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19-3 ギブ!!!

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「涼弥」

 ゆっくり息を吸った。
 熱い。
 サウナのこの高温の空気って、ただでさえ息苦しいのに。
 脈拍上がると、酸素ほしくてハフハフしちゃうよな。

「お前にハッキリ言っときたい。俺、かいのことは友達として好きで、信頼もしてる。でも、恋愛対象として好きとか気になってるとかはない。本当に」

 涼弥が目をみはる。



 否定に驚くのは、マジで俺が凱をって思ってたからか?
 会ってすぐ仲良く……涼弥と俺もそうじゃん?
 まぁ、4歳か5歳の時だけどさ。

 気を許して打ち解けてって、自分もそうなのに。
 俺の一番近くにいるのは自分なのに……そこはならないんだ?

 俺が自分に惚れてる……っていうふうには。
 謎だ。



「わかった」

 自分を納得させるように涼弥が頷く。

「お前はノンケだし、彼女と……うまくやってるんだしな」

「それは……うん。そう」



 まぁ……そうなるよね。
 そう思わせたままにしてるの俺だからな。

 けどさ。
 そこを強調したいんじゃないんだよ!
 深音みおがいるから、凱を好きなのはお前の思い込みだっていうんじゃなくて。



 俺が好きなのはお前なの。お前!



 そう言えないのが歯がゆい。
 いや。言っちゃえばいいんだろうけど……今はダメ。

 あと何日か……1週間後にはきっと、自信もって言える……はず。



將梧そうご。女って、そんなにいいか?」

 は……!?
 そんなにって……どんなに!?
 そもそも、そんなには知らないし……何て言えばいいの?

 つーか!
 どこに続くのコレ!?

「いい……のかな? え……と、何と比べて? てか、いいって……何が?」

「いや、その……なんとなく」

 涼弥の瞳が泳ぐ。



 ちょっとおもしろい。
 滅多なことで動揺しないのに……してても表に出ないのに。
 もともと、涼弥は感情や意思が読めないんだよね。顔や態度に出さないから、真意がわかりにくいの。

 そう思ってたんだけど、なんか今はわかる。
 少なからず、焦ってる……俺みたいに。



「いいんだ。気にしないでくれ」

「彼女ほしい…のか?」

 流れ的に尋ねると、涼弥が首を横に振る。

「いや。ただ、周りのヤツらみんな女の話するしな。紹介してやるってしつこいヤツもいる」

「あー……そうなるのは仕方ないよ。うちの学園のヤツらは、ほら……半分は男好きだけどさ。外ではほとんどが女好きだし。実際、お前モテるのに彼女いないから」

「街の連中に女は要らないって言うと、不思議な顔されるぞ。学校じゃ、ああそうなんだって感じだが」

 え……学校でもそう言ってるの!?

「お前それ、クラスのヤツらに……ゲイだと思われないか?」

「男も要らないとは言ってある。告られても断ってるからな。そっちとは思われてないはずだ」

 俺を見つめる涼弥を見つめる。



 マズい。
 この流れでもし、好きだとか言われたら対処出来ない。
 いや。それはないか?
 俺が彼女持ちのノンケなの確認したしな。

 だけど。
 女っていいか?が、男はダメか?の前フリの可能性もあるじゃん?

 話題を変えよう。



「あ、さっきの江藤の。土曜に話あるってそのことだった?」

 苦しいか。
 凱が江藤のとこ行くのは週末の予定。上沢の話聞いたんなら、それ知ってるはずだもんな。土曜じゃ終わってるだろ。

「江藤の件は、水曜にでも聞くつもりだった。土曜の話があるってのは、俺がお前に……」

 涼弥が視線を落とした。

 さっきの俺と同じ。同じ狼狽え……って、俺の身体見て!?

 え……!?
 もしや、似たようなこと考えてたりなんか、する……。



 ギブ!!!



 もうこれ以上無理。

 だって、熱くてクラクラしてきたし!
 10分以上も90度の部屋にいるせいもあるけど。

 とにかく限界だ。



「俺! ちょっと冷ましてくるわ。続きはあとで」

「あ、ああ……」

 目線を上に戻した涼弥の怪訝そうな顔に、バツの悪さが浮かんでる気がして。さらにカッとなる俺。

「そうだ! 沙羅の様子も見に行くから。お前も、もうその友達のとこ行けよ。あんまり待たせちゃ悪いだろ」

「大丈夫だ。俺も一回風呂で冷ましたらまた来る」

 あ……そう?



 筋トレしに行かなくていいのか?
 俺がサウナいる間ずっといるのか?
 まだ何か話あるのか?
 土曜の話って……そんな言いにくい内容か?

 聞きたいことは数あれど。

 今は脱出優先だ。



「じゃあ……またな」

 涼弥を残し、そそくさとサウナルームから抜け出した。



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