獅子騎士と小さな許嫁

出会い編

4．

 ナクシス国は格闘も盛んでコロシアムが王都にあり、静かな日は年に数回。常に大会が開かれ、力自慢の男達の歓声が響く。

 街は女達が収穫した作物をテントを張り篭を並べて売っていた。

 その活気ある町を抜ける、馬車は両サイドに緑の旗であるハミン国の国旗をはためかせ、ナクシス国の城へ向かった。

 窓から外を覗くクランは薄い青色のドレスを身につけた乳白色の長い髪の少女である。兎の縫いぐるみを抱き締めクランは何度も深呼吸をし、馬車は城の敷地内へと入って行った。

 城につき、出迎えたのはルイヴ女王と使いの者達だった。

 馬車から降りた、ハミン国王とクラン王女は、女王達の案内で城へと足を踏み入れた。

 クランは馬車に置いてきた兎の縫いぐるみを持って来たかったが…さすがに失礼だと思い置いてきたのだが…

（はぁ～ラパス様にせっかく会うのに…緊張してきた。ウサギさんがあれば…少しは落ち着くのだけど…）

 案内された部屋にある席に着き、ハミン国王と、ルイヴ女王は仕事の話で会話が弾み…クランは変な緊張をしながらラパスが来るのをまっていた。

 バン！

「母上！お呼びですか？」

 獅子騎士は遠征の帰り、敵の返り血を浴びたままの姿で現れた。

 ハミン国王は争いを嫌い、血で汚れた身なりで堂々と現れたラパスに不快感を露にした。

「クラン、目をつぶりなさい、見てはいけない。」

「お父さま？」

 クランはハミン国王が伸ばした手に目を覆われた。

 同時にルイヴ女王は声を荒げてラパスを指摘した。

「ラパス、話していただろう？ハミン国の客人だ、服装を変えてきなさい。」

「すみません！」

 ラパスは目を塞がれた小さな少女をみてハッとし、慌ただしくその場を去った。


 戻ってきたラパスは汚れのない騎士服で現れ、深々と礼をした。

「ハミン国王様、王女様、ご無礼をお許しください！」

「ラパス、席に着きなさい。」

 ルイヴ女王に促されラパスは席に着き…クランはキラキラした目をしてラパスをみた。

「ラパス様、お会いできて良かったです。」

 ハミン国王はクランの嬉しそうな反応に、もう不快感は消えていた。

 クランは満面の笑みでラパスを迎え、彼の目にはか弱い子兎が自分に愛嬌を振り撒いているようにみえ、胸がキュンと締め付けられた。