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しおりを挟む数日後、スティアはメディアン邸を、出発し、王都へと馬車を走らせた。
<数日前のお話>
リューイがギメラに与えた罰は…『1週間、西の砦の近くにある集落がギメラとその配下に襲われた事があることから、兵士の監視のもと、集落の人々の為に働くこと。』とし、期限は『メディアン邸にいるスティアが1週間後に王都に戻る前に。』
ギメラはスティアについて行く約束の為に、無駄に多い魔力をフル活用し、集落を以前よりもピカピカに変えていった。
集落の住民たちは喜んだ。
「もうじゅうぶんですよ。領主様にありがとうございましたとお伝えください。」
集落の長である老人が現れ倒れ込むギメラと監視の兵士に告げると、兵士の隊長が確認をした。
「いいんだな?」
「はい。これからは良い人になってくだされ。」
「スティア嬢が『お利口にして』って言っておったからな。私はあのお方のためなら『お利口に』できるのだあ!」
集落の住民たちはケラケラと笑い出したが、自分の事だと思わなかったギメラは威張るように仁王立ちした。
与えられた罰をこなしたのは始めてから5日後の事。兵士はリューイにそのことを報告し、その日の夜、リューイは猫の姿になったギメラを同じ馬に乗せてメディアン邸へと帰ってきたのだった。
††††
砦の出発前、リューイは兵士からの報告を受け、獣人姿のギメラを前にスティアの元に行く許しをだす条件をだした。
「ギメラ、娘の側に使えたいなら、猫でいなさい。娘には既に護衛が一人、侍女もいる。娘に多くの異質な者が使えていれば悪目立ちする。スティアを悲しませないために必要な事なのだよ。その条件をのむなら、スティアの護衛として同行を許そう。」
「スティア嬢の側に居られるなら本望です。感謝致します。」
ギメラは黒猫となり、おすわりの体制から頭をペコリとお辞儀した。
††††
メディアン邸に、リューイほ帰還した。到着し馬が足を止めると、馬の肩にいたギメラがぴょんと地面に着地した。
「おかえりまさいませ。」
屋敷の扉を開け出迎える執事は深々と頭を下げると、ギメラはリューイより先に、屋敷の中へと駆け込んだ。
「お父様おかえりなさいませ!」
「ぶにゃ!!」
パタン!
執事の背後から飛び出したスティアの足にぶつかりペタンと床に気絶した。
そう、彼女は昔からせっかちで、周りが見えなくなる。結果、現在…愛しのスティアのおみ足の直撃を受けて倒れたのだった。
(スティアお嬢に蹴られるにゃら…ほんみょうにゃ…)
「きゃあ~ギメラあ~」
スティアは慌ててギメラを抱き上げ、揺さぶった。
「しんぢゃだめ~」
「…うぷ、ぎもぢ悪いにゃ~」
ギメラは意識を戻し、スティアはギメラを抱きしめた。
「ギメラ、娘から離れなさい。」
「やだにゃ」
「娘のお帰りのハグは私の楽しみなんだ!スティア~」
スティアはギメラをパッと離し、ギメラは咄嗟に床に着地、リューイの腕がスティアに伸びてスティアは軽々と持ち上げられた。
「きゃっ。」
スティアはリューイに抱き上げられたまま嬉しそうに笑っていた。
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