202 / 246
49-3 衣装チェック
しおりを挟む
放課後。
時刻は6時半を回ったところ。
お化け屋敷の準備のほどは……完了まで、残り10パーセント未満。
やるじゃん、みんな……!
よかった。
残業なしで家に帰れそうだ。
仕掛けと内装はほぼ終わり、今は衣装のチェック中。
「似合うねー、ギャルソンの格好」
凱にそう言われた俺の衣装は。
白シャツに黒ベスト、黒ズボン。黒のクロスタイ。
黒の腰巻きエプロンロング丈。
「これ、このままウェイター出来そう……本格的だよな」
ただし。
うちのクラスの出し物がメンズカフェだったら、だ。
お化け屋敷のエスコート的には……どうなんだろう?
まぁ、何でもアリか。
「お前も似合ってるよソレ」
凱もエスコート役で、着てるのは戦闘服だ。
ソルジャー?
正規の軍隊ってより、ならず者の集まる傭兵部隊にいそうな感じ。
「この学校、いろんな衣装あんね。さっき、海賊軍団に会ったぜ」
「1年のどっかのクラス、敵と勝負しながらの宝探しらしいから。そこかもな」
エスコート役の衣装合わせは、2-Bの教室でやってて。
「学祭用に何でも揃ってて便利だけど……」
前のほうで、どよめきが起きた。
「おー! すげー」
「女に見えるぜ」
「その格好で抱かせろよ」
「明日の客引き、お前が回ればバッチリじゃね?」
「あいつ、普段から女装してんのか?」
「女の格好の男なら、女でよくね?」
「やられねぇように気つけなきゃな」
「確かにかわいいけどさ」
少し離れたところでは、微妙なコメントも。
「男子校にメイド服って。着る人間、選ぶだろ」
黒ミニスカのオーソドックスなメイド服。フリフリエプロンと膝上ソックスは白。
これ着てるの、新庄だから……違和感なくセーフなだけで。
「わざと似合わねぇヤツが着んのも、おもしろいんじゃねぇの?」
「毎年、それもある。去年見た3年のは……思いっきりスベってた」
凱がニヤッとする。
「涼弥がスカート穿けばウケるぜ。カフェならアレ、着るかもねー」
「え……」
メイド服姿の涼弥……。
激しく似合わないだろ……!
あー……でも。
似合わないなら。とことん似合わないほうが、まだ見てて清々しいか。
中途半端なのが一番気マズくて、恥ずかしいよね。
見る側も見られる側も。
「いいかもな」
「お前も似合いそー」
眉を寄せた。
「俺は嫌だ」
「涼弥が着ろっつったら、着てやんだろ?」
「……着ない。俺を女っぽくして楽しいって言われたら……ちょっと引く」
「何しても楽しーんじゃん? けどさーお前の嫌がることは基本、しねぇよ」
「だといいな」
嫌だって言ったのに、出さないでイカせるのを強行した涼弥を思い出し。
今度、俺が嫌なことしたがって……したら。
お仕置きしてやる!
そう決意して。
学祭実行委員の佐野と岸岡の衣装チェックを受け。制服に着替えてから、お化け屋敷へと戻った。
「う……わ……!」
第3多目的教室の入り口から廊下にかけて、ゾンビ役たちがいる。
ゾンビの衣装は、うちの制服をアレンジしたもの。
薄いミントグリーンのシャツに、濃いグレーの細かいチェック柄のズボン。ほとんどは、深緑のブレザーは着てない……学園のゾンビたち。
まだ、顔にメイクはしてないけど、制服は加工済み。
はだけたシャツは裂け、袖やズボンはところどころ破れ。血や土やほかの何かで汚れて悲惨な様子で……。
パッと見、レイプ被害者の集団じゃん……!
「あ、將悟。どう? いい感じでしょ?」
玲史だ。
服ズタズタで……衣装ってわかりきってても、痛々しいな。かわいい顔してるからよけいに。
「うん……バッチリ。なんか……人襲うってより、襲われた感強いけどな」
「血糊メイクすれば、イメージ変わるから。何? この格好そそる?」
玲史の瞳があやしく細まり、上げた腕でシャツがさらにはだけ……。
「いいよ? 返り討ちにしてあげる」
見えてる! 乳首!
水着とか。上半身裸が自然なシチュなら、特に何も思わないのに。
破れた服の間にチラチラされると気になる……って、普通だよね?
「誘うな」
俺へと伸ばした玲史の手を掴んで下ろさせたのは、紫道だ。
「本気にしたら、どうする気だ?」
「なびかない男しか、からかってないでしょ。ね?」
「もちろん、俺は本気にしないけどさ……」
俺に同意を求める玲史の意図がわからない。
紫道に妬かれたいのか。
その気がないヤツを、からかいたいだけなのか。
その気になられたら……どうするのか。
「なびくヤツもいるだろ。紫道がいるんだから、やめろ」
「おー玲史」
凱と新庄が来た。
「いーねーやりたくなる。俺がタチで」
「僕は川北がいい」
凱も新庄も。
冗談にしては、瞳がギラっとしてるような……。
「キレイな筋肉……触っていい?」
新庄が、紫道の開いたシャツから見える腹筋に指先を近づける。
「ダメ。触ったら犯す」
うおっとー!
思いがけない玲史の言葉に。
驚いたのは俺と、紫道。
「僕のかわいいネコにするんだから。お触り禁止」
「ケチ。自分は外でほかのネコ飼ってるくせに」
「今はいない。紫道だけ」
玲史に笑みを向けられた紫道が、下を向く。
照れてるのか……少し赤い。
「ほら。岸岡が見てる。あいつに抱いてって頼めば?」
「絶対、頼まない。お願いされたら考えるけど」
「へーまんざらでもないんだ」
「そんなことない!」
機嫌を損ねた新庄が、教室の中に消えていった。
「玲史」
空いた間に、凱が口を開く。
「ほかのヤツに触られんの嫌なら、お前も浮気すんなよ」
「あーそっか。そうなるね。僕のこと、独り占めしたい?」
問いは紫道へ。
「俺は……」
「行こーぜ」
凱に促され、見つめ合う紫道と玲史から離れた。
時刻は6時半を回ったところ。
お化け屋敷の準備のほどは……完了まで、残り10パーセント未満。
やるじゃん、みんな……!
よかった。
残業なしで家に帰れそうだ。
仕掛けと内装はほぼ終わり、今は衣装のチェック中。
「似合うねー、ギャルソンの格好」
凱にそう言われた俺の衣装は。
白シャツに黒ベスト、黒ズボン。黒のクロスタイ。
黒の腰巻きエプロンロング丈。
「これ、このままウェイター出来そう……本格的だよな」
ただし。
うちのクラスの出し物がメンズカフェだったら、だ。
お化け屋敷のエスコート的には……どうなんだろう?
まぁ、何でもアリか。
「お前も似合ってるよソレ」
凱もエスコート役で、着てるのは戦闘服だ。
ソルジャー?
正規の軍隊ってより、ならず者の集まる傭兵部隊にいそうな感じ。
「この学校、いろんな衣装あんね。さっき、海賊軍団に会ったぜ」
「1年のどっかのクラス、敵と勝負しながらの宝探しらしいから。そこかもな」
エスコート役の衣装合わせは、2-Bの教室でやってて。
「学祭用に何でも揃ってて便利だけど……」
前のほうで、どよめきが起きた。
「おー! すげー」
「女に見えるぜ」
「その格好で抱かせろよ」
「明日の客引き、お前が回ればバッチリじゃね?」
「あいつ、普段から女装してんのか?」
「女の格好の男なら、女でよくね?」
「やられねぇように気つけなきゃな」
「確かにかわいいけどさ」
少し離れたところでは、微妙なコメントも。
「男子校にメイド服って。着る人間、選ぶだろ」
黒ミニスカのオーソドックスなメイド服。フリフリエプロンと膝上ソックスは白。
これ着てるの、新庄だから……違和感なくセーフなだけで。
「わざと似合わねぇヤツが着んのも、おもしろいんじゃねぇの?」
「毎年、それもある。去年見た3年のは……思いっきりスベってた」
凱がニヤッとする。
「涼弥がスカート穿けばウケるぜ。カフェならアレ、着るかもねー」
「え……」
メイド服姿の涼弥……。
激しく似合わないだろ……!
あー……でも。
似合わないなら。とことん似合わないほうが、まだ見てて清々しいか。
中途半端なのが一番気マズくて、恥ずかしいよね。
見る側も見られる側も。
「いいかもな」
「お前も似合いそー」
眉を寄せた。
「俺は嫌だ」
「涼弥が着ろっつったら、着てやんだろ?」
「……着ない。俺を女っぽくして楽しいって言われたら……ちょっと引く」
「何しても楽しーんじゃん? けどさーお前の嫌がることは基本、しねぇよ」
「だといいな」
嫌だって言ったのに、出さないでイカせるのを強行した涼弥を思い出し。
今度、俺が嫌なことしたがって……したら。
お仕置きしてやる!
そう決意して。
学祭実行委員の佐野と岸岡の衣装チェックを受け。制服に着替えてから、お化け屋敷へと戻った。
「う……わ……!」
第3多目的教室の入り口から廊下にかけて、ゾンビ役たちがいる。
ゾンビの衣装は、うちの制服をアレンジしたもの。
薄いミントグリーンのシャツに、濃いグレーの細かいチェック柄のズボン。ほとんどは、深緑のブレザーは着てない……学園のゾンビたち。
まだ、顔にメイクはしてないけど、制服は加工済み。
はだけたシャツは裂け、袖やズボンはところどころ破れ。血や土やほかの何かで汚れて悲惨な様子で……。
パッと見、レイプ被害者の集団じゃん……!
「あ、將悟。どう? いい感じでしょ?」
玲史だ。
服ズタズタで……衣装ってわかりきってても、痛々しいな。かわいい顔してるからよけいに。
「うん……バッチリ。なんか……人襲うってより、襲われた感強いけどな」
「血糊メイクすれば、イメージ変わるから。何? この格好そそる?」
玲史の瞳があやしく細まり、上げた腕でシャツがさらにはだけ……。
「いいよ? 返り討ちにしてあげる」
見えてる! 乳首!
水着とか。上半身裸が自然なシチュなら、特に何も思わないのに。
破れた服の間にチラチラされると気になる……って、普通だよね?
「誘うな」
俺へと伸ばした玲史の手を掴んで下ろさせたのは、紫道だ。
「本気にしたら、どうする気だ?」
「なびかない男しか、からかってないでしょ。ね?」
「もちろん、俺は本気にしないけどさ……」
俺に同意を求める玲史の意図がわからない。
紫道に妬かれたいのか。
その気がないヤツを、からかいたいだけなのか。
その気になられたら……どうするのか。
「なびくヤツもいるだろ。紫道がいるんだから、やめろ」
「おー玲史」
凱と新庄が来た。
「いーねーやりたくなる。俺がタチで」
「僕は川北がいい」
凱も新庄も。
冗談にしては、瞳がギラっとしてるような……。
「キレイな筋肉……触っていい?」
新庄が、紫道の開いたシャツから見える腹筋に指先を近づける。
「ダメ。触ったら犯す」
うおっとー!
思いがけない玲史の言葉に。
驚いたのは俺と、紫道。
「僕のかわいいネコにするんだから。お触り禁止」
「ケチ。自分は外でほかのネコ飼ってるくせに」
「今はいない。紫道だけ」
玲史に笑みを向けられた紫道が、下を向く。
照れてるのか……少し赤い。
「ほら。岸岡が見てる。あいつに抱いてって頼めば?」
「絶対、頼まない。お願いされたら考えるけど」
「へーまんざらでもないんだ」
「そんなことない!」
機嫌を損ねた新庄が、教室の中に消えていった。
「玲史」
空いた間に、凱が口を開く。
「ほかのヤツに触られんの嫌なら、お前も浮気すんなよ」
「あーそっか。そうなるね。僕のこと、独り占めしたい?」
問いは紫道へ。
「俺は……」
「行こーぜ」
凱に促され、見つめ合う紫道と玲史から離れた。
0
お気に入りに追加
327
あなたにおすすめの小説
三限目の国語
理科準備室
BL
昭和の4年生の男の子の「ぼく」は学校で授業中にうんこしたくなります。学校の授業中にこれまで入学以来これまで無事に家までガマンできたのですが、今回ばかりはまだ4限目の国語の授業で、給食もあるのでもう家までガマンできそうもなく、「ぼく」は授業をこっそり抜け出して初めての学校のトイレでうんこすることを決意します。でも初めての学校でのうんこは不安がいっぱい・・・それを一つ一つ乗り越えていてうんこするまでの姿を描いていきます。「けしごむ」さんからいただいたイラスト入り。
少年ペット契約
眠りん
BL
※少年売買契約のスピンオフ作品です。
↑上記作品を知らなくても読めます。
小山内文和は貧乏な家庭に育ち、教育上よろしくない環境にいながらも、幸せな生活を送っていた。
趣味は布団でゴロゴロする事。
ある日学校から帰ってくると、部屋はもぬけの殻、両親はいなくなっており、借金取りにやってきたヤクザの組員に人身売買で売られる事になってしまった。
文和を購入したのは堂島雪夜。四十二歳の優しい雰囲気のおじさんだ。
文和は雪夜の養子となり、学校に通ったり、本当の子供のように愛された。
文和同様人身売買で買われて、堂島の元で育ったアラサー家政婦の金井栞も、サバサバした性格だが、文和に親切だ。
三年程を堂島の家で、呑気に雪夜や栞とゴロゴロした生活を送っていたのだが、ある日雪夜が人身売買の罪で逮捕されてしまった。
文和はゴロゴロ生活を守る為、雪夜が出所するまでの間、ペットにしてくれる人を探す事にした。
※前作と違い、エロは最初の頃少しだけで、あとはほぼないです。
※前作がシリアスで暗かったので、今回は明るめでやってます。
くまさんのマッサージ♡
はやしかわともえ
BL
ほのぼの日常。ちょっとえっちめ。
2024.03.06
閲覧、お気に入りありがとうございます。
m(_ _)m
もう一本書く予定です。時間が掛かりそうなのでお気に入りして頂けると便利かと思います。よろしくお願い致します。
2024.03.10
完結しました!読んで頂きありがとうございます。m(_ _)m
今月25日(3/25)のピクトスクエア様のwebイベントにてこの作品のスピンオフを頒布致します。詳細はまたお知らせ致します。
2024.03.19
https://pictsquare.net/skaojqhx7lcbwqxp8i5ul7eqkorx4foy
イベントページになります。
25日0時より開始です!
※補足
サークルスペースが確定いたしました。
一次創作2: え5
にて出展させていただいてます!
2024.10.28
11/1から開催されるwebイベントにて、新作スピンオフを書いています。改めてお知らせいたします。
2024.11.01
https://pictsquare.net/4g1gw20b5ptpi85w5fmm3rsw729ifyn2
本日22時より、イベントが開催されます。
よろしければ遊びに来てください。
ヒロイン不在の異世界ハーレム
藤雪たすく
BL
男にからまれていた女の子を助けに入っただけなのに……手違いで異世界へ飛ばされてしまった。
神様からの謝罪のスキルは別の勇者へ授けた後の残り物。
飛ばされたのは神がいなくなった混沌の世界。
ハーレムもチート無双も期待薄な世界で俺は幸せを掴めるのか?
僕が玩具になった理由
Me-ya
BL
🈲R指定🈯
「俺のペットにしてやるよ」
眞司は僕を見下ろしながらそう言った。
🈲R指定🔞
※この作品はフィクションです。
実在の人物、団体等とは一切関係ありません。
※この小説は他の場所で書いていましたが、携帯が壊れてスマホに替えた時、小説を書いていた場所が分からなくなってしまいました😨
ので、ここで新しく書き直します…。
(他の場所でも、1カ所書いていますが…)
ハイスペックストーカーに追われています
たかつきよしき
BL
祐樹は美少女顔負けの美貌で、朝の通勤ラッシュアワーを、女性専用車両に乗ることで回避していた。しかし、そんなことをしたバチなのか、ハイスペック男子の昌磨に一目惚れされて求愛をうける。男に告白されるなんて、冗談じゃねぇ!!と思ったが、この昌磨という男なかなかのハイスペック。利用できる!と、判断して、近づいたのが失敗の始まり。とある切っ掛けで、男だとバラしても昌磨の愛は諦めることを知らず、ハイスペックぶりをフルに活用して迫ってくる!!
と言うタイトル通りの内容。前半は笑ってもらえたらなぁと言う気持ちで、後半はシリアスにBLらしく萌えると感じて頂けるように書きました。
完結しました。
上司に連れられていったオカマバー。唯一の可愛い子がよりにもよって性欲が強い
papporopueeee
BL
契約社員として働いている川崎 翠(かわさき あきら)。
派遣先の上司からミドリと呼ばれている彼は、ある日オカマバーへと連れていかれる。
そこで出会ったのは可憐な容姿を持つ少年ツキ。
無垢な少女然としたツキに惹かれるミドリであったが、
女性との性経験の無いままにツキに入れ込んでいいものか苦悩する。
一方、ツキは性欲の赴くままにアキラへとアプローチをかけるのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる