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第17話
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「という訳なんだ。なんか良い案ない?」
「そこまで話を進めておいて肝心な企画は人任せですか」
夕方、授業もHRも終わって先生のいない放課後の教室である。
具体案の思い浮かばなかった僕が持つべきものは友達だとばかりにクラスメイトに相談した結果が宇野さんの辛辣かつ的確な一言だった。
「しかし酷い話です。本来無条件に参加できて然るべきだというのに、譲歩の結果が屁理屈紛いの条件付きだなんて」
「まぁしょうがないよ、元々参加を許可してもらえてたのが運が良かっただけなんだから。むしろこっちが当然なんだよ?」
昼休みに校長と僕が話してきた内容を聞いてくれているのは、理不尽だと憤る宇野さんとどこか寂しそうな顔をしながらそれを宥める辰子、眉を顰めてなにやら考え込んでいる倉田くんの3人だ。
「さて、どうしたものか……竜宮はクラスの企画に参加できないのは決定事項としてもだ、鈴木。お前はどうする?クラスの企画に参加しないと考えておくべきか?作業や当日の仕事の割り振りも必要だからハッキリいってほしい」
遠慮しなくて良いぞ、とまで言ってくれる倉田くん、男前だ。女の子にモテるのはきっとこういう人なんだろう。
「増えた仕事の分だけ俺が働けるからな、労働と苦痛は大歓迎だ!」
うん訂正、マゾでさえなければ女の子にモテるんだろうな。
「そうだなぁ、生徒会への申請期限が明日までだから……とりあえず今日1日は作業から外してもらっていいかな?明日からは申請が通っても通らなくても両方手伝えるよう頑張るからさ」
「私もそれでいいですか?いくらなんでも2人だけでは出来る事に限界があります。そうかといってクラス全体で2つも企画を進めるのも無理なので、他の皆さんに協力してもらう訳にもいかないですから」
少し考えてから倉田くんに返事をした僕に追従して宇野さんも参加の意志を示してくれる。
自分1人で頑張ろうと思っていたわけでもないけれど、辰子の事を想って行動してくれる人がいるのは色々な面で嬉しい。
宇野さんの言うとおり、人数が少ないと出来る事に限りが有るので協力者がいるとありがたい。
「そうか……クラスの奴らに声をかけて何人かにこっちを手伝ってもらうか?何をやるにしたって3人じゃきついだろう」
「えっと、私なんかの為に皆にそこまでしてもらわなくてもいいんじゃないかな?なんだか悪い気もするし、私は大丈夫だからそんなに気にしなくても平気。ねっ、俊也?」
無理に明るく振る舞おうとしているのがバレバレの辰子に倉田くんは何か言いたげにしていたが、他のクラスメイトに呼ばれてそちらにいってしまった。
教室の装飾についての話し合いが盛り上がっている中、辰子は僕たちにもそちらに参加するよう促してくる。
「ほら、2人もいってきなって!皆忙しそうにしてるし、参加出来ない私の分まで働いて楽しい文化祭にしてよね!」
「何を馬鹿な事を言ってるんですか辰子ちゃん。いいですか、私たちがどんなに楽しい企画を作っても、そこに辰子ちゃんがいないならそれは意味のない企画なんです。あなたは世界に1人しかいないのですから、あなた自身が楽しまなければ、いつまでたってもあなたは楽しい思いができないんです。何をどれほど用意しても、誰かがどれほど頑張っても、あなたの代わりが務まるものはこの世にはないんですよ」
宇野さんが珍しく辰子に強い口調で意見している。彼女だってどうせなら友人とお祭りを楽しみたいのだろう。いつもより厳しいのはきっとそんな思いの裏返しだ。
「そこまで話を進めておいて肝心な企画は人任せですか」
夕方、授業もHRも終わって先生のいない放課後の教室である。
具体案の思い浮かばなかった僕が持つべきものは友達だとばかりにクラスメイトに相談した結果が宇野さんの辛辣かつ的確な一言だった。
「しかし酷い話です。本来無条件に参加できて然るべきだというのに、譲歩の結果が屁理屈紛いの条件付きだなんて」
「まぁしょうがないよ、元々参加を許可してもらえてたのが運が良かっただけなんだから。むしろこっちが当然なんだよ?」
昼休みに校長と僕が話してきた内容を聞いてくれているのは、理不尽だと憤る宇野さんとどこか寂しそうな顔をしながらそれを宥める辰子、眉を顰めてなにやら考え込んでいる倉田くんの3人だ。
「さて、どうしたものか……竜宮はクラスの企画に参加できないのは決定事項としてもだ、鈴木。お前はどうする?クラスの企画に参加しないと考えておくべきか?作業や当日の仕事の割り振りも必要だからハッキリいってほしい」
遠慮しなくて良いぞ、とまで言ってくれる倉田くん、男前だ。女の子にモテるのはきっとこういう人なんだろう。
「増えた仕事の分だけ俺が働けるからな、労働と苦痛は大歓迎だ!」
うん訂正、マゾでさえなければ女の子にモテるんだろうな。
「そうだなぁ、生徒会への申請期限が明日までだから……とりあえず今日1日は作業から外してもらっていいかな?明日からは申請が通っても通らなくても両方手伝えるよう頑張るからさ」
「私もそれでいいですか?いくらなんでも2人だけでは出来る事に限界があります。そうかといってクラス全体で2つも企画を進めるのも無理なので、他の皆さんに協力してもらう訳にもいかないですから」
少し考えてから倉田くんに返事をした僕に追従して宇野さんも参加の意志を示してくれる。
自分1人で頑張ろうと思っていたわけでもないけれど、辰子の事を想って行動してくれる人がいるのは色々な面で嬉しい。
宇野さんの言うとおり、人数が少ないと出来る事に限りが有るので協力者がいるとありがたい。
「そうか……クラスの奴らに声をかけて何人かにこっちを手伝ってもらうか?何をやるにしたって3人じゃきついだろう」
「えっと、私なんかの為に皆にそこまでしてもらわなくてもいいんじゃないかな?なんだか悪い気もするし、私は大丈夫だからそんなに気にしなくても平気。ねっ、俊也?」
無理に明るく振る舞おうとしているのがバレバレの辰子に倉田くんは何か言いたげにしていたが、他のクラスメイトに呼ばれてそちらにいってしまった。
教室の装飾についての話し合いが盛り上がっている中、辰子は僕たちにもそちらに参加するよう促してくる。
「ほら、2人もいってきなって!皆忙しそうにしてるし、参加出来ない私の分まで働いて楽しい文化祭にしてよね!」
「何を馬鹿な事を言ってるんですか辰子ちゃん。いいですか、私たちがどんなに楽しい企画を作っても、そこに辰子ちゃんがいないならそれは意味のない企画なんです。あなたは世界に1人しかいないのですから、あなた自身が楽しまなければ、いつまでたってもあなたは楽しい思いができないんです。何をどれほど用意しても、誰かがどれほど頑張っても、あなたの代わりが務まるものはこの世にはないんですよ」
宇野さんが珍しく辰子に強い口調で意見している。彼女だってどうせなら友人とお祭りを楽しみたいのだろう。いつもより厳しいのはきっとそんな思いの裏返しだ。
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