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1話 縁談
白兎の目覚め 1閑話
しおりを挟む最後は散々な終わり方をしたお茶会。駆けつけた獅子の獣人兵士達にリイド様を襲った二人組を引き渡し…今日私達のお茶会をセッティングしてくれたクラハさんが騒動を聞きつけて戻ってきてくれました。
クラハさんに庭苑の一部が荒らされてしまって、リイド様と一緒に謝りました。
「お気になさらずに、悪いのは襲撃を仕掛けた二人組ですから…しかし、相変わらず、リイド殿は人族に敵が多いですね、まあ、今日はお二人の距離が縮んだようですから良かったことにいたしましょう。次に会うう約束はとりつけましたか?余計なお世話かもしれませんが…リイド殿…」
クラハさんはリイド様の耳元に手をあて何やら秘密のお話をしています。私は聴いてはいけないのでしょうか。
「クラハ様、今日はありがとうございました。リイド様…この先があるのでしたらまたご連絡ください。」
お二人はお取り込み中のようだし…私との縁談も興味が無いようだから、もう帰って良いですよね?
私は、ペコリと頭を下げた後、お二人から猛ダッシュてさりました。といいますか…去ったはずでしたが、私の背後から上空を超え、翼を広げ急降下し、私の目の前に遮るようにリイド様が舞い降りました。
私は勢い余って彼の胸に飛びついたようになり、翼が消えた羽毛に覆われた腕が伸びて抱きしめられました。
「ミラ殿…ちゃんと話すよ。陛下から縁談話があった時…相手を誰にするか聞かれて…私が君との縁談を勧めてほしいとお願いしたんだ。」
「えっ?」
私はびっくりしました。じゃあさっきずっと視線をそらしたのは何故っ?て。そう思いながら彼を見上げると、今度は真っ直ぐ私を見下ろした。
金色の瞳の優しい眼差し。初めてにこりと微笑んだ彼と…幼い頃に結婚を約束した少年と重なった。
「もしかして…やっぱりそうなの?」
私の言いたいことがわかるのか、リイド様はまた優しく微笑んだ。
「額の傷は幼い頃に君を守るために受けたものだ。君を守れた私の勲章。だけど君を見るだけで心臓が弾んで…君を直視できなかった。」
「もうっ!結婚に乗り気じゃないかと…嫌われたかと思いました!」
「ごめんなさい。さっきクラハ殿に言われたよ、黙っていては何も始まらないってね。お陰で君に誤解をさせてしまった。」
私は…思わず彼の胸をポコポコ叩いた。私の叩く力は弱いから、彼は腕の拘束を外してくれなかった。
「陛下の力は絶大だね。互いの親に種族の違いで反対されたはずなのに…陛下の一声で君との縁談が可能になった。それも両家の祝福つきで。」
彼は昔のように優しくて笑った。私も嬉しかったけど、不安にさせたリイド様がまだ許せなくて、手が疲れるまで彼の胸を叩いていた。
こうして私達は正式に婚約をすることになったのでした。
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