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第4章 聖女の近侍、ラネル

19,座ったままで

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ラネルが秘密の映像を入手してしまってから一週間が経過した。



 この間、さらに2回ラネルは一人で深夜にシてしまったのだがそれは置いておこう。



 タツシは堂々と何の悪びれもなく神殿の門のところに行った。



「ようこそお越しくださいました。タツシ様。」



 だいたいいつも通りの流れでクラリスの部屋へ行く。



「こんにちは!!! タツシさん♪」



「こんにちは、クラリスさん。今日もお綺麗ですね。」



「あらやだわ~。全然ちゃんと準備していないのに。」



 ちなみに朝、化粧に2時間、服の選定に1時間かけたのはラネルも知らない。同様に、ラネルが起こそうと部屋に入ったときに珍しくクラリスがガバッと起きた理由も知らない。



「それでは、さっそくマッサージお願いします。」



 ラネルはそういうと、近くに置いてあった椅子に座った。



「本日は私はずっとクラリス様のマッサージを見させていただきますので私は結構です。」



「なるほど。わかりました。」



 うまくタツシの悪事を暴けるか怪しいし、第一あんなことを聖女であるクラリスにやっていたら大変だ、と判断して見守ることにしたラネル。



「では、このハーブティーを飲んでください。」



 今回も双方のティーにいろいろ混入されている。



 それを知らずに飲む二人。



「肩からマッサージしていきますね~。うーん、どうしてこういつもこんなに逆戻りするんでしょう……」



「肩がほぐれるとついお勉強頑張っちゃって……」



「うーん、不思議ですねぇ」





 その後、なぜか腰を痛めたというクラリスに対して入念に腰をマッサージしていく。



「ああっ気持ちいわぁ」



「そうですか、ありがとうございます。」



 もちろんこれは普・通・の・気持ちいいであるがラネルはそれを疑った。



「クラリス様、その気持ちいいっていうのはどういう気持ちよさですか?」



「え? どういうって言っても、普通に……筋肉がほぐれるような感じだわ」



「ああ、そうですか。いえ、失礼しました。」





 この時すでにクラリスが性快感を得ているのではないかと思っていたが杞憂だった、と安心するラネル。





 そして、しばらくすると徐々に徐々にクラリスのタツシへの対応が冷たくなっていった。



「どうですか? そろそろスライムのマッサージに移行してよさそうですかね?」



「ええ。」



 これはあまりタツシに親しくしないようにというラネルからの言葉を後から思い出したせいである。



(あれ? なんかクラリスさんを困らせることしたかな? 急に笑顔が消えてしまった……)



 原因はわからないがちょうどスライムのマッサージに移行するからいいか、と思いそのまま続けた。



 そしてスライムベッドに寝たクラリスをよそにタツシも椅子に座る。



「うーん、私もこの時間やることないんですよねえ~。ラネルさん、やっぱりマッサージしませんか?」



「いえ、大丈夫です。」



「別にベッドに寝るんじゃなくても、座ったままでもできますけど……」



「ああ、だったらそれでお願いします。」



 座ったままであればずっとクラリスの様子を確認したままでいられると判断した。



 ラネルだって、マッサージを受けて完全に顔が緩み切っているクラリスを見るとどうしてもマッサージを受けたくなってしまうのだ。



 なんだかんだいってもタツシのマッサージを受けた後は体が非常に軽い。







 タツシはラネルの肩や腰をマッサージした。そしてスライムに任せる。



「あはは、やっぱり暇になってしまいました。私も休憩していいですかね?」



「ええ、どうぞ。」



「よいしょっ」



 そういってタツシが立ち上がると、わざとある方向を向く。



「ん………?」



「あっそれは……」



「どうしてこんなものが置いてあるんですか?」



「あ、いえ、偶にクラリス様の日頃の生活とかを撮影するために置いてあるのです。」



 タツシはカメラを初めて発見した風に装いラネルに尋ねたがラネルもまた見つかったときのための言い訳を用意しておいたようだ。



「なるほど! あ、そういえば私もこれに似たような魔道具持っているんですけど使いますか? 1時間ほど撮れますけど。」



「1時間!? それ、すごい高価なものなのでは……?」



「いえ、秘密の製法を使っているのでそんなに高くありませんよ。ただ、その分使用期限が短くってですね……。



 どうです? 今回のクラリスさんのマッサージを受けているご様子なんか撮影されてみては?



 ほら、クラリスさんあんなにすやすやと気持ちよさそうに眠っているので、きっと寝ている間はどんなマッサージをされているか知らないでしょうし。」



「はい、そうですね。でも、本当にいいのですか?」



「ええ、構いません。(やったあ! これでもっと面白いことができるぞぉ!)」



 すべてはタツシの思惑通りである。



 ラネルもまたタツシに隠さずとも合法的に部屋の中を監視できるようになって安心したようだ。



「ではこれ。使い方はそちらのものと同じですので、いつでも使いたいときにスイッチを押してくださいね。」



「分かりました。本当にありがとうございます。」



 ラネルはタツシにお礼を言って棚に設置した。



(マッサージが終わる一時間前から使い始めればちょうどいいかしら。)



「では、私も少し寝させて頂きますね。マッサージが終わる時間になりましたらこの鐘が鳴るのでそれまでラネルさんはスライムからマッサージを受けていてください。



 あ、スライムをこうやってつまみ上げて……」



 タツシはむにっとスライムを持ち上げる。そしてラネルの肩を人差し指で3往復こすった。



「こうやって、手で同じ場所を何回かこするとその場所を重点的にマッサージしますので是非お使いください。」



「分かりました。」
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