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しおりを挟む獣人の国『クラ』。二足歩行の獣人が支配する国、姿は獣だが思考も生活も人間と変わらない。しかし一部の強さを誇る獣人たちは時々人を襲いたい衝動にかられる。クラの4番目の王子もまたその一人であった。
そんなある日、クラ国との戦争に負けたマナ国はクラ国に支配されることで、人間が獣人に襲われることを心配し“国の存続を求めた”…その願いに答える代わりに、クラ国は一つの要求をした。マナ国の王女リシアを人質に…と。
マナ国はその要求に答えるため第2王女リシアを人質としてクラ国へ差し出した。リシアは国の存続のためその身を着飾り、クラ国へと旅立った。
マナ国の国王、王妃…多くの人々が悲しみの中見送った。しかし本人だけは少し、否、大分状況が違って見えた。彼女は何故か旅立ちに胸弾ませ、微笑んだ。古き友人との再会を夢見ていた。
――――
<それはリシアが15歳の頃に遡る。>
マナ国の宮殿に半獣の侍女がいた。当時リシアの身の回りのお世話をしていた侍女の1人名はシアン。獣人との関係は当時表向きは良好に見られたこの頃、猫耳の人間の姿をした侍女は、人目に隠れ何度か伝書鳥を空へと放っていた。シアンは、獣人の住むクラ国が寄越したスパイだった。マナ国の情報を伝書鳥で伝えていたある日、宮殿を巡回する近衛騎士に見つかり侍女は、捕まってしまった。
クラ国から伝書鳥が戻った時にはシアンはもう侍女でなく、宮殿にも居なくなっていたため、伝書鳥は宮殿の庭の木の枝に留まり羽繕いをしていた。
当時リシアは15歳。シアンとも仲良くしていたため、伝書鳥のことも知っており、シアンと二人だけの秘密だと、リシアは秘密を守っていた。
シアンがいなくなってから数日後、伝書鳥を見つけたリシアは両手を広げて伝書鳥に「おいで」といえばリシアの肩に鳥は留まり、リシアは伝書鳥を服で隠し部屋に入れた。
足には手紙がついていたため、リシアはシアンの変わりに手紙に目を通した。
『緊急事態が起きた。マナ国から脱出するように。ガイア。』
「シアンはクラ国のひとよね?シアンと行き違いかしら?お手紙返してあげないと。」
『ガイア様はじめまして、リシア・マナと申します。私のお世話をしてくれたシアンは数日前から宮殿からいなくなりました。もしかしたらすでにそちらに帰ったのかもしれません。』
リシアはその手紙を鳥に託し空へと放った。
伝書鳥は空を飛び、国境を超えクラ国のガイア、白豹の騎士の元へ戻った。その足にはリシアの匂いのついた手紙が結ばれていた。
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