白兎の目覚め

yu-kie

文字の大きさ
上 下
3 / 8
1話 縁談

白兎の目覚め 1閑話

しおりを挟む

 最後は散々な終わり方をしたお茶会。駆けつけた獅子の獣人兵士達にリイド様を襲った二人組を引き渡し…今日私達のお茶会をセッティングしてくれたクラハさんが騒動を聞きつけて戻ってきてくれました。

 クラハさんに庭苑の一部が荒らされてしまって、リイド様と一緒に謝りました。

「お気になさらずに、悪いのは襲撃を仕掛けた二人組ですから…しかし、相変わらず、リイド殿は人族に敵が多いですね、まあ、今日はお二人の距離が縮んだようですから良かったことにいたしましょう。次に会うう約束はとりつけましたか?余計なお世話かもしれませんが…リイド殿…」

 クラハさんはリイド様の耳元に手をあて何やら秘密のお話をしています。私は聴いてはいけないのでしょうか。

「クラハ様、今日はありがとうございました。リイド様…この先があるのでしたらまたご連絡ください。」

 お二人はお取り込み中のようだし…私との縁談も興味が無いようだから、もう帰って良いですよね?

 私は、ペコリと頭を下げた後、お二人から猛ダッシュてさりました。といいますか…去ったはずでしたが、私の背後から上空を超え、翼を広げ急降下し、私の目の前に遮るようにリイド様が舞い降りました。

 私は勢い余って彼の胸に飛びついたようになり、翼が消えた羽毛に覆われた腕が伸びて抱きしめられました。

「ミラ殿…ちゃんと話すよ。陛下から縁談話があった時…相手を誰にするか聞かれて…私が君との縁談を勧めてほしいとお願いしたんだ。」
「えっ?」

 私はびっくりしました。じゃあさっきずっと視線をそらしたのは何故っ?て。そう思いながら彼を見上げると、今度は真っ直ぐ私を見下ろした。

 金色の瞳の優しい眼差し。初めてにこりと微笑んだ彼と…幼い頃に結婚を約束した少年と重なった。

「もしかして…やっぱりそうなの?」

 私の言いたいことがわかるのか、リイド様はまた優しく微笑んだ。

「額の傷は幼い頃に君を守るために受けたものだ。君を守れた私の勲章。だけど君を見るだけで心臓が弾んで…君を直視できなかった。」

「もうっ!結婚に乗り気じゃないかと…嫌われたかと思いました!」

「ごめんなさい。さっきクラハ殿に言われたよ、黙っていては何も始まらないってね。お陰で君に誤解をさせてしまった。」

 私は…思わず彼の胸をポコポコ叩いた。私の叩く力は弱いから、彼は腕の拘束を外してくれなかった。

「陛下の力は絶大だね。互いの親に種族の違いで反対されたはずなのに…陛下の一声で君との縁談が可能になった。それも両家の祝福つきで。」

 彼は昔のように優しくて笑った。私も嬉しかったけど、不安にさせたリイド様がまだ許せなくて、手が疲れるまで彼の胸を叩いていた。




 こうして私達は正式に婚約をすることになったのでした。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

お腹の子と一緒に逃げたところ、結局お腹の子の父親に捕まりました。

下菊みこと
恋愛
逃げたけど逃げ切れなかったお話。 またはチャラ男だと思ってたらヤンデレだったお話。 あるいは今度こそ幸せ家族になるお話。 ご都合主義の多分ハッピーエンド? 小説家になろう様でも投稿しています。

誰にも愛されない――そう思っていたのですが、それは間違いだったのかもしれません。

四季
恋愛
誰にも愛されない――そう思っていたのですが、それは間違いだったのかもしれません。

夫の告白に衝撃「家を出て行け!」幼馴染と再婚するから子供も置いて出ていけと言われた。

window
恋愛
伯爵家の長男レオナルド・フォックスと公爵令嬢の長女イリス・ミシュランは結婚した。 三人の子供に恵まれて平穏な生活を送っていた。 だがその日、夫のレオナルドの言葉で幸せな家庭は崩れてしまった。 レオナルドは幼馴染のエレナと再婚すると言い妻のイリスに家を出て行くように言う。 イリスは驚くべき告白に動揺したような表情になる。 子供の親権も放棄しろと言われてイリスは戸惑うことばかりでどうすればいいのか分からなくて混乱した。

魔力なしと虐げられた令嬢は孤高の騎士団総長に甘やかされる

橋本彩里(Ayari)
恋愛
五歳で魔力なしと判定され魔力があって当たり前の貴族社会では恥ずかしいことだと蔑まれ、使用人のように扱われ物置部屋で生活をしていた伯爵家長女ミザリア。 十六歳になり、魔力なしの役立たずは出て行けと屋敷から追い出された。 途中騎士に助けられ、成り行きで王都騎士団寮、しかも総長のいる黒狼寮での家政婦として雇われることになった。 それぞれ訳ありの二人、総長とミザリアは周囲の助けもあってじわじわ距離が近づいていく。 命を狙われたり互いの事情やそれにまつわる事件が重なり、気づけば総長に過保護なほど甘やかされ溺愛され……。 孤高で寡黙な総長のまっすぐな甘やかしに溺れないようにとミザリアは今日も家政婦業に励みます! ※R15については暴力や血の出る表現が少々含まれますので保険としてつけています。

愛する人は私ではない女性を優先するみたいです

杉本凪咲
恋愛
君を絶対に幸せにする。 そう告白された時が懐かしい。 夫は平気で私を裏切り不倫をした。

【魅了の令嬢】婚約者を簒奪された私。父も兄も激怒し徹底抗戦。我が家は連戦連敗。でも大逆転。王太子殿下は土下座いたしました。そして私は……。

川嶋マサヒロ
恋愛
「僕たちの婚約を破棄しよう」 愛しき婚約者は無情にも、予測していた言葉を口にした。 伯爵令嬢のバシュラール・ディアーヌは婚約破棄を宣告されてしまう。 「あの女のせいです」 兄は怒り――。 「それほどの話であったのか……」 ――父は呆れた。 そして始まる貴族同士の駆け引き。 「ディアーヌの執務室だけど、引き払うように通達を出してくれ。彼女も今は、身の置き所がないだろうしね」 「我が家との取引を中止する? いつでも再開できるように、受け入れ体勢は維持するように」 「決闘か……、子供のころ以来だよ。ワクワクするなあ」 令嬢ディアーヌは、残酷な現実を覆せるのか?

娼館で元夫と再会しました

無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。 しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。 連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。 「シーク様…」 どうして貴方がここに? 元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!

忘却令嬢〜そう言われましても記憶にございません〜【完】

雪乃
恋愛
ほんの一瞬、躊躇ってしまった手。 誰よりも愛していた彼女なのに傷付けてしまった。 ずっと傷付けていると理解っていたのに、振り払ってしまった。 彼女は深い碧色に絶望を映しながら微笑んだ。 ※読んでくださりありがとうございます。 ゆるふわ設定です。タグをころころ変えてます。何でも許せる方向け。

処理中です...