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序 章【出逢い】
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しおりを挟むマヤ・ピッシュ17歳。彼女はザバスの城の前へと到着した馬車から降りた。
城周りには…ザバスの暗黒時代を今も思い起こさせる…所々に穴の空いた塀が城を囲む。ピッシュ国は今も昔も平和な国で『夢の国』と噂されている。対照的なザバス国の景色にマヤは探検したくてうずうずしていた。幼さが残るマヤは手には小さな白い猫のぬいぐるみを握りしめ…
ピッシュ国王と兵達が話をしている間にするりと馬車から降り少し走って距離を広げて立ち止まると、馬車の方へと向き大きな声で父王を呼んだ。
「おとーさまあー!お城を一周してきます!」
王の返事を待たずマヤは桃色と白の配色の裾の長いドレスワンピースと瑠璃色の肩まで延びた髪をふわりとなびかせ走って行った。
「あれでおとなしければ…完璧なんだかなあ~」
国王は迎えにきた使者に…申し訳なさそうに『娘がもどったら向かう』と告げてその場で待つことにした。
ピッシュ国の王族は瑠璃色の髪に、透き通るような琥珀色の瞳を持ち、対してザバスの王族は漆黒の髪に藍色の瞳をもつ。
ザバス国では珍しい瑠璃色の髪の可憐な少女がスキップするように歩き時にはしゃがみこんで猫にちょっかいをかけたり、塀の穴を覗いてみたり…城を守る兵達はマヤに釘付けに…マヤは『歩癒し』となり、城周りを散策した。
途中、城の門と反対側に辿り着くと、地下へと続く小さな階段…その先にある地下への扉は昔の名残を感じる黒い鉄の塊のよう。
(わあ~この先に何があるのかしら?)
思わずマヤは階段をゆっくりと降りて鍵のかけられた重い扉を小さくトントンとノックした。
応答もなく…マヤはその先にいけないことを理解すると階段を上がり、黒い馬で城を駆ける騎士を目にした。
「素敵!」
他者がみれば覇者を思わせる眉間に紫波を寄せた…20代半ばに思える強面、殺気に満ちた藍色の瞳でマヤを見下ろし指差す変わりに馬の鞭を向けた。
「何者だ!」
「あ、王様に用があって…その前に少し散策してました。塀の穴とか国の歴史を感じて…あ、マヤ・ピッシュともうします。そろそろ門に待たせているので戻ります。」
マヤは鞭に見向きもせず、その先の騎士の瞳をまっすぐ見て笑顔を向けると、上品にスカートの裾をつまみお辞儀し…また跳ねるようにふわふわとその場を去った。
黒い馬にまたがる騎士は面食らったようにその場に暫し立ちつくした。
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