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しおりを挟む17歳を迎えたリシアを送り出す馬車は、王女を送り出すに相応しく夢物語に出てくるような白い丸みを帯びた綺麗な馬車だった。王妃はリシアが大切にされることを願い、リシアを目一杯可愛く見えるように淡いピンクのドレスを着せた。
透き通るような空色の長い髪を下ろしたリシアは獣人の国クラへ行けることを喜び旅立った。不安はあったかもしれない。だがワクワクのほうが増して笑顔で旅立つリシアはシアンに会えるのを楽しみにしていた。
*
<旅立つ数日前>
2年ぶりに現れた伝書鳥はリシアに手紙を届けた。シアンからの手紙だった。
『リシア姫様、クラ国の人質になると聞きました。その時は私がお世話をいたします。心穏やかにお越しください。シアン。』
伝書鳥はリシアが手紙を手にしたのを確かめると、飛び立った。
*
<話は現在に戻り>
馬車は国境を越え、クラ国の護衛として迎えたのは獣人の騎士達だった。馬車の速度に合わせて、獣人は2足歩行になったり早いときは4足歩行で、地を蹴り走っていた。
「ふわあ~すごい。本当にクラ国へきたのね!」
リシアは馬車の窓から外の景色に目を向け獣人達の姿に目を離せず、ずっと彼らの動きを観察し、馬車はクラ国の王都へと入った。街には獣人と半獣の人々が行き交い、リシアはマナよりも賑わう街に釘付けだった。
「マナよりも暮らしは豊かなのね、戦争になってしまった理由もわかるかもしれない。お父様も誰も戦争の理由を教えてくれなかったんだもの。」
リシアは知りたいことが沢山あった。だが、子供であり女性。マナ国の情勢に17歳を迎えた今も、教えてくれるものは誰もいなかった。
(人質になったのだから、自分で調べるのは自由にさせてほしいな~、この国の大きな図書館ってどこかしら?もしもこの国で自由に動けるなら行って調べてみたい。あとは、獣人さんにはどんな人たちがいるのかとか…)
期待に夢を膨らませ妄想に走りそうになる中、馬車はようやくクラ国のお城へと到着したのだった。
城門が開き、強そうな獣人の騎士達が馬車を出迎え、リシアは馬車から降りると、その大きな獣人の間から小柄な半獣の侍女、猫耳のシアンがリシアの前に現れた。
「リシア姫!」
「シアン!」
二人は再会を喜び抱きしめ合った。
「シアン、再会の喜びは良いが今はリシア殿の荷物を屋敷に運べ。」
「わかりました!姫様また後ほど!」
シアンは大きなバッグ2つを軽々と抱えてその場を去り、リシアは目の前に立つ白豹の獣人騎士を不思議そうに目を丸くして見上げていた。
(わあ~綺麗な白い毛、綺麗な青い瞳。)
「私が怖いか?…自己紹介がまだだったな、ガイア・クラだ。今からあなたを陛下の前にお連れする。」
「はい、よろしくお願いします。」
(目は鋭いけど怖いわけじゃないのよね、でも失礼があるといけないから黙っておこう。)
こうしてリシアはガイアに先導され謁見の間へと向かうのだった。
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