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Chapter6(港川編)
Chapter6-⑦【プール】前編
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「何だ、ナツキさんか。
超びっくりしたっすよ。」
ヒナタが尻を叩きながら起き上がる。
「随分紹介してくれた様だな。
今日は何でもしてやるぞ。」
珍しくナツキは機嫌が良い。
「だったらこれからプールへ行きます。
ナツキさんも付き合って下さい。」
背中を押さえながらコウキが言う。
「おう、いいな。
ナツキさん連れて行ったら、マジ目立つぞ。」
ヒロシがニヤリと笑う。
「オカマ達が仰天するな。
けど、その前に撮影してもらわないと。」
ヒナタがジャージを脱ぎ始める。
「おい、マスクはどうするんだ?
今なら割り引いてやる。」
携帯は忘れても、営業は忘れなかった。
中島は感心して、マスクを差し出す。
中央線に乗り換え、二つ目の駅で降りた。
ピタピタのシャツを着たゲイが前を歩いている。
後ろからも視線を感じた。
「オカマばかりだな。
何があるんだ?」
ナツキが振り向くと、後方の二人組も立ち止まる。
そしてこそこそと話し出す。
「丸でだるまさんが転んだだな。
だるまさんが…、転んだ!」
鬼の形相で振り返ると、二人は瞬時にフリーズした。
「オカマの集まるプールっす。
今日は天気がいいから、うじゃうじゃいるっすよ。」
ヒナタが説明する。
チケット売り場で並んでいると、少し前に見覚えのある男がいた。
チカラの知り合いで、航空券を手配してくれた男だ。
『確か…、タカユキ。』
ナツキは口元を歪めると、男の肉付きの良い大殿筋を眺めた。
男は入口近くのベンチにバッグを置くと、シャワーへ向かう。
開けっ放しのバッグから競パンが覗く。
『不用心な奴だ。』
人が良い奴は皆自分と同じだと思っている。
『世の中、そんなに甘くないぜ。』
空港で見た爽やかな笑顔を思い出し、舌を鳴らす。
ナツキは素早く競パンを抜き取ると、ヒナタに耳打ちした。
少し離れたロッカーに荷物を押し込み、戻ってきた男に視線を向ける。
腰にタオルを巻いた男は荷物の中をベンチにぶちまけ、必死に何かを探す。
その狼狽振りに思わず笑みが溢れる。
『どんなに探したってないぞ。』
ポケットの中で競パンを掴むと、ヒナタにサインを送った。
「探し物っすか?」
ヒナタが男に声を掛けた。
「あっ、いやっ、その…。」
タカユキが返事に詰まる。
「ここは置き引きが多いから、気を付けた方がいいっすよ。
もしかして水着っすか?」
笑いを堪えたヒナタが聞く。
「いやっ、単に忘れただけかと…。」
タカユキはバッグのジッパーを閉めると、肩に掛けた。
「えっ、もしかして帰るんすか?
折角、来たのに!
俺ので良かったら、貸しましょうか?」
「えっ、いや、それでは迷惑を掛けてしまうし…。」
「全然、迷惑じゃないっすよ。
二枚持ってるんで。
練習用だからクタクタだけど、構わないっすか?」
「そう言ってもらえると、ありがたいです。
ではお言葉に甘えて、貸してもらおうかな。」
「そうっすよ。
折角、入場料を払ったんだから!」
破顔したヒナタがリュックから取り出した競パンを差し出す。
(つづく)
超びっくりしたっすよ。」
ヒナタが尻を叩きながら起き上がる。
「随分紹介してくれた様だな。
今日は何でもしてやるぞ。」
珍しくナツキは機嫌が良い。
「だったらこれからプールへ行きます。
ナツキさんも付き合って下さい。」
背中を押さえながらコウキが言う。
「おう、いいな。
ナツキさん連れて行ったら、マジ目立つぞ。」
ヒロシがニヤリと笑う。
「オカマ達が仰天するな。
けど、その前に撮影してもらわないと。」
ヒナタがジャージを脱ぎ始める。
「おい、マスクはどうするんだ?
今なら割り引いてやる。」
携帯は忘れても、営業は忘れなかった。
中島は感心して、マスクを差し出す。
中央線に乗り換え、二つ目の駅で降りた。
ピタピタのシャツを着たゲイが前を歩いている。
後ろからも視線を感じた。
「オカマばかりだな。
何があるんだ?」
ナツキが振り向くと、後方の二人組も立ち止まる。
そしてこそこそと話し出す。
「丸でだるまさんが転んだだな。
だるまさんが…、転んだ!」
鬼の形相で振り返ると、二人は瞬時にフリーズした。
「オカマの集まるプールっす。
今日は天気がいいから、うじゃうじゃいるっすよ。」
ヒナタが説明する。
チケット売り場で並んでいると、少し前に見覚えのある男がいた。
チカラの知り合いで、航空券を手配してくれた男だ。
『確か…、タカユキ。』
ナツキは口元を歪めると、男の肉付きの良い大殿筋を眺めた。
男は入口近くのベンチにバッグを置くと、シャワーへ向かう。
開けっ放しのバッグから競パンが覗く。
『不用心な奴だ。』
人が良い奴は皆自分と同じだと思っている。
『世の中、そんなに甘くないぜ。』
空港で見た爽やかな笑顔を思い出し、舌を鳴らす。
ナツキは素早く競パンを抜き取ると、ヒナタに耳打ちした。
少し離れたロッカーに荷物を押し込み、戻ってきた男に視線を向ける。
腰にタオルを巻いた男は荷物の中をベンチにぶちまけ、必死に何かを探す。
その狼狽振りに思わず笑みが溢れる。
『どんなに探したってないぞ。』
ポケットの中で競パンを掴むと、ヒナタにサインを送った。
「探し物っすか?」
ヒナタが男に声を掛けた。
「あっ、いやっ、その…。」
タカユキが返事に詰まる。
「ここは置き引きが多いから、気を付けた方がいいっすよ。
もしかして水着っすか?」
笑いを堪えたヒナタが聞く。
「いやっ、単に忘れただけかと…。」
タカユキはバッグのジッパーを閉めると、肩に掛けた。
「えっ、もしかして帰るんすか?
折角、来たのに!
俺ので良かったら、貸しましょうか?」
「えっ、いや、それでは迷惑を掛けてしまうし…。」
「全然、迷惑じゃないっすよ。
二枚持ってるんで。
練習用だからクタクタだけど、構わないっすか?」
「そう言ってもらえると、ありがたいです。
ではお言葉に甘えて、貸してもらおうかな。」
「そうっすよ。
折角、入場料を払ったんだから!」
破顔したヒナタがリュックから取り出した競パンを差し出す。
(つづく)
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