上 下
29 / 246

12-3 男と出来るか不安

しおりを挟む
「で、もうひとり試したんだ。今度はタチで」

「は……!?」

 御坂の言葉に、再び驚く俺。

「鳥肌だったんだろ? 何で……?」

「信頼出来る相手ならまた違うかもしれないし。中学で仲のいい友達にゲイのヤツがいたんだ」

「その友達と?」

「卒業する時、好きだって言われてさ。びっくりしたけど気持ち悪いとか全然なくて。恋愛対象には見れないごめんって言ったら、伝えたかっただけだからって」

 御坂が深い息を吐いた。

「友達として今まで通りっていうのも酷な気がするし、高校は別だし。2ヶ月くらい連絡も取り合ってなかったんだけど……偶然会っちゃって」

「だからってお前……」

「頼むつもりはなかったよ。気持ち利用するのはさすがに気が引ける。俺はまだ友達のつもりなんだからな。でも、その時ちょっとへこんでて。理由聞かれて話したら、僕と試してみればってなって……そういうことにね」

「ダメだったのか」

「鳥肌も悪寒もほとんどなかった。あいつのこと、友達としてでも好意はあったから、嫌じゃなかったよ。だけど……勃たなかった。あいつが何してくれても。だから。もう俺、男は絶対無理ってわかったんだ」

「そうか……」

「傷つけた」

 眉間に深いしわを寄せて、御坂が呟いた。

「もし、俺があいつを抱けたら、つき合う可能性もゼロじゃなくなる。言わなかったけど俺自身そう考えたし、期待もさせたはず。なのに、全くダメだったことでひどく傷つけたと思う。もう、男に好かれたくない」

「御坂……」

 その友達は、傷ついたとしても試してよかったと思ってるよ……なんて。俺が言うまでもないね。
 相手も御坂もきっと後悔してないし、ちゃんとわかってる。どうしようもないことだって。
 性指向には……逆らえないよな。

「ゲイが嫌いなんじゃないよ。俺をそういう対象に見るヤツと距離を置きたいだけ」

「ん。わかった」

 納得した。
 で、さらに不安になった。



 好きな相手の……涼弥の気持ちがどうかはすっ飛ばして。 
 男とつき合う自信がないまま、涼弥とつき合うとするじゃん?
 いざ、セックスしましょうって段にきて、やっぱ男は無理。俺お前とは出来ないわってなったら……傷つけるよな。
 逆も傷つくけど。

 この半年間うやむやにしといた涼弥への気持ちを、深音みおに指摘されて認めて。
 認めてからした深音とのセックスで、心だけじゃなく身体にもリンクしてるのを自覚して。
 そして。
 涼弥が俺を……って紗羅に言われたことで、一気に現実味を帯びた。



 涼弥との恋愛が。



 一晩寝て起きたら、無理だと思ってた妄想まで脳内に浮かぶ始末。
 たった1日足らずでこの変化。

 何故。何で。どうして……俺の左脳が追いつかない。



「おはよう、昨日はお疲れ」

 御坂の声で振り向くと、かいと佐野がいた。

 おはようの挨拶を交わしたあと。
 佐野が、ニヤリとした顔を俺に向ける。

將梧そうごの彼女、駅で会ったよ。ニコニコしてすげー元気そうだったぞ。あれからやって満足させたんだな」

 声デカいっ!

「あー元気そう……なら、よかった」

「何だよ。お前のほうは元気ねぇな。頑張り過ぎたか?」

「声下げろよ。全然違うから。お前は何でそんなご機嫌なんだ?」

「学祭。海咲が俺と回ってくれるって」

 あ。ほんとに幸せそう。

「へーやったな」

「だろ? 早くテスト終わんねぇかな。さすがに暫くは遊んでる暇ねぇわ」

「じゃあ、来週また行こうよ、昨日の店。ナンパ待ちの女多いから効率いいし」

 御坂の誘いにOKする佐野。

「海咲ちゃんとうまくいきそうなのに、女遊びするのか?」

「だからだよ。大事なとこでがっつかねぇように」

 あー……俺の質問の意図と佐野の答えが噛み合ってないね。

「そっか……」

 だけど。
 好きな相手がほかにいてもセックス出来るってとこは、俺も同じなわけで。
 さらに、御坂の話聞いて思っちゃったんだよ。
 俺も男と出来るか試しといたほうがいいんじゃ?……って。
 おまけに……。

「お前、本物の彼女いんじゃん。いい女だったねー。ねえちゃんも」

 意味深な瞳で笑みを浮かべる凱。

「うん。まぁ……あ、紗羅のフォローありがとな」



 マズい。
 紗羅が昨夜言ったことで、ウッカリ妄想しかけたの思い出す。
 凱に慰められることを……。
 嫌悪感が湧かないのがマズい。
 知り合って僅か1日足らずで、安心感と信頼を与えられちゃってるのもマズい。

 そして何よりもマズいのは、俺が望めば現実になり得ることだ……冗談でなく。



「お前のねえちゃんだからねー。ほんとに必要なら相手するって言っといてよ」

「一応な……」



 紗羅よりも、俺がお前のこと必要とするかもよ?
 なんて、心の中で呟く俺。

 自分が怖い時って……どうすればいいんだろうな。



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ハイスペックストーカーに追われています

たかつきよしき
BL
祐樹は美少女顔負けの美貌で、朝の通勤ラッシュアワーを、女性専用車両に乗ることで回避していた。しかし、そんなことをしたバチなのか、ハイスペック男子の昌磨に一目惚れされて求愛をうける。男に告白されるなんて、冗談じゃねぇ!!と思ったが、この昌磨という男なかなかのハイスペック。利用できる!と、判断して、近づいたのが失敗の始まり。とある切っ掛けで、男だとバラしても昌磨の愛は諦めることを知らず、ハイスペックぶりをフルに活用して迫ってくる!! と言うタイトル通りの内容。前半は笑ってもらえたらなぁと言う気持ちで、後半はシリアスにBLらしく萌えると感じて頂けるように書きました。 完結しました。

いろいろ疲れちゃった高校生の話

こじらせた処女
BL
父親が逮捕されて親が居なくなった高校生がとあるゲイカップルの養子に入るけれど、複雑な感情が渦巻いて、うまくできない話

無自覚両片想いの鈍感アイドルが、ラブラブになるまでの話

タタミ
BL
アイドルグループ・ORCAに属する一原優成はある日、リーダーの藤守高嶺から衝撃的な指摘を受ける。 「優成、お前明樹のこと好きだろ」 高嶺曰く、優成は同じグループの中城明樹に恋をしているらしい。 メンバー全員に指摘されても到底受け入れられない優成だったが、ひょんなことから明樹とキスしたことでドキドキが止まらなくなり──!?

せっかく美少年に転生したのに女神の祝福がおかしい

拓海のり
BL
前世の記憶を取り戻した途端、海に放り込まれたレニー。【腐女神の祝福】は気になるけれど、裕福な商人の三男に転生したので、まったり気ままに異世界の醍醐味を満喫したいです。神様は出て来ません。ご都合主義、ゆるふわ設定。 途中までしか書いていないので、一話のみ三万字位の短編になります。 他サイトにも投稿しています。

味噌汁と2人の日々

濃子
BL
明兎には一緒に暮らす男性、立夏がいる。彼とは高校を出てから18年ともに生活をしているが、いまは仕事の関係で月の半分は家にいない。 家も生活費も立夏から出してもらっていて、明兎は自分の不甲斐なさに落ち込みながら生活している。いまの自分にできることは、この家で彼を待つこと。立夏が家にいるときは必ず飲みたいという味噌汁を作ることーー。 長い付き合いの男性2人の日常のお話です。

【完結】『ルカ』

瀬川香夜子
BL
―――目が覚めた時、自分の中は空っぽだった。 倒れていたところを一人の老人に拾われ、目覚めた時には記憶を無くしていた。 クロと名付けられ、親切な老人―ソニーの家に置いて貰うことに。しかし、記憶は一向に戻る気配を見せない。 そんなある日、クロを知る青年が現れ……? 貴族の青年×記憶喪失の青年です。 ※自サイトでも掲載しています。 2021年6月28日 本編完結

俺の義兄弟が凄いんだが

kogyoku
BL
母親の再婚で俺に兄弟ができたんだがそれがどいつもこいつもハイスペックで、その上転校することになって俺の平凡な日常はいったいどこへ・・・ 初投稿です。感想などお待ちしています。

【完結】僕の大事な魔王様

綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
BL
母竜と眠っていた幼いドラゴンは、なぜか人間が住む都市へ召喚された。意味が分からず本能のままに隠れたが発見され、引きずり出されて兵士に殺されそうになる。 「お母さん、お父さん、助けて! 魔王様!!」 魔族の守護者であった魔王様がいない世界で、神様に縋る人間のように叫ぶ。必死の嘆願は幼ドラゴンの魔力を得て、遠くまで響いた。そう、隣接する別の世界から魔王を召喚するほどに……。 俺様魔王×いたいけな幼ドラゴン――成長するまで見守ると決めた魔王は、徐々に真剣な想いを抱くようになる。彼の想いは幼過ぎる竜に届くのか。ハッピーエンド確定 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2023/12/11……完結 2023/09/28……カクヨム、週間恋愛 57位 2023/09/23……エブリスタ、トレンドBL 5位 2023/09/23……小説家になろう、日間ファンタジー 39位 2023/09/21……連載開始

処理中です...