虚幻

寿里~kotori ~

文字の大きさ
上 下
1 / 1

虚幻・・・きょげん

しおりを挟む
愛する人が消えた

何の予告もメールも前触れもなく昨日まで仲良く会話していたのに忽然と僕の前から姿を消した。

知り合いに訊いても皆戸惑うばかりで何も情報がない・・・そして落ち込む僕に揃って気休めのように言う。

「所詮はWeb上の付き合いだから仕方ないよ」

そう・・・僕はWeb上のコミュニケーションツールで彼と知り合った。

読書の趣味が一緒で年齢も近くてリアルな友達と喋るよりずっと楽しくて、いつまで話してても飽き足りなかった・・・彼の一番になりたくて凄く悩んだ末に個人的なDMで告白した。

フォローを切られてブロックされる覚悟でいたが彼は数日後にDMをくれて僕を受け入れてくれた。

「僕と個人的に逢わずにWeb上でなら恋人になるよ。僕も君と話すの好きだから」

リアルに逢うつもりなんて元からなかったから僕らは他のフォロワーにも秘密でオンライン交際していた。

僕達はお互いの姿形も本当の身分も性別さえも分からない。でも彼が存在するなら本当なんて僕にはどうでもよかったのに・・・

彼が消えて大学にもろくに通わずスマホで彼を探すことに夢中になっていた僕にたまにやりとりするフォロワーが思いがけない事を告げた。

「あの人の君と交流してたアカウントは複数あるアカウントの1つだよ。裏垢を沢山作って本垢は分からないけど裏垢の1つは教えるが俺が教えた事は絶対に言うなよ!!」

複数のアカウントを駆使する人間は多数いると知っているが僕はアカウントは1つだし彼もそうだと言っていたので彼の見えない一面が見えて嫌な感じがしたが教えられた裏垢を探したら鍵がついていた。

ここでフォロー申請しても不審がられるしどうしたら良いか悩んでいると先ほど裏垢を教えてくれたフォロワーからDMがきた。

「俺の知り合い経由であの人の裏垢の様子を教えてもらった。君はもう関わるな!最低だよアイツ」

知り合いの撮ってくれたスクリーンショットを見て僕は愕然とした。

彼が僕とのDMをツイート上で公開していたからだ。

「キモくて笑える!!マジになってバカじゃねえのwww」

その他、見るに耐えない言葉の数々に僕が本当に彼なのか信じられずにいると再びDMが来て

「鍵で好き放題だから知り合いが通報したけどすぐに垢消しするな多分。何も構うなよ!こういう奴だったと思い諦めろ」

「・・・かなりショックですが、色々と対応してくださりありがとうございます」

それからすぐに例の裏垢を見たがフォロワーの言葉は当たり、すでにアカウントは消えていたが僕はある決心をしていた。

「絶対にコイツの本垢を探し出してやる!!」

それから、暇さえあれば彼との会話からのヒントやフォロワー達の繋がりも調べて僕は彼に言いたい事を言うべくWeb上の広大な空間にある1つの小部屋を捜索して僕自身も捨て垢を作り、彼の痕跡を探しまわって1つのアカウントに辿り着いた。

アカウント名が彼の好きな作家の本名と同じで会社員とあるがツイートの言い回しが隠しようもなく彼そのものであった。

主に雑多で読んだ本などの感想を呟き、言葉は優しく丁寧でそれでいてユーモアがある。

僕は彼をフォローすることなく彼の確証をつかむべく常にツイートをチェックしていたら、ある日彼が誰かの返信にこうツイートしていた。

「前に凄く仲良かったフォロワーさんいたけど距離が近すぎてさ~💦悪いと思ったけど逃げた」

コイツだ・・・!!

やっと見つけた・・・僕は息を深く吸うと彼のコメント欄にひとこと書き添えた。

「地獄に堕ちろ」

そのまま裏垢から本垢に切り替えて彼のアカウントの様子を見て彼のリアクションにニヤリとした。

「こういう言葉で人を脅すのは相手にしない。僕は何もしてないから」

そうか・・・じゃあ、僕の愛憎が尽きるまで毎日でも打ってやるよ。

僕のアカウントも今はひとつじゃないからさ・・・

それから日課で僕は彼に呪いの言葉を送り続けてアカウントを替えて攻撃して彼は鍵をかけたけど無駄だよ・・・僕はすでに君のフォロワーになってるから。

君の一番は僕だから・・・君のための僕は決して君を傷つけない。

「酷い言葉ですね・・・あんな言葉相手にしなくていいですよ!」

「ありがとうございます✨そう言ってくれると救われます」

救われるなら僕は何者にもなるしどんな嘘も攻撃もする・・・僕が君の一番だから


end

しおりを挟む

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

ダンス練習中トイレを言い出せなかったアイドル

こじらせた処女
BL
 とある2人組アイドルグループの鮎(アユ)(16)には悩みがあった。それは、グループの中のリーダーである玖宮(クミヤ)(19)と2人きりになるとうまく話せないこと。 若干の尿意を抱えてレッスン室に入ってしまったアユは、開始20分で我慢が苦しくなってしまい…?

保育士だっておしっこするもん!

こじらせた処女
BL
 男性保育士さんが漏らしている話。ただただ頭悪い小説です。 保育士の道に進み、とある保育園に勤めている尾北和樹は、新人で戸惑いながらも、やりがいを感じながら仕事をこなしていた。  しかし、男性保育士というものはまだまだ珍しく浸透していない。それでも和樹が通う園にはもう一人、男性保育士がいた。名前は多田木遼、2つ年上。  園児と一緒に用を足すな。ある日の朝礼で受けた注意は、尾北和樹に向けられたものだった。他の女性職員の前で言われて顔を真っ赤にする和樹に、気にしないように、と多田木はいうが、保護者からのクレームだ。信用問題に関わり、同性職員の多田木にも迷惑をかけてしまう、そう思い、その日から3階の隅にある職員トイレを使うようになった。  しかし、尾北は一日中トイレに行かなくても平気な多田木とは違い、3時間に一回行かないと限界を迎えてしまう体質。加えて激務だ。園児と一緒に済ませるから、今までなんとかやってこれたのだ。それからというものの、限界ギリギリで間に合う、なんて危ない状況が何度か見受けられた。    ある日の紅葉が色づく頃、事件は起こる。その日は何かとタイミングが掴めなくて、いつもよりさらに忙しかった。やっとトイレにいける、そう思ったところで、前を押さえた幼児に捕まってしまい…?

そんなの聞いていませんが

みけねこ
BL
お二人の門出を祝う気満々だったのに、婚約破棄とはどういうことですか?

美人に告白されたがまたいつもの嫌がらせかと思ったので適当にOKした

亜桜黄身
BL
俺の学校では俺に付き合ってほしいと言う罰ゲームが流行ってる。 カースト底辺の卑屈くんがカースト頂点の強気ド美人敬語攻めと付き合う話。 (悪役モブ♀が出てきます) (他サイトに2021年〜掲載済)

帰宅

papiko
BL
遊んでばかりいた養子の長男と実子の双子の次男たち。 双子を庇い、拐われた長男のその後のおはなし。 書きたいところだけ書いた。作者が読みたいだけです。

友達が僕の股間を枕にしてくるので困る

ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
僕の股間枕、キンタマクラ。なんか人をダメにする枕で気持ちいいらしい。

どうして、こうなった?

yoyo
BL
新社会として入社した会社の上司に嫌がらせをされて、久しぶりに会った友達の家で、おねしょしてしまう話です。

肌が白くて女の子みたいに綺麗な先輩。本当におしっこするのか気になり過ぎて…?

こじらせた処女
BL
槍本シュン(やりもとしゅん)の所属している部活、機器操作部は2つ上の先輩、白井瑞稀(しらいみずき)しか居ない。 自分より身長の高い大男のはずなのに、足の先まで綺麗な先輩。彼が近くに来ると、何故か落ち着かない槍本は、これが何なのか分からないでいた。 ある日の冬、大雪で帰れなくなった槍本は、一人暮らしをしている白井の家に泊まることになる。帰り道、おしっこしたいと呟く白井に、本当にトイレするのかと何故か疑問に思ってしまい…?

処理中です...