26 / 110
第5章 探索と調査と忠告と
小屋と東屋
しおりを挟む
ヤツの小屋を『小屋A』にして、東屋の近くにあるこの小屋を『小屋B』って呼ぶことにした。
小屋Bは、凱の使っている小屋に違いない。
よく見ると、昨夜のカンテラも棚にある。
この小屋は、僕の求める条件に合う。
ヤツの使っている小屋じゃなくて、館から離れていて。私道からも適度に離れている。
特定の人間が常時使用している小屋なら、誰かが急に使うことにもなりにくいはず。
つくりはけっこう頑丈。
幅の広いベンチもあるし、しっかりした梁も柱もある。
東西に窓がひとつずつ。
今は施錠されてないけど、ドアの内外両側にそれぞれ鍵をつける掛金がある。
広さもまあまあ。
ただし……小屋Bは凱の拠点。
これは、致命的なマイナス点だ。
いつ何時、凱が来るかわからない。
彼の友だちも。
つまり。たった1日2日でも、勝手に使うのはリスクが高い。
僕が小屋を使用中に人が来ることは、絶対に避けなきゃならないから。
かといって。
ここを何日か使わせてほしいって凱に頼んで了解を得るのも、さらにハイリスクだ。
理由を聞かれるかもしれないし、聞かないで突然様子を見に来るかもしれない。
そして、僕が何のために小屋を使うのかを知ったら……どういう反応をするかわからない。
思案の溜息とともに小屋を出て、東屋へ向かった。
東屋に昨夜の痕跡はなく。半分ほど残った屋根が真昼前の白い日差しを遮り、その影をテーブルに落としている。
ベンチに腰掛けた。
今朝の朝食に、凱はいなかった。
2階の自室……凱の部屋はリージェイクの部屋から左に2つ目……にも気配なし。
月曜の今日は朝食のあと、みんなバタバタして出て行った。
奏子は保育園。
烈は小学校。
汐は高校。
たぶん、凱も高校に行ったんだろう。
僕とリージェイクは来週からだから、今週はのんびり好きにしていられる。
僕は森に探索に出たけど、リージェイクは自室に戻ったみたいだ。
金曜の夕食会のあとで凱のことを聞いてから、リージェイクと二人きりで話していなかった。
避けているってほどじゃないけど、なんとなく気まずくて。
気まずいのは、金曜の夜に僕が凱に賛同するみたいなことを言っちゃったから。
そのせいで、なおさら……リージェイクは僕が凱と接触するのをよく思わないだろうって考えると、これ以上話してまたボロが出るのは防ぎたい。
リージェイクはもうすでに、僕が凱から悪い影響を受けることを心配していると思う。
それに。今度リージェイクと二人きりの時間があったら、報復とか破壊者とか……悪についてコンコンと諭されそうだ。
リージェイクの言っていることは、理解できる。
ただ、賛同出来ないだけ。
リージェイクはとても正しい人間だと思う。
全ての人間が彼みたいだったら、世界はもっと穏やかでやさしいだろう……少なくとも表面上は。
そう思うからよけいに、今は彼の正しさに触れたくない。
悪になる覚悟をしている僕を、リージェイクに感づかれたくないんだ。
逆に、凱に近づきたく思う理由も知っている。
凱に、悪になることを肯定されたい。
時にそれは、必要なことだって。
破壊者の凱には……それが出来ると思うから。
昨夜。凱に会いに、ここへ来た。
話したいと思った。
まだ、凱のことをほとんど知らない。
リージェイクと烈、ショウ、奏子に聞いたこと……他人からの情報だけじゃ、人の本当の姿はわからない。
何年も一緒にいたからってわかるものでもないけど。本人と向き合わないかぎり、その人間の欠片も見えてこないと思う。
リージェイクは『凱はきみに自分と同じ匂いを感じたんだ。お互いにわかり合えるかもしれないって』って言った。
凱が僕に自分と同じ匂いを感じる何かを、僕が初対面の時の会話で示した自覚はない。
わかり合えるか微妙だって思ったのも本当。
そもそも、自分以外の人間とわかり合えるってこと自体、幻みたいなものだし。
でも……。
凱がそう思っているなら、僕がわかろうとすれば、通じ合う何かがあるかもしれない。
そして、それは……僕にとってプラス要素だ。
ヤツへの復讐が、今の僕の最優先事項。
二人めの協力者として……凱がほしい。
ひとりめの協力者……烈と僕は、同じ思い、同じ目的を共有することで同志になり。急速に親しさを増した。
凱と僕にも共有する何かがあって、わかり合える奇跡が起こる可能性はある。
心ない破壊者の封印された心を知りたい。
そう願うのは、僕自身の封印した心が、闇の中で仲間をほしがっているからかもしれない。
『悪い。明日また来てよ』
凱の言葉が頭の中で繰り返される。
今度のは、明らかな誘い。
僕は今夜、ここに来る。
その時は、凱がひとりだといいけど……。
そう思いながら、東屋を後にした。
小屋Bは、凱の使っている小屋に違いない。
よく見ると、昨夜のカンテラも棚にある。
この小屋は、僕の求める条件に合う。
ヤツの使っている小屋じゃなくて、館から離れていて。私道からも適度に離れている。
特定の人間が常時使用している小屋なら、誰かが急に使うことにもなりにくいはず。
つくりはけっこう頑丈。
幅の広いベンチもあるし、しっかりした梁も柱もある。
東西に窓がひとつずつ。
今は施錠されてないけど、ドアの内外両側にそれぞれ鍵をつける掛金がある。
広さもまあまあ。
ただし……小屋Bは凱の拠点。
これは、致命的なマイナス点だ。
いつ何時、凱が来るかわからない。
彼の友だちも。
つまり。たった1日2日でも、勝手に使うのはリスクが高い。
僕が小屋を使用中に人が来ることは、絶対に避けなきゃならないから。
かといって。
ここを何日か使わせてほしいって凱に頼んで了解を得るのも、さらにハイリスクだ。
理由を聞かれるかもしれないし、聞かないで突然様子を見に来るかもしれない。
そして、僕が何のために小屋を使うのかを知ったら……どういう反応をするかわからない。
思案の溜息とともに小屋を出て、東屋へ向かった。
東屋に昨夜の痕跡はなく。半分ほど残った屋根が真昼前の白い日差しを遮り、その影をテーブルに落としている。
ベンチに腰掛けた。
今朝の朝食に、凱はいなかった。
2階の自室……凱の部屋はリージェイクの部屋から左に2つ目……にも気配なし。
月曜の今日は朝食のあと、みんなバタバタして出て行った。
奏子は保育園。
烈は小学校。
汐は高校。
たぶん、凱も高校に行ったんだろう。
僕とリージェイクは来週からだから、今週はのんびり好きにしていられる。
僕は森に探索に出たけど、リージェイクは自室に戻ったみたいだ。
金曜の夕食会のあとで凱のことを聞いてから、リージェイクと二人きりで話していなかった。
避けているってほどじゃないけど、なんとなく気まずくて。
気まずいのは、金曜の夜に僕が凱に賛同するみたいなことを言っちゃったから。
そのせいで、なおさら……リージェイクは僕が凱と接触するのをよく思わないだろうって考えると、これ以上話してまたボロが出るのは防ぎたい。
リージェイクはもうすでに、僕が凱から悪い影響を受けることを心配していると思う。
それに。今度リージェイクと二人きりの時間があったら、報復とか破壊者とか……悪についてコンコンと諭されそうだ。
リージェイクの言っていることは、理解できる。
ただ、賛同出来ないだけ。
リージェイクはとても正しい人間だと思う。
全ての人間が彼みたいだったら、世界はもっと穏やかでやさしいだろう……少なくとも表面上は。
そう思うからよけいに、今は彼の正しさに触れたくない。
悪になる覚悟をしている僕を、リージェイクに感づかれたくないんだ。
逆に、凱に近づきたく思う理由も知っている。
凱に、悪になることを肯定されたい。
時にそれは、必要なことだって。
破壊者の凱には……それが出来ると思うから。
昨夜。凱に会いに、ここへ来た。
話したいと思った。
まだ、凱のことをほとんど知らない。
リージェイクと烈、ショウ、奏子に聞いたこと……他人からの情報だけじゃ、人の本当の姿はわからない。
何年も一緒にいたからってわかるものでもないけど。本人と向き合わないかぎり、その人間の欠片も見えてこないと思う。
リージェイクは『凱はきみに自分と同じ匂いを感じたんだ。お互いにわかり合えるかもしれないって』って言った。
凱が僕に自分と同じ匂いを感じる何かを、僕が初対面の時の会話で示した自覚はない。
わかり合えるか微妙だって思ったのも本当。
そもそも、自分以外の人間とわかり合えるってこと自体、幻みたいなものだし。
でも……。
凱がそう思っているなら、僕がわかろうとすれば、通じ合う何かがあるかもしれない。
そして、それは……僕にとってプラス要素だ。
ヤツへの復讐が、今の僕の最優先事項。
二人めの協力者として……凱がほしい。
ひとりめの協力者……烈と僕は、同じ思い、同じ目的を共有することで同志になり。急速に親しさを増した。
凱と僕にも共有する何かがあって、わかり合える奇跡が起こる可能性はある。
心ない破壊者の封印された心を知りたい。
そう願うのは、僕自身の封印した心が、闇の中で仲間をほしがっているからかもしれない。
『悪い。明日また来てよ』
凱の言葉が頭の中で繰り返される。
今度のは、明らかな誘い。
僕は今夜、ここに来る。
その時は、凱がひとりだといいけど……。
そう思いながら、東屋を後にした。
0
お気に入りに追加
25
あなたにおすすめの小説
コブ付き女サヨナラと婚約破棄された占い聖女ですが、唐突に現れた一途王子に溺愛されて結果オーライです!
松ノ木るな
恋愛
ある城下町で、聖女リィナは占い師を生業としながら、捨て子だった娘ルゥと穏やかに暮らしていた。
ある時、傲慢な国の第ニ王子に、聖女の物珍しさから妻になれと召し上げられ、その半年後、子持ちを理由に婚約破棄、王宮から追放される。
追放? いや、解放だ。やったー! といった頃。
自室で見知らぬ男がルゥと積み木遊びをしている……。
変質者!? 泥棒!? でもよく見ると、その男、とっても上質な衣裳に身を包む、とってもステキな青年だったのです。そんな男性が口をひらけば「結婚しよう!」??
……私はあなたが分かりません!
看守におもらし調教されるあたし…漏らしてイク女になりたくないっ!
歌留多レイラ
大衆娯楽
尿瓶におしっこするはずが、盛大にぶち撒けてしまい…。
治安の悪化から民間刑務所が設立された本国。
主人公の甘楽沙羅(かんら さら)は暴力事件がきっかけで逮捕され、刑務所で更生プログラムを受けることになる。
陰湿な看守による調教。
囚人同士の騙し合い。
なぜか優しくしてくる看守のトップ。
沙羅は閉ざされた民間刑務所から出られるのか?
この物語はフィクションです。
R18要素を含みます。
権田剛専用肉便器ファイル
かば
BL
権田剛のノンケ狩りの話
人物紹介
権田剛(30)
ゴリラ顔でごっつい身体付き。高校から大学卒業まで柔道をやっていた。得意技、寝技、絞め技……。仕事は闇の仕事をしている、893にも繋がりがあり、男も女も拉致監禁を請け負っている。
趣味は、売り専ボーイをレイプしては楽しんでいたが、ある日ノンケの武田晃に欲望を抑えきれずレイプしたのがきっかけでノンケを調教するのに快感になってから、ノンケ狩りをするようになった。
ある日、モデルの垣田篤史をレイプしたことがきっかけでモデル事務所の社長、山本秀樹を肉便器にし、所属モデル達に手をつけていく……売り専ボーイ育成モデル事務所の話に続く
武田晃
高校2年生、高校競泳界の期待の星だったが……権田に肉便器にされてから成績が落ちていった……、尻タブに権田剛専用肉便器1号と入墨を入れられた。
速水勇人
高校2年生、高校サッカーで活躍しており、プロチームからもスカウトがいくつかきている。
肉便器2号
池田悟(25)
プロの入墨師で権田の依頼で肉便器にさせられた少年達の尻タブに権田剛専用肉便器◯号と入墨をいれた、権田剛のプレイ仲間。
権田に依頼して池田悟が手に入れたかった幼馴染、萩原浩一を肉便器にする。権田はその弟、萩原人志を肉便器にした。
萩原人志
高校2年生、フェギアかいのプリンスで有名なイケメン、甘いマスクで女性ファンが多い。
肉便器3号
萩原浩一(25)
池田悟の幼馴染で弟と一緒に池田悟専用肉便器1号とされた。
垣田篤史
高校2年生
速水勇人の幼馴染で、読者モデルで人気のモデル、権田の脅しに怯えて、権田に差し出された…。肉便器4号
黒澤竜也
垣田篤史と同じモデル事務所に所属、篤史と飲みに行ったところに権田に感づかれて調教される……。肉便器ではなく、客をとる商品とされた。商品No.1
山本秀樹(25)
篤史、竜也のモデル事務所の社長兼モデル。
権田と池田の毒牙にかかり、池田悟の肉便器2号となる。
香川恋
高校2年生
香川愛の双子の兄、女好きで弟と女の子を引っ掛けては弟とやりまくっていた、根からの女好きだが、権田はの一方的なアナル責で開花される……。商品No.2
香川愛
高校2年生
双子の兄同様、権田はの一方的なアナル責で開花される……。商品No.3
佐々木勇斗
高校2年生
権田によって商品に調教された直後に客をとる優秀商品No.4
橘悠生
高校2年生
権田によってアナルを開発されて初貫通をオークションで売られた商品No.5
モデル達の調教話は「売り専ボーイ育成モデル事務所」をぜひ読んでみてください。
基本、鬼畜でエロオンリーです。
拝啓、婚約者様。ごきげんよう。そしてさようなら
みおな
恋愛
子爵令嬢のクロエ・ルーベンスは今日も《おひとり様》で夜会に参加する。
公爵家を継ぐ予定の婚約者がいながら、だ。
クロエの婚約者、クライヴ・コンラッド公爵令息は、婚約が決まった時から一度も婚約者としての義務を果たしていない。
クライヴは、ずっと義妹のファンティーヌを優先するからだ。
「ファンティーヌが熱を出したから、出かけられない」
「ファンティーヌが行きたいと言っているから、エスコートは出来ない」
「ファンティーヌが」
「ファンティーヌが」
だからクロエは、学園卒業式のパーティーで顔を合わせたクライヴに、にっこりと微笑んで伝える。
「私のことはお気になさらず」
【読み切り版】婚約破棄された先で助けたお爺さんが、実はエルフの国の王子様で死ぬほど溺愛される
卯月 三日
恋愛
公爵家に生まれたアンフェリカは、政略結婚で王太子との婚約者となる。しかし、アンフェリカの持っているスキルは、「種(たね)の保護」という訳の分からないものだった。
それに不満を持っていた王太子は、彼女に婚約破棄を告げる。
王太子に捨てられた主人公は、辺境に飛ばされ、傷心のまま一人街をさまよっていた。そこで出会ったのは、一人の老人。
老人を励ました主人公だったが、実はその老人は人間の世界にやってきたエルフの国の王子だった。彼は、彼女の心の美しさに感動し恋に落ちる。
そして、エルフの国に二人で向かったのだが、彼女の持つスキルの真の力に気付き、エルフの国が救われることになる物語。
読み切り作品です。
いくつかあげている中から、反応のよかったものを連載します!
どうか、感想、評価をよろしくお願いします!
【完結】お飾り契約でしたが、契約更新には至らないようです
BBやっこ
恋愛
「分かれてくれ!」土下座せんばかりの勢いの旦那様。
その横には、メイドとして支えていた女性がいいます。お手をつけたという事ですか。
残念ながら、契約違反ですね。所定の手続きにより金銭の要求。
あ、早急に引っ越しますので。あとはご依頼主様からお聞きください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる