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3話<店主と迷子の仔猫>
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しおりを挟む数日後、箱を抱えた女性が喫茶ポポを訪れた。
金髪の長い髪をおろした春樹の上司。今日は、カジュアルにデニムパンツにスニーカー、水色のポロシャツとどれも男性モノの同じブランドモノだ。
出迎えた美奈はふといつもと違う春樹の上司に他の誰かと重ね、彼女がおもむろに髪を束ねたことで確信した。
「いらっしゃいませ。あれ?もしかして?」
この時ようやく、春樹の上司が男性であり、以前美奈がスマホを届けた男性であることに気がついたのだ。
「ごめんなさい。私、全然気が付かなくて…」
「天使ちゃん気がついてくれたの?嬉しい。」
「あ、春樹さんは2階にいると思います。」
「はあ~い。じゃあ先に用を済ませてきましょう。後で来るね。」
「はい。お待ちしてます。」
こうして、美奈の案内で厨房奥の階段に向かった藍川紫苑は、大きな箱を軽々と担いで2階へと上がっていった。
作業を終えた二人はぞろぞろと階段を降り、ポポの店内に現れると奥のテーブル席に腰掛けた。
先に注文を受けていた美奈は、二人に食事をテーブルに運ぶと手短に打ち合わせした。
「美奈ちゃん、ついに社長カミングアウトしたか。」
「え?ああ、そうなんですね。」
春樹の言葉に美奈は、苦笑いし、藍川はキラキラした笑顔を美奈に向けた。
「美奈ちゃん、社長の笑顔に惑わされないでね。」
「え?素敵な笑顔ですよ?」
美奈は動じる様子もなく笑顔を返し、勝手口の外で走り回っている猫たちを思い出し、猫の移動は閉店後が良いだろうと思い伝えることにした。
「春樹さん、猫達の移動ですが、暴れちゃうと困るので、閉店後はどうですか?私に1番懐いているから二人がかりなら早くすみますよ?」
「え~そんな時間まで私居られない。夜に女の子を部屋に上げるなんてね~?」
藍川は、二人きりにする事を不満そうに訴えると、美奈は、天使の笑顔を藍川に向けた。
「大丈夫です。春樹さんの事は信用していますから。ねっ、春樹さん。」
「う、んああ。」
春樹は、やや動揺しながら食べ物を頬張り、藍川は泣きながら会計をして帰って行った。
そうして、美奈の提案から、猫の移動は夜行われることが決定したのだった。
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