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幕間~逃亡兵たちのカリスマ店員への道~

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 画面の中でお客の女の子が振り向いた。
『わたし最近、ロックスタイルにハマってるの。ねぇ、ロックに全身コーデしてくれない?』
「ロックは音楽でしょう?それを服に着るってどういうことですか?」
「まぁまぁ、ベア教官。そんな難しく考えないで。うーん、ロックスタイルならカッコイイ服を選べば大丈夫ですよ!」
 エリザベアーとマレ熊の着せ替えゲーム配信。2人はショップ運営に勤しんでいた。このゲームが初めてのエリザベアーは苦闘していた。苦闘というレベルでもない気がするが……。
「まあこんなもんでしょう、上手く選べたと思います」
『なにこれ最悪~!正気?』
 ゲームの中のお客が辛辣な言葉でエリザベアーの選んだ服を非難する。
 緑色のタートルネックに緑色のスパッツ。腰には、赤いガラス玉がはめ込まれた銀色のバックルがついたベルト。
 チャット欄がwwwに染まる。マレ熊はなんとか笑いを耐えていた。
「あの~ちなみにベア教官。このコーデのコンセプトは?」
「……仮面○○です」
「はい?」
「ニチアサに現れる仮面のバイクに乗ったライダーをイメージしたんですよ、カッコイイといえば、ライダーでしょう!」
「あ~緑色はそれを表現していたんですね、いやライダーならスパッツは黒でもよかったんじゃ」
「私の推しは全身緑色に近いんです」
「(これは突っ込むと長くなりそうだな……)あ、教官!あの子割とシンプルな恰好してますよ。あの子のオーダーならいけそうじゃないですか?」
「そうですね、では」
『こんにちは~!あなた、ここの店員さん?じゃあ、プレッピースタイルで私のことバッチリコーデしちゃって!』
「なんですかプレッピーって」
「あ~なんかブリティッシュというか学生風のことですよ」
「学生なら制服着ておけばいいでしょう!何考えているんですか、この人は!」
 エリザベアーがガシャンとコントローラーを置いた。

コメント:え、今の音もしや台パン?
コメント:コントローラー落としちゃっただけだろ。ベアー様が台パンなどなさるわけがない

「ドー、ドー、ベア教官。この子はちょっと難易度高いですね。他の子にしましょ」
『私、可愛いものが好きなんだ。可愛いネックレスとかこのお店置いてる?』
「あ、可愛いネックレスですって!これならわかりやすくないですか?」
「フー、フー、次こそ……」
(よかったー簡単なやつきて。これならエリザベアーさんも外さないでしょ)
「これなんてどうですか?」
「……ガイコツのエスニックビーズネックレス、ですか。あの、理由をお聞かせ願えますか?」
「女の子はビーズ好きでしょう。あとこのガイコツもキモ可愛いというやつに分類されるかと」
『え、なにそれ怖……』
 またもや拒否された。エリザベアーが二度目の台パンを決める。
「もう無理です、私のセンスじゃいくらやってもショップ店員なんてやってゆけません」
「ベア教官、ファイトですブフッ。トライアンドエラーですブホッ」
「そうやって笑われながら教官って呼ばれるとかえってふがいなさが目立ちますね……」
「えー今日は教官設定なんですけど、じゃあやめます?エリザベアーさん」
「うぅん……教官、だけやめたらいいんじゃないですか……」
「いきなりめっちゃ小声ですね。うーん、じゃあベアー、さんとか」
「う、も、もう一声」
「ベアーさん?」
「そうじゃなくてもう少し違った呼び名で!」
「ん~ベアー姫、ベアー殿下、ベアーお嬢様……」
「いやそこはベアーちゃん!でいいじゃないですか。あなた、アギちゃんのことは普通に「ちゃん」付けで呼んでるのに、なんで私は謎の方向性に行くんですか!」
「なんかすみません。じゃあ、ベアーちゃんで」
「はい。それです。それで行きましょう、今後は」
「ここに行き着きたかったんですね、エリザ、んん、ベアーちゃん。じゃあ私のこともマレ熊ちゃんでお願いします」
「い、いいんですか」
「もちろん!というかベアーちゃんの方が先輩なんですから、ちゃん付けしてくれないと、こっちが恐縮しちゃいますよ」
「それもそうですね……じゃ、じゃあマレ熊、ちゃん」
「はいなんですか?ベアーちゃん♪」
「フフフ……マレ熊ちゃん」
「さっきまで台パンしてたのにもうコロコロ笑ってる。可愛い人だなぁ、ベアーちゃんって」
 2人のショップ店員配信はその後も続いた。
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