妄想日記5<<DISPARITY>>

YAMATO

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Chapter8(男童編)

Chapter8-⑦【残火】後編

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「お前は幾つもの難題を、俺には思い付かん手法で解決した。
その手腕を買っているんだ。」
「俺には面倒事を押し付けてるとしか、思えないっけすどね。」
その言葉に神志那が黙った。
「癌なんだ。
持って、精々年内一杯だろう。
まだまだやり残した事がある。
正直、無念だ。
だがお前にならそれを託せる。」
「だったら中嶋の店をくれないっすか？
あっちの方が俺には合ってるし。」
ナツキは飄々と言う。
「そうか…。」
血走った眼を瞼が覆った。
どうやら本当に眠ったみたいだ。
寝息は心許ない。
ナツキが好き勝手出来たのは神志那という後ろ楯があったからだ。
失敗しても、何の被害も責任もない。
それ故に大胆な手が打てた。
だがトップに立てば、そうはいかない。
それ位はナツキにも分かる。
神志那の会社と心中する気はない。
『このままずらかるか？
死ぬ迄、付き合うか？』
ナツキは煙草を吸いに病室を出た。

「社長の病状はかなり進んでいる。
この分なら株主総会迄、持たないだろう。」
植え込みの裏から声がした。
主が塚田と、直ぐに分かる。
「ああ、俺達が協力すれば、上手くやれる。
そうだ、山下さえ片付ければ、社長と副社長の座が転がってくるんだ。
覚悟を決めろ！」
夢中で話す塚田はナツキの存在に気付いてない。
「ああ、遺書はセンターの金庫にある。
偽装なんてチョロいもんだ。
株主総会でそれを発表するんだ。
その時、1/3持ってる山下さえいなければ楽勝だ。
えっ、ナツキ？」
突然自分の名前が呼ばれる。
「馬鹿か？
幾ら社長が買ってるとはいえ、あんな非常識な男を社長に推す訳ないだろ！」
ナツキは急に神志那が不憫に思えてきた。
忠誠を誓っていた男達が謀反を企てている。
一番頼りにしたい時に。
しかしそれはトップに立つ者の宿命だ。

「仕方ねぇな。」
その声に塚田が視線を上げた。
ナツキの視線と搗ち合う。
「なっ、ナツキさん！」
塚田の耳から携帯が離れた。
「もしもし、どうしたんですか？」
携帯から声が漏れる。
間宮の声だ。
慌てて塚田が通話を切った。
「内緒話するなら、場所を選べ。
筒抜けだぜ。
悪いが、次の社長はこの俺だ。
目一杯、非常識な人事をさせてもらうぜ。」
「嘘だ！そんな馬鹿な事があるか！」
拳を固めた塚田の二頭筋が膨らんだ。
「悪党の癖に疑り深いな。
副社長の山下に聞いてみろ。
クビになる前に辞表出した方がお前の為だ。
間宮にも言っておけ。」
ナツキは言い残すと、病院を後にする。
駆け出した塚田が病室へ向かうのが見えた。

何故か性欲を覚えた。
「さっき抜いたのにな。
そうか、さっきはタチったから、今度はアナルが疼くのか。」
ナツキは納得すると、地下鉄の駅に足を向ける。
もう名古屋の路線図は頭に入っていた。
「ここからだと、確か二つ目で乗り換えだな。」
水滴が頭に当たった。
雨足は一気に強まる。
ナツキは走る事なくゆっくり歩く。
火照った身体を冷ますには丁度良い雨だった。

(完)

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