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第6話

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「......ハァ、そろそろ御飯を食べません?お昼休みが終わってしまいます」
 何故か複雑そうな表情をした宇野さんが、早く食べましょうと言いながらお弁当を広げ始めた。それもそうだ、責任の取り合いで休み時間を消費するのは嫌だ。
「うんっ、そうね。私お腹空いちゃったわ。俊也、早く食べよ!」
「アー、ごめん。僕今日食堂なんだ」
「えっ?」
 そうなのだ、朝の登校が慌ただしかったせいもあり、弁当を母さんから受け取り損ねてしまった。
「あっ、そっか。私が余計なことしちゃったから......」
「辰子ちゃんに責任はないでしょう。話を聞けば聞く程救いようがありません」
「そりゃどうも申し訳ありませんねお嬢さん。そういうことだから辰子、悪いけど宇野さんと2人で食べててよ」
 この学校の食堂は地下にあるから辰子は入れない。昼休みの食堂は非常に込み合うのでどちらにしても利用できないけど。定食の販売しかやってないのでテイクアウトすることもできないので、残念ながら今日は一緒に昼食を摂るのは諦めないといけない。
 痛む足でどうにか立ち上がった僕は、そこでやけに廊下が騒がしいことに気づく。
「何でしょう?」
宇野さんが目をやった先で何人かの男子生徒達が何事か話しながら走って通り過ぎていく。
「守ーー痴女ー捕ーーたーー」
「職ー室にー行されーーーい」
「ーかー母ーー弁ーー届けー」
 興奮した様子の彼らは階段を勢いよく駆け下りて行った。少ししか聞き取れなかったけれど......すげー嫌な予感のするワードが複数聞こえた。
「痴女って......男は馬鹿ですね」
「じゃあ、また後で!」
「あっ、ちょっと俊也!」
 この騒ぎが起きている理由に心当たりのあった僕は、痛む足を引きずりながら校舎の1階、職員室ぐらいしか施設の存在しない階に向かって急いだ。



「あぁっ、いっちゃった......」
 大きな身体に似つかわしくない寂しげそうな声で辰子ちゃんが呟きました。騒動を耳にした瞬間に飛び出して行きましたからね、あの馬鹿。この子の好意に気づいていないようですが、それにしてもよくもまぁあんな酷い行動を......。全く、あの鈍感男はいつまでこんな健気で良い子を待たせておくつもりなのでしょうか。思わず私の態度も悪くなるというものです。
「辰子ちゃん、元気出してください、玉子焼あげますから。今日のは上手に出来た自信のある一品なのです」
 そう言って自慢の玉子焼きを辰子ちゃんの大きな口の前に差し出します。おいしい物は落ち込んだ気分をハッピーに変えてくれるのです。
「ありがとうアイちゃん......わっ、本当!甘くてスッゴくおいしいね。アイちゃんすごいよ!」
あぁ、可愛い。こうも可愛らしい女の子から好意を寄せられる、羨ましいものですね、本当。
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