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第6章 目の前の悪夢

人間は嫌いだ

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「ずいぶん強気だな」

 男はボトルの中身を手のひらに出した。

 トロリとした透明の液体。
 無色のハチミツみたいに見える。

 ニチャ二チャ……ネチョ……。

 男が液体を……自らのペニスにこすりつけている。

「さて……どこまでもつか……楽しみだ」

 男は右手で自分のペニスをつかみ、左手で掴んだかいの尻の間にあてがった。
 少しずつ、中に埋めていく。

「っう……くッ……」

 後ろ向きになった凱の表情は、もう見えない。

 ペニスを凱の中深くに収めた男はゆっくりと1回、それをギリギリまで抜き出して。また、ゆっくりと中に入れる。
 そして。
 突然、激しく腰を打ちつけ始めた。

「いっ! あ……うあッ! っああッ! あああ……! くッ……あっ!」

「ふ……おまえの意志は、関係ない。ここは、嫌でも、反応する」

「あ……う……ッ! ん、ああッくっ……はっ……! アッ、ンッ……あアッ……!」

 背筋が凍って動けなくなった。
 
 少し前とガラリと変わった男の荒々しさと、獰猛な動き。
 一段と苦しげで息をつく間もない凱の叫び声。

「う……アッ! くっ……そ……っあッ! ん、ンアッ! ンうっまっ……やっめ、ア……アアッ!」

「そろそろ、クるか? 出せないのは、つらいだろう。せいぜい……叫べ」

「ア……うッ……っひッ! アッ……ッ! ン、くッ……もっ……ひっうッ! アアア……ッ!」

 凱の背中が反り返る。
 ビクビクと痙攣する身体。

 男が凱の髪をわしづかみ、顎を上げた凱の頭をさらにのけ反らせる。

「しおらしく頼めば、ネクタイは解いてやるぞ」

「アア……う……あっ……はっ……う……ううッ」

「どうする?」

「……ぜって……え……いや……だッ……」

「そうか。なら苦しめ」

 男は凱の髪を離すと、さらなる衝撃を与えるために動き出した。

 凱の尻に男の腰が打ちつけられるたびに。肉同士のぶつかる音とグチュグチュと粘度のある液体のこすれる音が、止まない凱の叫び声とともに小屋に響く。



「アアッ……くうっ……あッ! ウ……アッ……ア、くッ……っやッ! アッ! ッや……ううっ……ンアアッ! うっ……ッく……そ、あアッ! や……はっ……ウ、ア……アアッ……ヒッアアアッ……!」

 さっきより短い時間で、凱の身体が痙攣した。
 肘ではもう身体を支えられなくなったのか、凱はベンチに顔をつけて全身で息をしている。

 僕のいる側に向けた顔。
 半開きの目は何も見ていないように動かない。

「疲れてるところ悪いが、オレも1回イカせてもらうぞ」

 そう言った男が、小刻みに腰を動かしながら凱の上に屈みこむ。
 そして、凱の右肩に口をつけた。

「ッ……ッあ……くッ……アッ……つッ! い、アアアッ……ふ、ウ……ア、アッンン……ッ! く……イッ、ウア、アアア……ッ!」

「っつ! うっ……」

 凱の皮膚に歯を食い込ませたまま、男の身体が大きく震えた。

「ふうっ……」

 男は上体を起こし、血のついた口を拭う。

 凱の肩には、新たな血の楕円。



 何……なんだ……この男は……。



 こんなセックスをする人間がいる。

 人に苦しみを与えることに快感を覚える人間。
 羞恥心を煽られて興奮する人間。
 苦痛に快感を覚える人間。
 人に見られることで興奮する人間。

 子どもに……性的嗜好を持つ人間。
 
 きっと僕が知らないだけで、もっと特殊な性癖を持つ人間はたくさんいるんだろう。
 子どもに性的な行為を行う人間……チャイルドマレスターは別として。
 誰にも迷惑をかけないなら。
 理解して受け入れる相手がいるなら。
 どんなセックスをしようと個人の自由なんだろう。



 人間は……嫌いだ。


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