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18-5 何が心配かわかったよ
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俺と凱がセックスする可能性がないなら、涼弥にバレる心配もないのに。
口走ったのは可能性があるからで。
息を吐きながら、沙羅が首を横に振る。
「二人がしたくてするなら、心配しない」
意外なことに。
沙羅は俺たちがやる可能性は気に留めず。
だけど。
家からの明かりでよく見える沙羅の顔に、微かに自嘲の笑みが浮かんだ。
「勢いでとか流されてとか、後悔するようなのはしてほしくないけど」
あ……昨日、御坂へのあてつけで凱を誘ったの思い出したのか。
後悔するって思うことはしないほうがいいよな、お互いに。
「実際、あり得るよね? 將梧は、涼弥が好きなのに深音とセックス出来るんだし。凱も……好きな相手じゃなくても出来るんでしょ?」
「まーね。けど、その気になる理由はねぇと嫌」
「私が心配なのは、変な三角関係になること。いたの。そのせいで、うまくいくはずの恋も友達も失くして……ものすごくダメージ負った子」
沙羅が真剣な眼差しで俺の瞳を見る。
「將梧にはそうなってほしくなくて……確認したかったのよ」
「その気持ちはありがとな。でも、三角関係って。俺が好きなのは涼弥で、凱は友達としての好きで。凱も同じ感じ……だよな?」
「うん」
頷く凱に安堵して。
「な? 大丈夫。ほんとに心配要らないから。だいたいさ。もし仮に凱が俺を……恋愛対象として好きになっても。涼弥と俺の気持ちが変わらなきゃ、何の問題もないだろ」
あるべき沙羅の返事はなく、凱が口を開く。
「涼弥は、お前の気持ち知らねぇっつーか誤解してんじゃん? お前が自分から言わねぇ限り、あいつは動かねぇからな。二人の気持ち、動ける俺が変えたいよーに変えて相手に思い込ませられんの。それが問題」
沙羅が顔をしかめる。
「そんなすぐに考えつくんだ。危ないなやっぱり。凱にとっては、二人の邪魔するの簡単でしょ? でも……しないで。お願い」
「しねぇって」
何? 話が見えないよ?
凱が邪魔するって何で?
俺がバカなのか鈍いのか……?
救いを求める俺の視線をキャッチした凱が、解説してくれる。
「涼弥はさー、お前より色恋に鈍いの。たぶん、まっすぐで。だから、お前が知り合ったばっかの俺に心を許してるよーに見えたら即、惚れたのかってなんの。そーだろ? 沙羅」
「そこが涼弥らしいんだけどね」
沙羅が苦笑する。
「で、俺がもし本気で好きだってなった場合。お前、俺のこと冷たく突っぱねられる? 邪険にして二度と口きかねぇくらい」
「え……何でそんなひどい仕打ち?」
「出来ねぇよな。むしろ、やさしくすんじゃねぇの? 応えてやれねぇ代わりに」
「これまで通り友達としての範囲内でいいなら、そうしたい……けど。考えが甘い?」
「うん。甘いねー」
「甘過ぎ。だから、心配なの」
凱に続き、沙羅からもダメ出し。
「お前落とすなら。それ利用して、涼弥にさらに誤解させるぜ。お前にもあいつが心変わりしたよーに思わせて、そこにつけ込むの。お前の心構えが出来てねぇうちに短期決戦で」
そう言って俺を見つめる凱の瞳に黒い笑み。
沙羅はほんのり悲し気な表情で。
え……それって随分ひどいじゃん!
好きな相手にそういうことするのって……そこまでして手に入れたいんだとしても、俺には理解出来ないな。そうする気持ち。
あ……そうか。
理解出来ないから、俺にはわからない。気づかないんだ……それが裏で起こっても。
沙羅の心配はこれか。
恋愛初心者の俺は、こういった汚い策略とか卑怯な手口とか使うほどの思いがあるって知らないから……まんまと引っかかるんだろう。
きっと、涼弥も。
「何が心配かわかったよ」
前屈み気味になってた身体を伸ばして深呼吸。
「二人ともありがとな」
俺に軽く微笑んで、目を合わせる凱と沙羅。
「もう心配ねぇだろ? 沙羅も」
「そうね。あなたのこと見直したかな」
「どんなふうに見てたのか知んねぇけど、俺は褒められるよーな人間じゃねぇからさー。あんま買い被んないでね」
「でも、大切な人を傷つけるような真似はしない人間。それで十分安心したからいいの」
「今の策、俺に知られたらもう使えないよな。だから言ったんだろ」
俺の言葉に僅かに首を傾げ、凱がニヤリと唇の端を上げる。
「もっといー案があんのかもよ? 2番目の切り札それらしく見せとけば、1番目のは隠せんの」
「そういうお前、信用してる。理屈じゃなく」
凱が笑う。無邪気に。闇をキレイにしまった、無防備で無抵抗に見える瞳で。
その瞳は、どうしようもなく俺を信用させる。
それが何故か。
わかる時が来るのか来ないのか。
あーでも。
わかる必要もないよね。
理屈じゃないことに、理由なんかなくていいもんな。
「俺、そろそろ帰るねー」
おもむろに立ち上がり、凱が言った。
「今日はサンキュ。話せてよかったぜ」
「俺のほうだろそれ。いろいろ……ありがとう」
「ねぇ! よかったら夕飯、食べてかない? 大したもの作れないけど」
「そうだ。せっかくだからそうしろ」
沙羅の誘いに、嬉しそうな顔をするも首を横に振る凱。
「今夜は用事あんの。今度、ごちそーして」
「これから?」
「駅まで送る」
驚く沙羅に被せて言った。
詮索はなしだ。
「んー近いし道わかるから平気」
玄関に置いてあったカバンを凱に渡す。
「迷子になったら電話しろよ」
「なったらな。また明日ねー」
うちの入り口で見送る俺と沙羅に手を振って、凱が帰っていった。
凱に出会ってからの、この二日間。
いろんなことがあって……それはもう、ほんとに!
特に自分の中での変化が大きくて、頭も心もついていくのが精一杯で。
だけども。
2日前の自分に戻りたいとは、露ほども思わない。
来週のテストが終わったら。知らなかった世界、知らない自分を知る予定の俺。
知ってよかったって、言えるよな?
口走ったのは可能性があるからで。
息を吐きながら、沙羅が首を横に振る。
「二人がしたくてするなら、心配しない」
意外なことに。
沙羅は俺たちがやる可能性は気に留めず。
だけど。
家からの明かりでよく見える沙羅の顔に、微かに自嘲の笑みが浮かんだ。
「勢いでとか流されてとか、後悔するようなのはしてほしくないけど」
あ……昨日、御坂へのあてつけで凱を誘ったの思い出したのか。
後悔するって思うことはしないほうがいいよな、お互いに。
「実際、あり得るよね? 將梧は、涼弥が好きなのに深音とセックス出来るんだし。凱も……好きな相手じゃなくても出来るんでしょ?」
「まーね。けど、その気になる理由はねぇと嫌」
「私が心配なのは、変な三角関係になること。いたの。そのせいで、うまくいくはずの恋も友達も失くして……ものすごくダメージ負った子」
沙羅が真剣な眼差しで俺の瞳を見る。
「將梧にはそうなってほしくなくて……確認したかったのよ」
「その気持ちはありがとな。でも、三角関係って。俺が好きなのは涼弥で、凱は友達としての好きで。凱も同じ感じ……だよな?」
「うん」
頷く凱に安堵して。
「な? 大丈夫。ほんとに心配要らないから。だいたいさ。もし仮に凱が俺を……恋愛対象として好きになっても。涼弥と俺の気持ちが変わらなきゃ、何の問題もないだろ」
あるべき沙羅の返事はなく、凱が口を開く。
「涼弥は、お前の気持ち知らねぇっつーか誤解してんじゃん? お前が自分から言わねぇ限り、あいつは動かねぇからな。二人の気持ち、動ける俺が変えたいよーに変えて相手に思い込ませられんの。それが問題」
沙羅が顔をしかめる。
「そんなすぐに考えつくんだ。危ないなやっぱり。凱にとっては、二人の邪魔するの簡単でしょ? でも……しないで。お願い」
「しねぇって」
何? 話が見えないよ?
凱が邪魔するって何で?
俺がバカなのか鈍いのか……?
救いを求める俺の視線をキャッチした凱が、解説してくれる。
「涼弥はさー、お前より色恋に鈍いの。たぶん、まっすぐで。だから、お前が知り合ったばっかの俺に心を許してるよーに見えたら即、惚れたのかってなんの。そーだろ? 沙羅」
「そこが涼弥らしいんだけどね」
沙羅が苦笑する。
「で、俺がもし本気で好きだってなった場合。お前、俺のこと冷たく突っぱねられる? 邪険にして二度と口きかねぇくらい」
「え……何でそんなひどい仕打ち?」
「出来ねぇよな。むしろ、やさしくすんじゃねぇの? 応えてやれねぇ代わりに」
「これまで通り友達としての範囲内でいいなら、そうしたい……けど。考えが甘い?」
「うん。甘いねー」
「甘過ぎ。だから、心配なの」
凱に続き、沙羅からもダメ出し。
「お前落とすなら。それ利用して、涼弥にさらに誤解させるぜ。お前にもあいつが心変わりしたよーに思わせて、そこにつけ込むの。お前の心構えが出来てねぇうちに短期決戦で」
そう言って俺を見つめる凱の瞳に黒い笑み。
沙羅はほんのり悲し気な表情で。
え……それって随分ひどいじゃん!
好きな相手にそういうことするのって……そこまでして手に入れたいんだとしても、俺には理解出来ないな。そうする気持ち。
あ……そうか。
理解出来ないから、俺にはわからない。気づかないんだ……それが裏で起こっても。
沙羅の心配はこれか。
恋愛初心者の俺は、こういった汚い策略とか卑怯な手口とか使うほどの思いがあるって知らないから……まんまと引っかかるんだろう。
きっと、涼弥も。
「何が心配かわかったよ」
前屈み気味になってた身体を伸ばして深呼吸。
「二人ともありがとな」
俺に軽く微笑んで、目を合わせる凱と沙羅。
「もう心配ねぇだろ? 沙羅も」
「そうね。あなたのこと見直したかな」
「どんなふうに見てたのか知んねぇけど、俺は褒められるよーな人間じゃねぇからさー。あんま買い被んないでね」
「でも、大切な人を傷つけるような真似はしない人間。それで十分安心したからいいの」
「今の策、俺に知られたらもう使えないよな。だから言ったんだろ」
俺の言葉に僅かに首を傾げ、凱がニヤリと唇の端を上げる。
「もっといー案があんのかもよ? 2番目の切り札それらしく見せとけば、1番目のは隠せんの」
「そういうお前、信用してる。理屈じゃなく」
凱が笑う。無邪気に。闇をキレイにしまった、無防備で無抵抗に見える瞳で。
その瞳は、どうしようもなく俺を信用させる。
それが何故か。
わかる時が来るのか来ないのか。
あーでも。
わかる必要もないよね。
理屈じゃないことに、理由なんかなくていいもんな。
「俺、そろそろ帰るねー」
おもむろに立ち上がり、凱が言った。
「今日はサンキュ。話せてよかったぜ」
「俺のほうだろそれ。いろいろ……ありがとう」
「ねぇ! よかったら夕飯、食べてかない? 大したもの作れないけど」
「そうだ。せっかくだからそうしろ」
沙羅の誘いに、嬉しそうな顔をするも首を横に振る凱。
「今夜は用事あんの。今度、ごちそーして」
「これから?」
「駅まで送る」
驚く沙羅に被せて言った。
詮索はなしだ。
「んー近いし道わかるから平気」
玄関に置いてあったカバンを凱に渡す。
「迷子になったら電話しろよ」
「なったらな。また明日ねー」
うちの入り口で見送る俺と沙羅に手を振って、凱が帰っていった。
凱に出会ってからの、この二日間。
いろんなことがあって……それはもう、ほんとに!
特に自分の中での変化が大きくて、頭も心もついていくのが精一杯で。
だけども。
2日前の自分に戻りたいとは、露ほども思わない。
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