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14-3 本命以外とのセックスは、ただの手段?

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 購買に行くと、御坂が待ってた。

「遅かったな。かいも飯買いに来たけど、鈴屋と先に教室戻ったよ」

「お前も一緒に行ってよかったのに」

「なんとなくね」

「ありがとう」

 気疲れで失せかけた食欲を思い出し、おむすびセットとお茶を購入。

「鷲尾、お前が呼んだんだろ?」

 教室に向かいながら、御坂に確認する。

「うん。渡り廊下歩いてるの見かけてさ。俺は戻らなかったから見てないけど、ちょうどいいタイミングだったらしいね」

「ピッタリだよ。水本がキレる寸前。凱に聞かなかったか?」

「鷲尾が間に合ったか聞いただけ。いいとこで先生来させてくれてサンキューって。水本は何でキレそうになったの? 江藤が凱にナイフ突きつけたあと、何があった?」

「あー……凱がうまく江藤のナイフ奪ってやり返して、部屋から出ていかせようとしたんだ。江藤の目、舐めたりしたし」

「へーやるじゃん。暴力沙汰にも慣れてるのか。でも、眼球舐めなんて……初対面の男によく出来るな。嫌がる人もいるのに」

「え? それってエロいプレイなの?」

「エロいかどうかは人によるけど、結膜炎起こすこともあるからね。凱は嫌がらせでやったのかもな。鈴屋狙ったのとナイフで脅された意趣返しに」

「俺、あんまり特殊なの知らないから、何の意味があるのかわからなかった」

 御坂が意味ありげな感じに微笑んだ。

將梧そうごって、彼女いるわりに初心だよね。エロに興味薄いっていうか」

「お前と比べたら俺はエロ関係、超初心者だよ」

「男のほうが好きかもって、考えたことない?」

 一瞬より長く、間を空けてしまった。

「考え……させられたことはあるよ。中学の頃とか、周りはゲイのほうが多かったからな。男のが好きっていうより、男もアリなのかなってさ」

「で、アリなの? 將梧は」

「試してないから、ないとは言いきれないけど……ノンケはみんなそうだろ? お前みたいに絶対無理って確定してるヤツ以外は」

「まぁ、そうだね」

「何で急にそんなこと聞くんだ?」

「さっきの鈴屋と凱見ててさ。二人とも男同士の恋愛に嫌悪感なさげだったから。真性のノンケって、実は少ないんじゃないかと思って」

「だとしても、確かめようって考えるヤツ滅多にいないだろ」

「もし、お前のこと本気で好きなヤツいたら、考えてみる?」

 ドキッとした。



 自分が涼弥を好きってだけなら、その先を考えなかったかもしれない。まぁ……妄想はするかもだけど。

 涼弥も俺を好きだとしたら。
 
 そう期待するから、自分が男もオッケーかどうか試したいって思うんだよな。
 まさに今、リアルタイムで。



「彼女いるからごめん、で終わりか」

「いや。じゃなくて……その、アレだ……」

 しどろもどろになりつつも、何故か適当に流せなくて。
 話題のせいか。相手が御坂だからか。

「もし、彼女がいなくて、俺も好きなら真剣に考えるよ。生理的に男を受けつけられるか、試しておかないとって……不安だろ。そいつのこと好きだからって、男と出来るかわからないし……傷つけたくないからな」

「え? ほかの男と試すの?」

「いきなり本人で、鳥肌と悪寒だったらどうするんだよ」

 俺の言葉に、御坂が驚き気味の表情を崩して笑う。

「なんだ。將梧も俺たちとあんまり変わんないね」

 え……俺に御坂との同類項ある? この話題系列で?
 それに俺たちの『たち』って誰だよ!?

「何が?」

「本命以外とのセックスは、ただの手段だってところ」

 方眉を上げた俺に、御坂が説明する。

「目的は、性欲の発散。心の平穏のため。好奇心。お試し。練習。癒し。気晴らし。愛があるってうそぶく必要がないセックスだよ」

「あーそういう……」

 納得するも、なんかそう聞くとちょっと……ろくでなし感が……。

 でも。
 俺ってそうじゃん。
 深音みおとは実験。今も涼弥じゃない男と試すこと考えてるんだからさ。

「ただし。相手も同じ感覚の人間じゃないとね。恋愛感情がない同士なら、目的が合えば楽しい手段になるだろ」

「なるほどな」

「自己弁護の面もあるけど、俺はいいと思ってるよ。こういう考え方もあってさ。セックスに誠実過ぎても身動き取れなくなるから。將梧がそれに抵抗ないってのが意外だっただけ」

「俺がマジメな委員長だからか?」

「紗羅の弟だから」

 俺と絡めた視線を解いて、御坂が溜息をつく。

「恋愛は難しいよね」

「なぁ、御坂。好きな相手とするのって、ほかのとどう違う?」

「どうって、気持ちがあるとないとじゃいろいろ違うよ。生々しくなっていいなら具体的に言うけど」

「いや、やっぱいいや。また今度で」

 声を上げて御坂が笑った。

 悪いヤツじゃないんだよね。むしろいいヤツ。ちゃんと話聞いてくれるし、人の気持ちも考えてくれる。
 ただ、浮気性なだけ。それが、友達としてなら気にならないけど、恋人となると大きなマイナスポイントになるわけで。



 人の恋愛事情見て、ほんと恋愛って難しいよなって思うのに。よく考えたら、エロ関係だけじゃなく恋心に関しても初心者の俺。

 前途多難の予感しかしないな。



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