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006 言わないで:S

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「だったら、簡単じゃん。きみがその子とやればいいんでしょ?」



 え!?!?!?

 もうひとりの人……何、言って……。

「え!?」

 西住にしずみ……!
 ごめんごめんごめんごめんごめんごめん……!

「やれば……って、んな簡単に……」

「男、ダメなの?」

「そういう問題じゃなくて……」

「彼氏いるから?」

「いません、けど……」

「じゃあ、出来るでしょ。あ。もしかして、愛のあるセックスしかしないとか? でも、そんなのなくても気持ちいい……」

「違くて!」

 西住が遮って。

「何で俺? ただのクラスメイトなのに……ていうか、沢渡さわたりの意思は?」

 問、う……。

「ソレがきみなの」



 やめ……どうして……この人が……!



「へ?」

 西住……!

「その子の意思。ね? 言っていいの?」

 俺、に聞いてる……。

 よくない。いいわけがない。
 だって……。

「僕の読み、あたってると思うよ」

 やめ、て……。

「きみ、この西住くんを……」

「やめろ!」



 怒鳴った。
 顔も上げた。

 俺を見るゴツくなくて小柄でかわいらしい顔の2年生……に。
 瞳で、訴える。

 どうか……どうか、ソレ以上は……。



「言わないで……」

 声が震える。

「お願い……します」

「うん。自分で言うならね」

「そ、れは……」

 つい、西住を見て。
 小柄な人に視線を戻す。

「言えない。無理……」

 ホントに無理。



 西住がよけい傷つくショックを受ける!



「そ? じゃ、僕が……」

「玲史。お前が言うことじゃないだろ」

 ゴツい人、助けて……。

「だって、話進まないじゃん。解決したいんでしょ?」

「そりゃ……」

 くれない。

「いいです! 俺はどうなっても、自分のせいだから」

 お願い。わかって……!

「よくないって。偶然でも、知っちゃったら放っとけない」

 西住……!

 こんな俺を、放っておけない……って、やさしい。嬉しい。
 でも!

「アイツらにやられるほうがマシって、何したんだ? 俺に関係あるんだろ? 俺のもん盗んだとか?」

「あ……」

 息、詰まる……!

「サイフはあるしな。違うか」



 西住……西住西住西住……!



「話せよ。じゃなきゃ、高畑さんに聞く」

 そんな……!

「どうする? 何したか、僕の予想も言っちゃうけど」

 この人の、予想……きっと……大きくは外れない……。

「ごめ……んなさい」

 西住にも。
 この人にも。ゴツい人にも。
 俺が存在してることにも。



 ごめんなさい!



 だから……。

「言わないで、ください」

「ねぇ。さっきの続き。きみ、この子とやれる?」

 また!
 言わないで!
 そんなおぞましいコト、西住に想像させないで!
 不快不愉快気色悪いから……!

「え……そ……」

「やれば解決するならとかじゃなく、単純に。この子とセックスするのはアリ?」

「それなら……アリ、ですけど……だからって実際には……」

「だってさ」



 え!?
 え!?え!?え!?
 待って待って待って待って!

 今。
 アリって言った!?

 西住が。
 俺……と、セック……スするの、は……ア、リ……って……。



 アリ!?



 いや!いやいやいやいやいやいや!
 ダメ。
 俺の好きな西住が俺とそんなことするの許容しちゃダメだろ!
 あり得ない。
 ないないない……はず。

 あ、り……得る、の……か?!?!?!



「どう? 話す気になった?」

「でも……」

 あり得るのと可能性と現実は別。
 しかも。
 この……。

「俺なんか……」

 変態だし無価値だし変態だから……。
 話す気になるとかの前に、話しちゃダメだし。知られちゃダメだから。



 西住を傷つけるのはダメ。
 傷つけないと誓ってる。
 俺なんかに好かれてるって知ったら……じゃなくて!
 その前に……俺のしたコト、が……西住を傷つける。
 だから、どうしても内緒にしなきゃならなくて……。



「じゃあ、もういいや」

 小柄な人の関心が、黙り込む僕から西住へ。

「西住くん、だっけ? 僕とはやれる?」

「は!? え?」

 は!?!?!?
 え!?!?!?

 西住に、小柄な人が手を伸ばし。

「かわいいね、きみ。キスしていい?」

 言いながら、西住のうなじに回した手を引き寄せ……。

「やッ……言います!」

 口から、出た。
 立ち上がった。

「だから、やめて……」

 涙が、出た。



 何で?
 どうして?
 何で、言います?
 何で止めた?
 嫌だった?
 この人が西住にキスするのが嫌?
 西住は嫌じゃないかもしれないのに?



 俺のしたコトを知るほうが。俺に好かれてるって知るほうが、西住にとって嫌なこと……なのに?



 涙が止まらない。

 自分が、わからない。
 わかるのは……。



 俺は西住が好き、だ。


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