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2話<春樹のお客現る>
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しおりを挟む数日後。喫茶ポポのお昼時、ランチタイムで近所のOL、女子大生と…女性陣が店内をしめていた。
ポポの外にある駐車場は2台車が停めれるようになっており、近所の大学、会社から来る客が多いため駐車場に車が満車になるのはめったにない。
美奈が1人で営むポポは店内も小さく、食事メニューは軽食が多いため、男性のお腹を満たせない。そのため、お昼時は女性が増えていた。
客層が時間帯により変わるポポにこの日昼時、珍しく車が止まった。
「いらっしゃいませ。」
扉が開き、中に入って来たのはリクルートスーツに身を包む巻き髪を靡かせる美女だった。
スカートタイプのスーツの美女の歩く姿に美奈は思わず息をのんだ。
「はじめまして天使ちゃん。」
美奈は『天使ちゃん』によくわからずに首をかしげた。
「カウンターの席と奥のテーブル席が空いています。」
「じゃあ奥に…」
「ご案内します。」
美奈は奥の席に案内すると、客はテーブル席の椅子に腰掛け手に持つ小さな黒いバッグからスマホを取り出し画面を触り始めた。
「ご注文、お決まりになりましたらお呼びください。」
「決まってるの。アイス珈琲、オムレタスサンドお願いしましす。」
「かしこまりました。」
美奈はテーブルに水の入ったカップをおき一礼をして席を離れると同時に女性の話し声を耳にした。
「春樹、急用ができたらか来てくれる?人手が足りないの。」
『はあー?今日は休みなはずなんですけどー!』
美奈は一瞬足を止めたが、仕事の話のようだったためか、ホッとして、再び厨房へと小走りで向かった。
「春樹さんお休みなんだ?」
美奈は厨房でサンドイッチと珈琲の準備に取りかかりながら1人しかいない厨房でぽつりと呟いていると、階段をどすんどすんと鈍い音をたてて降りてくる春樹に振り向いた。
春樹はサラリーマンのようにスーツ姿に、ジャケット下のワイシャツは襟元のボタンは3つ外れて乱れたまま、寝ぼけている様子で、鼻をくんくんとさせて厨房に寄った。
「美奈ちゃんおはよう。そのサンドイッチ、金髪の香水臭い女の人のやつ?追加でベーコンサンド二人ぶんもいいかな?ホッと珈琲も一緒に。」
「わかりました。会社の方ですか?奥の席に見えると思いますよ?」
春樹が調理中の美奈を覗きこむようにし、美奈はそんな春樹を見上げると、ビニール手袋をはずして、はだけた襟元のボタンを2つささっと留めた。
「あ、」
動揺する春樹に、美奈は天使の笑顔をして答えた。
「他のお客様もみえますから、春樹さんの印象を悪くしたくないんです。珈琲先にお持ちしましますからさあ、行ってください。」
美奈は、春樹の両腕を回すように力を入れると春樹の背中が目の前に。そのまま背中を押した。
厨房から押し出された春樹は美奈の新妻を思わせる行為に顔を赤くしながらホールへと向かった。
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