豹*獣人騎士の寵愛

yu-kie

文字の大きさ
上 下
1 / 22

しおりを挟む

 獣人の国『クラ』。二足歩行の獣人が支配する国、姿は獣だが思考も生活も人間と変わらない。しかし一部の強さを誇る獣人たちは時々人を襲いたい衝動にかられる。クラの4番目の王子もまたその一人であった。

 そんなある日、クラ国との戦争に負けたマナ国はクラ国に支配されることで、人間が獣人に襲われることを心配し“国の存続を求めた”…その願いに答える代わりに、クラ国は一つの要求をした。マナ国の王女リシアを人質に…と。

 マナ国はその要求に答えるため第2王女リシアを人質としてクラ国へ差し出した。リシアは国の存続のためその身を着飾り、クラ国へと旅立った。

 マナ国の国王、王妃…多くの人々が悲しみの中見送った。しかし本人だけは少し、否、大分状況が違って見えた。彼女は何故か旅立ちに胸弾ませ、微笑んだ。古き友人との再会を夢見ていた。

     ――――

<それはリシアが15歳の頃に遡る。>

 マナ国の宮殿に半獣の侍女がいた。当時リシアの身の回りのお世話をしていた侍女の1人名はシアン。獣人との関係は当時表向きは良好に見られたこの頃、猫耳の人間の姿をした侍女は、人目に隠れ何度か伝書鳥を空へと放っていた。シアンは、獣人の住むクラ国が寄越したスパイだった。マナ国の情報を伝書鳥で伝えていたある日、宮殿を巡回する近衛騎士に見つかり侍女は、捕まってしまった。

 クラ国から伝書鳥が戻った時にはシアンはもう侍女でなく、宮殿にも居なくなっていたため、伝書鳥は宮殿の庭の木の枝に留まり羽繕いをしていた。

 当時リシアは15歳。シアンとも仲良くしていたため、伝書鳥のことも知っており、シアンと二人だけの秘密だと、リシアは秘密を守っていた。

 シアンがいなくなってから数日後、伝書鳥を見つけたリシアは両手を広げて伝書鳥に「おいで」といえばリシアの肩に鳥は留まり、リシアは伝書鳥を服で隠し部屋に入れた。

 足には手紙がついていたため、リシアはシアンの変わりに手紙に目を通した。

『緊急事態が起きた。マナ国から脱出するように。ガイア。』

「シアンはクラ国のひとよね?シアンと行き違いかしら?お手紙返してあげないと。」

『ガイア様はじめまして、リシア・マナと申します。私のお世話をしてくれたシアンは数日前から宮殿からいなくなりました。もしかしたらすでにそちらに帰ったのかもしれません。』

 リシアはその手紙を鳥に託し空へと放った。

 伝書鳥は空を飛び、国境を超えクラ国のガイア、白豹の騎士の元へ戻った。その足にはリシアの匂いのついた手紙が結ばれていた。

 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

6年後に戦地から帰ってきた夫が連れてきたのは妻という女だった

白雲八鈴
恋愛
 私はウォルス侯爵家に15歳の時に嫁ぎ婚姻後、直ぐに夫は魔王討伐隊に出兵しました。6年後、戦地から夫が帰って来ました、妻という女を連れて。  もういいですか。私はただ好きな物を作って生きていいですか。この国になんて出ていってやる。  ただ、皆に喜ばれる物を作って生きたいと願う女性がその才能に目を付けられ周りに翻弄されていく。彼女は自由に物を作れる道を歩むことが出来るのでしょうか。 番外編 謎の少女強襲編  彼女が作り出した物は意外な形で人々を苦しめていた事を知り、彼女は再び帝国の地を踏むこととなる。  私が成した事への清算に行きましょう。 炎国への旅路編  望んでいた炎国への旅行に行く事が出来ない日々を送っていたが、色々な人々の手を借りながら炎国のにたどり着くも、そこにも帝国の影が・・・。  え?なんで私に誰も教えてくれなかったの?そこ大事ー! *本編は完結済みです。 *誤字脱字は程々にあります。 *なろう様にも投稿させていただいております。

前略、旦那様……幼馴染と幸せにお過ごし下さい【完結】

迷い人
恋愛
私、シア・エムリスは英知の塔で知識を蓄えた、賢者。 ある日、賢者の天敵に襲われたところを、人獣族のランディに救われ一目惚れ。 自らの有能さを盾に婚姻をしたのだけど……夫であるはずのランディは、私よりも幼馴染が大切らしい。 「だから、王様!! この婚姻無効にしてください!!」 「My天使の願いなら仕方ないなぁ~(*´ω`*)」  ※表現には実際と違う場合があります。  そうして、私は婚姻が完全に成立する前に、離婚を成立させたのだったのだけど……。  私を可愛がる国王夫婦は、私を妻に迎えた者に国を譲ると言い出すのだった。  ※AIイラスト、キャラ紹介、裏設定を『作品のオマケ』で掲載しています。  ※私の我儘で、イチャイチャどまりのR18→R15への変更になりました。 ごめんなさい。

平凡令嬢は婚約者を完璧な妹に譲ることにした

カレイ
恋愛
 「平凡なお前ではなくカレンが姉だったらどんなに良かったか」  それが両親の口癖でした。  ええ、ええ、確かに私は容姿も学力も裁縫もダンスも全て人並み程度のただの凡人です。体は弱いが何でも器用にこなす美しい妹と比べるとその差は歴然。  ただ少しばかり先に生まれただけなのに、王太子の婚約者にもなってしまうし。彼も妹の方が良かったといつも嘆いております。  ですから私決めました!  王太子の婚約者という席を妹に譲ることを。  

ずっと好きだった獣人のあなたに別れを告げて

木佐木りの
恋愛
女性騎士イヴリンは、騎士団団長で黒豹の獣人アーサーに密かに想いを寄せてきた。しかし獣人には番という運命の相手がいることを知る彼女は想いを伝えることなく、自身の除隊と実家から届いた縁談の話をきっかけに、アーサーとの別れを決意する。 前半は回想多めです。恋愛っぽい話が出てくるのは後半の方です。よくある話&書きたいことだけ詰まっているので設定も話もゆるゆるです(-人-)

先生!放課後の隣の教室から女子の喘ぎ声が聴こえました…

ヘロディア
恋愛
居残りを余儀なくされた高校生の主人公。 しかし、隣の部屋からかすかに女子の喘ぎ声が聴こえてくるのであった。 気になって覗いてみた主人公は、衝撃的な光景を目の当たりにする…

あなたが望んだ、ただそれだけ

cyaru
恋愛
いつものように王城に妃教育に行ったカーメリアは王太子が侯爵令嬢と茶会をしているのを目にする。日に日に大きくなる次の教育が始まらない事に対する焦り。 国王夫妻に呼ばれ両親と共に登城すると婚約の解消を言い渡される。 カーメリアの両親はそれまでの所業が腹に据えかねていた事もあり、領地も売り払い夫人の実家のある隣国へ移住を決めた。 王太子イデオットの悪意なき本音はカーメリアの心を粉々に打ち砕いてしまった。 失意から寝込みがちになったカーメリアに追い打ちをかけるように見舞いに来た王太子イデオットとエンヴィー侯爵令嬢は更に悪意のない本音をカーメリアに浴びせた。 公爵はイデオットの態度に激昂し、処刑を覚悟で2人を叩きだしてしまった。 逃げるように移り住んだリアーノ国で静かに静養をしていたが、そこに1人の男性が現れた。 ♡注意事項~この話を読む前に~♡ ※胸糞展開ありますが、クールダウンお願いします。  心拍数や血圧の上昇、高血糖、アドレナリンの過剰分泌に責任はおえません。 ※外道な作者の妄想で作られたガチなフィクションの上、ご都合主義です。 ※架空のお話です。現実世界の話ではありません。イラっとしたら現実に戻ってください。 ※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。 ※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります) ※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。

車の中で会社の後輩を喘がせている

ヘロディア
恋愛
会社の後輩と”そういう”関係にある主人公。 彼らはどこでも交わっていく…

【完結】亡き冷遇妃がのこしたもの〜王の後悔〜

なか
恋愛
「セレリナ妃が、自死されました」  静寂をかき消す、衛兵の報告。  瞬間、周囲の視線がたった一人に注がれる。  コリウス王国の国王––レオン・コリウス。  彼は正妃セレリナの死を告げる報告に、ただ一言呟く。 「構わん」……と。  周囲から突き刺さるような睨みを受けても、彼は気にしない。  これは……彼が望んだ結末であるからだ。  しかし彼は知らない。  この日を境にセレリナが残したものを知り、後悔に苛まれていくことを。  王妃セレリナ。  彼女に消えて欲しかったのは……  いったい誰か?    ◇◇◇  序盤はシリアスです。  楽しんでいただけるとうれしいです。    

処理中です...