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7出会い
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灼熱のごとき体温を示した本人・カタリンは、薄ら笑いを浮かべていた。もちろん、健康的な表情ではなかった。
「は? 全然平熱っすよ。なんすか、ボクのお世話でもしたいんすか?」
「わかりやすい強がりをするな。この熱さで平熱なら、ハイエルフのハイは、高熱って意味になっちまうぞ。素直になれよ」
「ボクは常に素直っす、よ」
顎に掌を当てて、カタリンの顔を上げる。普段は真っ白な顔が、桃色になっていた。
「医者に連れてってやる。肩貸せ」
「アニキが医者にかかりたいって、ボクにお願いするなら、付き添ってもいいっすよ」
「調子に乗りすぎだ馬鹿野郎。もういい、勝手に連れて行くぞ」
政信は、カタリンの膝裏と背中に手をまわして、一息に持ち上げた。
「ちょ、お姫様抱っこじゃないっすか!」
「そんな色っぽいもんじゃねえよ。持ちやすいだけだ」
「離して欲しいっす」
「暴れるなよ。ファイヤーマンズ・キャリーで、荷物みたいに運んでもいいんだぞ」
「わぎゃああ!」
暴れるカタリンを強く抱きしめて保持すると、さらに暴れた上奇声を発し始めた。
「何が不満だ。幼女と少女の合成獣め」
「ボクは純粋な美少女っすよ!」
ミズキだったころの日本では疎ましく思っていた美しさも、異世界では大事なようだ。
「はいはい、純粋なクソ美少女だよお前は」
「クソは取ること希望っすよ」
「わかったから暴れるな」
抱き上げて見たものの、初めてきた街だ。療法院はもちろん、自称薬師の営む怪しい薬屋の場所すら政信にはわからない。住民に尋ねる他ないのだが、住民の半数以上はドワーフだ。
北のエルフと南のドワーフは、敵対関係ではない。ただし、現在は、だ。
過去に、東王国が大陸南部に持つ飛地の所領で、境界をめぐる諍いがあり、小競り合いが発生していた。その上、講和交渉中に東王国のハイエルフが、ドワーフの外交使節を監禁して、ヒゲを剃ってしまった。
ドワーフにとってヒゲは種族の象徴で誇りだ。ハイエルフは、ドワーフにとって最悪の侮辱を行ったというわけだ。以来、ハイエルフの東王国とドワーフの王国は冷戦状態だった。
当然、エルフ族に対するドワーフの心証は悪い。政信もカタリンも西王国出身のエルフ族だが、ドワーフに見分けはつかないだろう。有益な情報をくれるだろうか?
政信は逡巡するが、カタリンの高熱を腕と胸で感じとり、迷っている暇はないと開き直る。ちょうど、白いブラウスを着たドワーフの少女が、栗色の長い三つ編みを靡かせながら走っていく姿が見えた。
「は? 全然平熱っすよ。なんすか、ボクのお世話でもしたいんすか?」
「わかりやすい強がりをするな。この熱さで平熱なら、ハイエルフのハイは、高熱って意味になっちまうぞ。素直になれよ」
「ボクは常に素直っす、よ」
顎に掌を当てて、カタリンの顔を上げる。普段は真っ白な顔が、桃色になっていた。
「医者に連れてってやる。肩貸せ」
「アニキが医者にかかりたいって、ボクにお願いするなら、付き添ってもいいっすよ」
「調子に乗りすぎだ馬鹿野郎。もういい、勝手に連れて行くぞ」
政信は、カタリンの膝裏と背中に手をまわして、一息に持ち上げた。
「ちょ、お姫様抱っこじゃないっすか!」
「そんな色っぽいもんじゃねえよ。持ちやすいだけだ」
「離して欲しいっす」
「暴れるなよ。ファイヤーマンズ・キャリーで、荷物みたいに運んでもいいんだぞ」
「わぎゃああ!」
暴れるカタリンを強く抱きしめて保持すると、さらに暴れた上奇声を発し始めた。
「何が不満だ。幼女と少女の合成獣め」
「ボクは純粋な美少女っすよ!」
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「はいはい、純粋なクソ美少女だよお前は」
「クソは取ること希望っすよ」
「わかったから暴れるな」
抱き上げて見たものの、初めてきた街だ。療法院はもちろん、自称薬師の営む怪しい薬屋の場所すら政信にはわからない。住民に尋ねる他ないのだが、住民の半数以上はドワーフだ。
北のエルフと南のドワーフは、敵対関係ではない。ただし、現在は、だ。
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当然、エルフ族に対するドワーフの心証は悪い。政信もカタリンも西王国出身のエルフ族だが、ドワーフに見分けはつかないだろう。有益な情報をくれるだろうか?
政信は逡巡するが、カタリンの高熱を腕と胸で感じとり、迷っている暇はないと開き直る。ちょうど、白いブラウスを着たドワーフの少女が、栗色の長い三つ編みを靡かせながら走っていく姿が見えた。
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