲れて、もう動きたくない。
慶喜が出て来るのを待ってるつもりが、濡れた髪のままソファーにちょっとだけと座り込んで、そこから記憶がない。


――――――

目が覚めたらベッドで慶喜に抱き締められていた。

ソファーで座ったところまでしか記憶がないので慶喜がベッドまで運んでくれたようだ。一人暮らしでそれをやったら起きた時は夜寝た時のままなので、結婚の利点を発見した気がする。少なくとも孤独死のリスクは減っただろう。
まだ空が仄暗い。起きるには早い時間だからこのまま寝ていてもいいか。
微睡みの中で結婚したらこんな朝をこれから毎日迎えるのかと考えて、これも結婚の利点だなと思う。
抱き締められているので寝返りを打てないのは減点だな。でも、抱き締められて気持ちよくて二度寝してしまいそうなのは、利点なのか?減点なのか?
慶喜の匂いに包まれて毎晩寝られるのは利点。
毎晩安眠出来そう。
安心する匂いに包まれてもう一度目を閉じた。

次に目が覚めたら、目の前に慶喜の顔が迫ってきてキスを顔中にされていた。俺が起きたのに気が付いた慶喜の顔が近付いて来て唇が合わさってまた離れた。

慶喜に笑顔でおはようと言われて、昨日の事を思い出した。
俺は慶喜と結婚する約束をしたんだよなと思ったら、慶喜に対する愛おしさが込み上げた。
俺もおはようと言って、離れようとする慶喜に腕を回して顔を引き寄せ、唇を寄せてキスをした。
朝、慶喜のキスで起きて昨日から結婚について色々考えていたのが全部吹っ飛んでこの男はもう俺のものになったのだと思ったら、その事が単純に嬉しかった。

慶喜の唇にしゃぶりついて唇を食んで舌を差し込む。慶喜に教えられておぼえた気持ちいいキス。慶喜がそれに応えてくれて差し込んだ舌を吸われて、重なりあった唇で繋がる。

もう慶喜が他の誰かにキスすることはない。
誰かを抱く事も。
慶喜が抱いていいのもキスしていいのも俺だけだ。
自分にある思いがけない独占欲。
ただ、この人が愛おしいという思い、誰にも渡したくないという思いを自覚して、ストンと結婚するという事を受け入れられた。
今更だけど、結婚ってずっと一緒にいようという約束なのだな。ずっと一緒にいてくれると慶喜は俺と約束してくれたんだ。
昨日は流されて着いて行くのに精一杯で気持ちが追い付いていかなかった。一晩寝て元気になって、やっと嬉しい気持ちが追い付いた。唇を離して慶喜の顔をじっくり見る。俺はこの人と結婚するのだな。

慶喜が不思議そうにおでこにおでこをくっ付けて顔を覗き込んでくる。

「晴どうしたの?朝から積極的だね。」

「なんだかさ。もう慶喜が俺のになったんだなって思ったら、心置き無く好きになっていいんだと思って。そしたらストッパー外れちゃったみたい。」

慶喜が驚いたように目を見開いて俺を見ている。
至近距離で目を合わせたまま、この見つめ合っている状態も自分言ってる事も照れ臭くなってはにかんでしまう。そんな俺に慶喜は嬉しそうに微笑む。

「心置き無くいくらでも好きになって。俺も晴の事これからも、もっともっといっぱい好きになると思う。」

「俺、好きになりすぎたら慶喜と離れられなくなると思う。」

「うん。俺は晴から離れるつもりないからずっと一緒だよ。」

「浮気は絶対許さないから。俺以外の奴とキスもエッチもしたら駄目だ。」

「晴としかしたくないから無駄な心配しないでいいよ。晴も俺以外としたら駄目だからね。」

「うん。俺を慶喜にあげるから、慶喜も俺にちょうだい。」

「うん。俺は晴のものだよ。」


「ぷっ!」

突然、慶喜が吹き出した。なぜこの流れで笑いだす?そこはキスの一つもするところだから。

「俺焦りすぎてたね。俺何を焦ってたんだろうと思ったら自分が可笑しくて。」

「どういうこと?」

「晴、昨日は流されて結婚承諾したから実感なかったでしょう?」

その通りなので何も言わないで頷いた。

「ごめん。昨日は焦りすぎて、外濠埋めるのに必死で逃がさないようにが先行して晴の気持ちが追い付いてないの見ないフリしてた。昨日は疲れただろ?今日はゆっくりしようか?」

「ゆっくりってなにするの?」

「ゆっくりイチャイチャしようか?」

慶喜がおでこをぐりぐりしてくる。
俺もぐりぐりする。至近距離で見える慶喜の目が優しく細められている。

「今日は色々準備しなくていいの?」

「焦らなくても晴が俺を受け入れてくれてるってわかったからいいよ。お互い話し合いも足りてなかったし、のんびりイチャイチャしながら理解を深めるのはどう?」

流されてもいいと思っていたけど、立ち止まって俺の気持ちに寄り添おうとしてくれているんだと思うとやっぱり嬉しい。俺はやっと昨日慶喜と歩む決断をして、慶喜の気持ちに追い付けてなかったから。昨日は慶喜と同じスタートラインに立てていなかったと思う。

「いいな。今日はイチャイチャする。」

すぐ近くにある慶喜の唇にチュッと触れる。
慶喜も応えてくれてしばらく戯れのような触れるだけのキスをした。

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