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しおりを挟む学園の講堂、中央の5列は式服を着た卒業生達が席を埋め尽くし、左右の列には彼らの保護者たちが席についていた。
教壇に上がる学園長の挨拶に始まり~証書の授与が行われた。1人ずつ名前を呼ばれ、順に呼ばれた者が前に出て証書を受け取り、席へと戻る。その繰り返しが行われ…スティアの順番が来た。証書を受け取るスティアは教壇から保護者の席をちらりとみるが、人が多くてリューイを見つけられず、そのまま自分の席へと戻った。
授与式が終わると王族の代表として王太子の挨拶が行われた。その後ろには、スティアの見覚えのある人物が警護についていた。
「えっ、」
見覚えのある人物、それは急遽王都に呼び戻されたライカ・ビルタ本人だった。
王太子の挨拶が終わり、王太子は生徒達に見送られて退場し、ライカもその後に続いて退出した。
(ライカ様はどうしてここに?もしかして、サプライズの身内って…でもライカ様は王太子殿下と退場してしまった…)
スティアは寂しくなり俯きかけると講堂の扉から目立たないように現れたライカが保護者席に移動した。
「スティア様、スティア様みてみて。」
隣の席で、俯くスティアの肩を揺さぶり耳元で囁くミシュン・スイラートは嬉しそうにスティアに微笑んで、保護者席を指差した。
「ミシュン様どうしたの?」
スティアは慌てるように顔を上げミシュンに言われるまま指差す方へと視線を向けると、保護者席につく騎士の身なりのライカの姿があった。
スティアは思わず立ち上がり、席につく途中のライカはスティアに気付き、鉄壁無表情のまま手を振り席に着いた。スティアも手を振り返し、嬉しい思いが抑えきれず表情を緩めた状態で席についた。
「良かった。スティア様の笑顔が戻りましたね、ふふふ。」
「ミシュン様ありがとう。そう、良かった。ふふふ。」
スティアは目からホロリと数滴の涙を溢し天使の笑顔をミシュンに向けた。
††††
学園の卒業式が終わり、生徒達は保護者と合流し、ぞろぞろと帰ってゆく中、ライカとスティアも合流。
再会を喜びライカは『おいで』と言うように両手を広げ、スティアはぴょんぴょんと駆けてライカの胸に飛びついた。
「スティア、卒業おめでとう。」
ライカは飛びついたスティアを抱きとめスティアの髪を優しく撫でた。
「ライカ様が来てくださるなんて、嬉しい!」
スティアは笑顔で顔を上げると、違和感を感じた。抱きついたのは何年かぶり。スティアはあれから背丈も伸び、見上げた先のライカとの顔との距離に思考停止し、思わずライカを見つめてしまった。
(あ、私…大人に近づいてるってことなのかしら、ライカ様との顔の距離が、近い!ちかすぎるわぁ~!)
見下ろすライカも視線をそらせず、その頬を僅かに紅くさせながら、スティアの髪を、頬を撫で…ニコリと優しく微笑んだ。
「愛しいスティア…」
ライカは、公衆の面前、見上げるスティアの額に唇を寄せ、キスをした。
スティアは顔を紅くし、俯くと、ライカの胸に顔をうずめた。
「ライカ様、皆が見てます!」
「そうだね、いい虫よけでしょ?」
「虫よけ?」
スティアは不思議そうに見上げて首を小さく傾げた。
「君は僕の許嫁で恋人同士だろ?君は美しいから、男性にデートに誘われては困るんだ。」
「ひゃっ、恥ずかしいですぅ!」
スティアはその言葉に再び顔を紅くし、ライカの胸におでこをこするように顔を隠してしまったのだった。
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