愛され魔女の治療院

yu-kie

文字の大きさ
上 下
26 / 51
任務・隣国

シャロの任務・隣国 10

しおりを挟む

︵シャロの治療院・仮2︶

 こうして私はキアヌさんとニサさんと共に広いドーム型の獣舎内にある大木の巣に辿り着き、グリフォンのルコさんのサポートもあって、警戒心の強いグリフォン達の治療をはじめました。

 先程の卵のような強い呪いがかかっていないルコさんの兄弟達は、私の持ってきた飲み薬を飲んでもらい、体に掛けられた呪いを解いて、あとは弱った体に魔法とお薬を処方。魔法による急激な回復は副反応で、魔力酔いが起きることがあるので、ここは慎重に行います。

 ルコさんがいてくれたからスムーズにご兄弟の治療にとりかかることができました。それに…ニサさんとキアヌさんがお手伝いをしてくださってるので1日がかりで獣舎のグリフォン達の最初の治療をなんとか済ますことができ、私達は再びテントへと戻ってきました。



 現在テント内、3人で休憩も兼ねたティータイムでニサさんが王太子殿下に伝える今日の治療に関する報告を手紙にまとめています。

「ふむふむ。やはり魔女様のお力のお陰でこんなにも早くグリフォン達に元気を取り戻すことができました!ありがとうございます!」

 〈ニサは手紙をまとめると、席を立ち、シャロの前にして床に膝をつき頭を下げた。〉

「ニサさん、頭を上げてください…あと、何か不穏な気配が獣舎に入ってきましたよ、キアヌさんも…ここからは呼び方を戻しますね?」
「はい…」

 〈ニサは慌てるように席を立ち、書き留めた手紙をしまい、身をただした。テントの外に立ち止まる気配に、ニサとキアヌは身構えた。〉

「アーヌさん、テントに結界を施しているので客人は入れません。開けてあげてください。」
「はい、シャロ様。」

 〈キアヌはテントの入り口部分の布を捲り、外に待つ自分より小柄な青年に殺気に満ちた眼差しのまま、見下ろした。〉

「ここはシャロ様の作業部屋、なんのごようでしょうか?」
「私は陛下に仕えるグリフォン騎士のユナ・キ・アシュン。アギー王太子殿下の安全の確認を任されここに来ている…グリフォン達に怪しげな薬を飲ませていると聞いて参った。」
「まあ、私はアギー王太子殿下直々に治療師として呼ばれてるのですが~怪しくない証拠にあなたについて来ているモノをとって差し上げましょう。」

 〈シャロはアシュンに近づき踏み込んだつま先は足元の影を踏んだ。足元には金色の魔法陣が現れ、影に隠れていた黒いマントに覆われた人物が1人むりやり引っ張り出されたように現れ、シャロを見てすぐ悲鳴をあげて消え…その様子に、何も知らなかったのか、アシュンは驚き立ち尽くしたのだった。〉
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

[完結]空クジラ観測所

夏伐
ファンタジー
文明の滅びた世界で、『死なず』の人間が空を泳ぐクジラを観測する。 カクヨムとノベルアップにも投稿しています。

覆面姫と溺愛陛下

ao_narou
恋愛
幼少の頃に行われた茶会で、容姿を貶されたニアミュール・シュゼ・ヴィルフィーナ公爵令嬢。 その後熱を出し、別の異世界に転移した事を思い出した彼女は、今回で二度目の人生、三回目の世界を体験していた。  ニアと呼ばれる彼女は、近代的な(日本的な)知識と鋼の思考を持っていた。  彼女の婚約者は、この国の国王陛下であるグレン・フォン・ティルタ・リュニュウスだ。  彼女の隠された容姿と性格にベタ惚れのはグレンは、どうにか自分に興味を持って貰うため、日々研鑽を積む――が、ニアには一切通じない。  陛下には似合わない容姿だからと婚約破棄を望むニアと溺愛しまくるグレン。そんな二人に迫る魔女の影……上手く噛みあわない二人の異世界恋愛物語。

夏町の涼葉

天倉永久
ファンタジー
気がつけば私、水上涼葉は見知らぬ夏の町にいた……ひとけのない寂れた夏町に…… やっと出会えた人、麻生美羽との出会いは異様なもので、誰かの返り血でも浴びたかのような血だらけの服を着ていた…… 次に出会ったのは人? 黒い浴衣姿が似合う天音と名乗る少女は人らしさのない異常な存在だった……

【完結】碧き海の戦士と天穹の花嫁

那月 結音
恋愛
「竜は、たった一匹の番を、生涯愛し抜くんだって」  カルヴァリア帝国の皇女ジーナは、生まれて以来ずっと、実の父親である皇帝によって城の塔に幽閉され、その秘密とともに存在を隠されていた。  17歳のある夜、敵国に攻め込まれ、城は一夜にして陥落してしまう。皇帝は城を捨てて逃亡。殺される覚悟で敵国の戦士マリスと対峙したジーナを待ち受ける、思いもよらない展開とは……。  空と海の狭間で。  運命を受けいれ懸命に生きる、少年と少女の物語。 ※自身主催のWEBアンソロジー『空の鱗と海の翼』収録作品 ※レーティング(暴力・残虐表現)は念のため設定しています ※2023年完結作品(全8話)

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

公爵様、契約通り、跡継ぎを身籠りました!-もう契約は満了ですわよ・・・ね?ちょっと待って、どうして契約が終わらないんでしょうかぁぁ?!-

猫まんじゅう
恋愛
 そう、没落寸前の実家を助けて頂く代わりに、跡継ぎを産む事を条件にした契約結婚だったのです。  無事跡継ぎを妊娠したフィリス。夫であるバルモント公爵との契約達成は出産までの約9か月となった。  筈だったのです······が? ◆◇◆  「この結婚は契約結婚だ。貴女の実家の財の工面はする。代わりに、貴女には私の跡継ぎを産んでもらおう」  拝啓、公爵様。財政に悩んでいた私の家を助ける代わりに、跡継ぎを産むという一時的な契約結婚でございましたよね・・・?ええ、跡継ぎは産みました。なぜ、まだ契約が完了しないんでしょうか?  「ちょ、ちょ、ちょっと待ってくださいませええ!この契約!あと・・・、一体あと、何人子供を産めば契約が満了になるのですッ!!?」  溺愛と、悪阻(ツワリ)ルートは二人がお互いに想いを通じ合わせても終わらない? ◆◇◆ 安心保障のR15設定。 描写の直接的な表現はありませんが、”匂わせ”も気になる吐き悪阻体質の方はご注意ください。 ゆるゆる設定のコメディ要素あり。 つわりに付随する嘔吐表現などが多く含まれます。 ※妊娠に関する内容を含みます。 【2023/07/15/9:00〜07/17/15:00, HOTランキング1位ありがとうございます!】 こちらは小説家になろうでも完結掲載しております(詳細はあとがきにて、)

夏風

幽々
青春
私はどんな場所よりも、空の中に抱かれていることの方が好きだった。 空は、私の全てを肯定してくれていた。 私は、この世界の事が好きではない。ただ、嫌いでもないのだ。ただただ、合わないというだけ。私と私の今いる世界とは、出会うべきではなかった、ただそれだけなのだ。 あれ程美しかった空も、今は重たい雲に覆われて、太陽の姿も見えない。街は水没し、私のいる電波塔のすぐ側まで、水位は昇ってきている。 私は何のために、今更になって、こんな事を書いているのだろう。一体、誰の為に。 窓の外の、豪雨の作る幾つもの細い線の先に、私が憎んでやまなかった雷の壁が揺らいで見えている。 私は書くのをやめた。 ・・世界が終わる雨の日に 花澤カレン

【完結】20年後の真実

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。 マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。 それから20年。 マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。 そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。 おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。 全4話書き上げ済み。

処理中です...